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誰がために王冠は輝く? -after-

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……あれ?

もしかして、私死んだっスか?

だとしたら、『萌死』で死んだのは私が人類初じゃないっスかねえ?

へへ、歴史に名を残してしまったっス……

……にしても天国ってのはとってもいい匂いがするもんなんスねえ……

それになんだかあったかくて懐かしい感じっス……

まるで誰かにおぶられてるような……

……ん!?
く、くすぐったいっス!
せっかく人が気持ちよくしてるのになんスか!?
このサラサラのブロンドヘアーは!!

……ブロンド?

「…………ん?」
ボンヤリと瞳を開くと、目の前には見慣れた金髪の同級生の姿、もとい後頭部が。
「……ってパ、パティ!?」
「オゥ、ヒヨリ!目が覚めマシタカ」
私、パティにオンブされてるんスか!?
っていうかここはどこ?天国ではないんスか?
「ダイジョブ、もう少しでヒヨリの家デス!」
あ、そう言われてみると、夕暮れの中に見慣れた風景が広がっているのが見えるっス。
私、まだ生きてるんスか……とりあえず一安心っス。
にしても……
「な、なんでこんな……?」
何故こんな状況になったかさっぱり分からないっス。
とりあえずみんなに抱きつかれたトコまでは覚えてるんスけど。
「ヒヨリは最後のゲームで突然奇声を発シテ後ろの壁に頭をぶつけて、鼻血を出して気絶してしまったんデス!」
あっけらかんと説明するパティ。
にしても、それはひどい……我ながら情けないっス……
「その後解散するコトになっテ、ヒヨリの家の方に帰るワタシがオンブしていくコトになったんデス」
「なるほど、ありがたいっス!」
でも……あれ?確かパティの家ってこっちの方向じゃなかったような……
まあ気のせいスかね?
ってそういえば、おぶられたままだったっス。
「あ、もう降ろしてもらって大丈夫っスよ」
私がそう言うと、
「そうデスカ?…フフ、残念デス」
少し名残惜しそうなしぐさを見せた後、パティは優しく降ろしてくれたっス。
「……疲れなかったっスか?」
いくらパティが私に比べて大柄だとはいえ、泉先輩の家からここまでは結構あるっス。
それに…バスとかではどうしたんスか?
でも、
「イエイエ、とても貴重ナ体験にナリマシタ!」
そう言ってニッコリと笑うパティを見てると、そんな気遣いや疑問もどうでもいいことのような気がして。
「フフフフフ!」
「はははははっ!」
気が付くと2人、声を出して笑っていて。
それは、とても心地よいものだったっス。


それからは、新しく始まるアニメのこと、好きなアニソンの話など、他愛のない会話をしながら歩いたっス。
そして話題は今日のことに。
「にしても、今日は凄い経験をしたなあ…」
ふう、と実感をともなった、軽いため息。
「フフ、そうデスネ!」
今日一日で、一生分ぐらいの経験値が溜まった気がするっス。
何の経験値かはともかく。
「特に、最後のアレは死ぬかと思ったっス…」
目を瞑ると蘇ってくる最後の光景と、聞かされた醜態を思うと、つい苦笑が漏れたっス。
「やり過ぎマシタ?」
ションボリした感じにパティが尋ねてくるっス。
そんなパティの表情を見てると、なんだ悪いことをしてる気分になるっス…
「私には少し刺激が強すぎたってだけで、嬉しかったっスよ!もちろん!」
「…ソウ言ってモラえるなら嬉しいデス!」
今度は本当に嬉しそう。パティは裏表がなくて、見てて気分が良くなるっスね。
そんな事を考えているうちに、私の家への曲がり角にさしかかったっス。
もうお別れ、か……そう思うと少し寂しいような、もう少し話していたいような。
「そういえばパティ」
そんな気分に駆られて、話の種に、私はなにげない疑問を口に出していたっス。
「せっかく最後の命令だったんスから、『みんなで王様にキス』とかにすれば良かったのに……もったいなかったんじゃないスか?」
その疑問には別に深い意味はなかったっス。
パティそういうの好きそうなのになー、とかなんとなく思っただけで、
「オゥ!しまった、ぬかりマシタ!」とかそういう反応が返ってくるのを期待してたんスけど。
…帰ってきたのは、
「ゴメンネ、ヒヨリ……実はワタシ、ヒヨリが7番だって知ってたんデス」
そんな予想外の返答だったっス。
「え?」
私の番号を知ってた?何故?
「ワタシがくじ引くトキ、偶然見えたんデス…ヒヨリ、ボーッとしてテ、手が緩んでマシタカラ」
なるほど……確かにあの時は気が緩みまくってたっスから……
「じゃあ、私だと分かってあの命令を?」
「ハイ、そうデスね」
ハッキリと言い切るパティ。
いや、そうデスねって……
「……私なんかのために使ってよかったんスか?」
次の瞬間、私の口から出たのは、そんな疑問。
…だってそう思わずにはいられない。
私なんか非じゃない位、可愛い反応してくれる娘があの場にはいくらでもいたじゃないスか。
私なんかじゃなくったって、もっと別の―――



でもそんな私の思考は、
「『王冠をかけた恋』って話を聞いたことがアリマスカ?」
パティの突然の問いで途切れたっス。
「……王冠をかけた恋?」
「ハイ」
突然何を……?
なんかのゲームのシナリオ?それとも実話?
……もしかして、王様ゲームとかけてる?
私の頭の中が疑問符で埋まる。
でもパティは私の答えを待つことなく、
「ある国の皇太子が身分違いの愛する人のタメニ、王冠を捨てた話デス」
真剣な顔でそう言ったっス。
「…………え?」
王冠を捨てた?
…愛する人のために?
その『愛する人』というフレーズに動揺を隠せない。
いや、そりゃ考えすぎかもしれないけど、
このタイミングでそんな話をするなんてそれじゃまるで――――――
パティの表情を伺おうと目を向けると、バッチリ視線が合ってしまったっス。
「パティ……」
「フフ、ヒヨリはイツモ他の人のコトばかり考えてマスから、スキンシップの良さを伝えてアゲヨウと思ったんデス!」
その言葉は、いつもよりほんのちょっと本気のような。
「…ヒヨリがあんまりオクテだと、ワタシも困ってしまいマスからネ」
な、なんだか含みを持たせた口調っス……
「それから、ワタシ『なんか』なんテ言葉、ヒヨリには使って欲しくないデス」
「……え?」
そういえばそんな事さっき言ったっけ……
魅力的過ぎる人達に囲まれて、知らない間に自嘲癖がついてるんスかね?
そんな風に自己分析してみる。
でもそんなの何処吹く風、とばかりにパティが自信満々に言い放ったっス。
「確かに他のみんなも可愛いデスけど、ワタシにとってはヒヨリが一番なんですカラ!」
と。



「…………え?」
最初は意味が分からなかったっス。
でも。
「聞こえませんデシタか?ダカラ、ワタシにとってはヒヨリが一番可愛いって言ったんデス!」
何度も言わせナイで下サイ、そう恥ずかしげにパティが言うのを聞くと、ゆっくりその言葉が機能停止していた頭に染み渡ってきて。
「……え?……え!?」
な、何?私が一番何だって?……可愛い……!?そんな事言われたの初めてじゃ……!?
頭がまるで呪文をかけられたように混乱して、顔が勝手に赤くなる。
…な、なんスか!?このマンガみたいなシチュエーション!?
似合わない、似合わないっスよ私には!
と、とにかく!!
「そ、それはどういう意味で……」
混乱する頭で、私がパティの真意を確かめようすると。

“DAN DAN 心魅かれてく その眩しい笑顔に ♪”

パティのポケットから、そんな懐かしい曲が聞こえてきたっス。
なんだか一気にクールダウン。ほっとしたような、少し残念なような。
そんな私の胸中を知ってか知らずか、
「オゥ!大変デス!ソロソロ夕方のアニメが始まってしまいマス!」
さっきまでの真面目な表情はどこへやら、パティが叫んだっス。
どうやらアラーム設定にしてたみたい。
携帯で時刻を見てみると、確かに私も見ている夕方アニメが始まる30分前。
うう……一体どこまで本気か分からないっス。
「ヒヨリも見てるんでショウ?早く帰らないト!」
「そ、そうっスね」
「ワタシ、家こっちデスから」
そう言ってパティは反対側の道を指差したっス。
ああ、やっぱり家近くなんかないじゃないっスか……
これじゃパティ、アニメ見逃しちゃうっスよ……わざわざ遠回りして……
でも何故か口には出せず、じゃあね、とそれだけ言って私は家の方に向かって歩き出したっス。
「…ヒヨリ!」
数歩行ったところで突然そう呼ばれて、反射的に振り向くと。
目の前にはパティの青くて大きい、綺麗な瞳があったっス。
えっ、と驚いた次の瞬間には、ちゅっ、と軽い音がして。
それが私の唇にパティの唇が触れた音だ、と気付いたのは全てが終わった後だったっス。
「フフ、ヒヨリのファーストキス、頂きデス!」
悪戯が成功した子供のような顔をこっちに向けながら、
「バイバイ、ヒヨリ♡」
そう言って楽しげに走り去って行くパティ。

私は夕日の中輝くその金髪を、だんだん小さくなっていくその見惚れるような後ろ姿を、ただ呆然と見つめるしかなかったっス。




その日の夜。
「ふう…………」
愛娘であるパソコンのウィンドウを磨きながら、私は今日の出来事について考えていたっス。
本当に今日一日で、信じられないような経験をしたもんだ、と。
岩崎さんから小早川さんへの、愛の告白(仮)。
つかさ先輩と高良先輩のポッキーゲーム。
泉先輩とかがみ先輩のキス。
死ぬかと思うほど幸せだった、全員からのキス。
そして……夕焼けの中見た、パティの笑顔。
目を閉じると、熱いような、胸がキュンとなるような、そんな複雑な感じがするっス。
この気持ちはなんだろう。
そんな詩をどこかで読んだことがあるけど、まさにそんな感じ。
「ふう…………」
ボンヤリとしたままデスクトップを磨き続けていると、
「あ……」
私がいつも使っている、お気に入りのシャーペンが目に入ったっス。

……書きたい。
私は久々に、心からそう思ったっス。
この気持ちを誰かに伝えたい、と。
綺羅星のように輝いていた今日の出来事を、
いや今日だけでなく私がかけがえの無い日常の中で見て感じているたくさんの事を、より多くの人に知って欲しい。
そして何かを感じて欲しい。それが誰かの元気になってくれたら嬉しい。
そんな思いがとめどなく溢れてくるのを感じたっス。

「……よぉし!」
気合を入れて、転がっている愛用シャーペンとルーズリーフを拾い上げ、パソコンのスイッチをオン。

「一丁、頑張りますかっ!!」
ウィィィン、と起動音をたてる私の愛娘。
その音は、なんだかいつもより嬉しそうに聞こえたっス!







その日から、私は真剣に漫画家への道を志すことになるっス。

それから数年後、金髪の美人アシスタントと一緒に日本の漫画界に旋風を巻き起こすことになるのは……また別のお話っス!



               【完】













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  • 待ってたよ! パティ×ひよりルート♪ -- 名無しさん (2011-04-28 18:28:47)
  • 全俺が萌えた。 -- 名無しさん (2009-03-07 23:18:06)
  • すごい!かつてここまで魅力あふれる王様ゲームがあっただろうか・・・!良いもの見してもらいましたー! -- 名無しさん (2008-08-19 20:59:19)
  • 多数のカップリングをここまでうまく扱うとは……GJ!! -- 名無しさん (2008-05-22 22:38:18)

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