こなたはオタクだ。それもオタクの中でも最高レベルの知識を持つ重度のオタクだ。
みゆきは知識を得ることそのものを趣味としていて、他人の趣味に偏見を持たない。
つかさは話すことに積極的ではなく、他人の会話を邪魔するようなことはしない。
私は普通。こなたになんとなく話をあわせられる程度でしかない。
というわけで、私たち四人の会話は今時の女子高生とは傾向が異なることが多い。
「だからさ、かがみだってオタクじゃん。ラノベ読むし」
「勝手に人をオタクにすんな。フルメタだって普通に面白いわよ」
クラスの誰かが聞いていないかどうか気になって、教室を見回した。誰だか知らない相手に
オタクと同一視されるのはご勘弁願いたい。
「オタクはみんなそう言うんだよ。Fateは文学だとかCLANNADは人生だとか」
「いや、それもどうよ。私はそんなこと言わないし」
「個人の判断にもよりますが完成度の高い作品なら誉められて然るべきだと思いますよ」
みゆきの笑顔からは邪気だとか皮肉だとかいったものは感じられない。
「おお、みゆきさんが言うと正論のように聞こえる」
「私だとダメなのかよ……」
こなたはどうしても私をオタクに認定したいらしい。
「そういえば、つかさはフルメタって知ってる?」
「お姉ちゃんが持ってる人形がそのキャラってことくらいしか……」
まあ普通は知らないでしょうね。――そうわかっていても、妹にはもう少し活字に親しんで
もらいたいものだ。
「それじゃ、かがみが説明してやってよ」
そんなことする必要あるのか、と思いつつもつかさが話題についてこれないのも可哀想なので
教えてやることにした。
「一言でいえばロボットものね。主人公がロボットに乗って戦ったりして女の子を守るっていう
もので、まあ漫画と同じノリで読めるものよ。現代を舞台にしてるんだけど、ロボットが存在して
るだけじゃなくて、世界情勢がこの現実と全然違ってて、例えばゴルバチョフが暗殺されたせいで
ペレストロイカが頓挫して、ソ連が崩壊してないことになってたり」
「それん?」
「ロマノフ朝の後に歴史上初めて成立した社会主義国家で1991年に崩壊して……まさか知らない
とは言わせないわよ」
「う、うん、大丈夫だよ」
慌てて肯くつかさに不安を覚える。このあたりは中学校でも習うことなので、いくらなんでも
知らないのは困る。
「やっぱりかがみもオタクだよね。フルメタのこと話してるときすごく活き活きしてたよ」
「こ、これはこなたが説明しろって言ったからでしょ! それよりこなたはこの辺のことちゃんと
わかってんの?」
とてもいい笑顔のこなたのペースに嵌められるわけにもいかずにやり返す。
「うん、分かってるよ。MASTERキートンとかゴルゴ13とか楽しむには必要な知識だからね」
「またそっち方面かよ」
珍しく学があると思ったらこれだ。本気でこなたのことが心配になってくる。
自分の身を守るためには知識が必要だ。例えば悪徳商法なんかも、正しい知識を持っていれば
被害にあわずに済む。そういう意味でこなたは物凄く頼りなくて、気になって仕方ない。
「私はそれでいいと思います。やはり知識があったほうが世の中楽しめますからね。……サンタ
クロースのように、知らないほうが楽しめるものもありますけど……」
さっきもそうだったけど、みゆきが言うと説得力があるように感じられる。
「そうだよネ。よく漫画とかでロマノフ朝が遺した隠し財宝の話なんかが出てくるけど、本当の
こと知ってたら面白くないだろうし」
「あんたはそっち以外に興味ないのか」
それなのに、こなたが言うと薄っぺらく感じてしまうのは私だけではないはず。
「隠し遺産の話もMASTERキートンやゴルゴ13に出てくるんだよ。他にもルパン三世とか名探偵
コナンとか、そういう話はいっぱいあるよ。なんでだろ?」
「やはり、そういうものが現実にあると言われているからでしょう。ロマノフ朝が持っている
だろうと目されていた財産と、実際に押収された金額に差額があったとき、その分が隠し財産と
呼ばれるようになります。徳川埋蔵金やヒトラーの遺産などもそうですが、この手の隠し財産の
噂は大抵そのような経緯をもっています」
いい感じに話が逸れてきた。高校生の与太話なんてそんなものよね。
「やっぱり眉唾ってこと? ニコライ二世の子供がその在り処を知ってるとか言うけど」
「アナスタシア皇女のことですね。実際には生きていないとされていますが」
「あなすたしあ?」
「ニコライ二世の四女です。ロマノフ家が処刑されたときに、ひっそり逃がされたと言われて
いまして、後に世界中から自称アナスタシアが現れました。勿論その方たちは偽者ですが、本物
なら財宝の在り処を知っているだろうというわけですね。その『実は生きていた』という話その
ものが嘘なんですけど、このアナスタシアの存在が財宝伝説をよりミステリアスなものに仕立て
上げているのも確かですね」
「その人って四人姉妹なんだ」
つかさ、気になるのはそこなのか。
「一人、男子もいましたけど四人姉妹です。ちなみにアナスタシアは三女のマリアと仲が良く、
よく一緒の寝室で寝ていたそうです」
「あはは。それって私みたいだね」
「よくそんな呑気に言えるわね」
みゆきの話が正しければ、その四人は処刑されたのというのに。
みゆきもまあ、よくもこんなに次から次へと雑学が出てくるものだ。
「それで、結局財宝はどこにあるんだろうね」
そんなの誰も知らないに決まっているじゃない。だから隠し財産っていうのよ。
「財宝はラスプーチンの子孫が革命のどさくさに紛れて持ち逃げしてしまいました。その後は
地下組織の活動資金になってしまっています」
もちろんそんな話、聞いたこともない。みゆきもたまには冗談言うのね。
「おー、ラスプーチンが関わっていたんだ」
「さすがゆきちゃん、何でも知ってるね」
「いやいや、信じるなよ」
こんなこなただったら『な、なんだってー!』って叫ぶレベルのトンデモ話を信じるなって。
『ナイジェリアの手紙』みたいな詐欺に引っかかりそうで、本気で心配だ。
「みゆきさんが言うんだから本当に決まってるじゃん」
「だよねー」
「いやいや、みゆきが言っても嘘は嘘だから」
「かがみさん……信じていただけないのですか?」
「いやいや、明らかな作り話を信じるわけないでしょ」
さっきからいやいや言い過ぎだ、私。
「あんたらもみゆきが言ってるからって鵜呑みにしちゃだめよ。自分で判断しなさい。いくら
みゆきでもそんなの知ってるわけないでしょ」
これではまるで私の方が冗談のわからない人みたいだ。
「なるほど、私がなんでも知ってると証明できればかがみさんはかがみさんの判断で私のことを
信じてくださるわけですね」
「な、なんか変な流れになってきたわね……」
眼鏡の奥の瞳が異様な光を放ったような気がした。
もしかしてみゆき、怒ってる?
「それで、どんなふうにそれを証明するの?」
「私の知っている、色々なことをお話ししましょう」
「うーん……」
どんなにマニアックな知識を披露しても、『なんでも知ってる』とは言い切れないような気が
するけど……。
「例えばですね……」
「たとえば?」
「かがみさんはこなたさんのことが好きです」
なっ!?
「な、ななななな、何言ってんのよ!? そんなことあるわけないでしょ!」
「かがみん、そうだったんだ……」
「ちょ、なんでまんざらでもない顔してんのよ!」
もしかしてこなたも私を……じゃなくって!
「そ、そんな偽情報認めないわよ!」
「昨日は海水浴に行ったときのこなたさんの水着写真を使ってオナニーしましたよね。している
間、ずっとこなたさんの名前を呼んでいらっしゃいました」
「なっ、そんなっ」
「あー、今朝お姉ちゃんの枕の横にその写真があったけど、そういうことだったんだ」
「つ、つかさあぁぁぁぁ!」
「ちなみにかがみさんは中指を第二関節まで入れて指を曲げるのが好きです。両手が使える場合は
左手で乳首を弄ることが多いですね」
「大声で言わないで、大声で言わないで!!」
なんで知ってるのよ!?
「かがみ、さっきからクラス中がこっち見てるよ」
「いやあああああああ!」
「こなたさんのお宅に遊びに行った際、こなたさんの椅子に座ってこっそり腰を振りながら」
「やめてえええええ! 私が悪かったからもうやめてええええええ!!」
みゆきは知識を得ることそのものを趣味としていて、他人の趣味に偏見を持たない。
つかさは話すことに積極的ではなく、他人の会話を邪魔するようなことはしない。
私は普通。こなたになんとなく話をあわせられる程度でしかない。
というわけで、私たち四人の会話は今時の女子高生とは傾向が異なることが多い。
「だからさ、かがみだってオタクじゃん。ラノベ読むし」
「勝手に人をオタクにすんな。フルメタだって普通に面白いわよ」
クラスの誰かが聞いていないかどうか気になって、教室を見回した。誰だか知らない相手に
オタクと同一視されるのはご勘弁願いたい。
「オタクはみんなそう言うんだよ。Fateは文学だとかCLANNADは人生だとか」
「いや、それもどうよ。私はそんなこと言わないし」
「個人の判断にもよりますが完成度の高い作品なら誉められて然るべきだと思いますよ」
みゆきの笑顔からは邪気だとか皮肉だとかいったものは感じられない。
「おお、みゆきさんが言うと正論のように聞こえる」
「私だとダメなのかよ……」
こなたはどうしても私をオタクに認定したいらしい。
「そういえば、つかさはフルメタって知ってる?」
「お姉ちゃんが持ってる人形がそのキャラってことくらいしか……」
まあ普通は知らないでしょうね。――そうわかっていても、妹にはもう少し活字に親しんで
もらいたいものだ。
「それじゃ、かがみが説明してやってよ」
そんなことする必要あるのか、と思いつつもつかさが話題についてこれないのも可哀想なので
教えてやることにした。
「一言でいえばロボットものね。主人公がロボットに乗って戦ったりして女の子を守るっていう
もので、まあ漫画と同じノリで読めるものよ。現代を舞台にしてるんだけど、ロボットが存在して
るだけじゃなくて、世界情勢がこの現実と全然違ってて、例えばゴルバチョフが暗殺されたせいで
ペレストロイカが頓挫して、ソ連が崩壊してないことになってたり」
「それん?」
「ロマノフ朝の後に歴史上初めて成立した社会主義国家で1991年に崩壊して……まさか知らない
とは言わせないわよ」
「う、うん、大丈夫だよ」
慌てて肯くつかさに不安を覚える。このあたりは中学校でも習うことなので、いくらなんでも
知らないのは困る。
「やっぱりかがみもオタクだよね。フルメタのこと話してるときすごく活き活きしてたよ」
「こ、これはこなたが説明しろって言ったからでしょ! それよりこなたはこの辺のことちゃんと
わかってんの?」
とてもいい笑顔のこなたのペースに嵌められるわけにもいかずにやり返す。
「うん、分かってるよ。MASTERキートンとかゴルゴ13とか楽しむには必要な知識だからね」
「またそっち方面かよ」
珍しく学があると思ったらこれだ。本気でこなたのことが心配になってくる。
自分の身を守るためには知識が必要だ。例えば悪徳商法なんかも、正しい知識を持っていれば
被害にあわずに済む。そういう意味でこなたは物凄く頼りなくて、気になって仕方ない。
「私はそれでいいと思います。やはり知識があったほうが世の中楽しめますからね。……サンタ
クロースのように、知らないほうが楽しめるものもありますけど……」
さっきもそうだったけど、みゆきが言うと説得力があるように感じられる。
「そうだよネ。よく漫画とかでロマノフ朝が遺した隠し財宝の話なんかが出てくるけど、本当の
こと知ってたら面白くないだろうし」
「あんたはそっち以外に興味ないのか」
それなのに、こなたが言うと薄っぺらく感じてしまうのは私だけではないはず。
「隠し遺産の話もMASTERキートンやゴルゴ13に出てくるんだよ。他にもルパン三世とか名探偵
コナンとか、そういう話はいっぱいあるよ。なんでだろ?」
「やはり、そういうものが現実にあると言われているからでしょう。ロマノフ朝が持っている
だろうと目されていた財産と、実際に押収された金額に差額があったとき、その分が隠し財産と
呼ばれるようになります。徳川埋蔵金やヒトラーの遺産などもそうですが、この手の隠し財産の
噂は大抵そのような経緯をもっています」
いい感じに話が逸れてきた。高校生の与太話なんてそんなものよね。
「やっぱり眉唾ってこと? ニコライ二世の子供がその在り処を知ってるとか言うけど」
「アナスタシア皇女のことですね。実際には生きていないとされていますが」
「あなすたしあ?」
「ニコライ二世の四女です。ロマノフ家が処刑されたときに、ひっそり逃がされたと言われて
いまして、後に世界中から自称アナスタシアが現れました。勿論その方たちは偽者ですが、本物
なら財宝の在り処を知っているだろうというわけですね。その『実は生きていた』という話その
ものが嘘なんですけど、このアナスタシアの存在が財宝伝説をよりミステリアスなものに仕立て
上げているのも確かですね」
「その人って四人姉妹なんだ」
つかさ、気になるのはそこなのか。
「一人、男子もいましたけど四人姉妹です。ちなみにアナスタシアは三女のマリアと仲が良く、
よく一緒の寝室で寝ていたそうです」
「あはは。それって私みたいだね」
「よくそんな呑気に言えるわね」
みゆきの話が正しければ、その四人は処刑されたのというのに。
みゆきもまあ、よくもこんなに次から次へと雑学が出てくるものだ。
「それで、結局財宝はどこにあるんだろうね」
そんなの誰も知らないに決まっているじゃない。だから隠し財産っていうのよ。
「財宝はラスプーチンの子孫が革命のどさくさに紛れて持ち逃げしてしまいました。その後は
地下組織の活動資金になってしまっています」
もちろんそんな話、聞いたこともない。みゆきもたまには冗談言うのね。
「おー、ラスプーチンが関わっていたんだ」
「さすがゆきちゃん、何でも知ってるね」
「いやいや、信じるなよ」
こんなこなただったら『な、なんだってー!』って叫ぶレベルのトンデモ話を信じるなって。
『ナイジェリアの手紙』みたいな詐欺に引っかかりそうで、本気で心配だ。
「みゆきさんが言うんだから本当に決まってるじゃん」
「だよねー」
「いやいや、みゆきが言っても嘘は嘘だから」
「かがみさん……信じていただけないのですか?」
「いやいや、明らかな作り話を信じるわけないでしょ」
さっきからいやいや言い過ぎだ、私。
「あんたらもみゆきが言ってるからって鵜呑みにしちゃだめよ。自分で判断しなさい。いくら
みゆきでもそんなの知ってるわけないでしょ」
これではまるで私の方が冗談のわからない人みたいだ。
「なるほど、私がなんでも知ってると証明できればかがみさんはかがみさんの判断で私のことを
信じてくださるわけですね」
「な、なんか変な流れになってきたわね……」
眼鏡の奥の瞳が異様な光を放ったような気がした。
もしかしてみゆき、怒ってる?
「それで、どんなふうにそれを証明するの?」
「私の知っている、色々なことをお話ししましょう」
「うーん……」
どんなにマニアックな知識を披露しても、『なんでも知ってる』とは言い切れないような気が
するけど……。
「例えばですね……」
「たとえば?」
「かがみさんはこなたさんのことが好きです」
なっ!?
「な、ななななな、何言ってんのよ!? そんなことあるわけないでしょ!」
「かがみん、そうだったんだ……」
「ちょ、なんでまんざらでもない顔してんのよ!」
もしかしてこなたも私を……じゃなくって!
「そ、そんな偽情報認めないわよ!」
「昨日は海水浴に行ったときのこなたさんの水着写真を使ってオナニーしましたよね。している
間、ずっとこなたさんの名前を呼んでいらっしゃいました」
「なっ、そんなっ」
「あー、今朝お姉ちゃんの枕の横にその写真があったけど、そういうことだったんだ」
「つ、つかさあぁぁぁぁ!」
「ちなみにかがみさんは中指を第二関節まで入れて指を曲げるのが好きです。両手が使える場合は
左手で乳首を弄ることが多いですね」
「大声で言わないで、大声で言わないで!!」
なんで知ってるのよ!?
「かがみ、さっきからクラス中がこっち見てるよ」
「いやあああああああ!」
「こなたさんのお宅に遊びに行った際、こなたさんの椅子に座ってこっそり腰を振りながら」
「やめてえええええ! 私が悪かったからもうやめてええええええ!!」
――この日以来、みゆきにだけは逆らうまいと心に決めた。
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- みゆきさん知りすぎ・・・
特に第二関節を曲げるのが好きって普通わからんで。
前フリがしっかりしているに同調
-- 名有りさん (2009-06-27 21:16:16) - 激しく同感↓ -- コメント職人U- (2009-06-09 22:11:56)
- みゆきさんに言葉責めされたくなる作品ですなw
-- 名無しさん (2008-02-21 19:23:42) - 後半が面白いのは前半の前フリの盛り上げがきちんとしているからですね
後半の一発ネタなら単にみゆきさんやな奴になりかねない
知識のポケットって大事ですね -- 名無しさん (2008-02-21 10:30:58) - みwikiさんの千里眼www -- 名無しさん (2008-02-21 08:27:45)
- みゆきSUGEEEEEEwwwww -- 名無しさん (2008-02-20 23:14:17)
- さすが透視眼鏡w -- 名無しさん (2008-02-20 21:13:44)