kairakunoza @ ウィキ

てけてけかなたさん"おかわり" その1・おねえちゃん

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
「みゅふふふふ~……おね~ちゃ~ん……」
 ノートPCに向かって、真っ赤でだらしない笑顔を向けるゆい姉さん。
「あらあら、ゆいちゃんったら」
 そのPCの中で、ほんのり顔を紅くしながら笑うお母さん。
 うーん……同じお酒呑みの人でも、こうも差が出るとは。
「だって、おねーちゃんがいるんだよ? これがうれしくないわけがないでしょー」
「ありがとう、ゆいちゃん。でも、飲み過ぎはダメよ?」
「ふぁ~いっ」
 そう言いながら、ゆい姉さんはラベルに某女教師キャラが描かれた「みずほ」ってお酒を
くぴくぴとラッパ呑み。画面の中のお母さんも、同じお酒をコップに注いでちびちび呑んでいた。
「お父さんさ、あのお酒あけても良かったの?」
「ん? ああ、せっかくゆいちゃんがかなたと会えたんだからな。こういう日にあけないのはもったいないだろ」
 顔をほんのり紅く染めてるお父さんは、そう笑うとラベルに「おねてぃ」と書かれたお酒をコップに注いだ。
ありゃりゃ、お父さんもすっかりゴキゲンになっちゃって。
「はい、ゆいお姉ちゃん。おつまみにいかのわた味噌焼きを作ってみたよー」
「おおっ! ゆたかったら気が利くねー!」
 台所からすのこに乗せた陶板を持ってきたゆーちゃんを見て、大はしゃぎのゆい姉さん。
「かなたさんから教えてもらったんだ。ごはんのおかずにもいいんだって」
「そうなんだー……うんっ、美味いっ! ゆたかとかなたおねーちゃんの愛の結晶がいっぱいつまってるよー!」
「ゆい姉さん、それって使い方間違ってない?」
「いーじゃないかいーじゃないか! おいしーのはかわらないんだしさっ!」
 あーもー、すっかり酔っぱらいじゃん。ほらほら、箸をぶんぶん振り回すのはやめよーね。
「ゆーちゃん、美味しいわよ。お味噌とお酒の分量もちょうどいいぐらいね」
「本当ですか? よかったぁ、お姉ちゃんとかなたさんに喜んでもらえて」
 デジカメから取り込んだいか焼きを嬉しそうに食べるお母さんに、ほめられて喜ぶゆーちゃん。
「あー……女の子だらけで、ぼかぁ幸せだなぁ」
 こっちはこっちで、違う幸せを感じてるお父さん。なかなかカオスな状態だけど……
まあ、笑顔があふれる宴ならよしとしますか。
「ほら、こなたも呑みなよー!」
「や、あのっ、私未成年だからね?!」
 訂正。若干一名よろしくないかもしれない。

--- てけてけかなたさん"おかわり"・その1「おねえちゃん」 ---

 事の始まりは、日が傾きかけた頃のこと。
「はろー」
「あ、ゆい姉さん」
 居間でテレビをぼーっと見てると、ゆい姉さんが突然やってきた。
「どうしたの? 今日は平日でお仕事だったんじゃない?」
「うん。でも明日から夏休みもらってるし、ゆたかから会いたいって電話があったから来ちゃった」
「ゆーちゃんが?」
 いつもゆい姉さんのほうから来るから、ゆーちゃんが呼ぶっていうのはなんか珍しいな。
「あっ、お姉ちゃん。いらっしゃい」
「おー、約束どおりちゃんと来たよー」
 ぱたぱたと駆け寄るゆーちゃんを、ゆい姉さんがひしっと抱きしめる。うむ、なんて美しき姉妹愛。
「で、どしたの? 突然会いたいって」
「あのね、お姉ちゃんに会わせてあげたい人がいるの」
 会わせたい人……その言葉に私はピンと来たけれど、
「えっ?! あ、会わせたい人って、ゆたか、恋人ができたのっ?!」
「ちっ、違うよー!」
 事情を知らないゆい姉さんに言ったら、そりゃそう勘違いしてもおかしくないか。
「お姉ちゃんも、たぶんよく知ってる人だよ」
「よく知ってる人……誰だろ。きよたかさんとは今朝も電話したから違うだろうけど」
 首を傾げながら、ゆーちゃんがすすめた椅子へと座るゆい姉さん。
「ちょっと待っててね、今連れてきてあげるから」
 ゆーちゃんはそう言うと、また居間から出て行った。
「会わせたい人ねー。こなたは知ってるの?」
「んー、知ってることは知ってるけど、直接会った方が早いと思うよ」
「そっか」
 それに、なによりゆい姉さんの反応も見てみたいし。
「おまたせっ」
 お父さんと打ち合わせ済みだったのか、ゆーちゃんはすぐにノートPCを持ってやってきた。
「パソコン? テレビ電話か何か?」
「いいから、ちょっとのぞき込んでみて」
「どれどれ……」
 ゆーちゃんに言われて、ゆい姉さんがずいっと画面をのぞき込む。
「お久しぶり、ゆいちゃん」
 そこには、満面の笑みをたたえたお母さんがいるわけで……
「……こなたー、このかなたお姉ちゃんって、何かのプログラム?」
 さすがに、いきなり見ても信じられないか。
「ち、違うよ。かなたさんだよ」
「信じられないかもしれないけど、正真正銘のお母さんだよ」
「あはは、まっさかー」
 ゆい姉さんは笑いながら、ぺしぺしとノートPCを叩いた。
「きゃっ」
「揺れにも驚くなんて、よく出来てるねー」
「だ、だから違うんだってば」
 あたふたするゆーちゃんに、あわてるお母さん。うーん、これはそろそろ助け船を出したほうがいいかも。
「お母さん、ゆい姉さんがよく知ってることを言ってみたら?」
「え、えっと……最近は迷子になってない? 昔うちに来たとき、よく勝手に遊びに行って、
ゆきちゃんに怒られてたけど」
「やだなー、もう二十歳過ぎてるんだよ? 昔とはちが――」
 そこまで言って、ゆい姉さんの表情がビシッと固まった。
「あの……なんで知ってるの?」
 ギギギギと音がしそうなくらい、ギクシャクした動きで画面を指さすゆい姉さん。
「だって、ゆきちゃんがよくこぼしてたもの。『ゆいったらまたすぐどっかに行って』って」
 その質問に、相変わらずの穏やかな表情で答えるお母さん。
「……かなたお姉ちゃん?」
「なあに? ゆいちゃん」
 そして、お母さんの表情がいたずらっぽい笑顔になって……
「ホントに、かなたお姉ちゃんなの?」
「ええ。あなたもよく知ってる、泉かなたよ」
 それが、嬉しそうな笑顔に変わっていった。
「び、びっ、び……」
「あ、ゆーちゃん、ちょっとごめんねー」
「えっ?」
 ゆい姉さんの様子を見た私は、ゆーちゃんの耳をふさいであげた。さすがに、ゆーちゃんだけは
ちゃんと守ってあげないと――

「びっくりだーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

「おおぅっ?!」
「きゃっ?!」
 こ……これが瀬戸内名物のハウリングボイスみたいなやつデスカ……?
「こ、こなたお姉ちゃんっ?! かなたさんっ?!」
 お母さんもヒヨコを飛ばしながら目を回してるし、家中に響くほどとは、正直なめていたヨ……がっくし。

 *   *   *

 その後はもう狂喜乱舞なゆい姉さん。ノートPCにベアハッグするわ、嬉し泣きするわ、
きー兄さんに会わせるって強奪しようとするわともう大変。そのままの勢いで夕ごはんを食べたら、
いつの間にか酒宴にまでなっちゃってるし。

「それにしても、あのやんちゃだったゆいちゃんが結婚かあ」
「うんっ、結婚しちゃったー」
 お母さんの言葉に、相変わらずのペースでお酒をあおっているゆい姉さんの顔がさらに緩む。
「ゆーちゃんやこなたに聞いたけど、きよたか君は単身赴任なんでしょう?」
「うー、それが悩みの種なんだよー……でも、ね」
 ほんのちょっとかげったゆい姉さんの顔だけど、またすぐ元の笑顔に戻った。
「きよたかさんは私の隣に必ず帰ってきてくれるし、いつだって連絡してきてくれるから……
ちょっとは寂しいけど、心配はしてないよ」
「ゆいちゃんは、きよたか君のことを信じてるのね」
「うんっ。だって、私の大好きな旦那様だもん」
 きっぱりと言い切って、誇らしそうに笑うゆい姉さん。
 これだけ想ってもらってるなんて、幸せ者だよねー……ちゃんと想ってあげなきゃダメだよ、きー兄さんも。
「かなたお姉ちゃんも、おじさんやこなたのことを信じてたから帰ってきたんでしょ?」
「ええ、私のことをちゃんと想っていてくれるって。最初は、ちょっと会いづらかったけど」
「そうだぞー、こなたばっかりかまってもらっててずるいなって思ったぞー」
「ううっ……ごめんなさい、そう君」
 はいはい、酔っぱらいのお邪魔虫はシャラップ。
「……ていっ」
「ぐぉっ」
 私はお父さんの首筋に手刀を落として、そのまま黙ってもらうことにした。
「でも、ちゃんと信じていたままの二人だった。それに、ゆーちゃんっていうかわいい子も
うちに来てくれて、とっても嬉しかったわ」
「えへへっ、自慢の妹だよー」
「は、はずかしいよー……」
 お母さんとゆい姉さんの話題にのぼった当の本人はといえば、りんごジュースをちびちび
飲みながら真っ赤な顔。さすがのゆい姉さんも、ゆーちゃんにお酒を呑ませようとはしないか。
「そうね。そう君に会う決心をしたのも、ゆーちゃんのおかげだったもの」
「いえっ、そんな。最後に決めたのはかなたさんですから」
「ううん。あの時真剣に話を聞いてくれて、どうすればいいか考えてくれたじゃない。
背中を押してくれて、本当に感謝しているわ」
「はうぅ……」
 恥ずかしそうに身をちぢこませるけど、私もお母さんの言葉の通りだと思った。
「ゆーちゃんって、いざっていうときはすごい行動力があるからね。ほら、合格した頃の
みなみちゃんの件とか、今作ってるゆい姉さんへのえ――」
「お、お姉ちゃんっ! 言っちゃダメッ!」
「ご、ごめん」
 ゆーちゃんにあわてて口を塞がれて、まだまだゆい姉さんの誕生日が先だったことを
思い出した。いけないいけない、ついやっちゃうところだったヨ。
「私に、何?」
「ううんっ、何でもないの! 何でもっ!」
「ふうん。ま、いっか」
 気を取り直して、またお酒呑みへと戻るゆい姉さん。こういうとき、細かいコトを気にしない性格ってのは得やね。
「でも、私もゆたかのそーゆーポジティブなトコロが好きだよ。さすがに『新しい環境で頑張りたいっ!』って
言って陵桜に行ったのにはビックリしたけど」
「きっと、ゆいちゃんの背中を見て育ったのね」
「ぶふぉっ!」
 ちょっ、なんでお母さんの何気ない一言で酒を噴くんデスカ。
「かっ、かなたお姉ちゃん、どーしてそーゆー恥ずかしーこと言うのかなー」
「あら。だって、ゆいちゃんだって婦警さんになったり、結婚を決意したりってポジティブじゃない。
そのお姉ちゃんの背中を見て育ったから、ポジティブになったんだと思うな」
「そ、そうなのかなー……」
 照れたようにうつむくゆい姉さんに、恥ずかしそうにうつむくゆーちゃん。うん、二人ともれっきとした姉妹だよ。
「それと、こなたもそうね」
「えっ、私も?!」
 そうは言っても、一番私がありえないと思うんですケド……インドア派だし、マイペースだし。
「だってそうじゃない。お料理を教えてあげたり、いっしょにお買い物をしたり。きっと、
ゆいちゃんがそうしているのを見て、自分もゆーちゃんにそうしようって無意識に思ってるのよ」
「うーん……そうなのかなぁ」
「ええ、きっとそう」
 そう確信を込められて言われると、私まで恥ずかしくなってくるヨ……
「そっかあ。じゃあ、私はかなたお姉ちゃんの背中を見てたのカナ?」
「ふぇっ?!」
 ぽつりと呟いたゆい姉さんの言葉に、お母さんまで顔が真っ赤になっちゃった。
「だって、おじさんとかなたお姉ちゃんの新婚家庭に遊びに行ったときは、いつもかなたお姉ちゃんの
ことばっかり見てたし」
「みんな"お姉ちゃん"の背中を見てたってことなんだねー」
「そう言われると、そういう気も……とゆーことは、お母さんがその元祖ってわけか」
 私はそう言うと、ゆーちゃんとゆい姉さんといっしょにPCの中のお母さんのことをじーっと見た。
「ううっ、恥ずかしい……」
 ふっふっふっ、これがさっきまで私たちが喰らった攻撃なんだよ。お母さんも少しは喰らいたまへー。
「あっ、もしもきよたかさんとの間に子供が出来たら、ゆたかにもお姉ちゃんになってもらおっと」
「こ、子供って……」
「まだまだ先だけどねー。きよたかさんが帰ってきたら、いっぱい、いーっぱい愛してもらうんだから!」
 そ、それって未成年の私らの前で堂々と言っちゃっていいんですかネ。
「ゆい姉さん、それってかなりキワドイ発言では……」
「ゆ、ゆいちゃん、ちょっと飲み過ぎたんじゃない?」
「はうぅぅ……」
 ゆい姉さんの爆弾発言に、私たちの顔はゆでダコのようにすっかり真っ赤になっていた。
「ううっ、きよたかさんかむばーっく! ぷりーずあわちゃいるどっ!」

 そんなこんなで、私たち"お姉ちゃんズ"(候補生一人含む)の宴は真夜中まで続けられた。

 *   *   *

「ふわぁぁ……」
「ふぁ……」
「はぁ~……」
 朝の台所に、三者三様のあくび。
 朝とは言ってももう十時過ぎで、お父さんは小説を書きに部屋籠もり中。私とゆーちゃんは、
お母さん監督のもと昨日の片付けをしていた。結局みんな睡魔で潰されたんだけど、ゆい姉さんは
あの後も一人でちびちびやってたらしく、空いた瓶がちょっとばっかり増えていた。
「お母さん、大丈夫?」
「ええ、私は大丈夫。ゆーちゃんはどう?」
「あ、私も大丈夫です。七時間ぐらい眠れましたから」
 まだちょっと眠たそうだけど、元気に答えてくれた二人。そうかと思えば……
「ううっ、アタマ痛い……」
「大丈夫? お姉ちゃん」
「ゆーちゃん、二日酔いの人はほっとくに限るよー」
 きっちりと代償を払わされた、ゆい姉さんのような人もいるわけで。
「まったく、ゆい姉さんってばはしゃぎすぎなんだから」
「面目ないっす……」
 テーブルに突っ伏しながら、ゆい姉さんが白旗とばかりに手をひらひら振る。
「でも、珍しいんだよ。あそこまでお姉ちゃんがはしゃいで呑んでたのって」
「そうなの?」
「うん。私が陵桜に合格した夜にもたくさん呑んでたけど、それくらいしか見たことなかったから」
「あはは……かなたお姉ちゃんが来てくれたから、つい」
 ゆい姉さんはてへへーと笑って、ノートPCを自分のほうに向けた。
「夢じゃないんだよねー……ちゃんと、いるんだよねー」
「ええ、ちゃんといるわよ」
「よかったー」
 にゅふふと、緩んだ笑顔のゆい姉さん。
 そっか……やっぱり、ゆい姉さんも嬉しかったんだね。
「はいっ、お姉ちゃん。昨日の残り物だけどお味噌汁だよ」
「おー、ありがとー」
 がばっと起きあがったゆい姉さんは、ゆーちゃんから差し出された豆腐のお味噌汁をちびちび飲み始めた。
「ふぅ、生き返る……」
 まったく、どっちが姉でどっちで妹なんだか。でも、そう考えると……
「ゆーちゃん、きっといいお姉ちゃんになれるよ」
「えっ?!」
「そうね。ゆーちゃんなら、きっと優しいお姉ちゃんになれるわね」
 おや、元祖お姉さんなお母さんからも太鼓判が。
「あのっ、と、突然どうしてです?」
「なんとなくねー」
「ええ、なんとなく」
 そんな風にごまかしてみたけど、見本になったり予習できたりする人が間近にいれば、そりゃあねぇ。
「でも、お酒の呑みすぎまでは見習っちゃだめだヨ」
「ちょっ、こなたってば失敬だなー」
「ごめんなさい。さすがに私もゆいちゃんの飲みっぷりは真似しちゃいけないかなって……」
「そ、それはさすがに……」
「かなたお姉ちゃんまでっ?! ってゆーか、ゆたかまで目をそらさないでよ!」
 ゆい姉さん、それは自業自得ってやつデス。
「ぷっ……あはははっ!」
「ふふふっ」
「あーもうっ、笑うなっ! 婦警なんだぞーっ!」
「ご、ごめんってばー!」
 でもさ、そういうパワフルなトコロも含めてゆい姉さんなんだよね。
「ごめんね、ゆいちゃん」
「ううっ、かなたお姉ちゃんのばかー」
 お母さんもいつも以上にハイテンションだし……これも、ゆい姉さんのおかげ。
 みんな、そーゆー風に楽しくしてくれるゆい姉さんが大好きなんだから。

 だから、これからもよろしくね。ゆい"お姉ちゃん"。


















コメントフォーム

名前:
コメント:
  • 3年後、ゆいの子供に「おねえちゃ~ん」と懐かれる ロリ大学生ゆたか。
    12年後、「おねえちゃんって歳じゃないから ゆたか叔母さんって呼ぶね」と宣言されて蒼白になる ロリ社会人ゆたか。
    どちらも萌える… -- 名無しさん (2011-04-15 09:22:23)
  • 続き楽しみにしていますね -- 名無しさん (2007-08-08 22:25:41)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー