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100% D-Drive Love

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だれでも歓迎! 編集
「二人とも、おはよ~…」
「おはよ~…って、こなちゃん!?」
「ど、どうしたのよ、その顔。何かあったの?」
 かがみとつかさが驚くのも無理はなかった。その朝現れたこなたの目ははれぼったく充
血し、顔色は真っ青。どうみても一晩泣きはらした後という態だった。
「はふぅ~、それがさ、私の嫁が引退するんだよぉ……」
「は、はぁ? 嫁が引退って、離婚するってこと? そりゃ、あんたみたいな甲斐性なし
は離婚されても仕方ないと思うけど……よくわからんな……」
「お、お姉ちゃん何気に酷いね……」
「う……」
 つかさにいわれて、かがみは少し後悔する。こんな風に本気で落ち込んでいる友人をみ
るのは初めてだったから、どういう態度をとればいいのかわからなかった。迷った結果、
ついいつも通りのきつい物言いをしてしまったのだ。
「違うよかがみ、失礼だなぁ~。今やってるネトゲの私の嫁がね、ゲームやめるっていう
んだよね……」
「あ、ああ、そう……ゲームの話なのね……」
“なんだ、また二次元の話か……。まったく、心配して損しちゃったわよ”
「うぅ……かがみ、わかってくれないんだね……。ゲームっていっても、中に人がいるのは
リアルと変わんないんだよ? 一緒に過ごした時間は仮想じゃないんだよ?」
「さよけー……」
「ああ、思い起こすのは二人で過ごした楽しい時間ばかりだよ。闇将軍戦のとき全滅直前
にアドリブで連携だしてぎりぎりで倒したこととか、苔が出なくて朝まで巣で過ごしたこ
ととか、一緒に飛行鯨から地上を眺めたこととか……」

 うるうると涙を流すこなたをみて、かがみは友人が可愛そうだと思う気持ちと同時に、
何か名状しがたい感情がわき上がるのを感じていた。こなたがネットゲームの話をするた
びに感じるその感情がいったい何なのか、かがみはあえて深く考えようとはしなかった。
それがわかった瞬間、自分の中で何かが変わってしまう予感がしていたから。
「ふーん、で、なんでその人はゲームやめるんだって?」
「それがね、受験があるからだってさぁ、あ~あ~……」
「そっかー、そりゃ大変だー……って、あんたもその受験生だろがーっ!!」

「お姉ちゃん、ノリ突っ込みもできるんだね……」


■100% D-Drive Love


“まったく、あいつには受験生っていう自覚がないのかよ!”
 かがみは腹を立てていた。
 結局こなたは一日ずっと元気がなかった。かがみはそんなこなたをみるたびにいらいら
し、その二人を見比べてはつかさとみゆきがおろおろする。そんな一日だった。
 何に腹が立ったかといえば、普段は友達の感情に敏感で気配りが効くこなたが、そんな
周りの状況に無頓着だったことだ。そして、それだけこなたを落ち込ませたそのゲーム内
の相方に対しても腹が立った。こなたが落ち込む理由がいまいちぴんとこないことも、い
らだちに拍車をかけた。


“私たちみたいに毎日顔を合わせてるわけでもないのに、そんなに大事な友達だったのか
な?……あ、そういえば嫁は男だっていってたっけ。……もしかして、恋愛感情があった
りして?”
 そう思った突端、かがみは胸に突き刺さるような痛みを感じた。そしてその痛みが、ま
たかがみをいらいらさせるのだった。
“あー、もう、やめやめ!”
 振り払って勉強に励もうとするけれど、気がつけば思考はまたもこなたのことに舞い戻
っていく。

“そういえばこなたがやってるゲームってどういうのだろう、面白いのかな?”
 ふと思い立ってパソコンで調べてみる。この間の模試が良かったからと買ってもらった
パソコンだった。検索ででた公式サイトをみると、よくある感じのファンタジー物で、二
週間の無料期間があるようだった。
“ふーん、ちょっと試しにやってみようかな。土日もあるし……少しくらいいいよね?…
…あいつのことも、ちょっとはわかるかもしれないし”


“あら、なかなか可愛いじゃない”
 自分が作ったキャラクター『Kyocyan』を動かしながら、かがみは思った。小さくて可愛
いらしい種族があったのでそれを選んだ。クラスはドルイドというものを選択。回復魔法
や敵を弱体する魔法が得意らしい。
 とてとてと跳ねるように走るKyocyanを動かしているうちに、かがみはなんとなく楽しく
なってきた。なんといっても、周りのキャラクターを皆プレイヤーが操作しているという
のが新鮮なのだ。広場の噴水で雑談している集団、何かの売買の呼びかけ、なぜか一列に
なって川でひたすら釣りをしている人たち。交わされている言葉の内容は全く理解できな
かったけれど、それもまた、かがみを都会にやってきた新米の冒険者という気分にさせる
のだった。

 気がつけばかがみは没頭していた。
 ただ敵を倒すだけではなく、NPCの依頼に応えることでもお金やアイテム、経験値をも
らえることを知った。敵を倒して拾ったアイテムは、店に売らずにオークションを通して
他のプレイヤーに売ることを覚えた。その変化する相場は株取引のようで面白く、何より
他の誰かと繋がっているという気持ちにさせてくれた。
“ふふん、私も随分強くなったんじゃない?”
 巨大いもむしの死体を漁りながらかがみは思う。このいもむしの触角がポーションの素
材になるため、オークションで高く売れるのだ。
“あ、あんなところに洞窟。中になにがあるんだろう?”
 見ると、山腹に大きく口を開いた洞窟があり、今しも強そうな冒険者たちが入っていく
ところだった。
“ちょっといってみようかな。装備も新調したし、私も強くなったから、だいじょうぶだ
よね”

“って、なんなのよこれはー!”
 かがみは大量の敵に追いかけられていた。
 見たことがないそのゴブリンに会ったとき、もっと警戒するべきだった。そいつは、か
がみに会うとまっしぐらに逃げだし、近くにいた敵全部を引き連れて戻ってきたのだ。初
心者エリアでしか狩りをしたことがないかがみには、敵AIに対する知識が欠けていたのだ。
“と、とりあえず洞窟から外にでれば助かるかも”
 かがみはこれまでの経験から、敵キャラクターはダンジョンなどの入り口を超えてまで
追ってこないことに気づいていた。
 そのとき、誰かのチャットがとびこんできた。

Konakona:「Kyocyan、止まって止まって! 剥がすから逃げないで~」


“あれ、私話しかけられてる? って、止まれってっていわれてもー!”
 移動をオートランにして、かがみは慌てて返信をする。
Kyocyan:「と、止まったら死んじゃいます!」
Konakona:「大丈夫だから! わたしを信じて!」
“信じる信じないの前に、あんたのこと知らないわよ!”心のなかでつっこみをいれなが
らも、かがみはしぶしぶ立ち止まった。ふりかえってみると、最初は四、五体だった敵が、
いつのまにか十数体にまでふくれあがっていた。
“げ、こんなにいたんだ…”
 呆然と立ちつくすかがみに迫るゴブリンの群れ。今にも攻撃が届きそうになったそのと
き、突然全ての敵が踵を返してどこか別のほうに駈けだしていった。
“あ、あれ、どうしたんだろう?”
 みると、ゴブリンたちは誰か別のキャラクターに殺到し、猛然と攻撃を始めていた。醜
悪なモンスターに囲まれて、青い長髪がちらちらとみえている。
“あ、さっきの人がなにかスキルでひきつけてくれたのかな? って、あの人が死んじゃ
うじゃない!”
 慌てて回復魔法をキャストしたとき、青髪のキャラクターがスパークを発しながら剣で
回転攻撃を繰りだした。一瞬閃光が走ったかと思うと、次の瞬間、気がつけば全てのゴブ
リンが地に倒れ伏していた。
“い、一撃で、一撃で撃破!? なんかすごいわね”
 男ながらも腰まで伸びた青色の長髪。金象嵌細工の板金鎧は白銀に光り、対になったタ
ワーシールドにはなにかの紋章が刻まれている。深紅に染め上げられたマントは不思議な
色合いの毛皮で裏打ちされていて、名のある逸品にみえた。そして腰に佩かれた長剣は、
絵にも描けないほどなんか凄そうだった。
 見るからに高レベルのキャラクターだ。今日始めたばかりのかがみとは比ぶべくもない
だろう。
“でも……なんでだろう、私、この人を知ってる気がする…”
 かがみはなぜか、不思議な安心感を覚えていた。人混みのなかに家族をみつけたような、
失くしていた大事なものがみつかったような、そんな安堵感だった。
“って、あれ……? Konakonaって……もしかしてこの人……こ、こなた!? この間チャ
ットしてるの横でみてたとき、確かそんな名前のキャラだったはず……”

Konakona:「むふ~、ヒールありが㌧ヽ(≡ω≡.)」

“こなただー! 絶対こなただー! ってかどんだけ再現率高い顔文字なんだよ!”
 まさか実際に会えるとは思っていなかった。ちょっと試してみるつもりでゲームを始め
たかがみは、こなたも同時にプレイしている可能性を完全に失念していたのだ。
“ど、どうしよう……私だっていったほうがいいのかな…でも、あれだけいっといて私も
ゲームしてるなんてあれだよなー……”
Kyocyan:「いえ、こちらこそありがとうございます、助かりました~」
 迷ったあげく、かがみは他人のふりをすることにした。友人をだますようで、少し罪悪
感を覚える。
“でもこいつも、昨日の今日でまたゲームやってるのな……”
 そう思うと、会えて嬉しかった気持ちがほんの少ししぼんだ気がした。
Konakona:「よいよい。それよりKyocyan、今ZONEしようとしてたでしょ? だめだよ
ー、ゾーン際にAggroのMOB放置すると、洞窟入ってきた人がおそわれてMPKになっ
ちゃうよ?」
“日本語でおk”
Kyocyan:「あ、うん……えっと、所々わからない単語があるんですが…」
Konakona:「あ、あ~、エリアが切り替わるところに逃げると、追ってきた敵はしばらく
そこに留まってるの。AggroなMOBは相手から襲ってくる敵って意味で、MPKはモンス
ターを使ってプレイヤーを殺すっていうことだよ」
Kyocyan:「あ、そっか、入ってきたところにあれがいたら、すぐ死んじゃいますね……。
ごめんなさい」
Konakona:「Kyocyan、もしかして、始めたばっか?」
Kyocyan:「は、はい、こういうゲーム自体初めてで……」
Konakona:「おお~! すごい、本物の初心者だ、久しぶりに会ったよ~。最近低レベル
の人もみんな廃人のALTでさ~」
“何が嬉しいのかわからん、ってかまたでたよ謎単語! alternativeのことか?”
Konakona:「ね、よかったら一緒に狩りしない? わたしMentorするし!(≡ω≡.)b」


 Mentorとは自分のレベルを相手に合わせて下げることらしい。高レベルのキャラクター
のままだと、弱いMOBを倒しても経験値やアイテムがもらえないとのことだった。
Konakona:「ホメロスの『オデュッセイア』からきた単語なんだよね」
“ほんとにこいつ、こういう単語だけは詳しいのな……。少しはその労力を勉強にも振り
分けろよ!”
 こなたと一緒に狩りをしながら、かがみはどうしてこういうことになったのかと首をひ
ねっていた。まさかこなたとパーティを組む日がくるなんて。
 こなたが敵を連れてくる。かがみも一緒に攻撃しながら敵に弱体魔法をかけ、こなたに
は強化魔法を唱え、回復魔法で傷ついたこなたを治していく。
“これじゃ、私こなたの保護者みたいじゃない。……なんか、リアルと関係同じなような
……?”

「わたしがTankでTauntするから、KyocyanはHateに気をつけてDebuffとHealして
てね」
(こなたが防御力高いから敵の注意をひきつける技をつかうので、敵の攻撃を受けないよ
うに弱体や回復をしててね、ということらしい)
「ADDしたら、DRUはRootがあるからCCしてDOTで持ちこたえるんだ~」
(複数の敵におそわれたら、ドルイドの足止めする魔法でうまく引きずり回して、毒のダ
メージでなんとか倒すということらしい)
「CasterはAoEDDあるからかならず先に倒すんだよ。MeleeはRootかけて無視しちゃお
う」
(魔法使いの敵は範囲攻撃のダメージ魔法を使ってくるから、近接攻撃をする敵より先に
倒すらしい)
「遠距離から弓で撃たれたら、関節を外して腕を伸ばして攻撃するの。その激痛は波紋で
和らげてね……ごめんウソ」
(漫画かなんかのネタらしい)

 楽しかった。
 戦闘は、ただクリックして敵を倒すだけではなく、状況に応じて的確な判断をしていく
必要があって、知的な面白さがあった。
 なによりこなたと一緒になにかをするのは楽しかった。
 戦闘中は忙しく、頻繁にチャットをすることはできない。自然とお互いの動きを予測し
てそれに合わせて行動する必要があった。
 こなたはどう動くんだろう、こなたはなにを狙っているんだろう、こなたはなにを考え
ているんだろう。
 自分が予想した通りにこなたが動いて、上手く連携を重ねられたときはわくわくした。
不意のADDであわてて操作を間違えてしまい、こなたを死なせかけたときはどきどきした。
“なるほど、こいつがネトゲにはまってるのはこういう部分なのかも……。顔はみえない
けど、行動で相手のことがわかるんだね”

Konakona:「よーし、あとはボスを倒すだけだー!」
 二人は洞窟の最深部まできていた。広大な地底湖のほとりにピラミッド状の遺跡が建て
られている。その頂上にゴブリンが三体ほど佇んでいるのがみえた。そのうちの一体は他
よりも体が大きく、巨大な戦斧を持っていた。焚かれたかがり火がその青銅色の肌にぬめ
ぬめと光り、かがみは忌まわしさを覚える。
Kyocyan:「あれ倒すとなにかいいアイテム落としたりするの?」
Konakona:「むふ~、ひ・み・つ。でもいいことあるよ~?」
Kyocyan:「そうなんだ、楽しみっ。でも三体いて動きそうもないなー。全部一遍にきそう。
……だ、大丈夫かな?」
Konakona:「大丈夫、あなたは死なないわ、わたしが守るもの……」
“はいはい、綾波綾波。こないだ一緒に新劇場版見にいったもんねー。って、そういうの
はみなみちゃんのが似合ってると思うよ”


Konakona:「じゃ、いくよー! 大丈夫、今まで通りにやればいいんだよ~」
 そういってこなたはボスに向かっていった。こなたが範囲Tauntを発動するのに合わせ
てボスと片方のMOBにRootをかけていく。スロウで敵の攻撃速度を遅くして、攻撃タイ
ミングに合わせてシールドをこなたにかける。ヒールワークはリジェネとヒールを重ねて
効率よく。
 Kyocyan:「倒した! あと一体だー!」
 取り巻きの二体を倒し、残るはボス一体だけになっていた。
Konakona:「楽勝、楽勝~♪」
 そのボスもあと少しで倒せるというときだった。ボスの持っていた斧が赤く光ったかと
思うと、こなたの鎧に向けて打ち下ろされる。すると、こなたの鎧がこなごなに割れて飛
び散った。
Konakona:「うあ、やば、アーマーブレイク! こいつこんなの使って来たっけー!?」
 その技の効果はかがみにも一目瞭然だった。こなたの被ダメージは格段に跳ね上がって
いた。
“やばい、回復おいつかない! 次に食らったらこなたが死んじゃう!?”
 咄嗟にかがみはある回復魔法をキャストする。
 コンプリートヒール。
『これ、HPは全快させるけどHateが極大で、使ったら確実にヒーラーにタゲいっちゃう
の。使っちゃだめだよ?』こなたがそういっていた魔法だった。
 案の定、ボスはかがみへ猛然と攻撃する。一撃ごとに受けるダメージはヒールの回復量
を上回っていて、死は目前だった。こなたも賢明に攻撃していたが、ボスを倒しきる前に
かがみのHPが尽きることは、二人ともわかっていた。
“あーあ、だめかー。ま、こなたが無事ならいいかな? なんか私ってやっぱこういう役
割なんだよねー”
 かがみがそう諦めかけたとき、こなたの剣が青白く輝きだした。
 光輝を纏ったその剣が振り下ろされると、炸裂したような効果音と光の爆発を放ち、ボ
スに大きなダメージを与えた。
“…あ、あれ? こなたのスキル技、リキャストまだじゃなかったっけ?”
 あわててかがみも自分のスキル技を繰り出す。二つの技が合わさって、派手なエフェク
トが発動した。
 その連携による追加ダメージが、ボスの息の根を止めたのだった。

Konakona:「やった~!!」
Kyocyan:「倒せた~!」
Konakona:「ふひ~、ぎりぎりだったね」
 こなたの隣に座って体力を回復しながら、かがみは心地よい充実感を感じていた。
Konakona:「ほら、Kyocyanみてみて、はじまるよ~」
 こなたがそういったとき、二人がいた地底湖に変化が起き始めた。静謐な水面の奥のほ
うから、細かな光の粒が大量に浮き上がってくる。それはハッブル望遠鏡が写した銀河の
写真のように、ほのぐらい洞窟を青白い光で満たしていった。
 Kyocyan:「わ! 綺麗~。これって、なんの光?」
 光の粒は水面から浮き上がり、蛍のようにあたりを飛び交っている。そのうちの一つが
かがみの近くまできたとき、その正体がわかった。
Kyocyan:「あ、もしかして妖精? 可愛い!」
 体長十cmほどのその生き物は、すらりとした少女の姿態に昆虫のような羽をもっていた。
体のところどころに宝石のような発光器官を持ち緑色の体色をしたそれは、ルネ・ラリッ
クの工芸品のようだった。
Konakona:「うん。ここ、もともとは妖精の住処だったんだけど、ゴブリンが住み着いち
ゃったんだよ。それで、わたしたちが解放してあげたってわけ」
Kyocyan:「こな…さんがいってた『いいこと』ってこれのことね。確かに凄い綺麗……」
Konakona:「でっしょ~? わたしもこれ初めてみたときは不意打ちだったから泣きそう
になったよ。あ、実利もあるよ。あとでチョプロン村に戻ったとき、徴税官からいいアイ
テムもらえるの」
 かがみは不覚にも深い感動を覚えていた。それは眼前の夢幻的な光景から受けたものだ
けではなく、二人でなにかを成し遂げたという達成感からもきていた。
“これは……思い出になるわね……”
 きつかったり、難しかったり、眠かったり。そういうことに耐えて誰かと成し遂げたと
いう経験は、それがどんなことであれ思い出になるのだ。


“今ならわかるよ、こなた……。だって私も、今のあんたと別れたくないって思うもん…
…”

 そう思ってこなたの方をみたとき、かがみはあることに気づいた。
Kyocyan:「あれ? こなさん、持ってた剣どこいったの?」
 敵のスキル技をうけて壊れていた鎧は直っていたが、腰に下げていた強そうな剣は、い
つのまにかなくなっていた。
Konakona:「あー……うーん、あれね~……。あの、最後に出した技あったでしょ? あ
れってウェポンスキルっていって、武器壊して出す技なんだよね」
Kyocyan:「え……あの、よかったの? あれ、なんか凄い強そうだったよね」
Konakona:「うん、大丈夫だよ。レアっちゃレアだけど……どうしてもKyocyanにこの光
景みせてあげたかったんだ~」
 かがみは嬉しい気持ちと同時に釈然としないものを感じていた。こなたがなにか凄い剣
を拾ったという話を、黒井先生と話しているのを聞いたことがあったのだ。なにをいった
ら良いのかわからずだまり込んでしまったかがみに、こなたがぽつんといった。

Konakona:「実はさ、わたしこのゲーム辞めようと思ってるんだよね」
Kyocyan:「え……」
 かがみの背筋に冷たいものが走る。確かに辞めろといったのは自分だった。いつまでも
遊んでないでリアルの将来のことも考えろと、口やかましくいい続けてきた。
Konakona:「わたしも昔凄い仲良かった友達がいてね、ゲーム内で結婚もしてたんだけど、
その人受験で辞めちゃって……。ショックだったよ」
Konakona:「この洞窟もさ、実はその人と初めて会ったところなの。で、辞める前に最後
の思い出巡りしてたとき、Kyocyanと会ったってわけさ。……そのときはわたしが逃げよ
うとしててね、その人がヒールしてくれたんだけど、ヒールTauntで跳ねちゃって、逆に
その人を殺しちゃったんだよ。だから……Kyocyanのことも放っておけなかったのかな」
 いつものかがみならこういう話を聞いていらついていただろう。今なら自分がいらつい
ていた原因がよくわかる。自分の知らないこなたが、自分の知らない人に思いを寄せてい
ることが嫌だったのだ。
 でも今は、このこなたも知ることができた。そして多分、その人に寄せた思いと同じよ
うなものを、かがみにも寄せてくれている。
Kyocyan:「ショックなのはわかるけど……だからって辞めることないんじゃない?」
“せっかく私に会えたのに”
 その言葉はいえずに飲み込んだ。
Konakona:「ん~ん。辞めようと思ったのは、それが原因じゃないんだ。そんなことで落
ち込んでたら、リアルの友達に心配かけちゃってね……。考えたらわたしも受験生なんだ
よ。なのにわたしゲームばっかやってて、呆れられちゃったの。その人はほんとにいつも、
わたしのこと考えてくれてて、心から心配してくれて……。ネトゲの世界は居心地いいけ
ど、やっぱり大事なのはリアルの友達かなって……ね」
“そ、それって……私のこと……だよね……”
 不意打ちだった。こなたがネトゲ内でかがみの話を持ち出してくるなんて思わなかった
“やば……私顔超赤いよ……”
 そう思うと、今まで自分が正体を隠してこなたと話していたことが急に恥ずかしく、ま
た後ろめたく思えてきたのだった。
 それでも、こなたがこんな風にかがみのことを考えていたことを知って、かがみは喜び
を抑えることができなかった。いつもきつい物いいばかりしてしまう自分のことを、心の
どこかでこなたは嫌がっているのではないか、そういう不安をぬぐうことはできなかった。
つんつんしてる自分のこともこなたは『ツンデレ』だといって受け入れてくれる。そのこ
とにあぐらをかいていたのではないかと、眠れない夜を過ごしたこともあった。
“でもこなた……私はそんなにできた人間じゃないよ。ネトゲやめろっていうのだって、
多分……嫉妬混じりだ。だから……”


Kyocyan:「でもこなさん、私……私はまたこなさんに会いたい。……その人だって、こな
さんがやりたいことできなくて辛い思いしてることを望まないと思う。こなさんが落ち込
んでるのを心配してたんでしょ? それってこなさんが悲しい顔してるのをみたくなかっ
たからじゃない?」
Konakona:「Kyocyan…わたしもKyocyanに会いたいと思うけど……でも……」
Kyocyan:「別にさ、すっぱり辞めなくてもいいじゃない? 土日だけとか時間きめて、の
んびりやってけばさ。思い悩んで無理に勉強するより、そのほうがこなたらしいわよ」
Konakona:「……そ、そうなのかな…って!? Kyocyan、なんでわたしの名前……!」
“……え?”
 一瞬なんのことかわからなかったかがみは、ディスプレイをみて青ざめた。そこには『こ
なた』の文字が燦然と輝いていた。
“……あああああああぁぁー! しまった、手が滑ったー! やばい、ごまかせー!”
Kyocyan:「……え、えっと? こな、こなた……こなたん。そうそう、こなたんってあだ
名で呼ぼうかなっておもっただけで……え? もしかして本名こなたっていうんだ!?」
Konakona:「……え、あー! そういうことだったんだね。しまった、本名ばらしたー!」
Kyocyan:「……あ、あっはっはっは」
Konakona:「あっはっはっはっはー!」
“た、たすかったー!”

Konakona:「それじゃ、わたし落ちるねー」
Kyocyan:「うん、私も。今日は本当にありがとう!」
 二人はチョプロン村に戻っていた。もらったアイテムを整理し、新しく魔法もいくつか
覚え、そうして、お別れの挨拶をする。
Kyocyan:「また明日も……会えるかな? 多分私、土日の夜くらいしか入らないと思うけ
ど」
Konakona:「うん! わたしもそのくらいのペースにするよ~。INしたらTELLするから
ねっ!」
Kyocyan:「うん、私も入ったら教える!」
Konakona:「じゃあねー、バイバイ(≡ω≡.)ノシ」
 そういってこなたは落ちていった。

“うぅーーん、疲れたー!”
 かがみはログアウトして大きく伸びをする。ずっと同じ姿勢でいた体はこわばっていて、
ばきばきと音を立てた。
“楽しかったなー。……って、でもあんな約束しちゃって、私も受験大丈夫なのかよ!?”
 今のかがみにはこなたのことがよくわかった。ついのめりこんでしまう魅力がネトゲに
はあった。事実、落ちようとするときも身を切られるように辛かったのだ。
“まあ、いいや、悩んでも仕方ないし。さ、寝よ寝よ”
 そう思ってベッドに向かったかがみは、窓の外をみて驚愕する。
“あ、あれ……ナンデダロ……外、明るいよ……?”


 月曜日。
 眠い目をこすりながらかがみはつかさと共にこなたのことを待つ。
「お姉ちゃん大丈夫? 夜遅くまで根つめすぎなんじゃないかな? あ、あたしはすぐ寝
ちゃってるからわかんないけどね……」
“違う、違うのよつかさー! そんなまともな理由じゃないのよー! ああ、そんな目で
私を見ないでー”
 泣きながら顔を逸らすかがみをみて、つかさの頭に疑問符が浮かぶ。
「? ま、いいやー。あ、こなちゃんきたよー!」
 みると、人混みの中からぴょこぴょこと青色のアホ毛が飛びだしている。
“なんだ、こっちのこなたはほんとちっちゃいなー”
 そう思って、かがみはどうしても口元がほころぶのを止められなかった。
 今日もいろんなことを話そう。土日も沢山話したけど、こっちのこなたとも話したいこ
とがいっぱいあるんだ。
 待ってられなくて、かがみは駆けだした。腕をふりながらこなたに呼びかける。

「おーっす、こなたー!」













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  • ネトゲはやった事無いです…やり始めたら抜けられなくなるのが怖いので。
    でもこういうSSで間接的に楽しめたので満足☆
    (TRPGのリプレイ記事みたいな感じで) -- 名無しさん (2011-04-29 22:37:20)
  • かがみんハマッとるww流石ゲーマーw


    ↓本気で書いてるかどうかは知らないけども
    こーゆーSS見てると楽しげだけど
    実際のネトゲは正直オススメは出来ないよ
    特にMMORPG…
    実生活に影響が出ない範囲でやれる自制心があれば
    止めないけどね -- 名無しさん (2010-07-28 20:47:39)
  • ネトゲーってオモシロそうですね!


    -- 名無しさん (2010-07-27 04:56:27)
  • レバ剣が!! -- 名無しさん (2010-03-07 17:13:24)
  • レバ剣クラッシャーこなた
    いい話だな〜 -- 名無しさん (2009-10-20 13:41:29)
  • レバ剣だろうな。 -- 名無しさん (2008-07-08 01:35:29)
  • レバ剣か!レバ剣壊したのか!? -- 名無しさん (2008-05-06 00:12:44)
  • なんか後日談が気になる話ですね。
    続きが気になります。 -- ほむ (2008-04-14 09:58:00)
  • ネトゲを全く知らない読み手にも分かるように
    初心者かがみの質問という形で自然に流れていくので楽しく読めました。

    即ち、色んな「読み手」を意識して作品を作られている姿勢に脱帽。

    流石「すばらしい日々」のアップロード後の作品批判にも冷静に対応されて、
    アンサー・ストリーの「マシマロ」を発表された方だと思います。 -- 名無しさん (2007-12-13 13:54:54)

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