土曜日の夜。と言っても、時間は既に日曜日へと突入している。
呼び鈴が鳴らされ、誰かが訪ねてきた。
「お父さーん、ちょっと手が離せないから出てー」
私は、現在エロゲ中。それも、最後に取っておいたツンデレヒロインの攻略が佳境に入ったところ。
こういう大事なところは、途中で中断すると気分が盛り下がっちゃうんだよね。
それに、こんな時間に訪ねてくるのは、ゆい姉さんくらいしかいないし。
「こんばんわー。こなたいるー?」
予想通りの声が廊下から聞こえてきた。
どうせまた、きよたかさんと会えない憂さ晴らしをしてきたんだろう。
そして、うちで愚痴をこぼしてる間に寝ちゃうんだよね。
「はいはい、ゆい姉さん、いるよー。ゆーちゃん寝てるから静かにねー」
私はパソコンの前から動かずに返事をする。
もう十八歳になってるから、隠す必要も無いしね。
それに、以前からゆい姉さんが来たときに、目の前でエロゲしてたことは何度もあるんだ。
でも、気付かなかったのか素でスルーされたのか、注意されたことは無いんだよね。
「おーす、こなたー。遊びに来たよー」
部屋の扉が開けられ、姿を見せたのはゆい姉さん…… だけじゃなかった。
「ちょ、待って」
その姿を見て、私は慌ててゲームを終了させる。
あちゃー、セーブして無いよ。私の三時間を返せーっ。
モニターに向けた顔を、再び部屋の入口へ戻す。
目の錯覚だったんじゃないかと、淡い希望を持って。
しかし、そんな私の気持ちは裏切られた。
呼び鈴が鳴らされ、誰かが訪ねてきた。
「お父さーん、ちょっと手が離せないから出てー」
私は、現在エロゲ中。それも、最後に取っておいたツンデレヒロインの攻略が佳境に入ったところ。
こういう大事なところは、途中で中断すると気分が盛り下がっちゃうんだよね。
それに、こんな時間に訪ねてくるのは、ゆい姉さんくらいしかいないし。
「こんばんわー。こなたいるー?」
予想通りの声が廊下から聞こえてきた。
どうせまた、きよたかさんと会えない憂さ晴らしをしてきたんだろう。
そして、うちで愚痴をこぼしてる間に寝ちゃうんだよね。
「はいはい、ゆい姉さん、いるよー。ゆーちゃん寝てるから静かにねー」
私はパソコンの前から動かずに返事をする。
もう十八歳になってるから、隠す必要も無いしね。
それに、以前からゆい姉さんが来たときに、目の前でエロゲしてたことは何度もあるんだ。
でも、気付かなかったのか素でスルーされたのか、注意されたことは無いんだよね。
「おーす、こなたー。遊びに来たよー」
部屋の扉が開けられ、姿を見せたのはゆい姉さん…… だけじゃなかった。
「ちょ、待って」
その姿を見て、私は慌ててゲームを終了させる。
あちゃー、セーブして無いよ。私の三時間を返せーっ。
モニターに向けた顔を、再び部屋の入口へ戻す。
目の錯覚だったんじゃないかと、淡い希望を持って。
しかし、そんな私の気持ちは裏切られた。
「おーっす、泉ー。エロゲやっとったんかー」
赤ら顔のゆい姉さんと一緒に現れたのは、やはり赤ら顔の黒井先生。
「なんで黒井先生がいるんですかっ」
私のツッコミに答えてくれたのはゆい姉さんだった。
「それはねー、私と黒井先生が一緒に飲んでたからだよーん」
あー、そういえば学園祭のとき、一緒に飲みに行ってらっしゃいましたね。
その後、飲み仲間になってたんですね。
そういうことですね。
でもそれは、私が聞いたことの答えになってないですよ。
ツッコミにボケで返すのはどうかと思うんですよ。はい。
「ゆい姉さん。私が聞きたいのは、なんで先生と一緒にうちに来――」
「あ、おじさん。黒井先生を御手洗いに案内してもらえますか」
ありゃ、先生がやけに静かだと思ったら、我慢してたんですか。
それよりも、お父さんはずっと廊下で待機してたんですか。ご苦労様ですねぇ。
「でね、こなた」
突然、ゆい姉さんが普通の声で話しかけてきた。
いや、普通と言うか普段聞かないと言うか……
うん、真面目な感じの声で、だ。
「黒井先生はこの時期になると、いっつも不安になるんだってさ」
「不安に?」
「そ。一年間担任として、ちゃんと先生でいられたのか不安になるんだって」
ゆい姉さんは廊下の方に目をやり、先生が戻ってこないことを確認すると、話を続けた。
「で、飲んでる間に、『泉はどう思っとるんやろ』って言ってたから連れて来たんだよ」
いつもの元気いっぱいの笑顔ではなく、優しく微笑むと「後はよろしくー」と言って部屋から出て行った。
あれ? ゆい姉さん、今日はお酒の臭いがほとんどしなかった。
先生の愚痴に付き合って、聞き手に回ってたのかな。
それよりも、先生にも先生としての悩みが有った方が驚きだよ。
赤ら顔のゆい姉さんと一緒に現れたのは、やはり赤ら顔の黒井先生。
「なんで黒井先生がいるんですかっ」
私のツッコミに答えてくれたのはゆい姉さんだった。
「それはねー、私と黒井先生が一緒に飲んでたからだよーん」
あー、そういえば学園祭のとき、一緒に飲みに行ってらっしゃいましたね。
その後、飲み仲間になってたんですね。
そういうことですね。
でもそれは、私が聞いたことの答えになってないですよ。
ツッコミにボケで返すのはどうかと思うんですよ。はい。
「ゆい姉さん。私が聞きたいのは、なんで先生と一緒にうちに来――」
「あ、おじさん。黒井先生を御手洗いに案内してもらえますか」
ありゃ、先生がやけに静かだと思ったら、我慢してたんですか。
それよりも、お父さんはずっと廊下で待機してたんですか。ご苦労様ですねぇ。
「でね、こなた」
突然、ゆい姉さんが普通の声で話しかけてきた。
いや、普通と言うか普段聞かないと言うか……
うん、真面目な感じの声で、だ。
「黒井先生はこの時期になると、いっつも不安になるんだってさ」
「不安に?」
「そ。一年間担任として、ちゃんと先生でいられたのか不安になるんだって」
ゆい姉さんは廊下の方に目をやり、先生が戻ってこないことを確認すると、話を続けた。
「で、飲んでる間に、『泉はどう思っとるんやろ』って言ってたから連れて来たんだよ」
いつもの元気いっぱいの笑顔ではなく、優しく微笑むと「後はよろしくー」と言って部屋から出て行った。
あれ? ゆい姉さん、今日はお酒の臭いがほとんどしなかった。
先生の愚痴に付き合って、聞き手に回ってたのかな。
それよりも、先生にも先生としての悩みが有った方が驚きだよ。
程なくして、先生が私の部屋に戻ってきた。
先生は結構な量飲んでいるようで、かなり酒臭い。
そして、私の部屋に入ってテーブルの前に座ると一言。
「泉、酒くれー」
これにはさすがの私も呆れたよ。
でも、先生の表情に覇気が無いように感じた。
それに、ゆい姉さんから聞いた話も気になったんで、おとなしく従うことにしよう。
「ちょっと待っててくださいね」
私は先生を残して、台所へ向かう。
台所では、ゆい姉さんがお父さんと日本酒を酌み交わしながら、愚痴をこぼしていた。
やっぱり今日は、自分の愚痴言ってなかったのかな?
「ね、ゆい姉さん。わざわざ黒井先生を連れてきて、私に何を話させたいのかな?」
ゆい姉さんは、顔を背けると「な、なんのことかなー」と言って笑っている。
ま、その反応だけで十分だよ。
わざわざ連れてきた、ってことが分かったから。
何を期待しているのか知らないけど、なんにもできないと思うけどねー。
私は冷蔵庫を開けると数本の缶ビールを取り出す。
「お父さん、ビール何本か貰ってくね」
お父さんは、ちらりとこちらを見るとウィンクしてきた。
えーと、それは私も飲んでいいってことかな。
でも、教師の前で生徒が飲酒はさすがにまずい気が……
先生は結構な量飲んでいるようで、かなり酒臭い。
そして、私の部屋に入ってテーブルの前に座ると一言。
「泉、酒くれー」
これにはさすがの私も呆れたよ。
でも、先生の表情に覇気が無いように感じた。
それに、ゆい姉さんから聞いた話も気になったんで、おとなしく従うことにしよう。
「ちょっと待っててくださいね」
私は先生を残して、台所へ向かう。
台所では、ゆい姉さんがお父さんと日本酒を酌み交わしながら、愚痴をこぼしていた。
やっぱり今日は、自分の愚痴言ってなかったのかな?
「ね、ゆい姉さん。わざわざ黒井先生を連れてきて、私に何を話させたいのかな?」
ゆい姉さんは、顔を背けると「な、なんのことかなー」と言って笑っている。
ま、その反応だけで十分だよ。
わざわざ連れてきた、ってことが分かったから。
何を期待しているのか知らないけど、なんにもできないと思うけどねー。
私は冷蔵庫を開けると数本の缶ビールを取り出す。
「お父さん、ビール何本か貰ってくね」
お父さんは、ちらりとこちらを見るとウィンクしてきた。
えーと、それは私も飲んでいいってことかな。
でも、教師の前で生徒が飲酒はさすがにまずい気が……
部屋に戻ると、先生は座ったまま私の部屋を見回していた。
「はい、先生。ビールしかないですよ」
「おおきに……」
持ってきたビールをテーブルに置くと、すぐに先生は手に取り飲みだした。
私は呆れてその様子を見ている。
その視線に気付いたのか、先生がようやく声を掛けてきた。
「なんや泉。呆れた顔で見よってから」
目がすわり気味の先生を見ながら、私はわざとらしく大きくため息をつく。
「そりゃ呆れますよ。酔っ払って生徒の家に押しかけて、お酒を催促する教師を見れば」
わざと「教師」の部分を強調した私の言葉に、先生の体がびくっと反応した。
ゆい姉さんの言葉が本当なら、これで先生は話してくれると思うんだけど。
いや、別にゆい姉さんを疑ってるわけじゃないですよ。
「はい、先生。ビールしかないですよ」
「おおきに……」
持ってきたビールをテーブルに置くと、すぐに先生は手に取り飲みだした。
私は呆れてその様子を見ている。
その視線に気付いたのか、先生がようやく声を掛けてきた。
「なんや泉。呆れた顔で見よってから」
目がすわり気味の先生を見ながら、私はわざとらしく大きくため息をつく。
「そりゃ呆れますよ。酔っ払って生徒の家に押しかけて、お酒を催促する教師を見れば」
わざと「教師」の部分を強調した私の言葉に、先生の体がびくっと反応した。
ゆい姉さんの言葉が本当なら、これで先生は話してくれると思うんだけど。
いや、別にゆい姉さんを疑ってるわけじゃないですよ。
先生は、手に持っていたビールを一気にあおってから、私を真っ直ぐ見つめてきた。
「なあ、泉。ウチは先生やれとるんやろか」
ゆい姉さんの話を聞いてから色々と考えてみたけど、私にはどういう人が「先生」なのか分からなかった。
だから、私が先生をどう思っているかを伝えればいいのかな。
「先生は体罰が問題になるご時世に、平気で殴るし」
先生は「うっ」と唸って、すこし俯く。
「連休明けなんかに、遅刻ぎりぎりで教室に飛び込んでくるし」
今度は「ぐぅ」と言って更に俯いちゃったよ。
「学園祭でお酒を注文したりするし」
ごんっ、と音がしたと思ったら、先生、テーブルに頭ぶつけてるじゃん……
ちょっと虐めすぎたかな。
「それに、今日みたいな事は普通の教師じゃ有り得ないと思いますよ」
先生はその姿勢のまま「ウチ教師に向いてないんかなぁ」とか呟いている。
そして二本目を開けると、今度はちびちびと飲みだした。
ふぅ、と一息ついて、私はビールを手に取る。
「先生、私も飲んでいいですか」
そう言って、先生の返事を待たずに一口飲む。
うーん、やっぱり美味しいもんじゃないよね。
今度は先生が呆れた顔をして、私を見ている。
「先生、私はどんな生徒ですか?」
先生は、人差し指をあごに当て、すこし上を向いて考えている。
「ん、そやな。遅刻する、五月病で休もうとする、居眠りするはでろくでもないやっちゃな」
反論の余地無しです。仰るとおりです。
今度は私がテーブルに頭をぶつける番だったようだ。
でも、先生は学校の中のことだけを指摘する。
エロゲのことや、コスプレ喫茶でのバイトのことには一切触れない。
「しかも、教師の前で飲酒するしな。停学もんやな」
「いや、それは、その……」
さすがに私も、このことには慌てて言い訳をしようと顔を上げると、先生は笑っていた。
先生は、つん、と私のおでこを指で押すと、真顔になる。
「でもな、ウチの生徒に悪い奴は一人もおらん。もし何か悪いことしたら、それはウチの責任や」
真面目で、真剣な表情の黒井先生。
やっぱり、先生は優しくて、強くて、私にとって最高の先生だよね。
でも、そんなこと恥ずかしすぎて言えないですよ。
「先生。私は他の先生じゃなくて、黒井先生が担任で良かったと思ってますよ」
これが限界。おまけに、恥ずかしさを誤魔化すために猫口作ってニヨニヨしてますよ。
すっと手が伸びてきて、私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
先生は再び笑顔になっていたけど、目じりに光るものが見えた。
「ありがとな、泉」
へ? 私、なにもしてないよね。
なぜそう言われたか分からずに、私が腕を組み首を傾げると先生が突如笑い出した。
「やっぱり、泉は泉やな」
ますます訳が分からなくなったから、私は考えることを放棄した。
ま、先生が元気になったからそれで良いよね――
「なあ、泉。ウチは先生やれとるんやろか」
ゆい姉さんの話を聞いてから色々と考えてみたけど、私にはどういう人が「先生」なのか分からなかった。
だから、私が先生をどう思っているかを伝えればいいのかな。
「先生は体罰が問題になるご時世に、平気で殴るし」
先生は「うっ」と唸って、すこし俯く。
「連休明けなんかに、遅刻ぎりぎりで教室に飛び込んでくるし」
今度は「ぐぅ」と言って更に俯いちゃったよ。
「学園祭でお酒を注文したりするし」
ごんっ、と音がしたと思ったら、先生、テーブルに頭ぶつけてるじゃん……
ちょっと虐めすぎたかな。
「それに、今日みたいな事は普通の教師じゃ有り得ないと思いますよ」
先生はその姿勢のまま「ウチ教師に向いてないんかなぁ」とか呟いている。
そして二本目を開けると、今度はちびちびと飲みだした。
ふぅ、と一息ついて、私はビールを手に取る。
「先生、私も飲んでいいですか」
そう言って、先生の返事を待たずに一口飲む。
うーん、やっぱり美味しいもんじゃないよね。
今度は先生が呆れた顔をして、私を見ている。
「先生、私はどんな生徒ですか?」
先生は、人差し指をあごに当て、すこし上を向いて考えている。
「ん、そやな。遅刻する、五月病で休もうとする、居眠りするはでろくでもないやっちゃな」
反論の余地無しです。仰るとおりです。
今度は私がテーブルに頭をぶつける番だったようだ。
でも、先生は学校の中のことだけを指摘する。
エロゲのことや、コスプレ喫茶でのバイトのことには一切触れない。
「しかも、教師の前で飲酒するしな。停学もんやな」
「いや、それは、その……」
さすがに私も、このことには慌てて言い訳をしようと顔を上げると、先生は笑っていた。
先生は、つん、と私のおでこを指で押すと、真顔になる。
「でもな、ウチの生徒に悪い奴は一人もおらん。もし何か悪いことしたら、それはウチの責任や」
真面目で、真剣な表情の黒井先生。
やっぱり、先生は優しくて、強くて、私にとって最高の先生だよね。
でも、そんなこと恥ずかしすぎて言えないですよ。
「先生。私は他の先生じゃなくて、黒井先生が担任で良かったと思ってますよ」
これが限界。おまけに、恥ずかしさを誤魔化すために猫口作ってニヨニヨしてますよ。
すっと手が伸びてきて、私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
先生は再び笑顔になっていたけど、目じりに光るものが見えた。
「ありがとな、泉」
へ? 私、なにもしてないよね。
なぜそう言われたか分からずに、私が腕を組み首を傾げると先生が突如笑い出した。
「やっぱり、泉は泉やな」
ますます訳が分からなくなったから、私は考えることを放棄した。
ま、先生が元気になったからそれで良いよね――
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- ななこさんって、かなり良い
キャラクターですね! -- チャムチロ (2012-09-14 20:40:45) - 黒井先生は本当にいい人ですよね。
GJです! -- オビ下チェックは基本 (2009-06-15 20:02:52) - 余韻を残して終わってるところがいいです -- 名無しさん (2008-03-12 04:48:04)