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かがみ君、おつかれさま ~sngg(それなんてギャルゲ)3~

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昔から、ある人物が心変わりをしたように突然態度や行動を変化させると、その人物をよく知る人は『雨が降るのではないか』と噂する事がある。

「今の俺はまさにそんな状況だよ、泉」
と、正装である袴姿になった俺は本来なら隣にいないはずの人物に声をかけた。
「とりあえず、かがみがいつも私をどういう目で見てるかがよーくわかったよ」
対して返すのは、何気に巫女服を着こなしている泉。……何というか、馬子にも衣装といった感じか。
「ほら、かがみもこなたちゃんも話をしてる余裕はないわよ。かがみはお神酒の運び出しと注ぎ足し。こなたちゃんは御守売り場の方をお願いね」
そこに入る母さんの一声。それによって俺たちは動き出した。

……今日は1/2。昨日を含めて三日間がうちの神社の最も忙しくなる日程だ。


  『かがみ君、おつかれさま ~sngg(それなんてギャルゲ)3~ 』


何故こんな事になったのか、その原因は柊家にかかってきた一本の電話だった。
「はい、柊です。…………あら、こなたちゃん。どうしたの?」
母さんが電話を取ったところ、電話の相手は泉からのようだ。しばらく普通に受け答えをしていたが、突然母さんが『ええっ!?』と驚いた声を出した。
「気持ちは嬉しいけれど、元日は人の量が多すぎて初めてだと戸惑うかもしれないわよ?……あら、そうなの?それじゃあお願いしようかしら?」
……待て。泉、お前母さんに何て言ったんだ?まさか、『お正月にかがみの家のお手伝いをさせてもらってもいいですか?』とか言ったんじゃないだろな……?
その後、ニ、三言話した後に受話器を置いた母さんに『どうしたの?』と聞いてみた。すると……
「それがね。こなたちゃんが『そちらのお手伝いをさせてください』って言って来たのよ。お母さんちょっとびっくりしちゃったわ」
……やっぱりか。一体何を考えているんだあいつは。内心呆れる俺に、母さんが言葉を続ける。
「でも、元日は参拝に来る人が多くて慌しくなっちゃうじゃない。そんな状態で大丈夫なのかしらと思って聞いてみたら、『人込みには慣れてるんで大丈夫です』って返ってきたわ」
ああ、それはコスプレ喫茶とかでバイトしてる上、コミケに子供の頃から行ってるおかげだと思う。
しかし、泉の体裁のために詳しくは伝えずに『そういえば、接客のバイトとかをやってるって聞いたことがある』と母さんに言っておいた。
「あら、そうだったの。……でも、いいのかしら。こなたちゃん、『何もいらない』って言ってたけど……」
「……あいつの好意なんだし、別にいいんじゃないかな?せいぜいうちで飯を食わせるとか」
「それはお母さんも考えてたんだけど……こなたちゃん、泊まりで来るらしいのよ」

……お、お母様?今なんとおっしゃいました?

「……はい?」
今、思いっきり変な声が出たな。そんな事を自覚しながら、母さんに聞き返した。
「何変な声出してるの。こなたちゃんがうちに泊まるらしいのよ。従妹さんが実家に帰って、家で暇を持て余していたみたいなのよね」
「……○ルヒかお前は」
母さんに聞こえないように、小声でここにいない泉に突っ込みを入れた。
「だから、お手伝いをする2、3日の間泊めてくださいって。承諾しちゃったけどいいかしら?」
「……何で俺に聞くんだか」
肩をすくめて母さんの問いかけに答える。……とりあえず、元日から三日間は色々と気をつけなければならなくなった。

         ***   ***

その電話から数日後の大晦日の夜。泉が我が家を訪問した。それから翌日に向けて母さんから色々と教わり、そして、元旦の仕事をこなしきった。
「あれには俺も父さん母さんもびっくりだったな……。あ、でもよく考えてみればあいつ、コミケのサークルを手伝ったこともあるって言ってたな」
時間は戻って、現在。ようやく人がはけ、社務所で少し休憩をとりながらふと呟いた。……あれに比べればここの仕事はマシな方か。実地を経験しただけにそう思えてしまう。
「でも、泉一人増えただけで仕事も楽になったよな。……腹の中にどんな物を抱え込んでるかわからんが、本当に泉さまさまだ」
「何気にひどいことを言うねぇ、かがみは。でも、ありがたく感謝されておくヨ」
「……いたのか、お前」
いつの間にか社務所に入っていた泉が、『うわ、私って存在感無いの?』とか呟いているのを横目に見ながら『仕事の方は?』と尋ねた。
「うん、みきおばさん達がもう大丈夫だって。だから、ちょっと休憩を貰ってきた」
俺の質問に答えながら、何気に俺の横に座る。……やけに距離が近いのは気のせいなのか?
「……なんかさ」
「……なあ」
少しの沈黙の後、話しかけようとした俺と泉の声が被った。……あー、しまった。
「か、かがみ。先にどうぞ」
「い、泉から先に言えよ」
お互いに譲り合いをしてしまい、なんとなく笑いがこみ上げてしまう。
「じゃあ、私から言うね。……なんかさ。こうしてるとある漫画を思い出しちゃうんだ」
「……やっぱ俺が先に言えばよかったか」
何を言ってくるのかと思えば……。相変わらずの泉の台詞に小声で呟くと、聞こえていたのか『やっぱりひどいな、かがみは』と泉が膨れた。
「話の腰折らないでよ。……それでね、その漫画では主人公の男の子が神社の子で、悪霊に狙われやすい体質なんだ。そんな男の子を護るのが、私みたいに見た目がちっちゃい女の子なんだ」
「で、俺と泉の立ち位置、というか特徴がなんとなくそれに似てる、と?……別に俺は悪霊なんかに狙われてないし、お前だってそういう能力とかはないだろ?」
「……相変わらず物事を現実的に見てるんだね、かがみは。それを言ったらおしまいでしょー」
ヤレヤレダゼ、と言いたげなため息をつく泉に、ちょっとムカついてしまった。
「ゲーム世界の住人に言われたくないがな」
「……まあ、いいや。それでね。その子達は特殊な絆みたいなものがあってね。男の子は元々強かったんだけど、子供の頃に女の子が悪霊に殺されかけた時に、彼女を生き返らせる為にほとんどの力を女の子に注いだんだって」
もはや俺の愚痴にも耳を傾けず、熱心に語る泉。……心なしか、少しずつ体が近付いて来てる様な……
「だから男の子は力をなくして悪霊に狙われるようになって、女の子は死に掛けた時から体が成長しなくなったの。でもね。一つだけ条件があるんだ」
「……条件?」
「うん、女の子が本来の体に戻る条件。それはね……」
ここまで言った泉が、ふと俺の頬に手を伸ばした。その手は俺の顔を泉の方に向けさせ……

……一瞬、何が起こったのか俺にはわからなかった。感じたのは、唇の熱い感触と、ほのかに香る泉の匂い。

「……!?」
ようやく理解できたのは、泉が俺の首に手を回してからだった。間近に見える泉の顔。そして、唇の感触の答え……
「んっ……ちゅく……」
驚いて開けてしまった口の中で、ある物が俺の舌に絡まってきた。まるで誘うかのように、それ……泉の舌は俺の舌に絡み付く。
……こいつは、いきなり何をしてくるかと思ったら……そう考えながらも泉の舌に応じ、自分の舌を泉の口内に入れる。
「んふふ……ちゅ、んく……」
泉は待ってましたと言わんばかりに、自分の領地に来た俺の舌を吸い、唇でしごく。……うーん、どうなんだろうか。正直言って興奮するが、泉のこれは上手いのか、それともがっついてるだけなのか……
そんな事を考えていると、ふいに泉の攻撃が止み、代わりに俺の舌を押してきやがった。それに従い舌を引っ込めると、今度は俺の口内に泉の舌が侵入してくる。
「……?」
要するに、俺もやれと?期待の眼差しを向けられても困る。……ギブアンドテイク、とでも言うつもりか。
それなら仕方がない。渋々、泉の舌に自分の舌を絡ませる。その後に吸込んだり唇で挟んでしごいたりもした。……要は、泉の行動丸写しだ。
「んぐ、んっ……ちゅう……」
「んんっ、ん……んふ……」
そんな感じで、数分間の間俺達は唇を重ねつづけ……ようやく、唇を離した。
つ、と細い糸が俺達の唇の間に生まれ、消える。……生では初めて見るな、これ。しかも自分の行為で……
「……キス、だよ。実際には、お互いが深く繋がり合う事。……でも、やっぱり私じゃあの漫画みたいに大きくなれないね」
「そりゃそうだろ……。現実にはそんなとんでもない事は起きないっての」
ようやく言葉を発した泉に、あえて突っ込みを入れた。……というか、なれると思ってたのかこいつは。
俺の突っ込みに、『もー、ズバッと切り捨てないでよ』と膨れる泉。……その後に何かを言っていたような気がするのだが、よく聞こえなかった。『何て言ったんだ?』と問いかけたが『別にー?』とはぐらかされてしまった。
「そういえば、かがみは何て言おうとしたの?」
「ん?ああ……お前が俺んちに来た理由を聞こうとしたんだ。暇だったってのは何かうそ臭くてな」
俺の台詞に、泉はむう……と唸る。その後に『まあ確かに別に理由があるんだけどネ』と喋った。
「やっぱりか。……で、その理由ってのは何なんだ?まさか『巫女のコスプレがしたかった』とかじゃないだろな?」
茶化すつもりで言ったはずなのだが、やけに泉の視線が冷たい。思わず『な、何だよ』と聞いてみると……

「これだから属性:エロゲ主人公は……」

と、大きなため息混じりに言われた。……って、
「誰がエロゲ主人公だ!」
「かがみが、に決まってるじゃん。いろんな所でフラグ立てて、しかも本人はそれに気付かないなんて……リアルでやられるとかなりムカつくんだね。こういうのって」
「ムカついてるのは俺の方だ!さっきから好き勝手に言いやがって、俺はフラグを立てたつもりはないし、そもそも現実の人間にフラグなんて物はない!」
「……そうやって、自覚がないのが一番怖いんだよ?」
泉の言葉に『何がだ』と返すと、『下手をすれば嘘だッ!でnice boat.な展開になるかもしれないんだし』と返ってきた。……俺は別に誠みたいな女たらしではない。というか一部違う。
「ま、私が来た理由は今日のうちにわかるよ。……今日のうちに、ね」
……泉の妖しげな微笑みを見て、背筋に冷たい物が走った。待て?もしかして、そのnice boat.を実行しようとしてないか?

……俺の命、明日もあるんだろうか……。ふと、そんな事を考えてしまった。



















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