私が『言霊』という単語を知ったのは具合が悪く散々寝込んだ後。
寝すぎで寝れなくなって、暇つぶしに読んでいた本によってだったと思う。
言霊の正確な意味を、その時まだ幼かった私は完全には理解していない。
ただ、言葉には凄い力があるのだ、と感覚的に理解しただけだった。
そんな昔の事を思い出した。
久しぶりにちょっと実家に帰ってきて、懐かしい匂いのする自分の部屋でその本を見つけたから。
古ぼけたハードカバーの本はあの頃より成長した今の自分にも少し重く、ページを捲って見ても少なからず子供が好き好んで見るような文体ではなかった。
子供の頃これを読んだのは、少しでも難しい本を読んで早く寝ようと思ったからだった気がする。
『言霊』
その単語の説明をして黒く踊っている文字を目で追った。
自分はその単語の正確な意味を分かっていないのが分かっていたから、知りたくて読んでいた。
妙に小難しく書かれていた説明文を何度も読み直し頭の中で自分流に租借する。
完全に租借する前に、私はお姉ちゃんに呼ばれたために急いで本を閉じた。
寝すぎで寝れなくなって、暇つぶしに読んでいた本によってだったと思う。
言霊の正確な意味を、その時まだ幼かった私は完全には理解していない。
ただ、言葉には凄い力があるのだ、と感覚的に理解しただけだった。
そんな昔の事を思い出した。
久しぶりにちょっと実家に帰ってきて、懐かしい匂いのする自分の部屋でその本を見つけたから。
古ぼけたハードカバーの本はあの頃より成長した今の自分にも少し重く、ページを捲って見ても少なからず子供が好き好んで見るような文体ではなかった。
子供の頃これを読んだのは、少しでも難しい本を読んで早く寝ようと思ったからだった気がする。
『言霊』
その単語の説明をして黒く踊っている文字を目で追った。
自分はその単語の正確な意味を分かっていないのが分かっていたから、知りたくて読んでいた。
妙に小難しく書かれていた説明文を何度も読み直し頭の中で自分流に租借する。
完全に租借する前に、私はお姉ちゃんに呼ばれたために急いで本を閉じた。
そうだった、忘れ物がないかを確かめに来ただけだった
自分がこの部屋にきた理由を思い出し、本を持っていこうか迷ったけど全部読みきることは無いのだろうと元の場所に戻した。
車の中で待っているはずの姉の元へと駆け出す。遅くなってごめんね、それとお母さん行ってきますと叫びながら私は玄関を開けて外へ出た。
助手席に座ると「さぁ行くぞわが妹よ!」とつい最近聞いたことがあるようなセリフが横から発せられ、
危険なデジャヴュを感じた私は慌ててシートベルトへ手を伸ばした。
だけどシートベルトを締めるより早く、車に乗ると暴走すると有名らしいお姉ちゃんはアクセルをふかして急発進した。
車の中で待っているはずの姉の元へと駆け出す。遅くなってごめんね、それとお母さん行ってきますと叫びながら私は玄関を開けて外へ出た。
助手席に座ると「さぁ行くぞわが妹よ!」とつい最近聞いたことがあるようなセリフが横から発せられ、
危険なデジャヴュを感じた私は慌ててシートベルトへ手を伸ばした。
だけどシートベルトを締めるより早く、車に乗ると暴走すると有名らしいお姉ちゃんはアクセルをふかして急発進した。
「た、ただいま~」
「ヤッホー! またゆたかをよろしくね! ゆたかもあんまり無理しちゃダメだよ」
「ヤッホー! またゆたかをよろしくね! ゆたかもあんまり無理しちゃダメだよ」
帰宅早々、私は小さく、お姉ちゃんは手を横にブンブンと振りながら玄関で叫んだ。
慣れなのか、居候させてもらっていた当初はお邪魔しますと言っていたが今では普通にただいまと言うようになった。
慣れなのか、居候させてもらっていた当初はお邪魔しますと言っていたが今では普通にただいまと言うようになった。
「おかえりゆーちゃん、そしてゆい姉さんもこんちゃー」
黒いタンクトップというラフな格好をしたこなたお姉ちゃんが一本だけ飛び跳ねている髪の毛を揺らしながら玄関まで迎えにきた。
家にいるからか、学校で見る時よりもゆったりしている感じがする。
あとおじさんに挨拶……と思ったけど出てこない。買い物かもしれない。
家にいるからか、学校で見る時よりもゆったりしている感じがする。
あとおじさんに挨拶……と思ったけど出てこない。買い物かもしれない。
「ゆい姉さんはお茶でも飲んでく?」
「もっちろーん!……って、いつもなら言うけど今日は遠慮。きよたかさんと会う約束があるのっさー」
「もっちろーん!……って、いつもなら言うけど今日は遠慮。きよたかさんと会う約束があるのっさー」
ハイテンションジェスチャーを繰り返しながら「じゃあねー」と笑顔で『☆』や『♪』を周りに振りまいて(私にはそう見えた)車に乗り込み帰っていった。
エンジン音を轟かせて車が見えなくなる。相変わらずのゆいお姉ちゃんだけど、あのテンションが少し羨ましい。
エンジン音を轟かせて車が見えなくなる。相変わらずのゆいお姉ちゃんだけど、あのテンションが少し羨ましい。
「ゆい姉さんは相変わらずだなぁ……ところでゆーちゃん何か飲む? それとも横になる?」
「え?」
「ただいまって言った声に元気なかったからね。気分悪いんじゃないかなって」
「ん、ちょっと酔っちゃって……でも、そんなに酷くないよ」
「え?」
「ただいまって言った声に元気なかったからね。気分悪いんじゃないかなって」
「ん、ちょっと酔っちゃって……でも、そんなに酷くないよ」
こなたお姉ちゃんは、私の体調が悪いとすぐに気づく。それも、ゆいお姉ちゃんより早く。
ちゃんと見てくれてるのは嬉しいんだけど、迷惑かけてばっかりだと落ち込んでしまう。
ちゃんと見てくれてるのは嬉しいんだけど、迷惑かけてばっかりだと落ち込んでしまう。
「そかそか。それならいいけど……んじゃ飲み物でも持ってくるからリビングでのんびりしててー」
ペタペタと私よりも少しだけ大きいお姉ちゃんが台所へ向かう。
その背中が、非常に遠く思える。きっと気持ちの問題だと分かっている。
だけどその気持ちは私には見えない。声も聞こえない。
言葉にすれば、何かが変わってしまうから。
それだけの力が『言葉』にはあるから。
絶対に言うつもりはない。
その背中が、非常に遠く思える。きっと気持ちの問題だと分かっている。
だけどその気持ちは私には見えない。声も聞こえない。
言葉にすれば、何かが変わってしまうから。
それだけの力が『言葉』にはあるから。
絶対に言うつもりはない。
翌日、お姉ちゃんは柊先輩達と遊ぶ約束をしているらしく朝の早いうちに起きていた。
いつものようにラフな格好で遊びに行こうとしているお姉ちゃんの体が妙に左右に揺れている気がして。
いつものようにラフな格好で遊びに行こうとしているお姉ちゃんの体が妙に左右に揺れている気がして。
「お、お姉ちゃん。なんだかフラフラしてない?」
「いやぁ、ちょっと寝不足みたいで。って、そんなにフラついてる?」
「目に見えてじゃないけど……いつもより歩幅が狭いような気がして」
「いやぁ、ちょっと寝不足みたいで。って、そんなにフラついてる?」
「目に見えてじゃないけど……いつもより歩幅が狭いような気がして」
お姉ちゃんがビックリしてる。何で分かるの?って言われているようで。
どう答えていいか分からない。見ているから、としか言えない。
お姉ちゃんがすぐに私の具合が悪いときに気づくのと同じようなものだと思う。
どう答えていいか分からない。見ているから、としか言えない。
お姉ちゃんがすぐに私の具合が悪いときに気づくのと同じようなものだと思う。
「ゆーちゃんって洞察力凄いんだねー。探偵なれるよ。バーローとか言ってみて」
「バ、バーロー……?」
「うーん……やっぱ蝶ネクタイとメガネつけたほうがいいのかなぁ」
「バ、バーロー……?」
「うーん……やっぱ蝶ネクタイとメガネつけたほうがいいのかなぁ」
お姉ちゃんや田村さんと話しているとそういう知識が増えたから、お姉ちゃんが何のアニメの事を言っているのか分かった。
前にお姉ちゃんとちょっとしたアニメの話をしていたらおじさんが複雑そうな表情をしていた。
嬉しいような、困っているような、そんな表情。
ゆきのやつ、怒るだろうなぁって私のお母さんの名前を言っていた。
前にお姉ちゃんとちょっとしたアニメの話をしていたらおじさんが複雑そうな表情をしていた。
嬉しいような、困っているような、そんな表情。
ゆきのやつ、怒るだろうなぁって私のお母さんの名前を言っていた。
「それじゃー行ってくるね。夕飯までには帰ってくるつもりだよ」
「分かった。でも、気をつけてね」
「分かった。でも、気をつけてね」
お姉ちゃんが玄関を開けると、隙間から蒸し暑い空気が入り込んできた。
うへぇとお姉ちゃんが変な声をあげて、一回こっちへ手を振って外へと出て行く。
一瞬呼び止めそうになった。だけどそれが何でかは認めなくて、言葉を飲み込む。
今日は何をしよう。外に出る気分ではなかった。具合が悪いわけではないけど、気分が重い。胸が痛い。
幸いか、今日は遊ぶ約束をしていなかったからリビングへと行ってテレビをつけた。
そろそろニュース番組が終わる頃で、画面にはここら一帯の天気予報が流れている。
ぼんやりと眺めていて、この地域の上に表示された晴れのち雨マークに気づいた。
うへぇとお姉ちゃんが変な声をあげて、一回こっちへ手を振って外へと出て行く。
一瞬呼び止めそうになった。だけどそれが何でかは認めなくて、言葉を飲み込む。
今日は何をしよう。外に出る気分ではなかった。具合が悪いわけではないけど、気分が重い。胸が痛い。
幸いか、今日は遊ぶ約束をしていなかったからリビングへと行ってテレビをつけた。
そろそろニュース番組が終わる頃で、画面にはここら一帯の天気予報が流れている。
ぼんやりと眺めていて、この地域の上に表示された晴れのち雨マークに気づいた。
お姉ちゃん……傘持って行ってないよね……
窓を開けて空を見上げる。眩しいぐらいに晴れていて雨が降るとは思えなかった。
ただ……蒸し暑くて気持ち悪い。すぐに窓を閉めて畳に横になった。
怠惰な一日になりそうで、これがもしこなたお姉ちゃんだったらかがみ先輩に叱られてるんだろうなと考えた。
簡単にその光景が想像できてしまって目を閉じる。
意識が暗闇に落ちる感覚が怖くて……でも、すごく落ち着いた。
ただ……蒸し暑くて気持ち悪い。すぐに窓を閉めて畳に横になった。
怠惰な一日になりそうで、これがもしこなたお姉ちゃんだったらかがみ先輩に叱られてるんだろうなと考えた。
簡単にその光景が想像できてしまって目を閉じる。
意識が暗闇に落ちる感覚が怖くて……でも、すごく落ち着いた。
昼ご飯はカップラーメンだった。おじさんは追い込み作業? らしく食べる時間も早くすぐに部屋に戻って行った。
テレビも面白いのが無くて、出されていた課題を少しでも終わらせようと机に向かう。
分からない問題が多くて、でもおじさんにも聞けないしお姉ちゃんは居ないしで飛ばしていたら空白が多くなってしまった。
お姉ちゃんに聞いても分からないままで空白のときは多いけど……聞くって事をしないだけで落ち着かない。
どこかに似たような例題が無いかなと教科書を見ていると屋根を叩く雨音が聞こえていた。
かと思えば太陽が雲に隠れたみたいで一気に部屋の中が暗くなり始める。
時計を確かめると3時で、そろそろ雨が激しくなるんじゃないかと思ってお姉ちゃんが心配になった。
傘を届けたほうが良かったのかな。
テレビも面白いのが無くて、出されていた課題を少しでも終わらせようと机に向かう。
分からない問題が多くて、でもおじさんにも聞けないしお姉ちゃんは居ないしで飛ばしていたら空白が多くなってしまった。
お姉ちゃんに聞いても分からないままで空白のときは多いけど……聞くって事をしないだけで落ち着かない。
どこかに似たような例題が無いかなと教科書を見ていると屋根を叩く雨音が聞こえていた。
かと思えば太陽が雲に隠れたみたいで一気に部屋の中が暗くなり始める。
時計を確かめると3時で、そろそろ雨が激しくなるんじゃないかと思ってお姉ちゃんが心配になった。
傘を届けたほうが良かったのかな。
しとしと、ぽつぽつ、ざーざーと。
だんだん雨が強くなってきて、心配になって私は玄関へ向かった。
お姉ちゃんが今何処に居るのかも分かっていないのに、傘を持って玄関を開けた。
お姉ちゃんが今何処に居るのかも分かっていないのに、傘を持って玄関を開けた。
「うぁああ! び、びっくりしたぁ。どしたのゆーちゃん、そんなに慌てて……」
「お、お姉ちゃん!?」
「お、お姉ちゃん!?」
開けたら丁度お姉ちゃんが目の前にいて、びしょぬれだった。
走ってきたのか肩を上下させて、肌に張り付いたTシャツを手で引っ張っている。
急いでタオルを持ってくるべきだったのに、前にお姉ちゃんに見せてもらった
田村さんが描いたという本みたいな事を考えてしまった。
一回首を横に振って、お姉ちゃんを家の中に入れる。
走ってきたのか肩を上下させて、肌に張り付いたTシャツを手で引っ張っている。
急いでタオルを持ってくるべきだったのに、前にお姉ちゃんに見せてもらった
田村さんが描いたという本みたいな事を考えてしまった。
一回首を横に振って、お姉ちゃんを家の中に入れる。
「待ってて、タオル取ってくるね!」
「ありがとー」
「ありがとー」
小さいタオルを一枚、あとそれだけじゃ足りそうになかったから、バスタオルを一枚掴んだ。
玄関に戻ると、お姉ちゃんが長い髪をぎゅうっと握って水を落としていた。
手を、足を、水滴が垂れていく。
普段跳ねている髪の毛もしっとりと落ち着いていた。
じっと見てしまい、それでも普通にタオルを渡す。
玄関に戻ると、お姉ちゃんが長い髪をぎゅうっと握って水を落としていた。
手を、足を、水滴が垂れていく。
普段跳ねている髪の毛もしっとりと落ち着いていた。
じっと見てしまい、それでも普通にタオルを渡す。
「……はい。お姉ちゃんタオル」
バスタオルを渡して、お姉ちゃんが体を拭いている間に私は小さいタオルでお姉ちゃんの頭をがしがしと拭いた。
すぐに水分を吸い込んで冷たくなるタオル。かなり濡れているらしい。
私の方が一段高い場所に居るから、そうされているお姉ちゃんが私を見上げてお礼を言った。
すぐに水分を吸い込んで冷たくなるタオル。かなり濡れているらしい。
私の方が一段高い場所に居るから、そうされているお姉ちゃんが私を見上げてお礼を言った。
「いやー、大変だったよ。体や髪は重いし、暑いんだか寒いんだか分からないし」
「柊先輩から傘借りなかったの?」
「ん。今日は家じゃなくて外にいたし……雨が降る前に別れたから」
「……どうして? 晩御飯にはまだ時間があるのに」
「柊先輩から傘借りなかったの?」
「ん。今日は家じゃなくて外にいたし……雨が降る前に別れたから」
「……どうして? 晩御飯にはまだ時間があるのに」
髪を拭いていた手を止める。
お姉ちゃんの髪が雨で肌に張り付いていて、そっと手を伸ばして肌から剥がした。
触れた表面は少し冷えていたけど、その奥が妙に熱い気がする。
お姉ちゃんの髪が雨で肌に張り付いていて、そっと手を伸ばして肌から剥がした。
触れた表面は少し冷えていたけど、その奥が妙に熱い気がする。
「やっぱ寝不足だと調子でなくて……少し頭痛がしたんだよね」
「だ、だったら早く着替えないと!」
「だ、だったら早く着替えないと!」
あの時。
お姉ちゃんが出かけるときに、やっぱり呼び止めればよかった。
何となく、体調が良くない事は気づいていたのに。
手を掴んでお姉ちゃんの部屋へと引っ張る。
お姉ちゃんが出かけるときに、やっぱり呼び止めればよかった。
何となく、体調が良くない事は気づいていたのに。
手を掴んでお姉ちゃんの部屋へと引っ張る。
「ま、待って。まだ完全に拭いてないから床濡れちゃうし」
「私が後で拭くから! それより早く着替えないとダメだよ!」
「私が後で拭くから! それより早く着替えないとダメだよ!」
お姉ちゃんが慌てて靴を脱いで上がった。
リビングだとクーラーがきいているからお姉ちゃんの部屋へ。
座らせて、着替えるように言うと台所へ戻って牛乳をレンジに入れた。
おじさんが何事かと思って見にきたから、お姉ちゃんが雨に打たれて寒そうだからと伝え、私に任せてくださいというと頼むよと部屋に戻った。
レンジが鳴り、牛乳を取り出しお姉ちゃんの部屋へ。着替え中だといけないからちゃんとノック。
入っていいよ~、と間延びした声が中から聞こえて、私はコップ片手に戸を開けた。
着替え終わって体は拭き終わっていたけど髪はまだ濡れていて、タオルで挟んで叩いている。
リビングだとクーラーがきいているからお姉ちゃんの部屋へ。
座らせて、着替えるように言うと台所へ戻って牛乳をレンジに入れた。
おじさんが何事かと思って見にきたから、お姉ちゃんが雨に打たれて寒そうだからと伝え、私に任せてくださいというと頼むよと部屋に戻った。
レンジが鳴り、牛乳を取り出しお姉ちゃんの部屋へ。着替え中だといけないからちゃんとノック。
入っていいよ~、と間延びした声が中から聞こえて、私はコップ片手に戸を開けた。
着替え終わって体は拭き終わっていたけど髪はまだ濡れていて、タオルで挟んで叩いている。
「はい、熱いかもしれないけど」
「ありがと」
「今はまだ体が冷えてるから体温が分からないけど、もうちょっとしたら体温計持ってくるから。
熱があったら薬飲んで、ゆっくり寝てないとダメだよ」
「お、おー……ゆーちゃんがてきぱきしてる……」
「ありがと」
「今はまだ体が冷えてるから体温が分からないけど、もうちょっとしたら体温計持ってくるから。
熱があったら薬飲んで、ゆっくり寝てないとダメだよ」
「お、おー……ゆーちゃんがてきぱきしてる……」
やっぱり寒かったのか、お姉ちゃんはホットミルクが入ったコップを両手で持って鼻をすすった。
濡れたタオルとお姉ちゃんの服を抱えて洗濯機へ持っていこうとするとお姉ちゃんがストップをかけてきた。
濡れたタオルとお姉ちゃんの服を抱えて洗濯機へ持っていこうとするとお姉ちゃんがストップをかけてきた。
「ゆーちゃん、心配しすぎだって。ちょっと具合悪くなったぐらいでそこまでしなくていいよ。看病フラグは嬉しいけど」
「いいの。お姉ちゃんだって私の具合が悪くなったらこれぐらい心配してるもん」
「いいの。お姉ちゃんだって私の具合が悪くなったらこれぐらい心配してるもん」
そ、そーかなー? とお姉ちゃんが首をかしげた。
私にはそう思えているからそれでいいの。
自己完結させてタオルと服を抱え、洗濯機へ持っていく。
水分を吸った布は重かったし、私の服も少し濡れたけど何とかなった。
再びお姉ちゃんの部屋に戻ると、タオルを頭の上に乗せたまま携帯を弄っていた。
私にはそう思えているからそれでいいの。
自己完結させてタオルと服を抱え、洗濯機へ持っていく。
水分を吸った布は重かったし、私の服も少し濡れたけど何とかなった。
再びお姉ちゃんの部屋に戻ると、タオルを頭の上に乗せたまま携帯を弄っていた。
「お姉ちゃん、寝てないとダメだよ」
心配して言ったのか、それともメールの相手への決してプラスではない感情の所為か。
分からないけど、言い方に刺を含んでいたのはすぐに分かった。
分からないけど、言い方に刺を含んでいたのはすぐに分かった。
「いや、かがみからメールで。『雨酷いけど大丈夫だったか』ってメール。それに大丈夫って返信してただけ」
大丈夫じゃ、ない。
朝から具合が悪かった。雨に濡れて余計に悪化した。
もし、かがみ先輩が傘を貸してくれていたら悪化しなかったんじゃないか。
今日、遊ぶ約束をしてなかったら悪化しなかったんじゃないか。
朝から具合が悪かった。雨に濡れて余計に悪化した。
もし、かがみ先輩が傘を貸してくれていたら悪化しなかったんじゃないか。
今日、遊ぶ約束をしてなかったら悪化しなかったんじゃないか。
自分でもわかっている。酷い解釈だって。
かがみ先輩に悪意はない。あるのは私の方。
でも、感情に蓋が出来ない。出来るのは、その感情を見ないこと。聞かない事だけ。
かがみ先輩に悪意はない。あるのは私の方。
でも、感情に蓋が出来ない。出来るのは、その感情を見ないこと。聞かない事だけ。
「そっか。でも……」
「わ、分かってるって。体調管理してなかった自分が悪いし。だから心配しないで」
「わ、分かってるって。体調管理してなかった自分が悪いし。だから心配しないで」
お姉ちゃんがコップとタオルを床に置いてもぞもぞとベッドに潜り込む。
すでに眠そうに見えるのは寝不足だったからなのか、具合が悪いからなのか。
すでに眠そうに見えるのは寝不足だったからなのか、具合が悪いからなのか。
「今日は私が晩御飯作るから寝てて。お姉ちゃんは食べれる?」
「ちょっ、ゆーちゃん本当に心配しすっ……ぅう、寒い」
「ほら。風邪は引き始めが肝心なんだよ」
「風邪……なのかな。バカは風邪引かないって言うじゃん?
あれって風邪を引いてることに気付いてなくて……つまりバカがつくほど鈍感なだけなんじゃないかな?
でも夏風邪はバカが引くっていうし……つまりやっぱり私はバカ? かがみによく言われるん――」
「ちょっ、ゆーちゃん本当に心配しすっ……ぅう、寒い」
「ほら。風邪は引き始めが肝心なんだよ」
「風邪……なのかな。バカは風邪引かないって言うじゃん?
あれって風邪を引いてることに気付いてなくて……つまりバカがつくほど鈍感なだけなんじゃないかな?
でも夏風邪はバカが引くっていうし……つまりやっぱり私はバカ? かがみによく言われるん――」
いつもより小さい声で、雨の音で消えそうな声で語るお姉ちゃんの唇に人差し指をつけた。
そんな恥ずかしい事、するつもりはなかったんだけど。
そんな恥ずかしい事、するつもりはなかったんだけど。
「お姉ちゃん、喋らないで」
ただ、ゆっくり休んでって意味だったはずだけどお姉ちゃんは驚きで口を閉じていた。
急に恥ずかしくなってタオルとコップを拾って部屋を出ようとする。
急に恥ずかしくなってタオルとコップを拾って部屋を出ようとする。
「ねぇ、ゆーちゃん」
しっかりした声で。
心配そうに、私の名前を呼んできた。
心配そうに、私の名前を呼んできた。
「何?」
「なんか悩み事あるならきくよ?」
「なんか悩み事あるならきくよ?」
どうして、そう思うんだろう。
そう口に出そうとして、出なくて。
首を少し傾げた。
そう口に出そうとして、出なくて。
首を少し傾げた。
「ゆーちゃん……私よりも苦しそうに見える」
「――何もないよ、ありがと。お姉ちゃん」
「――何もないよ、ありがと。お姉ちゃん」
お姉ちゃんは鋭い。
体調が悪い時、悩み事がある時、すぐに気付く。
でも自分に向けられている好意にはひどく鈍感だと思う。
体調が悪い時、悩み事がある時、すぐに気付く。
でも自分に向けられている好意にはひどく鈍感だと思う。
いっそ、この思考にすらするのも恥ずかしい秘密をさらけ出してしまえば……一瞬だけそんな事を考えた。
その一瞬の間でも、思わず赤面してしてしまうようなシーンを思い描いてしまった。
全部お姉ちゃんや田村さんによって与えられた知識のせいだ。
お姉ちゃんの顔を見ることが出来なくて、部屋を出た。
その一瞬の間でも、思わず赤面してしてしまうようなシーンを思い描いてしまった。
全部お姉ちゃんや田村さんによって与えられた知識のせいだ。
お姉ちゃんの顔を見ることが出来なくて、部屋を出た。
タオルを再び洗濯機に入れて、コップを洗おうと台所に向かう途中おじさんに会った。
「こなたのやつ、大丈夫か?」
「はい、今は寝てます。今日の晩御飯は私が作りますね」
「ご、ごめんね」
「はい、今は寝てます。今日の晩御飯は私が作りますね」
「ご、ごめんね」
おじさんがすごく申し訳なさそうに頬をかきながら謝ってきた。
忙しいのは仕事をしているからだし、私は自分でお姉ちゃんの看病をしたいからしてるわけで、謝られる要素はどこにもない。
忙しいのは仕事をしているからだし、私は自分でお姉ちゃんの看病をしたいからしてるわけで、謝られる要素はどこにもない。
おじさんの仕事は作家だったっけ。
ふと昨日の本を思い出した。本というより、意味があんまり理解できていない言葉を思い出した。
おじさんなら、言葉を扱う職業だから知ってるんじゃないかな。
おじさんなら、言葉を扱う職業だから知ってるんじゃないかな。
「おじさん、『言霊』ってどういう意味ですか?」
「んお? こ、言霊……? 言葉には力があるってやつだろ?」
「はい。どんな力があるのかなって」
「うわぁい、難しいな……んーとな」
「んお? こ、言霊……? 言葉には力があるってやつだろ?」
「はい。どんな力があるのかなって」
「うわぁい、難しいな……んーとな」
やっぱり感覚的に理解しているのか、説明するのが難しいのかおじさんが目を閉じて考え込む。
「例えば……良い言葉を発すると良い事が起こって、悪い言葉を発すると悪い事が起こる、とか。
あと、自分の意志をはっきりと声に出して言うことを「言挙げ」って言うんだよ。
で、それが自分の慢心……あ、思い上がりって事な。そうだった場合は悪い結果になる信じられたんだよ」
あと、自分の意志をはっきりと声に出して言うことを「言挙げ」って言うんだよ。
で、それが自分の慢心……あ、思い上がりって事な。そうだった場合は悪い結果になる信じられたんだよ」
よく覚えてたなオレー、なんて腕を組んでうんうん頷いている。
「でも、なんでいきなり?」
「実家にあった本に書いてあったけど、意味が完全には理解できなくて気になってたんです」
「ほー……そういうのを調べるっていうのはいい事だぞ」
「実家にあった本に書いてあったけど、意味が完全には理解できなくて気になってたんです」
「ほー……そういうのを調べるっていうのはいい事だぞ」
職業柄言葉に興味を持ってくれることは嬉しいのか、おじさんは笑顔だった。
でも急にはぁとため息をつく。追い込み作業中だったのを思い出したのかもしれない。
トホーと言いつつ自分の部屋へと戻っていくおじさん。背骨が曲がってる。
私はさっきのおじさんの説明を思い出していた。
でも急にはぁとため息をつく。追い込み作業中だったのを思い出したのかもしれない。
トホーと言いつつ自分の部屋へと戻っていくおじさん。背骨が曲がってる。
私はさっきのおじさんの説明を思い出していた。
私は、お姉ちゃんに嫌われては無いと思う。
心配してくれたり可愛がってくれたり、むしろ妹として好かれていると思う。
これは……思い上がりになるのかな。
良い方良い方に考えて、自分の気持ちを言ったら……悪い結果になる。
心配してくれたり可愛がってくれたり、むしろ妹として好かれていると思う。
これは……思い上がりになるのかな。
良い方良い方に考えて、自分の気持ちを言ったら……悪い結果になる。
もちろんそれがこの世の心理じゃないだろうし、例外もある。分かってる。
でも、今の私の気持ちをお姉ちゃんに言ったほうが良いか、良くないか。
そんなの……良くないに決まってる。良い結果なんか望めない。望めるはずが無い。
従姉妹で、妹としか思われてなくて、同性で。
みなみちゃんなら、こういう時どうするんだろうか。
言うのかな、言わないのかな。こんなの相談なんか出来ないけど。
でも、今の私の気持ちをお姉ちゃんに言ったほうが良いか、良くないか。
そんなの……良くないに決まってる。良い結果なんか望めない。望めるはずが無い。
従姉妹で、妹としか思われてなくて、同性で。
みなみちゃんなら、こういう時どうするんだろうか。
言うのかな、言わないのかな。こんなの相談なんか出来ないけど。
まだ晩御飯の準備には早かったから、体温計を持ってお姉ちゃんの部屋を訪ねた。
もう寝てしまっているらしくて、ノックをしても返事が無かったから起こさないようにゆっくりと戸を開ける。
もう寝てしまっているらしくて、ノックをしても返事が無かったから起こさないようにゆっくりと戸を開ける。
「お姉ちゃん……?」
もう一度読んでも返事は無い。
そろそろと近づいて顔を覗き込んでも、反応は無い。
私より子供っぽいんじゃないかと思う寝顔だった。
体温計を持ってきたけど、起こして熱を測るのも悪い気がする。
だからと言って寝ているお姉ちゃんを起こさないように熱を測るのも悪い。
しょうがないからベッドの端に体温計を置いた。
お粥を作って、食べてもらうときに測ろう。
じっと寝顔を観賞していたら、急に変な音がした。
音がする方を見ると机の上でお姉ちゃんの携帯が震えていた。
電話かなと思って音を切ろうと携帯を取った瞬間に震えが止まってしまった。
メールだったのかなと、悪いと思いつつ携帯を開く。
そろそろと近づいて顔を覗き込んでも、反応は無い。
私より子供っぽいんじゃないかと思う寝顔だった。
体温計を持ってきたけど、起こして熱を測るのも悪い気がする。
だからと言って寝ているお姉ちゃんを起こさないように熱を測るのも悪い。
しょうがないからベッドの端に体温計を置いた。
お粥を作って、食べてもらうときに測ろう。
じっと寝顔を観賞していたら、急に変な音がした。
音がする方を見ると机の上でお姉ちゃんの携帯が震えていた。
電話かなと思って音を切ろうと携帯を取った瞬間に震えが止まってしまった。
メールだったのかなと、悪いと思いつつ携帯を開く。
『メール着信 かがみ』
慌てて、閉じた。
苦しい。痛い。重い。そんな決して良いとは言えない感情が塊でやってきた。
携帯を元の場所において、もう一度お姉ちゃんの寝顔を覗いた。
苦しい。痛い。重い。そんな決して良いとは言えない感情が塊でやってきた。
携帯を元の場所において、もう一度お姉ちゃんの寝顔を覗いた。
私は、この胸の中にある感情の正体を知っている。
でもこの気持ちを言葉に出す事も、思考にすらしないつもりだった。
言葉には力があるとどこかで信じていたから。
言う事によって現実世界に何らかの影響を確実に与えると知っていたから。
そしてそれは……悪い結果だろう、とも。
でもこの気持ちを言葉に出す事も、思考にすらしないつもりだった。
言葉には力があるとどこかで信じていたから。
言う事によって現実世界に何らかの影響を確実に与えると知っていたから。
そしてそれは……悪い結果だろう、とも。
「……こなた」
お姉、ちゃん。
途切れ途切れで名を呼ばれたお姉ちゃんは、呼ばれたことにすら気づかずあどけない寝顔のまま寝息を立てていた。
それでいいと、私は思っている。
聞かれなくて、聞こえなくていいと思っている。
この気持ちは、一生言うつもりも、心の中で伝えるつもりもないから。
聞かれなくて、聞こえなくていいと思っている。
この気持ちは、一生言うつもりも、心の中で伝えるつもりもないから。
こなたお姉ちゃん、 るよ
それは誰にも――――自分にすら聞こえないコエ
続く坂道へ続く
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- 誤字を修正しました -- 名無しさん (2007-11-09 03:43:48)