14.
私が同年代の男の人と歩くのは、何年ぶりだろうか。
特に好きな男子の候補が無い私は、そんなことを灰色の空の下で考えていた。
行き交うクルマの騒音が喧しい御堂筋。私は『彼』に案内されるまま2人でひたすら歩いて下っていた。
特に好きな男子の候補が無い私は、そんなことを灰色の空の下で考えていた。
行き交うクルマの騒音が喧しい御堂筋。私は『彼』に案内されるまま2人でひたすら歩いて下っていた。
寒中の大阪、私が初めて訪れる街。
流石、東京・名古屋と並ぶ日本三大経済都市の街なだけあって、予想以上に街は大きかった。
人口は東京より少ない、面積が狭いので、人口密度は大して変わらない。
感覚的には大阪の方が密度が高い様にも思える。
一旦裏通りに入って水晶橋を渡り、大阪市役所と中之島図書館の間の通路を通る。
中之島図書館はとても立派な建物で、歴史の浅い鷲宮町立図書館とは比較にならない。
煉瓦造りでどっしりとした印象の中央公会堂を一見して栴檀木橋(せんだんのきはし)を渡る。
右も左も分からないが、少なくとも私は彼と御堂筋から2つ3つ離れた筋を歩いている様だった。
流石、東京・名古屋と並ぶ日本三大経済都市の街なだけあって、予想以上に街は大きかった。
人口は東京より少ない、面積が狭いので、人口密度は大して変わらない。
感覚的には大阪の方が密度が高い様にも思える。
一旦裏通りに入って水晶橋を渡り、大阪市役所と中之島図書館の間の通路を通る。
中之島図書館はとても立派な建物で、歴史の浅い鷲宮町立図書館とは比較にならない。
煉瓦造りでどっしりとした印象の中央公会堂を一見して栴檀木橋(せんだんのきはし)を渡る。
右も左も分からないが、少なくとも私は彼と御堂筋から2つ3つ離れた筋を歩いている様だった。
「僕のこと、呼び辛かったら苗字で呼んで頂いても構いませんよ」
バカマルコとは正反対に穏やかで丁寧な口調で話す彼は、何となく、自分の父親に似ている様な気がした。
雰囲気も似ているが、名前も似ている。彼の名前は何と「ただお」であり、苗字も父親の旧姓と一致した。
そう、「柊」という姓は母親のものであり、私の父・ただおは柊家に婿入りしたという事になる。
だから私の父は、柊家で唯一、神事に関係の無い名前である。
余談だけど、私達四姉妹の名前を漢字で書くと、上から「祈」「奉」「鏡」「司」である。
非常に珍しい名前なので、学年が上がる度にクラスメイトからよくネタにされたが、家が神社であることを告げると、不思議と皆納得した。
バカマルコとは正反対に穏やかで丁寧な口調で話す彼は、何となく、自分の父親に似ている様な気がした。
雰囲気も似ているが、名前も似ている。彼の名前は何と「ただお」であり、苗字も父親の旧姓と一致した。
そう、「柊」という姓は母親のものであり、私の父・ただおは柊家に婿入りしたという事になる。
だから私の父は、柊家で唯一、神事に関係の無い名前である。
余談だけど、私達四姉妹の名前を漢字で書くと、上から「祈」「奉」「鏡」「司」である。
非常に珍しい名前なので、学年が上がる度にクラスメイトからよくネタにされたが、家が神社であることを告げると、不思議と皆納得した。
もしかして、もしかすると……?
多分、気のせいだと思う。
しかし、私の父も、高校・大学時代は大阪に住んでいた事は確かだ。
多分、気のせいだと思う。
しかし、私の父も、高校・大学時代は大阪に住んでいた事は確かだ。
結局、私は自分の父親に良く似た彼を苗字で呼ぶ事にして、彼は私を名前で呼ぶ事にした。
閑話休題。私が彼と御堂筋(のそば)をひたすら下っている最中の会話が、こうであった。
その会話の中には、あのバカマルコが口にしなかった、とても重要な事柄が含まれていた。
その会話の中には、あのバカマルコが口にしなかった、とても重要な事柄が含まれていた。
話を切り出したのは彼だった。
「あなたはこの時代の人ではありませんね」
「え?!」
何故分かったのだろう。
「おそらく、数十年後の未来から『ある目的を果たすために』この時代に来たのでしょう。
そうですよね?」
2007年から来たのは確かだった。今の時代とは30年ほどブランクがある。
「え、ええ。2007年から来たというか、気付いたらこの時代に飛ばされたというか………」
私は昨日の夜の小田原駅で目が覚めてから、大阪駅に着くまでの仮定を細かに話した。
バカマルコの話は奇人扱いされそうなので伏せようかと思ったが、彼はこのペンダントが喋る事をとっくに気付いていた。
彼が、現代へ帰る為の『鍵』になるかも知れない。
だから、バカマルコの事も話した。名前の元ネタは通じないと思うので流石に伏せたけど。
「ほう、それで『彼』からは『星のカケラ』の話は聞きましたか?」
「い、いえ、まだです」
「『彼』はこの事を話さなかったのですか?」
「え、ええ」
「お、俺を責めたって知らねーものは知らねー。俺はただ、カガミが現代へ帰るための手伝いをしているだけだ」
エラそうな事を抜かしているが、コイツが役に立っているのは「念話(ねんわ)」が使える事くらいであり、
米原駅で不思議な『石』を見付けた時は、「それが『鍵』だ」とは言ったものの、コレの『気配』を察知する事は出来なかった。
出来ると言ってたくせに。
まさかとは思うが、アンタ、「禁則事項です」なんて言わないわよね?
「アホか。あの時ァ本当に気付かなかったんだ。そうだな、誰かに妨害されていたカンジだったぜ」
「妨害??」
私が彼が口にした単語に違和感を覚える。
「おうよ。実はよ、おめーが米原だっけか? あそこで降りるまでちったァ気配を感じたんだぜ?」
「何か胡散臭いわね。アンタ、私の事散々からかっておいて、言うのを忘れたとは言わせないわよ」
「んな事ァねぇ。突然消えたんだよ!! 気配がよ!!」
「はいはい、そうですね」
行き交う人が、どこからともなく聞こえる喧しい声に反応して、辺りをキョロキョロする。
私の胸元にぶら下がるコ○ュートスに似たペンダントから発せられている事には気付いていないようだ。
「あなたはこの時代の人ではありませんね」
「え?!」
何故分かったのだろう。
「おそらく、数十年後の未来から『ある目的を果たすために』この時代に来たのでしょう。
そうですよね?」
2007年から来たのは確かだった。今の時代とは30年ほどブランクがある。
「え、ええ。2007年から来たというか、気付いたらこの時代に飛ばされたというか………」
私は昨日の夜の小田原駅で目が覚めてから、大阪駅に着くまでの仮定を細かに話した。
バカマルコの話は奇人扱いされそうなので伏せようかと思ったが、彼はこのペンダントが喋る事をとっくに気付いていた。
彼が、現代へ帰る為の『鍵』になるかも知れない。
だから、バカマルコの事も話した。名前の元ネタは通じないと思うので流石に伏せたけど。
「ほう、それで『彼』からは『星のカケラ』の話は聞きましたか?」
「い、いえ、まだです」
「『彼』はこの事を話さなかったのですか?」
「え、ええ」
「お、俺を責めたって知らねーものは知らねー。俺はただ、カガミが現代へ帰るための手伝いをしているだけだ」
エラそうな事を抜かしているが、コイツが役に立っているのは「念話(ねんわ)」が使える事くらいであり、
米原駅で不思議な『石』を見付けた時は、「それが『鍵』だ」とは言ったものの、コレの『気配』を察知する事は出来なかった。
出来ると言ってたくせに。
まさかとは思うが、アンタ、「禁則事項です」なんて言わないわよね?
「アホか。あの時ァ本当に気付かなかったんだ。そうだな、誰かに妨害されていたカンジだったぜ」
「妨害??」
私が彼が口にした単語に違和感を覚える。
「おうよ。実はよ、おめーが米原だっけか? あそこで降りるまでちったァ気配を感じたんだぜ?」
「何か胡散臭いわね。アンタ、私の事散々からかっておいて、言うのを忘れたとは言わせないわよ」
「んな事ァねぇ。突然消えたんだよ!! 気配がよ!!」
「はいはい、そうですね」
行き交う人が、どこからともなく聞こえる喧しい声に反応して、辺りをキョロキョロする。
私の胸元にぶら下がるコ○ュートスに似たペンダントから発せられている事には気付いていないようだ。
「ごほん」
彼がわざとらしく咳払いをし、私とペンダントとの言い争いを阻んだ。
彼がわざとらしく咳払いをし、私とペンダントとの言い争いを阻んだ。
「ともかく、結果として彼は何らかの理由でその『石』の気配を感じる事が出来なかった。
それでも、その『石』が現代へ帰るための『鍵』……つまり、手掛かりである事は知っていた。
こうでしょうか?」
まさにその通りです。
彼は、私が巾着袋ごと渡した『石』を掌に載せ、私に見せながら話を続ける。
「この『石』こそが『星のカケラ』であり、貴方が今、最も必要としているモノなのです。
本来は『星の石』と呼ばれる伝説の石で、
人の概念を遙かに超える、特別なチカラを持っていると言われています」
『星のカケラ』と呼ばれた『石』は、確かにカケラとも呼べるべきザラザラした断面を持っていた。
そこ以外は墓石の様につるつるとしている。
『星の石』が『星のカケラ』となったのは、昨年起きた『事件』によって、砕けてあちこちに飛び散ってしまったからだという。
「貴方がマルコシアスと呼ぶ彼がこの『カケラ』の正体を知らずに、『鍵』だと断定した事が、僕には不思議です。
まぁ、それは置いておきましょう」
そこ、結構重要だと思うが。
「そのうち分かります。
かがみさんが『鍵』を集めているのは、ただ単に貴方が現代へ帰るためという訳ではありません。
帰ろうと思えば、彼のチカラを使えば『貴方は何時でも帰れます』」
「えっ?!」
彼の爆弾発言に私は酷く驚いた。
それでも、その『石』が現代へ帰るための『鍵』……つまり、手掛かりである事は知っていた。
こうでしょうか?」
まさにその通りです。
彼は、私が巾着袋ごと渡した『石』を掌に載せ、私に見せながら話を続ける。
「この『石』こそが『星のカケラ』であり、貴方が今、最も必要としているモノなのです。
本来は『星の石』と呼ばれる伝説の石で、
人の概念を遙かに超える、特別なチカラを持っていると言われています」
『星のカケラ』と呼ばれた『石』は、確かにカケラとも呼べるべきザラザラした断面を持っていた。
そこ以外は墓石の様につるつるとしている。
『星の石』が『星のカケラ』となったのは、昨年起きた『事件』によって、砕けてあちこちに飛び散ってしまったからだという。
「貴方がマルコシアスと呼ぶ彼がこの『カケラ』の正体を知らずに、『鍵』だと断定した事が、僕には不思議です。
まぁ、それは置いておきましょう」
そこ、結構重要だと思うが。
「そのうち分かります。
かがみさんが『鍵』を集めているのは、ただ単に貴方が現代へ帰るためという訳ではありません。
帰ろうと思えば、彼のチカラを使えば『貴方は何時でも帰れます』」
「えっ?!」
彼の爆弾発言に私は酷く驚いた。
「アンタ、何でそれを早く言わなかったのよ!!」
「あ? 俺、言わなかったけか? ヒヒヒ」
「惚けるな!!」
「まぁ、落ち着け。取り敢えず状況整理してみ?」
「わ、分かったわよ」
「あ? 俺、言わなかったけか? ヒヒヒ」
「惚けるな!!」
「まぁ、落ち着け。取り敢えず状況整理してみ?」
「わ、分かったわよ」
ちょっとこれまでの流れを整理しよう。
1. バカマルコは『現代』へ帰るために、『鍵』を揃える必要があると言った。
2. ここでいう『鍵』とは「手掛かり」の様な意味合いであり、それは「物」とは限らない。
3. その『鍵』はこの世界の何処かにあるそうで、バカマルコはその『気配』を感じられるらしい。
4. 米原駅で見付けた『石のカケラ』は、『鍵』のうちの一つである。
5. 彼曰く、その『鍵』である『カケラ』は、伝説の『星の石』のカケラである。
一方、
6. 私が30年前に飛ばされたのは、おそらく『何か』をする必要があった。
7. 米原駅で見付けた『星のカケラ』だけでは、現代へ帰る事は出来ない(と、マルコは言った)
8. バカマルコのチカラがあれば、私は何時でも帰ることが出来る(と、彼は言った)
9. そう言えば、バカマルコは自ら『時の流れを司るモノ』と称していた。
10. 『鍵』が揃わないと、『現代』で良くない事が起こるらしい。
(バカマルコはただ単に「世界が終わる」と言っただけだが)
2. ここでいう『鍵』とは「手掛かり」の様な意味合いであり、それは「物」とは限らない。
3. その『鍵』はこの世界の何処かにあるそうで、バカマルコはその『気配』を感じられるらしい。
4. 米原駅で見付けた『石のカケラ』は、『鍵』のうちの一つである。
5. 彼曰く、その『鍵』である『カケラ』は、伝説の『星の石』のカケラである。
一方、
6. 私が30年前に飛ばされたのは、おそらく『何か』をする必要があった。
7. 米原駅で見付けた『星のカケラ』だけでは、現代へ帰る事は出来ない(と、マルコは言った)
8. バカマルコのチカラがあれば、私は何時でも帰ることが出来る(と、彼は言った)
9. そう言えば、バカマルコは自ら『時の流れを司るモノ』と称していた。
10. 『鍵』が揃わないと、『現代』で良くない事が起こるらしい。
(バカマルコはただ単に「世界が終わる」と言っただけだが)
取り敢えず、「『星のカケラ』を集めなけらばならない」という事だけは分かった。
しかし、分からないことが3点ある。
1. 何故、『星のカケラ』を私が集めなければならないのか?
2. 『星のカケラ(石)』以外の『鍵』とは何か?
3. 『鍵』が揃わないと、何故『現代』で良くない事が起こるのか?
しかし、分からないことが3点ある。
1. 何故、『星のカケラ』を私が集めなければならないのか?
2. 『星のカケラ(石)』以外の『鍵』とは何か?
3. 『鍵』が揃わないと、何故『現代』で良くない事が起こるのか?
しばらく考え事をしていたせいなのだろう。
気が付けば、彼が心配そうな顔をして私の前に立っていた。
「どうかなさいましたか?」
早速、私は疑問に思った3点を、彼に質問してみた。
バカマルコが話さなかったのは、意地悪ではなく、何者かに口止めされていたのかも知れない。
話の核心に迫る。彼は答えた。
「簡潔に答えましょう。ずばり、『星のカケラ』が貴方の時代で必要です」
「何故です?」
「特に深い根拠は有りません。ただ、この『石』にチカラが秘められている事は確かです。
─────どうやら貴方は、信じていない様ですね」
私は本来、論理的に証明出来ないモノは信じない質(たち)である。
例外と言えば、鷲宮神社に祀られている神さまくらいかしらね。
「信じろという方が無理がありますね。申し訳ありません。
ですが、この世の中には、論理的・科学的に証明出来ない不思議な現象が数多く存在します。
あなたが身につけているペンダントも、私から見れば不思議な現象の一つですよ」
彼は古泉一樹の様にニコリと笑いながら、胸元のペンダントに視線を向ける。
やらしい視線ではない。
「2点目はもうすぐご自分で気付くと思いますので、ヒントだけ与えます。
『貴方にとって身近な人が、同じ目的でこの時代に飛ばされています』」
「私のとって身近な人?」
「そうです。ただ、気をつけて頂きたいのは、貴方とは全く接点を持っていない人が、
同じくこの時代に送られています」
「それって、誰の事?」
「僕も、そこまでは流石に分かり兼ねます。ただ、『場合によっては』貴方に危害を加えるかも知れません。
兎に角、『彼女』には充分注意して下さい」
「わ、分かったわ」
気が付けば、彼が心配そうな顔をして私の前に立っていた。
「どうかなさいましたか?」
早速、私は疑問に思った3点を、彼に質問してみた。
バカマルコが話さなかったのは、意地悪ではなく、何者かに口止めされていたのかも知れない。
話の核心に迫る。彼は答えた。
「簡潔に答えましょう。ずばり、『星のカケラ』が貴方の時代で必要です」
「何故です?」
「特に深い根拠は有りません。ただ、この『石』にチカラが秘められている事は確かです。
─────どうやら貴方は、信じていない様ですね」
私は本来、論理的に証明出来ないモノは信じない質(たち)である。
例外と言えば、鷲宮神社に祀られている神さまくらいかしらね。
「信じろという方が無理がありますね。申し訳ありません。
ですが、この世の中には、論理的・科学的に証明出来ない不思議な現象が数多く存在します。
あなたが身につけているペンダントも、私から見れば不思議な現象の一つですよ」
彼は古泉一樹の様にニコリと笑いながら、胸元のペンダントに視線を向ける。
やらしい視線ではない。
「2点目はもうすぐご自分で気付くと思いますので、ヒントだけ与えます。
『貴方にとって身近な人が、同じ目的でこの時代に飛ばされています』」
「私のとって身近な人?」
「そうです。ただ、気をつけて頂きたいのは、貴方とは全く接点を持っていない人が、
同じくこの時代に送られています」
「それって、誰の事?」
「僕も、そこまでは流石に分かり兼ねます。ただ、『場合によっては』貴方に危害を加えるかも知れません。
兎に角、『彼女』には充分注意して下さい」
「わ、分かったわ」
私達は気が付けば心斎橋を通過しており、道頓堀という繁華街に達していた。
〈マルコシアス、『気配』の方は?〉
〈ああ、プンプン臭うぜ? この辺りに違ぇねぇ〉
「そろそろお昼にしましょう。お腹も空いたことでしょう」
「そ、そう言えば…………」
ぐるるるるるるる………。
言いかけた途端、私のお腹の虫が鳴いた。彼が側に居る事に気付き、赤面してしまう。
顔を上げると、「道」「頓」「堀」とでかでかと書かれた看板と、
漫画で良く見る「かに道楽」の看板娘(?)のデカい蟹が目に入った。
正に『関東人から見た大阪のイメージ』そのものである。
〈マルコシアス、『気配』の方は?〉
〈ああ、プンプン臭うぜ? この辺りに違ぇねぇ〉
「そろそろお昼にしましょう。お腹も空いたことでしょう」
「そ、そう言えば…………」
ぐるるるるるるる………。
言いかけた途端、私のお腹の虫が鳴いた。彼が側に居る事に気付き、赤面してしまう。
顔を上げると、「道」「頓」「堀」とでかでかと書かれた看板と、
漫画で良く見る「かに道楽」の看板娘(?)のデカい蟹が目に入った。
正に『関東人から見た大阪のイメージ』そのものである。
それにしても、色々なお店があるわね。
たこ焼きやお好み、うどんといった大阪らしい食べ物は勿論、和食屋や洋食屋など、多数の飲食店が大宮の3倍はあろう高密度で軒を連ねる。
間口が狭いので、その密度がハンパでない。
「大阪は鰻の寝床」とはよく聞くけど、この事だったのね。
私が辺りを見回していると、彼が私の肩をとんと叩いてこう言った。
「あちらのお店は如何でしょう?」
と、ある店を指さした。
店頭ではチンドン屋風の人形が太鼓を鳴らし、何処からか「くいだおれ〜」と変な歌が流れている。
あ!! この人形、テレビで見た事あるわ!!
かくて、私達は道頓堀の名店「くいだおれ」の中に入った。
たこ焼きやお好み、うどんといった大阪らしい食べ物は勿論、和食屋や洋食屋など、多数の飲食店が大宮の3倍はあろう高密度で軒を連ねる。
間口が狭いので、その密度がハンパでない。
「大阪は鰻の寝床」とはよく聞くけど、この事だったのね。
私が辺りを見回していると、彼が私の肩をとんと叩いてこう言った。
「あちらのお店は如何でしょう?」
と、ある店を指さした。
店頭ではチンドン屋風の人形が太鼓を鳴らし、何処からか「くいだおれ〜」と変な歌が流れている。
あ!! この人形、テレビで見た事あるわ!!
かくて、私達は道頓堀の名店「くいだおれ」の中に入った。
「くいだおれ」は8階建てのビルとなっていて、1階がレストラン、2階が居酒屋、
3階が和食屋、4階から8階が割烹料理屋となっている。
割合から考えると、どうやら割烹料理がメインのよう………だが、
店頭のショーケースに愕然した。
いくらサンプルとはいえ、どの料理もボリュームが凄まじい。
「本当にこの量で来たら、凄いわね」
どれも私がいつしかつかさ達と行った、デカ盛り食堂並み。
恐るべし大阪。
3階が和食屋、4階から8階が割烹料理屋となっている。
割合から考えると、どうやら割烹料理がメインのよう………だが、
店頭のショーケースに愕然した。
いくらサンプルとはいえ、どの料理もボリュームが凄まじい。
「本当にこの量で来たら、凄いわね」
どれも私がいつしかつかさ達と行った、デカ盛り食堂並み。
恐るべし大阪。
薄暗い店内に入り、メニューを開く。
私はお腹に(ボリューム的に)優しそうな海老フライ定食を、彼は何と「くいだおれ定食」をオーダーした。
真っ昼間なのに……。男の人って、やっぱり結構食べるのね。
まぁ、これがケーキだったら私もイケるかも知れないけど……。
〈おい〉
マルコシアスが私にしか届かない声で呼びかける。
〈なに?〉
〈この店の奥で気配を感じる〉
〈分かった〉
短いやりとりを終えた私は、店の奥にトイレがあるのを確認した後、
「ちょっとお手洗いに行ってきます」
と彼に告げ、私は店内奥のトイレへ向かう。トイレは男女共用らしい。
私はお腹に(ボリューム的に)優しそうな海老フライ定食を、彼は何と「くいだおれ定食」をオーダーした。
真っ昼間なのに……。男の人って、やっぱり結構食べるのね。
まぁ、これがケーキだったら私もイケるかも知れないけど……。
〈おい〉
マルコシアスが私にしか届かない声で呼びかける。
〈なに?〉
〈この店の奥で気配を感じる〉
〈分かった〉
短いやりとりを終えた私は、店の奥にトイレがあるのを確認した後、
「ちょっとお手洗いに行ってきます」
と彼に告げ、私は店内奥のトイレへ向かう。トイレは男女共用らしい。
「で、何処?」
「ああ、もうちょい下」
「この棚かしら?」
「ちっと開けてみろや」
ぱかっ
私は店員の目を盗んではトイレットペーパーや洗剤が仕舞ってある棚をひとつずつ開けて、
中を確認していた。
別にトイレットペーパーを盗む訳ではないけれど、誤解されると面倒なので隠密に行う。
「ま、まさか………」
私は底に少しだけ水を蓄えた洋式便器に目をやる。
「流石にそこじゃねぇだろ」
「でも、棚は全部調べたわ。あるとしたらこの辺りでしょ?」
「………まぁ。この空間はすでに『気配』で満たされているから、これ以上何処に『鍵』があるかは、俺も分からねぇ」
「そ、そうなの」
「ああ、もうちょい下」
「この棚かしら?」
「ちっと開けてみろや」
ぱかっ
私は店員の目を盗んではトイレットペーパーや洗剤が仕舞ってある棚をひとつずつ開けて、
中を確認していた。
別にトイレットペーパーを盗む訳ではないけれど、誤解されると面倒なので隠密に行う。
「ま、まさか………」
私は底に少しだけ水を蓄えた洋式便器に目をやる。
「流石にそこじゃねぇだろ」
「でも、棚は全部調べたわ。あるとしたらこの辺りでしょ?」
「………まぁ。この空間はすでに『気配』で満たされているから、これ以上何処に『鍵』があるかは、俺も分からねぇ」
「そ、そうなの」
ふと、尿意を覚える。トイレにいるついでに、用を済ませることにした。
何となくだけど、一旦ペンダントを首から外し、ジーンズのポケットに詰め込む。
用を足して、紙で拭いた後、レバーを回して水を流す。
ジャジャジャジャジャっと水が流れた後、いきなり頭上の電灯がスコンと抜けて、垂れ下がってきた。
間一髪の所で頭上直撃を免れた。
「い、一体何なのよ?!」
ふと頭上を見上げると、電灯のユニットが嵌め込まれていた穴から『何か』が降ってきた。
便器に落ちない様に、両手でキャッチする。
何となくだけど、一旦ペンダントを首から外し、ジーンズのポケットに詰め込む。
用を足して、紙で拭いた後、レバーを回して水を流す。
ジャジャジャジャジャっと水が流れた後、いきなり頭上の電灯がスコンと抜けて、垂れ下がってきた。
間一髪の所で頭上直撃を免れた。
「い、一体何なのよ?!」
ふと頭上を見上げると、電灯のユニットが嵌め込まれていた穴から『何か』が降ってきた。
便器に落ちない様に、両手でキャッチする。
それは、米原駅で見付けたものと同じ、『星のカケラ』だった。
「よし、2個目ゲットね」
「よし、2個目ゲットね」
私はトイレを出てもう一度手を洗い、席に戻った。
結構長く居たのか、席に着いた直後に料理が運ばれてきた。
宴会でお刺身を並べる時に使いそうな大皿にはキャベツの山、その上に有頭海老のフライが2尾、どでんと乗っている。
中くらいの皿に載ったライスも大盛りだ。
どうみても花崎のデカ盛り屋です。本当に有り難う御座いました。
一方、彼のくいだおれ定食もボリュームが凄まじい。
大きな有頭海老のフライが1尾、それにたっぷりとソースの掛かったステーキとハンバーグが1つずつ。
これは凄い。ハンバーグは小振りに見えるが、厚みが2cmくらいある。
ごくり。
もしかしたら、私もイケるかも知れない。
これを食べて脂肪がお腹でなく胸に付けば、私は追加でハンバーグを頼んだのかも知れない。
結構長く居たのか、席に着いた直後に料理が運ばれてきた。
宴会でお刺身を並べる時に使いそうな大皿にはキャベツの山、その上に有頭海老のフライが2尾、どでんと乗っている。
中くらいの皿に載ったライスも大盛りだ。
どうみても花崎のデカ盛り屋です。本当に有り難う御座いました。
一方、彼のくいだおれ定食もボリュームが凄まじい。
大きな有頭海老のフライが1尾、それにたっぷりとソースの掛かったステーキとハンバーグが1つずつ。
これは凄い。ハンバーグは小振りに見えるが、厚みが2cmくらいある。
ごくり。
もしかしたら、私もイケるかも知れない。
これを食べて脂肪がお腹でなく胸に付けば、私は追加でハンバーグを頼んだのかも知れない。
「頂きます」「いただきます」
さっそく頂く。
海老フライはプリプリと歯応えが良く、カラっと挙がっていてとても美味しい。
私の父は海老フライを頭ごと食べるという意外と豪快な一面を持っているが、それは彼も同じだった。
「味は濃いけど、美味しいですね」
フランス料理店に似合いそうな彼も、やはり海老フライを頭ごと食べていた。
やはり、彼は私の父親なのだろうか?
さっそく頂く。
海老フライはプリプリと歯応えが良く、カラっと挙がっていてとても美味しい。
私の父は海老フライを頭ごと食べるという意外と豪快な一面を持っているが、それは彼も同じだった。
「味は濃いけど、美味しいですね」
フランス料理店に似合いそうな彼も、やはり海老フライを頭ごと食べていた。
やはり、彼は私の父親なのだろうか?
会計を別々(にしようと私が決めた)に済ませて店を出る。
この後、関東には無い「いか焼き」のデラベッピンを食べた事は内緒だ。
「だからカガミ、そんなに喰うと牛になっぜ? ヒッヒッヒ」
「五月蠅い。人の幸せにケチつけるな」
この後、関東には無い「いか焼き」のデラベッピンを食べた事は内緒だ。
「だからカガミ、そんなに喰うと牛になっぜ? ヒッヒッヒ」
「五月蠅い。人の幸せにケチつけるな」
「おめえの『幸せ』ってのは、随分安いモンだな」
バカマルコのこの一言に、いつも通りツッコんでやろうかと思ったが、何故かそれが出来なかった。
ペンダントの言葉には、重みがあった。
ペンダントの言葉には、重みがあった。
間.
桜園市の桜園市営住宅、3階のある一室にて。
学校から帰った宮河ひかげは、ランドセルを放り投げ、制服から部屋着に着替える。
ひかげの通う小学校は、公立にしては珍しく学生服が存在する。
学校から帰った宮河ひかげは、ランドセルを放り投げ、制服から部屋着に着替える。
ひかげの通う小学校は、公立にしては珍しく学生服が存在する。
それから、六畳間の住みに置かれたパソコンにOptionキーを押しながら電源を入れる。
起動時にOSを選択する小学生は、この街ではおそらくひかげくらいだろう。
彼女はとある理由で姉のひなたと2人きりで生活をしており、決して経済的余裕があるとは思えない状態だった。
その理由がとんでもないのだが、今回は割愛させて頂くとしよう。
低所得者向けの市営住宅在住とはいえ、宮河家にはパソコンがあった。
今のパソコンは2代目であり、ひなたがある日突然友人から貰って来たもの(らしい)かった。
その前のパソコンは何世代も前の代物で、専らひかげのプログラム練習用マシンとして機能していた。
現在、宮川家のパソコンは半ばひかげの管理下にある。
それは、Windowsユーザだったひなたが貰って来たパソコンが何故かMacであり、
使い方が分からなくなってしまったひなたはたった一度しか今のパソコンを使った事がない。
ひかげは「Unixが使えればそれで良い」という小学4年生らしかぬ台詞で管理権を見事手にし、
それ以来、ひかげは高速タイピングでひたすら怪しげなプログラムを何個も作っていた。
最初は趣味で始めたUnix。普通、小学生が手を出す代物では無かった。
が、宮河ひかげの隠れた能力は思わぬ所で開花し、
彼女が公開したソースは個人から国立研究所まで、あらゆる場面で応用されていた。
起動時にOSを選択する小学生は、この街ではおそらくひかげくらいだろう。
彼女はとある理由で姉のひなたと2人きりで生活をしており、決して経済的余裕があるとは思えない状態だった。
その理由がとんでもないのだが、今回は割愛させて頂くとしよう。
低所得者向けの市営住宅在住とはいえ、宮河家にはパソコンがあった。
今のパソコンは2代目であり、ひなたがある日突然友人から貰って来たもの(らしい)かった。
その前のパソコンは何世代も前の代物で、専らひかげのプログラム練習用マシンとして機能していた。
現在、宮川家のパソコンは半ばひかげの管理下にある。
それは、Windowsユーザだったひなたが貰って来たパソコンが何故かMacであり、
使い方が分からなくなってしまったひなたはたった一度しか今のパソコンを使った事がない。
ひかげは「Unixが使えればそれで良い」という小学4年生らしかぬ台詞で管理権を見事手にし、
それ以来、ひかげは高速タイピングでひたすら怪しげなプログラムを何個も作っていた。
最初は趣味で始めたUnix。普通、小学生が手を出す代物では無かった。
が、宮河ひかげの隠れた能力は思わぬ所で開花し、
彼女が公開したソースは個人から国立研究所まで、あらゆる場面で応用されていた。
詰まるところ、宮河ひかげは所謂「スーパーキッズ」であった。
しかし、コンピュータに関する知識はハンパではなかったが、学校の成績はむしろ悪い方だった。
しかし、コンピュータに関する知識はハンパではなかったが、学校の成績はむしろ悪い方だった。
そんなひかげは、夕べプリントアウトした印刷物とじーっと睨めっこしていた。
それは、『朽網』(くさみ)と名乗る人物が書き込んだ、伊勢崎線高架橋崩壊事故現場の側にあった『大穴』についての書き込みだった。
実は、『朽網』という名前は鷲宮町に住む日下部という青年のハンドルネームであり、
ひかげもコンピュータを通して彼の事を知っていた。
実際、秋葉原や大宮で彼と何度か会っており、その旅に技術情報の交換を行っていた。
しかし、流石のひかげも『朽網』という珍妙なハンドルネームの由来が、彼の妹の本名に由来する事は知らなかった。
それは、『朽網』(くさみ)と名乗る人物が書き込んだ、伊勢崎線高架橋崩壊事故現場の側にあった『大穴』についての書き込みだった。
実は、『朽網』という名前は鷲宮町に住む日下部という青年のハンドルネームであり、
ひかげもコンピュータを通して彼の事を知っていた。
実際、秋葉原や大宮で彼と何度か会っており、その旅に技術情報の交換を行っていた。
しかし、流石のひかげも『朽網』という珍妙なハンドルネームの由来が、彼の妹の本名に由来する事は知らなかった。
ひかげはわずか15分で削除されたこのログの文書に何度も目を通し、情報を片端から集めていた。
まずは事故現場である東武伊勢崎線新田(しんでん)〜蒲生(がもう)間の地理情報、
被災した車両の特徴、被害者の人数といった基本情報から、過去に起きた超常現象についてまで、
くまなく調べていた。
カタカタカタというキーボードを叩く音、カチカチとマウスをクリックする音が、
静かな2DKの住宅に響き渡る。
まずは事故現場である東武伊勢崎線新田(しんでん)〜蒲生(がもう)間の地理情報、
被災した車両の特徴、被害者の人数といった基本情報から、過去に起きた超常現象についてまで、
くまなく調べていた。
カタカタカタというキーボードを叩く音、カチカチとマウスをクリックする音が、
静かな2DKの住宅に響き渡る。
「うみゅ〜、なかなか見付からないわね」
一旦席を立ったひかげは、背の低い冷蔵庫から麦茶を取り出し、ごくりと飲みながらつぶやいた。
コップをすすいだ後、ひかげはふぅ、と一息つき、それから袢纏を身にまとう。
六畳間の座椅子に座り、段ボール箱に乗せられたパソコンを再び操作する。
一旦席を立ったひかげは、背の低い冷蔵庫から麦茶を取り出し、ごくりと飲みながらつぶやいた。
コップをすすいだ後、ひかげはふぅ、と一息つき、それから袢纏を身にまとう。
六畳間の座椅子に座り、段ボール箱に乗せられたパソコンを再び操作する。
2時間が経過した。
そろそろ埼玉大学のサーバをハッキングしようかしらと考えていたろ、
とあるサイトが表示された事でキーボードの動きがぴたりと止まった。
それは、事故現場の大穴とは無関係な、『星の石』に関するサイトだった。
単なる都市伝説だと思うが、あまりにも気になるので中を覗いてみる事にした。
そろそろ埼玉大学のサーバをハッキングしようかしらと考えていたろ、
とあるサイトが表示された事でキーボードの動きがぴたりと止まった。
それは、事故現場の大穴とは無関係な、『星の石』に関するサイトだった。
単なる都市伝説だと思うが、あまりにも気になるので中を覗いてみる事にした。
その頃、同じく市営住宅の一室にて。
こちらでも、キーボードをせわしなく叩く音が、2DKの室内に響いていた。
真っ暗な部屋の中、画面のバックライトに照らされた青い顔が、ニヤリと怪しく笑う。
「さて、次は『ここ』ね」
そう言って彼女は、「run」とタイプした後、キーボードのenterキーを押下した。
ウィンドウが一つ開き、黒い画面に白い文字が一斉に走る。
そして────────。
こちらでも、キーボードをせわしなく叩く音が、2DKの室内に響いていた。
真っ暗な部屋の中、画面のバックライトに照らされた青い顔が、ニヤリと怪しく笑う。
「さて、次は『ここ』ね」
そう言って彼女は、「run」とタイプした後、キーボードのenterキーを押下した。
ウィンドウが一つ開き、黒い画面に白い文字が一斉に走る。
そして────────。
コメントフォーム
- 「くいだおれ」…
嗚呼、夜行列車然りこれ然り、時代は移り変わってしまうのですね… -- 名無しさん (2008-07-07 11:37:06)