家に帰って、机の上に置いた携帯電話をじっと見る。
見てるからってメールが来るわけないし、そもそも、私のメールアドレスは教えていないから、こっちから連絡してくれ、ってことだよね。
でも、本当にあの時は、気が動転した。正直言って、あれからどうやって帰ってきたのかも、良く覚えていない。
と、ともかく、ここはメールを送ってみる・・・べきだよね? あれ、誰に聞いているんだろう、私。
とりあえず、携帯を開いて、メール送信の準備をする。
「で、でも、どんな内容のを送ればいいのかなあ。うう、私にはこんなの初めてだから分かんないよー」
お姉ちゃんに聞けばいいのかな。でも、お姉ちゃんも、常日頃から彼氏が欲しいみたいなことを言っているから、聞いても無駄かなあ。
「うーん・・・。と、とりあえず、世間話からかな? 明日は、文化祭だし・・・」
その後、十分くらい、携帯と睨めっこして、やっと、本文を書き終わった。
『今日は、色々とありがとう。高良君と話せて、楽しかったよ。
明日は、文化祭だから、頑張ろうね』
読み返してみると、実に白々しい。ああ、私って文才、ないんだなあ。
でも、高良君なら、笑って許してくれそう。でも、これは、私の甘えかな? 兎にも角にも、送ってみないと分からないよね。
私は、意を決して、メールを送信した。
見てるからってメールが来るわけないし、そもそも、私のメールアドレスは教えていないから、こっちから連絡してくれ、ってことだよね。
でも、本当にあの時は、気が動転した。正直言って、あれからどうやって帰ってきたのかも、良く覚えていない。
と、ともかく、ここはメールを送ってみる・・・べきだよね? あれ、誰に聞いているんだろう、私。
とりあえず、携帯を開いて、メール送信の準備をする。
「で、でも、どんな内容のを送ればいいのかなあ。うう、私にはこんなの初めてだから分かんないよー」
お姉ちゃんに聞けばいいのかな。でも、お姉ちゃんも、常日頃から彼氏が欲しいみたいなことを言っているから、聞いても無駄かなあ。
「うーん・・・。と、とりあえず、世間話からかな? 明日は、文化祭だし・・・」
その後、十分くらい、携帯と睨めっこして、やっと、本文を書き終わった。
『今日は、色々とありがとう。高良君と話せて、楽しかったよ。
明日は、文化祭だから、頑張ろうね』
読み返してみると、実に白々しい。ああ、私って文才、ないんだなあ。
でも、高良君なら、笑って許してくれそう。でも、これは、私の甘えかな? 兎にも角にも、送ってみないと分からないよね。
私は、意を決して、メールを送信した。
―――
「つかさー。ごはんよー」
「あ、はーい」
お母さんに返事をしてから、時計を見ると、もう六時半だった。本当に、時間が経つのって早いなあ。
そのまま、食べに行こうと思ったけど、何だか気になったので、携帯を手に取ってから、居間に行くことにした。
居間に行くと、もう、夕食が並べられていた。・・・そういえば、今日は、夕食の手伝いをしていない。
「お、お母さん、ゴメン! 今日は、手伝えなかった」
「あら、いいのよ。いつも、手伝わせるのも悪いしね」
お母さんはそう言って、ニコニコと笑ったけど、やっぱり、何だか悪い。
やりきれない、モヤモヤした感じが私の頭を駆け巡ったけど、いざ食卓に着けば、そんなのも吹っ飛んだ。
「いただきまーす」
家族六人の合唱で、今日の夕食が始まる。
今日は、いのりお姉ちゃんも、まつりお姉ちゃんもいる。かがみお姉ちゃんも、いつの間にか帰ってきていた。
いつもどおりの賑やかな夕食の時間が続く。
夕食が終わったら、家族全員でテレビを見る。みんな、クイズ番組に釘付けだった。
私はというと、さっき送ったメールの返信が気になって気になって、仕方がなかった。
携帯電話を開け閉めしては、溜息をつく。まだかな、まだかな・・・。ちらりと時計を見ると、午後七時半を回っていた。
「さっきから、何してんの?」
「ふえぇっ!」
お姉ちゃんに急に話しかけられて、変に痙攣してしまった。うう、みんな、見てる・・・。
「め、メールの返信が来ないかなあ~って・・・。気にならない?」
「まあ、確かに気になるけど・・・。でも、あんた、家族以外にメルアドを教えている人っていたっけ?」
「あ~、もしかして彼氏かぁ~?」
かがみお姉ちゃんの後に、すかさず、まつりお姉ちゃんがニヤニヤしながら聞いてきた。・・・意地悪。
で、でも、何て答えればいいんだろう? 男の子とメールしてるなんて言ったら、誤解されそうだし・・・。
心なしか、お父さんの醸し出す雰囲気が違うような気がするし・・・。
「え、ええっとお・・・。友達、だよ?」
100%怪しい、しどろもどろな答えだったけど、
「ん、そっか。まあ、私が知らない友達がいてもおかしくないわよね」
と、かがみお姉ちゃんは納得したようだった。
良かった。思わず、溜息が出る。
でも、何でかがみお姉ちゃんは目をつぶって、腕を組んでいるんだろう。しかも、「まさか・・・先を越されて・・・?」と、呟いている。一体、何だろう?
それに、お父さんの目が、一瞬、光ったような・・・。それにそれに、何だか、空気がおかしいような・・・。
これって・・・私のせい?
空気を察して、自己嫌悪する。ああ、私って本当にダメな人だなあ・・・。
「あ、はーい」
お母さんに返事をしてから、時計を見ると、もう六時半だった。本当に、時間が経つのって早いなあ。
そのまま、食べに行こうと思ったけど、何だか気になったので、携帯を手に取ってから、居間に行くことにした。
居間に行くと、もう、夕食が並べられていた。・・・そういえば、今日は、夕食の手伝いをしていない。
「お、お母さん、ゴメン! 今日は、手伝えなかった」
「あら、いいのよ。いつも、手伝わせるのも悪いしね」
お母さんはそう言って、ニコニコと笑ったけど、やっぱり、何だか悪い。
やりきれない、モヤモヤした感じが私の頭を駆け巡ったけど、いざ食卓に着けば、そんなのも吹っ飛んだ。
「いただきまーす」
家族六人の合唱で、今日の夕食が始まる。
今日は、いのりお姉ちゃんも、まつりお姉ちゃんもいる。かがみお姉ちゃんも、いつの間にか帰ってきていた。
いつもどおりの賑やかな夕食の時間が続く。
夕食が終わったら、家族全員でテレビを見る。みんな、クイズ番組に釘付けだった。
私はというと、さっき送ったメールの返信が気になって気になって、仕方がなかった。
携帯電話を開け閉めしては、溜息をつく。まだかな、まだかな・・・。ちらりと時計を見ると、午後七時半を回っていた。
「さっきから、何してんの?」
「ふえぇっ!」
お姉ちゃんに急に話しかけられて、変に痙攣してしまった。うう、みんな、見てる・・・。
「め、メールの返信が来ないかなあ~って・・・。気にならない?」
「まあ、確かに気になるけど・・・。でも、あんた、家族以外にメルアドを教えている人っていたっけ?」
「あ~、もしかして彼氏かぁ~?」
かがみお姉ちゃんの後に、すかさず、まつりお姉ちゃんがニヤニヤしながら聞いてきた。・・・意地悪。
で、でも、何て答えればいいんだろう? 男の子とメールしてるなんて言ったら、誤解されそうだし・・・。
心なしか、お父さんの醸し出す雰囲気が違うような気がするし・・・。
「え、ええっとお・・・。友達、だよ?」
100%怪しい、しどろもどろな答えだったけど、
「ん、そっか。まあ、私が知らない友達がいてもおかしくないわよね」
と、かがみお姉ちゃんは納得したようだった。
良かった。思わず、溜息が出る。
でも、何でかがみお姉ちゃんは目をつぶって、腕を組んでいるんだろう。しかも、「まさか・・・先を越されて・・・?」と、呟いている。一体、何だろう?
それに、お父さんの目が、一瞬、光ったような・・・。それにそれに、何だか、空気がおかしいような・・・。
これって・・・私のせい?
空気を察して、自己嫌悪する。ああ、私って本当にダメな人だなあ・・・。
―――
結局、返信が来たのは、夜八時近くのことだった。
『返信が遅れて申し訳ありません。東京という自宅の場所の都合上、糟日部からはどうしても時間がかかる上に、夕食作りなど、ばたばたと忙しく、返信が遅れてしまいました。
いえ、何だか、弁解がましくて、ダメダメですね。お気に障らなければ良いのですが・・・。
ともかく、メール、ありがとうございます。僕も、今日、つかささんと話せて楽しかったです。
また、今度、こういった機会があれば、と思います。そのときは、またよろしくお願いします。
そして、明日は、いよいよ、学園祭(桜藤祭)ですね。僕も、これまで奔走してまいりましたので、つかささんを始めとして、全校生徒全員に楽しめていただけたらと思います。
それでは、失礼致します』
うーん、実に高良君らしいメールだね。読んでるこっちが気後れしそう・・・。
それにしても、全校生徒全員に気を配るなんて、私には出来そうもない。本当に、高良君は凄いなあ。私なんか、足下にも及ばない。
そんな高良君が、私なんかとメールしてくれるなんて・・・。これって、よくよく考えてみると凄いことなのかなあ? もしかして、夢?
そ、そういえば、これってまた、返信したほうがいいのかな? でも、するなら、どんな風に返そうかな。
そんな風に考えながら、また、携帯電話と睨めっこするのが、十分近く続いた。
『返信、ありがとう。
返信が遅れたことだけど、全然気にしてないから、気にする必要はないよ?
それと、お姉ちゃんとも話してたけど、明日の学園祭はみんな、楽しみにしてるよ。
私も楽しみにしているし、きっと、高良君の願いは通じると思うよ。
それじゃあ、お休み』
・・・やっぱり、私は文才がない。伝えたいことをうまく伝えられないなあ・・・。
でも、ありのままの自分を伝えたほうが良いよね。うん、きっとそうだよ。
私はそんな想いを胸に抱きつつ、メールを送信した。
『返信が遅れて申し訳ありません。東京という自宅の場所の都合上、糟日部からはどうしても時間がかかる上に、夕食作りなど、ばたばたと忙しく、返信が遅れてしまいました。
いえ、何だか、弁解がましくて、ダメダメですね。お気に障らなければ良いのですが・・・。
ともかく、メール、ありがとうございます。僕も、今日、つかささんと話せて楽しかったです。
また、今度、こういった機会があれば、と思います。そのときは、またよろしくお願いします。
そして、明日は、いよいよ、学園祭(桜藤祭)ですね。僕も、これまで奔走してまいりましたので、つかささんを始めとして、全校生徒全員に楽しめていただけたらと思います。
それでは、失礼致します』
うーん、実に高良君らしいメールだね。読んでるこっちが気後れしそう・・・。
それにしても、全校生徒全員に気を配るなんて、私には出来そうもない。本当に、高良君は凄いなあ。私なんか、足下にも及ばない。
そんな高良君が、私なんかとメールしてくれるなんて・・・。これって、よくよく考えてみると凄いことなのかなあ? もしかして、夢?
そ、そういえば、これってまた、返信したほうがいいのかな? でも、するなら、どんな風に返そうかな。
そんな風に考えながら、また、携帯電話と睨めっこするのが、十分近く続いた。
『返信、ありがとう。
返信が遅れたことだけど、全然気にしてないから、気にする必要はないよ?
それと、お姉ちゃんとも話してたけど、明日の学園祭はみんな、楽しみにしてるよ。
私も楽しみにしているし、きっと、高良君の願いは通じると思うよ。
それじゃあ、お休み』
・・・やっぱり、私は文才がない。伝えたいことをうまく伝えられないなあ・・・。
でも、ありのままの自分を伝えたほうが良いよね。うん、きっとそうだよ。
私はそんな想いを胸に抱きつつ、メールを送信した。
―――
翌日。いよいよ、桜藤祭当日となった。
結局、高良君とはあれから何回もメールを交換し合って、とても楽しかった。
今日は、楽しい日になるといいな。これまで、色々準備してきたし、きっと、今日はいい日になる。・・・気がする。
というわけで、今は体育館で開会式の開会を待っている状態。実は、今朝、寝坊で遅刻して色々とあったんだけど、それはまた別のお話。
「テスト、テスト。
えー、では、只今より桜藤祭を開会いたします。まず、初めに、実行委員長より開会宣言を行います」
司会の人の挨拶で桜藤祭が始まった。実行委員長らしい人が壇上に立ち、挨拶を始める。
いよいよ、学園祭が始まった。そう思うと、何だか興奮と緊張が入り混じった複雑な気分になった。
結局、高良君とはあれから何回もメールを交換し合って、とても楽しかった。
今日は、楽しい日になるといいな。これまで、色々準備してきたし、きっと、今日はいい日になる。・・・気がする。
というわけで、今は体育館で開会式の開会を待っている状態。実は、今朝、寝坊で遅刻して色々とあったんだけど、それはまた別のお話。
「テスト、テスト。
えー、では、只今より桜藤祭を開会いたします。まず、初めに、実行委員長より開会宣言を行います」
司会の人の挨拶で桜藤祭が始まった。実行委員長らしい人が壇上に立ち、挨拶を始める。
いよいよ、学園祭が始まった。そう思うと、何だか興奮と緊張が入り混じった複雑な気分になった。
―――
それから時間が経って、時刻は午前十一時半。体育館でのオープニングセレモニーが終わって、自由時間となった。
私は約束どおり、こなちゃんとお姉ちゃんと一緒に校内を回ることになる。
「いやー、オープニングもなかなかに面白かったねー」
「そうね。
でも、三番目のお笑いのときに、ステージに上がった瞬間、警備員に取り押さえられた人がいたでしょ? あれ、結局、何なの?」
「あはは、あの人、かっこよかったね~」
「・・・お前は、いつも見当違いなことを言うな」
苦い顔をしてお姉ちゃんが言った。活字だけだと、嫌な人に思われるかもしれないけど、決して、お姉ちゃんはそんな人ではない。
それもまた、会話を楽しむ為の潤滑油だったりする。
「あ、あはは・・・」
「まあまあ。それがつかさの長所でもあり短所でもあると思うわけですよ」
こなちゃんがすかさずフォローを入れてくれた。こなちゃんは、見た目によらず、観察眼がとても鋭い。だから、状況に応じて、すぐ言葉が出せる。
私も見習いたいね。私、口下手だし、人見知りするし。本当に、二人を見てると、凄いなあ、と尊敬する。
「まあ、そうね。つかさとはいつも一緒だから、良く分かってるし」
「と、ともかく。二人とも、は、早く行こうよ! ・・・ね?」
何となくばつが悪くなった私は、移動を促す。
「では、辺境の地へ参るぞ、皆の衆~」
「ごめん、だるいからつっこまなくていいか?」
口先では、そう言っているけど、お姉ちゃんの心は躍っているに違いない。
私は約束どおり、こなちゃんとお姉ちゃんと一緒に校内を回ることになる。
「いやー、オープニングもなかなかに面白かったねー」
「そうね。
でも、三番目のお笑いのときに、ステージに上がった瞬間、警備員に取り押さえられた人がいたでしょ? あれ、結局、何なの?」
「あはは、あの人、かっこよかったね~」
「・・・お前は、いつも見当違いなことを言うな」
苦い顔をしてお姉ちゃんが言った。活字だけだと、嫌な人に思われるかもしれないけど、決して、お姉ちゃんはそんな人ではない。
それもまた、会話を楽しむ為の潤滑油だったりする。
「あ、あはは・・・」
「まあまあ。それがつかさの長所でもあり短所でもあると思うわけですよ」
こなちゃんがすかさずフォローを入れてくれた。こなちゃんは、見た目によらず、観察眼がとても鋭い。だから、状況に応じて、すぐ言葉が出せる。
私も見習いたいね。私、口下手だし、人見知りするし。本当に、二人を見てると、凄いなあ、と尊敬する。
「まあ、そうね。つかさとはいつも一緒だから、良く分かってるし」
「と、ともかく。二人とも、は、早く行こうよ! ・・・ね?」
何となくばつが悪くなった私は、移動を促す。
「では、辺境の地へ参るぞ、皆の衆~」
「ごめん、だるいからつっこまなくていいか?」
口先では、そう言っているけど、お姉ちゃんの心は躍っているに違いない。
―――
それからいろいろなところを回って、いつの間にやら午後二時になった。
どこも楽しかった。焼きそば店だったり、お化け屋敷だったり、糟日部市の名産品である桐箪笥の考察だったり・・・。
お昼は、カレー屋さんでメンチカツカレーを食べた。それにしても、あのときの店員さんは、やたら張り切ってたなあ。
ともかく、言葉で言い表せないけど、本当に楽しい気分だった。
「だいぶ回ったわね~」
たこ焼きをほおばりながら、お姉ちゃんが言った。それはいいんだけど、ダイエットはいいのかな?
でも、言うと悪いので、
「そだねー」
と、返した。こなちゃんは、今川焼きをほおばっている。かくいう私も、たい焼きを食べている。
そういえば、高良君はどうしているのかな・・・。
『生徒の皆さんにお知らせします。まもなく、自由時間が終了します。
午後二時十五分までに、全校生徒は体育館に集合して下さい。繰り返します。・・・』
「おおっと、そろそろタイムアップときましたよ、皆さん」
放送に真っ先に反応したのは、こなちゃんだった。触角の髪の毛がしきりに揺れている。
いつの間にか、今川焼きも食べ終わっていたようだった。
「じゃあ、そろそろ戻りましょうか」
お姉ちゃんの一言で私たちは、体育館へ戻ることにする。今は二階にいるので、階段を経由して体育館へ向かう。
「ゲームだと、階段とかで転んで他の人とぶつかって、運命の出会い、なんてのがあるよね~」
階段を下りながら、こなちゃんがそんな事を言った。お姉ちゃんはすぐ苦い顔をして、
「あのなあ。そんなの、ゲームの世界だけだろ」
「いやいや、分かんないよ? この前、何かの本に「世界のほとんどは偶然によって成り立っている」って書いてあったんだよ?
なら、偶然が起こってもおかしくないよね?」
「はいはい、わかったわかった」
そのときだった。後ろから叫び声がしたのは。
「危なーーーーいっ!!!」
その声が聞こえたときはもう遅かった。
突然のことに振り返った私の目の前に襲い掛かってきたのは、上から落ちてきた一般生徒だった。
どこも楽しかった。焼きそば店だったり、お化け屋敷だったり、糟日部市の名産品である桐箪笥の考察だったり・・・。
お昼は、カレー屋さんでメンチカツカレーを食べた。それにしても、あのときの店員さんは、やたら張り切ってたなあ。
ともかく、言葉で言い表せないけど、本当に楽しい気分だった。
「だいぶ回ったわね~」
たこ焼きをほおばりながら、お姉ちゃんが言った。それはいいんだけど、ダイエットはいいのかな?
でも、言うと悪いので、
「そだねー」
と、返した。こなちゃんは、今川焼きをほおばっている。かくいう私も、たい焼きを食べている。
そういえば、高良君はどうしているのかな・・・。
『生徒の皆さんにお知らせします。まもなく、自由時間が終了します。
午後二時十五分までに、全校生徒は体育館に集合して下さい。繰り返します。・・・』
「おおっと、そろそろタイムアップときましたよ、皆さん」
放送に真っ先に反応したのは、こなちゃんだった。触角の髪の毛がしきりに揺れている。
いつの間にか、今川焼きも食べ終わっていたようだった。
「じゃあ、そろそろ戻りましょうか」
お姉ちゃんの一言で私たちは、体育館へ戻ることにする。今は二階にいるので、階段を経由して体育館へ向かう。
「ゲームだと、階段とかで転んで他の人とぶつかって、運命の出会い、なんてのがあるよね~」
階段を下りながら、こなちゃんがそんな事を言った。お姉ちゃんはすぐ苦い顔をして、
「あのなあ。そんなの、ゲームの世界だけだろ」
「いやいや、分かんないよ? この前、何かの本に「世界のほとんどは偶然によって成り立っている」って書いてあったんだよ?
なら、偶然が起こってもおかしくないよね?」
「はいはい、わかったわかった」
そのときだった。後ろから叫び声がしたのは。
「危なーーーーいっ!!!」
その声が聞こえたときはもう遅かった。
突然のことに振り返った私の目の前に襲い掛かってきたのは、上から落ちてきた一般生徒だった。
―――
目を開ける。するとそこには、白い天井があった。
私、どうしたんだろう・・・? ここはどこだろう・・・?
事情がつかめないまま、まずは頭の中を整理する。
・・・そうだ。確か、階段から落っこちてきた人にぶつかっちゃって、気絶しちゃったんだっけ。
そうなると、ここは保健室のベッド、かな? でも、保健室にいるってことは、さほどひどい怪我でもなかったみたい。
ゆっくりと半身だけ起き上がり、腕や首を動かす。・・・うん、なんともない。普通に動く。
とりあえず、先生を呼ぼう。そう思った私は、ベッドから起き上がって、ベッドを囲っていたカーテンを開ける。
「・・・あら? 起きたのですか?」
机で何かを書いていた、保健の天原先生が振り返る。
「は、はい。あ、あの・・・私、な、何だか、事情がつかめなくて・・・」
「ああ、そうですねえ。あの後、すぐ気絶したと聞きましたから・・・。
でも、安心してください。奇跡的に軽度の脳震盪だけで済んでいますから、もう、何の心配も要りませんよ。
ああ、そうそう。あなたは、階段を踏み外した一年生とぶつかって、気絶してしまったそうですよ。でも、先ほど言いましたように、軽い脳震盪だけですから。かがみさんとこなたさんとみゆきさんが、すぐに運んでくれましたしね。
それに、相手の生徒も奇跡的に軽傷で済みました。本当に、奇跡としか言いようがありませんが、まあ、不幸中の幸いといったところですかね」
そう言って、天原先生は口に手を当て、ふふふと笑った。
「え、た、高良君も来たんですか?」
それを聞くと、天原先生はキョトンとした顔になって、
「え? ええ。何でも、悲鳴が聞こえてすぐ駆けつけてきてくれたみたいですよ。
事故の発生当時は、みんな、浮き足立っていたようですから、高良君がその場を収拾して、冷静に判断して、指示を出してくれたようです」
「あ、そ、そうだったんですか」
何だか悪いことしちゃったなあ。本当に、高良君には借りをつくってばかり。いつか返せるかな・・・。
「あ、そういえば、今は何時ですか?」
「今ですか? えーと、午後三時十八分ですね。丁度、さっき、一日目の終了式が終了したところです。
そろそろ、皆さんがお見舞いに来てくださると思いますよ。あなたを運んできたとき、そう言ってましたから」
「あ、そ、そうですか。ありがとうございます」
私はそう言って、頭を下げる。
「ふふ、私に感謝の念を示す必要はありませんよ。
さて、それまで残っていますか? それとも、もう帰りますか?
帰るなら、私の方から、皆さんに説明しますけど」
「あ、だ、大丈夫です。
そんなに気を遣わせちゃ悪いし、みんなにも悪いと思います」
だって、これだけ心配させておいて、勝手に帰っちゃ、何だか悪い。
それに、ちゃんとみんなに「ありがとう」と言っておきたかった。
「あら、そうね。ふふふ」
二度目の微笑を天原先生が浮かべていると、保健室のドアがガラッと開き、
「つかさ(さん)!」
お姉ちゃん、こなちゃん、高良君の三人が一斉に声をあげて、入ってきた。
「あらあら、おそろいね」
天原先生がそう言って、また笑う。そして、自分はお邪魔虫と言わんばかりに、私のそばから離れた。
「つかさ、大丈夫なの?」
真っ先に声をかけてくれたのは、お姉ちゃんだった。大分、顔が青ざめている。
「あ、うん。もう大丈夫だよー。
それより、相手の人の方は大丈夫なの?」
「あの、そのことなのですが」
高良君が切り出す。
「相手は、越谷さんというお方なのですが、どうも前方不注意で転落されたようでして。
ですが、幸いにも、軽傷で済んでおられます。今は、ショックで自宅にお帰りになられましたが、明日にでもお詫びしたいと申しております」
「あ、そうなの? でも、相手の人も無事でよかった」
本当に、心の底から思ったことだった。だって、私だけ助かってもうれしくないもの。
「いやー、でも、本当につかさも無事でよかったよ。
さすがに私も気が動転しちゃってさ・・・。どうしていいか分からなかったよ。それに、かがみんの慌てようもまた凄くてさー」
「こ、こら、こなた! 余計なこと言わないの!
・・・まあ、私もあんなこと初めてだからさ。本当に、みゆきが来なかったらどうなることかと思ったわよ」
「そうそう。委員長が来てくれなかったら、どうなっていたことか!」
お姉ちゃんの発言に、こなちゃんも頷きながら賛同した。
すると、高良君は照れそうに後頭部に手をやり、
「い、いえ。僕は、ただ、委員長としての責務を果たしただけですから。いえ、委員長である前に人として当然のことですよ」
「そ、そんなことないよ? 何も、そんなに謙遜しなくてもいいんだよ?」
あまりの卑下っぷりに、私は驚いたけど、
「どうもすみません」
高良君は笑ってそう言っただけだった。
そして、
「では、僕は実行委員の仕事があるので、先に失礼します。
つかささんが無事で何よりでした」
「あ、じゃ、委員長、バイバーイ」
「じゃあ、またね、みゆき」
「あ、ま、また明日ね、高良君・・・」
三者三様に別れの挨拶を送った。高良君は笑顔で返しながら、保健室を出て行く。
「それじゃあ、私たちも帰ろっか」
「そうだね。何だか、疲れたよ・・・」
「あ、私もー。何だか、色々あって疲れちゃった・・・」
本当に疲れた。でも、学園祭は楽しかった。これで、プラマイゼロだね。
私たちは、天原先生に礼を言うと、保健室を出た。
私、どうしたんだろう・・・? ここはどこだろう・・・?
事情がつかめないまま、まずは頭の中を整理する。
・・・そうだ。確か、階段から落っこちてきた人にぶつかっちゃって、気絶しちゃったんだっけ。
そうなると、ここは保健室のベッド、かな? でも、保健室にいるってことは、さほどひどい怪我でもなかったみたい。
ゆっくりと半身だけ起き上がり、腕や首を動かす。・・・うん、なんともない。普通に動く。
とりあえず、先生を呼ぼう。そう思った私は、ベッドから起き上がって、ベッドを囲っていたカーテンを開ける。
「・・・あら? 起きたのですか?」
机で何かを書いていた、保健の天原先生が振り返る。
「は、はい。あ、あの・・・私、な、何だか、事情がつかめなくて・・・」
「ああ、そうですねえ。あの後、すぐ気絶したと聞きましたから・・・。
でも、安心してください。奇跡的に軽度の脳震盪だけで済んでいますから、もう、何の心配も要りませんよ。
ああ、そうそう。あなたは、階段を踏み外した一年生とぶつかって、気絶してしまったそうですよ。でも、先ほど言いましたように、軽い脳震盪だけですから。かがみさんとこなたさんとみゆきさんが、すぐに運んでくれましたしね。
それに、相手の生徒も奇跡的に軽傷で済みました。本当に、奇跡としか言いようがありませんが、まあ、不幸中の幸いといったところですかね」
そう言って、天原先生は口に手を当て、ふふふと笑った。
「え、た、高良君も来たんですか?」
それを聞くと、天原先生はキョトンとした顔になって、
「え? ええ。何でも、悲鳴が聞こえてすぐ駆けつけてきてくれたみたいですよ。
事故の発生当時は、みんな、浮き足立っていたようですから、高良君がその場を収拾して、冷静に判断して、指示を出してくれたようです」
「あ、そ、そうだったんですか」
何だか悪いことしちゃったなあ。本当に、高良君には借りをつくってばかり。いつか返せるかな・・・。
「あ、そういえば、今は何時ですか?」
「今ですか? えーと、午後三時十八分ですね。丁度、さっき、一日目の終了式が終了したところです。
そろそろ、皆さんがお見舞いに来てくださると思いますよ。あなたを運んできたとき、そう言ってましたから」
「あ、そ、そうですか。ありがとうございます」
私はそう言って、頭を下げる。
「ふふ、私に感謝の念を示す必要はありませんよ。
さて、それまで残っていますか? それとも、もう帰りますか?
帰るなら、私の方から、皆さんに説明しますけど」
「あ、だ、大丈夫です。
そんなに気を遣わせちゃ悪いし、みんなにも悪いと思います」
だって、これだけ心配させておいて、勝手に帰っちゃ、何だか悪い。
それに、ちゃんとみんなに「ありがとう」と言っておきたかった。
「あら、そうね。ふふふ」
二度目の微笑を天原先生が浮かべていると、保健室のドアがガラッと開き、
「つかさ(さん)!」
お姉ちゃん、こなちゃん、高良君の三人が一斉に声をあげて、入ってきた。
「あらあら、おそろいね」
天原先生がそう言って、また笑う。そして、自分はお邪魔虫と言わんばかりに、私のそばから離れた。
「つかさ、大丈夫なの?」
真っ先に声をかけてくれたのは、お姉ちゃんだった。大分、顔が青ざめている。
「あ、うん。もう大丈夫だよー。
それより、相手の人の方は大丈夫なの?」
「あの、そのことなのですが」
高良君が切り出す。
「相手は、越谷さんというお方なのですが、どうも前方不注意で転落されたようでして。
ですが、幸いにも、軽傷で済んでおられます。今は、ショックで自宅にお帰りになられましたが、明日にでもお詫びしたいと申しております」
「あ、そうなの? でも、相手の人も無事でよかった」
本当に、心の底から思ったことだった。だって、私だけ助かってもうれしくないもの。
「いやー、でも、本当につかさも無事でよかったよ。
さすがに私も気が動転しちゃってさ・・・。どうしていいか分からなかったよ。それに、かがみんの慌てようもまた凄くてさー」
「こ、こら、こなた! 余計なこと言わないの!
・・・まあ、私もあんなこと初めてだからさ。本当に、みゆきが来なかったらどうなることかと思ったわよ」
「そうそう。委員長が来てくれなかったら、どうなっていたことか!」
お姉ちゃんの発言に、こなちゃんも頷きながら賛同した。
すると、高良君は照れそうに後頭部に手をやり、
「い、いえ。僕は、ただ、委員長としての責務を果たしただけですから。いえ、委員長である前に人として当然のことですよ」
「そ、そんなことないよ? 何も、そんなに謙遜しなくてもいいんだよ?」
あまりの卑下っぷりに、私は驚いたけど、
「どうもすみません」
高良君は笑ってそう言っただけだった。
そして、
「では、僕は実行委員の仕事があるので、先に失礼します。
つかささんが無事で何よりでした」
「あ、じゃ、委員長、バイバーイ」
「じゃあ、またね、みゆき」
「あ、ま、また明日ね、高良君・・・」
三者三様に別れの挨拶を送った。高良君は笑顔で返しながら、保健室を出て行く。
「それじゃあ、私たちも帰ろっか」
「そうだね。何だか、疲れたよ・・・」
「あ、私もー。何だか、色々あって疲れちゃった・・・」
本当に疲れた。でも、学園祭は楽しかった。これで、プラマイゼロだね。
私たちは、天原先生に礼を言うと、保健室を出た。
―――
それから、二日目の桜藤祭を経て、事故から三日経った火曜日のこと。ちなみに、月曜日は振り替え休日で休みだった。
登校した私に、越谷さんが真っ先に謝ってくれた。まあ、私自身、あまり気にしてなかったし、相手があまりにも真剣に謝ってくれたから、すぐに許した。
その後は、何事もない生活が始まり、また、終わろうとしていた。
「でも、本当にあの時はどうなることかと思ったよ」
放課後、帰る用意をしながら、こなちゃんがそんな事を言った。
「そうなの?」
「そうそう。つかさも、相手の・・・越谷さんだっけ? まあ、その越谷さんも気絶しちゃってさあ。
一瞬、死んだかと思ったよ」
「そんな・・・大げさだよ~」
「いや、本当だよ? かがみんも、もんのすごくうろたえちゃってさ。
本当に、血の気が引いたね。まあ、無事で何よりだけどさ。・・・本当に大丈夫?」
こなちゃんは、本当に心配そうな顔だった。少なくとも、今まで見たことがない。
「うん、大丈夫だよ。別に、何もないし・・・」
私は、破顔一笑の顔で言った。
すると、こなちゃんは顔を緩め、
「そっかそっか。まあ、でも、少しけちがついたけど、桜藤祭は楽しかったね~」
「そだね~。本当に色々と。こうしてみんなと過ごせる何でもない日々が、幸せなのかなあって思うよ~」
「つかさはロマンチストだね・・・。まあ、そこが長所なんだけれども」
「あはは。
そういえば、お姉ちゃん、遅いね?」
もう、放課後になってから、十分くらい経っている。今までなら、いつもはすぐ、お姉ちゃんが来ていたはずなんだけど・・・。
「そういえば、そうだね。何かあったかな? 私は何も聞いていないんだけどね」
「あ、じゃあ、捜してくるね」
「うん、行ってら~」
こなちゃんの声を背中に受けながら、私は教室を出て、お姉ちゃんを捜す。
「どこかな、どこかな・・・」
まずは、隣のクラス、つまりはお姉ちゃんの所属クラスを捜してみる。でも、ほとんど人がいなかった。
残っていた人に聞いても、「どこかへ出かけていった」という答えしか返ってこない。一体、どうしたんだろう?
それから、くまなく校内を捜すけど、なかなか見つからない。だんだん、不安も高まってくる。
捜し始めて十五分。私は、やっとお姉ちゃんを見つけることに成功した。
でも、後々、この出来事は一生後悔することになった。思えば、私が捜すなんて言ったから、こんなことになったのかもしれない。
これが、人生の分岐点ってことなのかな・・・。
登校した私に、越谷さんが真っ先に謝ってくれた。まあ、私自身、あまり気にしてなかったし、相手があまりにも真剣に謝ってくれたから、すぐに許した。
その後は、何事もない生活が始まり、また、終わろうとしていた。
「でも、本当にあの時はどうなることかと思ったよ」
放課後、帰る用意をしながら、こなちゃんがそんな事を言った。
「そうなの?」
「そうそう。つかさも、相手の・・・越谷さんだっけ? まあ、その越谷さんも気絶しちゃってさあ。
一瞬、死んだかと思ったよ」
「そんな・・・大げさだよ~」
「いや、本当だよ? かがみんも、もんのすごくうろたえちゃってさ。
本当に、血の気が引いたね。まあ、無事で何よりだけどさ。・・・本当に大丈夫?」
こなちゃんは、本当に心配そうな顔だった。少なくとも、今まで見たことがない。
「うん、大丈夫だよ。別に、何もないし・・・」
私は、破顔一笑の顔で言った。
すると、こなちゃんは顔を緩め、
「そっかそっか。まあ、でも、少しけちがついたけど、桜藤祭は楽しかったね~」
「そだね~。本当に色々と。こうしてみんなと過ごせる何でもない日々が、幸せなのかなあって思うよ~」
「つかさはロマンチストだね・・・。まあ、そこが長所なんだけれども」
「あはは。
そういえば、お姉ちゃん、遅いね?」
もう、放課後になってから、十分くらい経っている。今までなら、いつもはすぐ、お姉ちゃんが来ていたはずなんだけど・・・。
「そういえば、そうだね。何かあったかな? 私は何も聞いていないんだけどね」
「あ、じゃあ、捜してくるね」
「うん、行ってら~」
こなちゃんの声を背中に受けながら、私は教室を出て、お姉ちゃんを捜す。
「どこかな、どこかな・・・」
まずは、隣のクラス、つまりはお姉ちゃんの所属クラスを捜してみる。でも、ほとんど人がいなかった。
残っていた人に聞いても、「どこかへ出かけていった」という答えしか返ってこない。一体、どうしたんだろう?
それから、くまなく校内を捜すけど、なかなか見つからない。だんだん、不安も高まってくる。
捜し始めて十五分。私は、やっとお姉ちゃんを見つけることに成功した。
でも、後々、この出来事は一生後悔することになった。思えば、私が捜すなんて言ったから、こんなことになったのかもしれない。
これが、人生の分岐点ってことなのかな・・・。
―――
三階廊下。傾きかけた太陽の光が、窓から差し込み、反射している。
そして、その光の中に、やっとお姉ちゃんを見つけた。でも、誰かがそばにいる。誰だろう?
その誰かを見て、私はびっくりした。いや、びっくりしたなんて言葉で片付けることが出来ないような気持ちになった。
何故なら、それは他ならぬ高良君だったからだった。
「いやー、それにしても参るわ。急に、明日の集会の資料を頼む、なんて言われてもねえ」
「仕方ありませんよ。羽生先生も、お忙しそうでしたし」
「まあ、でも、みゆきが手伝ってくれて助かったわ。私一人では、どうにもできそうになかったから」
「いえいえ。人として当然のことですよ」
「そんなことないわよ。ああ、本当に、みゆきみたいな人たちばっかりだったら、助かるのにね」
「ふふ、そうかもしれませんね。でも、僕だって万能なわけではありませんよ」
「そりゃあね。人間、弱点の一つくらいもってなきゃ、おかしいわよ」
「他人の弱点をその人自身の口から知ることが出来たら、それはその人と立派な信頼関係が築けた証拠になるでしょうね」
「あー、なるほどね。何をもって親友と定義すべきか、って時々思うけど、そういうのもありか」
「人の心は覗けませんからね。そこが、人間関係の難しさ、といったところでしょうか」
集会の資料を持ちながら、二人は楽しく喋っていた。ずっと会話が途切れることがない。笑いも絶えない。
傍目から見ると、まるで恋人のように見えた。
そうだよね。二人とも、頭がいいし、学級委員長だし、きっと話も合うんだよね。うん、お似合いだよ。
ああ、何だか全てが馬鹿らしい。様々な考えが頭の中をぐるぐると回った後、私は静かに、気付かれないように、三階の廊下から逃げた。
何だか、無我夢中だった。追いかけられるわけでもないのに、走った。自分が涙ぐんでいるのもはっきりと分かった。あれ、私、何で泣いているんだろう? 私は一体、何を期待していたんだろう?
ああ・・・私の馬鹿、馬鹿!
そして、その光の中に、やっとお姉ちゃんを見つけた。でも、誰かがそばにいる。誰だろう?
その誰かを見て、私はびっくりした。いや、びっくりしたなんて言葉で片付けることが出来ないような気持ちになった。
何故なら、それは他ならぬ高良君だったからだった。
「いやー、それにしても参るわ。急に、明日の集会の資料を頼む、なんて言われてもねえ」
「仕方ありませんよ。羽生先生も、お忙しそうでしたし」
「まあ、でも、みゆきが手伝ってくれて助かったわ。私一人では、どうにもできそうになかったから」
「いえいえ。人として当然のことですよ」
「そんなことないわよ。ああ、本当に、みゆきみたいな人たちばっかりだったら、助かるのにね」
「ふふ、そうかもしれませんね。でも、僕だって万能なわけではありませんよ」
「そりゃあね。人間、弱点の一つくらいもってなきゃ、おかしいわよ」
「他人の弱点をその人自身の口から知ることが出来たら、それはその人と立派な信頼関係が築けた証拠になるでしょうね」
「あー、なるほどね。何をもって親友と定義すべきか、って時々思うけど、そういうのもありか」
「人の心は覗けませんからね。そこが、人間関係の難しさ、といったところでしょうか」
集会の資料を持ちながら、二人は楽しく喋っていた。ずっと会話が途切れることがない。笑いも絶えない。
傍目から見ると、まるで恋人のように見えた。
そうだよね。二人とも、頭がいいし、学級委員長だし、きっと話も合うんだよね。うん、お似合いだよ。
ああ、何だか全てが馬鹿らしい。様々な考えが頭の中をぐるぐると回った後、私は静かに、気付かれないように、三階の廊下から逃げた。
何だか、無我夢中だった。追いかけられるわけでもないのに、走った。自分が涙ぐんでいるのもはっきりと分かった。あれ、私、何で泣いているんだろう? 私は一体、何を期待していたんだろう?
ああ・・・私の馬鹿、馬鹿!
―――
気がつけば、私は家に帰って、机に突っ伏していた。こなちゃんにもお姉ちゃんにも何も告げずに。
ああ・・・一体、どうすればいいんだろう。
『他人の弱点をその人自身の口から知ることが出来たら、それはその人と立派な信頼関係が築けた証拠になるでしょうね』
『あー、なるほどね。何をもって親友と定義すべきか、って時々思うけど、そういうのもありか』
目をつぶると、嫌でも、あの二人の仲のよさそうな情景が浮かぶ。
そして、
『僕は、ただ、委員長としての責務を果たしただけですから。いえ、委員長である前に人として当然のことですよ』
保健室で言われた、その一言も思い出した。
ああ、そうか。高良君は、自分の使命だとそう信じてやまなかっただけだったんだ。私が変なことを期待したばかりに・・・。ごめんね、ごめんね・・・。
その瞬間、いつか読んだ本の一文を思い出す。
「ああ・・・。これが失恋ってものなんだあ・・・」
私は独り言ちると、毛布もかけずに、そのまま眠りこけた。
ああ・・・一体、どうすればいいんだろう。
『他人の弱点をその人自身の口から知ることが出来たら、それはその人と立派な信頼関係が築けた証拠になるでしょうね』
『あー、なるほどね。何をもって親友と定義すべきか、って時々思うけど、そういうのもありか』
目をつぶると、嫌でも、あの二人の仲のよさそうな情景が浮かぶ。
そして、
『僕は、ただ、委員長としての責務を果たしただけですから。いえ、委員長である前に人として当然のことですよ』
保健室で言われた、その一言も思い出した。
ああ、そうか。高良君は、自分の使命だとそう信じてやまなかっただけだったんだ。私が変なことを期待したばかりに・・・。ごめんね、ごめんね・・・。
その瞬間、いつか読んだ本の一文を思い出す。
「ああ・・・。これが失恋ってものなんだあ・・・」
私は独り言ちると、毛布もかけずに、そのまま眠りこけた。
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- 引き込まれますね〜 面白いです。 -- チャムチロ (2012-09-24 20:42:02)
- つかさが可愛過ぎですGJ!!続き楽しみに待ってます。 -- 名無しさん (2008-03-17 12:41:14)