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らき☆すた妖奇譚~長い前振り~

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だれでも歓迎! 編集
 四時限目が終わって昼休みになった廊下。
「…うん、わかってるって。授業終わったらすぐ帰るからさ。じゃ、ちゃんとうちにいてよ?」
 私は電話を切ると、携帯電話のモニターを見てついため息をついた。
 そこには、きちんと登録されていることを誇るように四文字で名前が表示されてる。ただしつか
さやみゆきさんみたいに『友達』のアドレスグループには入ってないし、家族やバイト仲間グルー
プでもない。全くの無分類。
 でも着信履歴を見ると、履歴を残せる限界までその四文字で埋まってるのだよ。
 ちょっとこわい。
「おーっすこなた」
 ケータイを閉じたところで聴きなれた声で聴きなれた挨拶が背後から聞こえた。
 かがみだ。
「うぃ~かがみん。今日もクラスを追い出されたのかね」
「んなわけないでしょ、あんたじゃあるまいし」
「いやいや、そろそろかがみんの凶暴さがクラス中に浸透したころなんじゃないかと思っt、
 むぎゅ~」
 話してる途中だったのに、かがみが後ろから覆いかぶさってきたから言えなくなっちゃったよ。
 かがみは私の頭の上にあごを乗せると、ぬいぐるみか何かみたいに私の頭を抱え込み続ける。
 長々とぎゅ~っと。
 いつまでもぎゅぎゅ~っと。
「かがみん…ながいよ」
「あ、そ、そうよね。ごめん」
 私から離れたかがみは誤魔化すように薄く笑った。
 うっすらと頬も赤い。
 今年は十月になってもまだ暑いのにべったりとくっついたからかな。
 うん、きっとそうだよね。
「と、ところであんたが電話してるなんて珍しいじゃない。なによ、男の恋人でもできた?」
 かがみはにやにやと笑って言う。
 絶対にないとわかってて言ってるんだ。
 失礼だね。
 っていうか男のってなに、男のって。
 女の恋人はできないよ。私が女なんだから。
「あーいや、えっと、なんていうか…」
 とりあえずなんて言ったものかと、口ごもる私。
 実は昨日からちょっとした厄介事を抱えているんだけど、それを説明するにはじっくり話しこ
まなきゃいけないからなのだ。
 もともとみんなに相談しようとは思ってたんだけど、厄介事の相手の名前にちょっと難があって
ね。ちょっといきなりかがみに説明するのをためらう理由があるのだよ。
 だから、今言っちゃってもいいものか。
 さて、どうしよっかな。
 そんなふうに考えをまとめるためのちょっとした沈黙。
 そしたら、その沈黙をかがみは別の意味に取ってしまったみたい。
「え、ちょ、何よその反応?まさか、まじ、で?………………も、物好きなやつもいたもんね。
 良かったじゃない」
 ん、どうやら私に恋人ができたと思っちゃったようだ。
 なんかアメリカ人みたいに肩をすくめてヤレヤレって言ってるけど、その腕がぷるぷる震えて
る。
 そんなに私が男子と付き合ったらおかしいかね?
 もちろんそんな事実は、ないんですがね。
 残念ながら。
 くっ。
 でも私がちゃんと否定する前に、かがみはふらふらとよろめきながら私たちの教室に入ってし
まった。
「そそそそんな……こなたにオトオトオッコト?オッコト主?ちげえよオトコ?……どういうこ
 となのつかつかつつつかつかさぁぁぁぁああ!!!」
 そのままふらふらとつかさのところまで行くと、その肩を掴んで思いっきり揺すった。
 かがみん動揺しすぎ。
 私の前では冷静を装ってたのか。ういやつめ。
 教室のドアが空きっぱなしだから丸見え、丸聞こえなんだけど。
「おおおお姉ちゃん落ち着いてええうぇうぇ」
 つかさはかがみに振り回されてまともに喋れない。
 自分で尋ねてるんだからかがみもやめればいいのに。
「今日の泉さんは頻繁に電話をしていらっしゃいますね」
 自分の首を絞めるようなかがみの行為に晒されているつかさにかわって、みゆきさんが答えた。
「……ふぇぇ。誰と電話してるのかこなちゃんに訊いたけど教えてくれなかったよ。はぁはぁ、
 男の子なのかなあ?」
 やっとかがみのブレインシェイクから解放されたつかさも、へろへろになりながらみゆきさん
に追随する。
 かがみはつかさの肩から離した手を血管が浮き出るほど握りしめると、引きつった笑顔を作っ
て震える声で言った。
「ま、まあこなたが誰と付き合おうと私には関係ないけど、ね」
「それは違いますかがみさん」
 かがみの様子を眺めていたみゆきさんが、真面目な顔で口を開いた。
「泉さんが悪い男性に騙されていたらどうするんですか。ここはお友達として御相手の方がどの
 ようなお人なのかを知っておくべきです。ええお友達として」
 みゆきさんは心配してくれてるのかな。
 じぃんとくるね。
 でも友達としてってなんで二回も言ったんだろ。
「うーんあいつを騙そうなんて人いるか?あんな幼児体型のちみっこ。まあそこが可愛いんだけ
 ど……い、いや私の意見じゃないわよ?!世間一般のうちのごく一部を代弁しただけよ!」
「いえかがみさん、泉さん魅力を挙げたらキリがありませんよ。眠たげな瞳に艶めかしい泣きぼ
 くろ…ハァハァ。噛み心地のよさそうな耳たぶに舐め心地の良さそうな首筋…アフン。ひきしまった
 ふくらはぎに幼さ残したお腹のライン…だばだばだばだば」
 次々と私の身体の特徴を挙げるみゆきさん。
 これは褒められてるのかなあ。複雑な気分だ。
 とりあえずみゆきさんは鼻血を止めようね。
「ま、まあどんな男子なのかは知っといた方がいいわよね。友達として!」
「はい、お友達として」
「友達!」
「友達!」
 ともだちともだちと交互に連呼し合うかがみとみゆきさん
 なにこれ宗教?
 ともだち教?
「えっと、私はそっとしておいてあげた方がいいと思うけどなあ」
 そこに、さっきかがみに乱された呼吸を整え終えたつかさが口を挟んだ。
 なんか変な雰囲気の二人に対して、ただ一人つかさだけが反対してるようだ。
 がんばれつかさ!
「甘いわよつかさ!悠長に構えてて私のこなたが変な男にぼろぼろにされちゃったらどうする
 の!」
 間髪入れず反応するかがみ。
 心配してくれるのはいいけど、もう私が変な男と付き合ってること前提になってるよね。
 っていうか私はかがみのものじゃないよ。
「そうですよつかささん!泉さんは男性とお付き合いするより私とした方が幸せになれます!」
 みゆきさんもかがみに続く。
 え、なにこれ、プロポーズ?
 勢いに任せて凄いこと言ってない?
 ともだち教どこいった。
「え、あぅえ…そうなの、か、なあ?」
 あぁ…
 言いくるめられちゃだめだよつかさ。
 かがみとみゆきさんに言い捲し立てられたら、あっちが正しいんじゃないかって思っちゃうの
はわかるけど。
「それではつかささんも納得していただけたようですので…」
「そうね。もう本人に聞くのが一番よね」
 つかさをあっさりと撃墜した二人は、くるーりと二人同時に振り向いた。
 二人の目が光を放ってるようにすら見えた。
 思わずビクッとしてしまう。
 ようやく本題だと言わんばかりに、ずんずんと私に向かって歩いてくる。

「「誰と電話してたのか言いなさい(言ってください)!!」」

 目が怖い。
 これでほんとに付き合ってるって言ってみたらどうなっちゃうんだろうね。例えばセバスチャン
とか。
 刺されちゃったりするのかな。
 あはは……

 やめよ。縁起でもないや。

「わかったから二人とも落ち着いてよ。放課後に言うからさ」
 もともと相談するつもりだったからちょうどいいや。
 皆が勘違いしてるような彼氏ができたとかいう話でもないし。
 ええ、勘違いですよ。
 勘違い。
 だって、電話の相手って男子じゃないからね。
 女の子だよ。

 ……たぶん。





 そして放課後。
「なによ彼氏が出来たわけじゃないのね?びっくりさせないでよ」
 まずは放っておくと危険なことになりそうな誤解は解いとこう。
 勝手にかがみ達が勘違いしただけなんだけど。
「どきどきしてしまいました」
「いやーごめんごめんみゆきさん」
「ですが、こういうプレイもたまには良いですね」
 人の耳元でプレイとか言わないでよみゆきさん。
「濡れてしまいました」
 何が?!
 とは言わない。どうせみゆきさんのことだから瞳が濡れた、とかじゃないだろうし。
 何を言い出すんだろねこの人は。
「泉さん」
「んー?」
「見ます?」
「…遠慮するよ」
 スカートの裾をつまんでこっちに視線を送るみゆきさん。
 ……ほんと、このひとはなんなんだろう。
 私が断ったので残念そうにスカートを下ろしたそのとき、つかさが不用意な一言を発してしま
った。
「ねえこなちゃん。濡れるってなに?ゆきちゃん何かこぼしちゃったの?」
 つかさには、まだみゆきさんの言うところの『濡れる』を理解するには早かったらしい。
 これが妹属性というやつか。ピュアだねえ。
 途端にみゆきさんの目が、妖しく光る。
「つかささん」
 次の瞬間、シュイン、という風を切る音がした直後、机を挟んだ向こう側にいるつかさの肩を
掴んでいた。みゆきさんが。
 あれ?みゆきさんは私の隣にいたはず…
 みゆきさんが二人いるように見えたので自分の隣にいるほうのみゆきさんに手を伸ばすと、霧
を掴むようにすり抜けた。
 はッ、これは…残像!
「それをお教えするにはぜひ体験していただくのが一番ですので、これから一緒にトイレに行き
 ませんかだばだばだば」
「え、なんでトイレに行くの?なんでゆきちゃん鼻血出してるの?!」
 何のことかわからなくてオロオロするつかさ。
 小動物みたいだ。
「つかささんかわいいですつかささんハァハァ」
「ゆ、ゆきちゃん目が怖いよぉ!」
 陰獣と化したみゆきさんに哀れつかさは食べられてしまうのか!(性的な意味で)
 と思われた時、陰獣の脳天にチョップが一閃。べしっと決まった。
 かがみだ。さすがお姉ちゃんだね。
「ひとの妹に変なこと教え込むんじゃないわよ」
「うう、痛いです…」
 自分の頭を押さえてつかさから手を離す陰獣、もといみゆきさん。
 正気に戻ったかな?
「つかささんがダメでしたらかがみさんでも良いのですけど」
 そんなことはなかったね。
 というか、これがみゆきさんのデフォなんだ。まいったね。
「いやよ」
「残念です」
「ったく、誰でもいいのかあんたは」
「ええ可愛ければ誰でもいいです」
「即答かよ…歪みないわね」
 ここまでくるといっそ清々しいね。
 さすがみゆきさんというかなんというか…
 ん~……
 っていうかみゆきさんってこんなキャラだったっけ?もっと清楚でほわほわしてたような…
 こんなエロゲーから抜け出てきたような人じゃなかったような…
 まあいっか。
 いやよくはないけど。
「それでこなた、電話の相手って誰だったのよ」
 おっとそうだ、そのことで集まってもらってたんだっけ。
 インモラルみゆきさんのせいで忘れるところだたーよ。
「んーと、昨日ちょっとしたことがあってさ。みんなで放課後に怪談話したでしょ?あのあとの
 ことなんだけど」
「そういえばやったわね。確か黒井先生が授業中に話し始めたからとか言ってたっけ。私はクラ
 ス違うからよくは知らないけど」
 そう、昨日の放課後も今みたいに集まっていたのだ。
 その時にみんなでした、というよりほとんどみゆきさんの話を聞いてるだけだったけど、怪談
を楽しんだわけさ。
 今年は異常気象で10月の今でも妙に暖かいから、残暑払いってことで。

 今思うと、絶対にそこでイベントフラグが立ったんだと思う。

 それじゃあちょいと、一日ほど話の時間を巻き戻すよ。


 そぉい。







「みぃ…みぃ…」
 んぁ…
 どこかで萌えキャラっぽい声が聞こえる。
 みぃみぃって。
「…ずみい。いずみー。こぉら泉!」
 あ、違った。私の名前を呼んでたのか。
 もーお昼ご飯食べた後だから眠いのに。
 誰だいまったく。
「ええかげん…起きんかい!」
 ハッ。
 この声は、ななこ先生だ。
 ということは…緊急回避!!
「ゴスッ……………ちぃ」
 私が急いで身体を起こすと、さっきまで私の頭があった机の上に丸めた教科書が突き刺さった。
 ふぅ、あぶないあぶない。
 ななこせんせー、教科書で叩くのはともかく、縦はやめようよ縦は。
 机がぷしゅーっと煙を吹いてる、ように見える。
「寝てたやろ?」
「い、いえネテマセンヨ」
「ほぅ~さよか」
 丸めた教科書をぽんぽんと叩きながら私を見下ろすななこ先生。
 教師が教科書を大事にしないのはよくないと思います!
「せやったら葵の上は誰の嫁や?寝てへんのやったらわかるやろ?」
「葵の上?何のアニメキャラですか?」
「そういうヨメちゃうわ」
 葵の上、か…
 日本人の名前だよね?ななこ先生世界史担当なのになんでだろ?
 ま、いいや。えっとなんかの漫画でそんなキャラが居たような…
 名前的に古い時代の人……あ、そうだ、あれか。
「光源氏ですよね」
「なんや、ちゃんと聞いとったんかい。それともただ知っとっただけか?」
「いやー私も十代ですから。ガラスの」
「壊れたものばかり集めてるかー…って古いなおい」
 そうそう、葵の上といえば光源氏のヨメだよね。
 読んでてよかった、あさきゆめみし。
 幼女を囲って自分好みに育てる光源氏計画は男のロマンだよ。
 わたし女だけど。
「まあ聞いとったならええわ」
 寝てましたけどね。
 午後の授業が眠くなるのは宇宙の真理ですよ。
「そんなわけで日本の古くて有名な源氏物語でも呪い殺される描写があるように、世界中でそう
 いう話はあるわけや。今の時代じゃピンとけえへんけど、昔はよくわからんことが起きたら大
 真面目に呪やら悪魔のせいにしとってな……」




 授業が終わると、つかさがすぐに話し掛けてきた。
「こなちゃんさっきのよく答えられたね~。寝ちゃってると思ってたのに」
 当のつかさ本人は、私と同じ居眠り仲間でもあるため、授業の後半に力尽きてななこ先生の一
発を貰っていた。なので今は、自分の頭をさすりながらちょっと涙目になっている。
「運良く漫画で読んだことあるとこだったんだよ」
「え、じゃあ寝てたの?」
「うぃ」
 いいな~、と心底羨ましそうにつぶやくつかさ。
 私も世界史の授業で源氏物語の知識が役に立つとは思わなかったよ。
「私のときも知ってる質問だったらよかったのに~」
 つかさも同じようにななこ先生に質問されて試されたのに、私と違って棒状教科書の一撃をく
らってしまったんだからそう思うのも当然だね。
「そだねー…でもつかさが知ってる世界史ってなに?」
「う~ん……バルサミコ酢の歴史とかかなあ?」
 それって世界史?
 まあ源氏物語よりはまだ世界史っぽいかな?
「つかさ…そんなの授業で出るわけないでしょ」
 溜息といっしょに呆れた声が教室に入ってくる。
 かがみだ。
「えへへ、そうだよね~」
「ったく珍しく授業の話してるから復習でもしてるのかと思ったら。どんな授業やってるのよ」
 それを訊かれても私たちは答えられないよ…と思ったら、つかさはどんな授業だったかをさらっ
と説明した。
 途中で眠ってはしまったものの、つかさはその時以外は一生懸命授業を聞いてたようだ。
 私と違って。
 どうやら中世ヨーロッパの魔女狩りの話をしていたときに「昔はどこでも今考えるとどないや
ねんってこと、魔女がどうとかそんな話を事実として扱ってたもんやねんで」という流れで日本
の呪い殺された話代表で源氏物語の話になってたらしい。源氏物語は創作だけど。
 へ~そうだったんだ。それでいきなり世界史らしくない質問されたんだ。
 把握把握。今知ったよ。
 いや、だって寝てたからね。
 さーせんww
「なるほどね。まあ昔の人は迷信深かったから、厄介なことは妖怪やら悪魔のせいってことにし
 てきたってことね。ようは幽霊やらなんやらはそうやって作られたものに過ぎないってことよ」
 当然じゃない。かがみはそう言って言葉を締めた。
「え、でもお姉ちゃん。怖い話って今でもいっぱいあるよ?あの、信じるか信じないかはあなた
 しだいーって言うのとか……あぅッ」
 つかさはそこまで喋ると目をギュッと瞑った。自分で言っておきながら都市伝説を思い出しちゃ
って怖くなったらしい。
 うーんなんだろうね、この差は。
 幽霊とか全然信じてないのか全く意に介さないかがみと、信じすぎちゃって怖がっちゃうつかさ。
 お家の神社にはどっちがふさわしいのかな。
 全然信じないかがみでもアレだし、つかさはつかさで仕事にならない気がする。
 どっちも神社を継ぐわけじゃないらしいけどさ。
「そうね、たまにブームが来たりするしね。ねえ、みゆきはどう思う?」
 自分の席に座ったまま微動だにしない背中にかがみが話を振る。
「………」
 みゆきさんは応えなかった。
 そういえばさっきから一言も喋ってないや。
 ずいぶん大人しいなあ。どうしたんだろ。
「みゆき?」
「……あ、すみません。泉さんとつかささんの寝顔を脳内で再生して堪能することに夢中になって
 しまいました」
 ……心配して損した。
 授業終わってからずっとそんなことしてたんですか貴女は。
「えっと、媚薬の作り方ですね。それでしたらたしか家の書庫の奥から二段目の棚の」
「そんなことは訊いてないよみゆきさん」
 私は思わずみゆきさんの口を遮った。
 なにをどう聞き間違えたら媚薬の話になるのかなあ。
 だいたいなんでそんな本を持ってるのかと。
 だいたい誰に使う気なのかと。
 ……うッ。
 なんか悪寒がする。
「今の時代でも怪談とかが無くならないのはなんでだろうねって話だよ」
「はぁ、そのようなお話でしたか」
 みゆきさんは残念そうに息を吐いて一度言葉を切る。
 どんな話を期待してたんだ。
「そうですね、今も昔も分からないことを理解したい思っているということなのではないでしょう
 か。昔は自然現象などわからないことがたくさんありましたので、その恐怖を紛らわすために作
 り出されたことが多かったらしいです。空想であれ、原因を作ってしまった方がいくらかましだ
 ったのでしょう。森で迷うのは狐に化かされているせいだとか、そういう類のものですね」
 日本昔話でありそうなやつだね。
 ぼうや~よいこだねんねしな~♪
 昔テレビでやってたっけ。ゴールデンタイムに。
 良いセンスだ。
「一方現代では自然現象の話は解明されてきていてあまり作られなくなったものの、悪霊や妖怪化
 した人間のお話が増えています。情報の接触が増えたので、悲惨な出来事に関する情報にも誰で
 も接するようになったからでしょう。そのままでは昔の自然現象による怪談と違い自分の身には
 起こり得ないもう終わった情報に過ぎませんが、悪霊化して出没することになれば自分のところ
 にも現れるかもしれません。そういうことにしてしまうことで、より身近に理解できる形に作ら
 れたものと思われます。成形手術が失敗してしまった女性が口裂け女として現れるなど、昭和の
 ころには全国的に流行ったらしいですよ」
 みゆきさんは続けて人面犬や人面魚など昭和に流行ったというお話をいくつも詳しく挙げた。
 私も聞いたことはあるけど、そこまでは詳しくないよ。
 あるぇーみゆきさんって同い年だよね?
 私たちと同じ平成生まれだよね?
 実は25歳ですってことはないよねえ?
「なお最近では人間そのものなど怪奇現象を含まないことを恐怖の対象にしたものが多く見られま
 すが、これらは怪談というよりも都市伝説と言った方が当てはまりますね。時代を経ていろいろ
 と解明されてきました結果、結局人間の行いが一番怖いということなのでしょうか。情報の伝播
 の仕方を研究するために意図的に都市伝説を作り出して流した方がいたりと、いろいろと不鮮明
 ではありますが」
 みゆきさんが都市伝説と口にすると、つかさがまた目をギュッと瞑った。
 ほんとに怖がりだなあと思いつつ、いったいどんな都市伝説を思い出してそんな思い出し笑いな
らぬ思い出し怖がりしてるのか気になってきたよ。
 しかし何かと幽霊を勘違いしたとかじゃなく、2ちゃんの釣りみたいに遊ぶってわけでもなく、
研究のために都市伝説を流した人もいるってのは驚きだね。
 なんてゆーか、ひねくれすぎっしょ。
 ねえかがみん。
「……ん?なによ」
 私の視線に気づいたかがみ。
 幽霊を信じないツンデレなお姉さんと研究してた人は、どこか被るところがありそうだ。
 ホラー映画とか見るからいろいろ思いつきそうだし。
「うんにゃ、なんでも」
 まあでも、かがみはそんなことしないかな。
 あんまり嘘が上手いタイプでもないしね。
「それにしても、みゆきってこんなのも詳しいのね。口ぶりからすると幽霊とかいないと思ってる
 みたいなのに、興味ないことまでよくもまあ調べる気になるわ」
 かがみは私からみゆきさんに目を移すと、半ば呆れ気味に感心した。
 そういえばみゆきさんが話したのは全部、怪談や都市伝説の幽霊なんかは人が作ったものってい
う内容だ。
 ちっちゃいころにサンタクロースの夢が破れたときみたいに、怪談とかもよく調べていったら存
在しないっていう結論になっちゃったのかなあ。
 幽霊とかって、私はわりと信じる方なんだよね。
 つかさみたいに怖がるわけじゃないけど、いたらいいなあって感じで。
 私が暢気に幽霊のことを考えてると、みゆきさんはかがみの言葉をやんわりと否定した。
「いえ、そんなことはありません。あくまでも、」
 そこまで言うといったん息継ぎをして、かがみに向けていた目をちらりと私に向ける。
 気のせいかと思った。
 目の動きだけだったら、一瞬だから気のせいだと思えたかもしれない。
 けどそうじゃなかった。
 こっちを見た瞬間、みゆきさんの口角が、にやりと歪んだ。
「幽霊などが存在しないとしたら、という前提ですから……ね」
 ゾクッ
 全身が、音が鳴りそうなほど鳥肌が立つのがわかった。
 みゆきさんが怖いことを言ったわけじゃない。今の言葉は何の変哲もないかがみへの返答。
 それなのに、なぜか私に向けて喋ったかのように感じられた。
 なんでだろう。
 みゆきさんが言ったことは受け取り方によっては、幽霊が存在することを実は知ってます、って
言ったように取れなくもない。
 もしそうなら、みゆきさんから見て私がいる方向に幽霊がいて、みゆきさんには見えてるとか?
 まさか実は私に幽霊がとり憑いてるとか?
 むしろ実は私が幽霊とか?
 ………それはないか。
「な、なによ。まるで幽霊を見たことがあるみたいな口ぶりじゃない」
 かがみもちょっと腰が引けてるみたい。
 幽霊を見たという言葉だけでかがみが怯えるとは思えない。さっきみゆきさんは私だけに視線を
向けたんじゃなくて、全員に順に視線を送ってたのかもしれない。
 つかさはどうかと言うと……ずっと怖がってるからわかんないや。
「うふふ」
「いや、うふふじゃ分かんないからみゆき」
「いえいえうふふ」
「ほとんど変わってないわよ」
「いえいえいえうふふ」
「………もういいわ」
 かがみの追及を、小舟を駆る水先案内人がオールで水を受け流すかのようにかわすみゆきさん。
 どうやら、これに関して明言するつもりはないらしい。
 ほんとのところはどうなんだろう。霊感があるんだとしたら、何か言いたくない理由があるのか
な。
 私にはそういう経験がはっきりとは無いからわかんないけど。
「え、ゆきちゃんって幽霊見えちゃう人なの?」
 怖い話が苦手なつかさは断片的にしか話を聞いてなかったのか、かがみと同じ質問を繰り返した。
 姉でだめなら妹で、か。
 結果が変わるとは思えないけど。
「いえいえ…ポタポタ」
 おや、みゆきさんの鼻の穴から垂れる赤い滴。さっきとは違う反応だね。
 確かにみゆきさんはつかさと絡んで鼻血を出すことはよくあるけど、それはかがみが相手でも同
じはず。だって、ホイホイついていったら姉でも妹でも構わずくっちまうタイプなんだよあの人は。
 なんでつかさのときだけ……
 って、ああ。そういうことか。
 よく見たらつかさってば、みゆきさんの片手を両手できゅっと握って引っ張っていた。
 お母さんにおねだりする子供みたいに。
「ねえねえゆきちゃんどーなの?」
「いえいえ……だばだば」
 みゆきさんがはっきり答えないので、つかさはさらに近づいて追及する。
 握っていたみゆきさんの片手は、つかさが近寄ったので自然と腕を抱きしめるような格好に。
 そんなことになれば当然勢いを増すのは、鼻から流れ出てる真っ赤なみゆきさん汁。
 みゆきさんが答えるまで続くそれは、ぱっと見拷問か、色仕掛けか。
 つかさ自身は普通に尋ねているつもりっぽいのがまたすごい。
 そして、さらにベタな技まで無意識に使いこなすのだ。
「ねえゆきちゃ~、わきゃッ」
 あんまり近づきすぎたので足が絡まりでもしたのか、バランスを崩すつかさ。

 倒れこんだその先は、

 みゆきさんの、

 胸の中。

 わ~お。

「………ブシュァーッッ!」

 それは、綾桜学園に一つのマーライオンが誕生した瞬間だった。
 出してる物が水じゃないことと、口からじゃなく鼻から吹き出してることを忘れれば、それはま
さしくマーライオンのようだった。
「えへへ、ごめんねゆきちゃん」
 つかさはみゆきさんの胸に埋まりながら上目がちに言うもんだから、紅のマーライオンの勢いは
止まらない。
「ブシュるぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 つかさ、もうやめて!
 みゆきさんのライフはとっくにゼロだよ!(血量的な意味で)
 とりあえずみゆきさんが出血多量で死んじゃう前につかさを引き離すと、元々白いみゆきさんの
肌がさらに蒼白になっているように見えた。
「だ、だいじょうぶ?みゆきさん」
「これで死ぬのでしたら本望で、す…」
 なんかへろへろになりつつも、親指をたてるとグッと爽やかに笑っている。
 これが萌え死にってやつか……
 あとでお父さんに教えてあげよう。
 死んでないけど。
「ところでみなさん」
 鼻血を止めるべく鼻の付け根を抑えて屈みながら、みゆきさんはある提案をした。

「や ら な い か」

 くそみそ自重。

「みゆきさん、何をするのか言い忘れてるよ」
「そうでしたすみません。せっかくですので、残暑払いにこれから怪談話でもいかがでしょうか?」
 もう10月なのに今年は妙に暖かいからね。たしかにいいかもしれない。
 ちょうど幽霊やら都市伝説の話をしてたわけだし、みゆきさんの気がのってきたのかな。
「まあ私もさっきのみゆきの話聞いてたらそんな気になってきたわね」
「かがみさん、むらむらしたんですか?」
「ちげーよ。怪談話とか聞きたくなったってこと」
 かがみも乗り気だ。
 そういえばかがみは幽霊とか信じないくせにホラー物の話自体は好きなんだよね。
「でもね…」
 でもかがみは、全く違う反応を示している一人を見つめてつぶやく。
 つかさだ。
「ゆ、ゆきちゃん何でそういう話になるの」
 やだよーと言ってかがみの背中に隠れる。
 かがみもつかさの頭を撫でながら、お姉ちゃんらしく妹をかばう。
「あのねみゆき。私は好きだけど、つかさはそういうの苦手だから」
「そうですか…それではしかたありません」
 残念そうな表情を浮かべるみゆきさん
 ただそれもつかのま、私とかがみに向けてにやりと笑った。
「では、泉さんと登り棒の、かがみさんと机の角の素敵な出会いについてのお話にいたしましょう
 か」
 なんのことだろう?
 自分の名前が出てきたので少しの時間考えてみると、すぐに答えは出た。
 私と登り棒の関係と、みゆきさんの性格。
 この二つを考慮すると、答えは一つしかなかった。
「なんで知ってるのみゆきさん!」
「なんで知ってるのよみゆき!」
 私とかがみの驚愕が重なる。
 顔面温度が急速に上がっていくのがわかる。
「うふふ……あれはお二人が小学生でしたころ、初めての感覚に身を悶えs」
「「わーわー!!!!!」」
 みゆきさんの発言を邪魔するべく、共鳴する私とかがみの声、いや悲鳴。
 な、なんでそんなこと知ってるんだよみゆきさん。
 貴女のエロパワーは千里眼をも可能にするのくゎッ。
「や、やっぱり怪談にしよう!みゆきの怪談が聞きたいわ!ね、こなた!!」
「う、うん!そうだねかがみん!昭和のころの怪談とかあんまり知らないから聞きたいな!」
 二人がかりで必死に話題誘導だ。
 だって初めてあの、あ、アレを感じたときの話を人にされるのって、想像以上に恥ずかしいよ。
 びっくりだよ。
「そうですか。では、少し古めのものからお話しましょう。うふふ」
 みゆきさんが素直に乗っかってくれてほっとする私とかがみ。

 そんなわけで、みゆきさんを中心に残暑払い怪談大会が突発的に開催されることになったのだ。

 私はけっこうそういう話好きだからいいんだけどね。
 少なくとも自分の恥ずかしい話をされるよりは。

 ……………

 つかさが泣きながらイヤイヤ言ってるのは気づかなかったことにしよう。



















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  • みゆきさんの血液ゲージが見たいwww (アカイ〇ト的な) -- FOAF (2012-06-29 16:04:03)
  • や、やばい…
    つかさがかわゆすぎて、このみゆきさんと
    同じ運命をたどるところだった… -- 名無しさん (2009-01-28 19:48:29)
  • 登り棒か・・・何もかも懐かしい・・・ -- 名無しさん (2009-01-28 17:27:51)
  • みゆきさんのアレは、違和感を持っていただいてOKです。というか正解(?)です。
    むしろ嬉しいです。そのつもりで書いているので、意図に近い読み取りをしてくれる人がいると純粋に。
    (ぶっとんだみゆきさんがここにはいっぱいいるから目立たないんですがw)
    気づきようがないくらいの伏線をはりつついずれ理由を書くつもりですが、それまではアレなみゆきさんのままです。
    なんていうか、ごめんなさいw
    というかそこに行く前に力尽きたら、もう本当にごめんなさい('д`) -- 三毛また (2008-10-18 08:45:25)
  • こなたと登り棒…ハァハァ… -- 名無しさん (2008-10-16 23:13:02)
  • ↓いやいやいやw
    もうKO☆KOでは
    原作ってなに?おいしいの?
    のレベルだからw
    みWikiさんも随分前からとんでるしw
    マジレス自重w

    …釣りか -- 名無しさん (2008-10-16 20:48:31)
  • ここから怪奇的な話に入ってゆきそうで展開が非常に楽しみですが、
    それ以上にみゆきの変態度の酷さが非常に気になりました。
    原作準拠の知識量・知恵袋的な役割が生きている上で、あの突飛な
    変態具合の晒し方はかなり質が悪いと思います。
    このみゆきがどのように動いてゆくか、話の続きと共に楽しみです。 -- 名無しさん (2008-10-16 19:59:44)

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