霞んだ視界、かさかさの手。
動かない体。オレはずっと同じ視点で庭を眺め続ける。
ぼんやりと、覚醒とまどろみの間をたゆたう日々。
瞬き一つで風景が変わってゆく。昼から夜へ、夏から秋、そして冬へ。
窓際のベッドから眺める日々の移り変わりは、昔よりもずっと早くて。
未来を考える日よりも、過去を振り返る日のほうがすっと長くなって……
「おじーちゃん。見て見て~」
ぼんやりとした意識が、鈴を鳴らすようなかわいらしい少女の声によって呼び覚まされる。
ぼんやりとした視界の向こう。小さな、髪の長い少女が差し出す折り紙。
この娘はかなた? こなた? いや、この娘は……
油の切れた機械のようにさび付いた指を伸ばして、それを受け取る。
「えへへ、おじーちゃんにプレゼント。おじーちゃんが早くよくなりますようにって」
丁寧に折られた鶴。
この少女に鶴の折り方を教えてあげたのもオレだった。
不器用なオレが、唯一折るのが得意だった鶴。
「そうくん、私の入院中に毎日折ってくれたものね」
そうだ。かなたが入院していたころ。
何もできない自分が歯がゆくて、最低一日10個と決めて折っていた折り鶴。
かなたのベッドの周りに並べた千羽鶴。
初めは作り方がわからなくて、作ってあげるはずのかなたに鶴の折り方を習っていた。
最初のころなんて、これが鶴かってくらいのめちゃくちゃなのしか作れなかったけれどな。
「でもそうくん、やる気になったら人一倍頑張る人だから、あっという間に上手くなっていったよね」
そうか? あの頃はただ毎日をがむしゃらに生きていた。
かなたを、こなたを幸せにしたくって。
毎日を全力投球で生きて、挫折を繰り返して。
いろいろなものを失って、そしていろいろなものを得て。
「私がいなくなってから、大変だった?」
そりゃ大変だったぞ。
オムツの替え方なんてさっぱり分からなくてな。
いまさら実家に頭下げるのもごめんだったっし、
一足先にゆいちゃんが産まれていたゆきの家に何度も通ったっけ。
本当、ゆきには世話になったよ。
まぶたが重くなってくる。覗き込む少女の姿がだんだんかすんでくる。
「あれ? おじいちゃん寝るの? じゃあ、毛布をかけてあげるね」
やわらかい毛布を胸までかけられる感触。
それと、胸にもたれかかる心地よい重さと暖かさ。
「ふふふ、おじーちゃん」
ぎゅっとしがみついて来る少女。こんなにおじいちゃん大好きっ娘に育ってくれて、おじいちゃんは嬉しいよ。
ああ、こんなに可愛い娘にくっつかれたまま死ねるなんて、本当、つくづくオレって勝ち組みだな。
萌え死にではないけれど、かわいい孫娘に見取られながら死んでいくのも悪くない。
「もぅ、そうくんったら」
ははは、悪い悪い。
でも、ついこの間まであんなにちっちゃかったこの娘が、今では立派にオレの世話までできるようになって。
こなたと一緒で、腕白な娘だったからな。
動かない体。オレはずっと同じ視点で庭を眺め続ける。
ぼんやりと、覚醒とまどろみの間をたゆたう日々。
瞬き一つで風景が変わってゆく。昼から夜へ、夏から秋、そして冬へ。
窓際のベッドから眺める日々の移り変わりは、昔よりもずっと早くて。
未来を考える日よりも、過去を振り返る日のほうがすっと長くなって……
「おじーちゃん。見て見て~」
ぼんやりとした意識が、鈴を鳴らすようなかわいらしい少女の声によって呼び覚まされる。
ぼんやりとした視界の向こう。小さな、髪の長い少女が差し出す折り紙。
この娘はかなた? こなた? いや、この娘は……
油の切れた機械のようにさび付いた指を伸ばして、それを受け取る。
「えへへ、おじーちゃんにプレゼント。おじーちゃんが早くよくなりますようにって」
丁寧に折られた鶴。
この少女に鶴の折り方を教えてあげたのもオレだった。
不器用なオレが、唯一折るのが得意だった鶴。
「そうくん、私の入院中に毎日折ってくれたものね」
そうだ。かなたが入院していたころ。
何もできない自分が歯がゆくて、最低一日10個と決めて折っていた折り鶴。
かなたのベッドの周りに並べた千羽鶴。
初めは作り方がわからなくて、作ってあげるはずのかなたに鶴の折り方を習っていた。
最初のころなんて、これが鶴かってくらいのめちゃくちゃなのしか作れなかったけれどな。
「でもそうくん、やる気になったら人一倍頑張る人だから、あっという間に上手くなっていったよね」
そうか? あの頃はただ毎日をがむしゃらに生きていた。
かなたを、こなたを幸せにしたくって。
毎日を全力投球で生きて、挫折を繰り返して。
いろいろなものを失って、そしていろいろなものを得て。
「私がいなくなってから、大変だった?」
そりゃ大変だったぞ。
オムツの替え方なんてさっぱり分からなくてな。
いまさら実家に頭下げるのもごめんだったっし、
一足先にゆいちゃんが産まれていたゆきの家に何度も通ったっけ。
本当、ゆきには世話になったよ。
まぶたが重くなってくる。覗き込む少女の姿がだんだんかすんでくる。
「あれ? おじいちゃん寝るの? じゃあ、毛布をかけてあげるね」
やわらかい毛布を胸までかけられる感触。
それと、胸にもたれかかる心地よい重さと暖かさ。
「ふふふ、おじーちゃん」
ぎゅっとしがみついて来る少女。こんなにおじいちゃん大好きっ娘に育ってくれて、おじいちゃんは嬉しいよ。
ああ、こんなに可愛い娘にくっつかれたまま死ねるなんて、本当、つくづくオレって勝ち組みだな。
萌え死にではないけれど、かわいい孫娘に見取られながら死んでいくのも悪くない。
「もぅ、そうくんったら」
ははは、悪い悪い。
でも、ついこの間まであんなにちっちゃかったこの娘が、今では立派にオレの世話までできるようになって。
こなたと一緒で、腕白な娘だったからな。
なあ、かなた。
「何、そうくん」
かすんで見えなくなっていく現実の世界。そして、はっきりと見えてきたかなたの姿。
あの頃と変わらない、ちっちゃくて、ぎゅっと抱きしめたくなるような、オレのかなた。
かなた、オレ、休んでもいいかな。
「うん、お疲れ様。よく頑張ったね」
かなたの腕が、オレをぎゅっと抱きしめる。
かなたの腕に包まれて、ふわりと体が軽くなる。
病魔に侵された、苦しい体から解き放たれた開放感。
そして、オレを抱きしめる、懐かしいかなたの感触。
本当、かなたはすべすべで気持ちいいな。
オレなんてこんなお爺さんになちゃったよ。
「大丈夫よ。向こうにいったら年なんて関係なくなるから」
ふわりとかなたがオレの体を引っ張りあげる。
今まで指を動かすだけでもいっぱいいっぱいだったのが嘘のように、体が軽快に動く。
それと同時に、かなただけじゃなくて周りの風景も見えるようになってくる。
ふわりとした浮遊感。ずっと定位置だった窓際のベッドの上に浮かぶ。
ベッドに横たわる自分を見下ろす、不思議な感覚。
そして、オレにもたれかかって眠る、まだ幼い少女。
「心配? こなたとその娘が」
……いや、大丈夫だ。
こなたも立派になった。
一時はゲームやアニメばかりで成績はぼろぼろだったけど。
でもオレが信じた通り。こなたはやってくれた。
就職して、結婚して、こんなかわいい孫を産んでくれた。
きっとオレがいなくなっても、乗り越えて先に進んでいってくれるだろう。
「私がいなくなったときのそうくんみたいに?」
ああ、あのときのオレはみっともなかったよな。
幼いこなたを放り出して、仏壇の前で泣きじゃくって。
「でも、ちゃんと立ち直ってくれた」
人間、いつまでも泣いていられないしな。
思考錯誤の毎日。その中でこなたを育てていった。
ちょっと変わった娘だったからな。学校の先生にいろいろ言われる事もあった。
でも、こなたはこなたなりにまっすぐに生きて、成長してくれた。
いろんな友達と一緒に成長して、さまざまな体験をして、
そして人を好きになり、こんなに可愛い孫まで産んでくれた。
俺がいなくなっても、こなたはきっと立ち直ってくれる。
「あなたが育てた娘だものね」
お前とオレの娘だからな。
そう言うと、かなたは微笑んでくれた。
ずっと見たかったかなたの笑顔。
それが、手の届く場所にある。
かなたを得たと同時に、失ってしまったもの。
ふわりふわりと空高く上っていく。
眼下には小さくなる、愛しき我が家。
この家でずっと生きてきた。
家族を育ててきた。
もう、自分にできることは何もない、あとは見守ることしかできないけれども……
「この家に、幸あれ」
「何、そうくん」
かすんで見えなくなっていく現実の世界。そして、はっきりと見えてきたかなたの姿。
あの頃と変わらない、ちっちゃくて、ぎゅっと抱きしめたくなるような、オレのかなた。
かなた、オレ、休んでもいいかな。
「うん、お疲れ様。よく頑張ったね」
かなたの腕が、オレをぎゅっと抱きしめる。
かなたの腕に包まれて、ふわりと体が軽くなる。
病魔に侵された、苦しい体から解き放たれた開放感。
そして、オレを抱きしめる、懐かしいかなたの感触。
本当、かなたはすべすべで気持ちいいな。
オレなんてこんなお爺さんになちゃったよ。
「大丈夫よ。向こうにいったら年なんて関係なくなるから」
ふわりとかなたがオレの体を引っ張りあげる。
今まで指を動かすだけでもいっぱいいっぱいだったのが嘘のように、体が軽快に動く。
それと同時に、かなただけじゃなくて周りの風景も見えるようになってくる。
ふわりとした浮遊感。ずっと定位置だった窓際のベッドの上に浮かぶ。
ベッドに横たわる自分を見下ろす、不思議な感覚。
そして、オレにもたれかかって眠る、まだ幼い少女。
「心配? こなたとその娘が」
……いや、大丈夫だ。
こなたも立派になった。
一時はゲームやアニメばかりで成績はぼろぼろだったけど。
でもオレが信じた通り。こなたはやってくれた。
就職して、結婚して、こんなかわいい孫を産んでくれた。
きっとオレがいなくなっても、乗り越えて先に進んでいってくれるだろう。
「私がいなくなったときのそうくんみたいに?」
ああ、あのときのオレはみっともなかったよな。
幼いこなたを放り出して、仏壇の前で泣きじゃくって。
「でも、ちゃんと立ち直ってくれた」
人間、いつまでも泣いていられないしな。
思考錯誤の毎日。その中でこなたを育てていった。
ちょっと変わった娘だったからな。学校の先生にいろいろ言われる事もあった。
でも、こなたはこなたなりにまっすぐに生きて、成長してくれた。
いろんな友達と一緒に成長して、さまざまな体験をして、
そして人を好きになり、こんなに可愛い孫まで産んでくれた。
俺がいなくなっても、こなたはきっと立ち直ってくれる。
「あなたが育てた娘だものね」
お前とオレの娘だからな。
そう言うと、かなたは微笑んでくれた。
ずっと見たかったかなたの笑顔。
それが、手の届く場所にある。
かなたを得たと同時に、失ってしまったもの。
ふわりふわりと空高く上っていく。
眼下には小さくなる、愛しき我が家。
この家でずっと生きてきた。
家族を育ててきた。
もう、自分にできることは何もない、あとは見守ることしかできないけれども……
「この家に、幸あれ」
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- あれ?
目だけじゃなくて鼻からも変な汁が出て来たぞ?
(T ^ T) -- ユウ (2010-04-15 00:59:09) - なんていい話なんだ……私は汁じゃなくて涙が出たぞ。 -- 名無しさん (2009-08-27 00:27:48)
- みなさん
恥ずかしがらず涙と言いましょう
あれ?俺も目から汁がッ -- 名無しさん (2009-08-27 00:10:37) - ん?こなたが晩婚で40歳で子供を生んで孫が5歳になってもそうじろうはまだ70歳くらいでは? -- 名無しさん (2008-09-16 01:29:33)
- 目から雨が…
イイハナシダナー -- 名無しさん (2008-09-16 00:30:27) - おっと、目汁が・・・。
グスン・・・。 -- 名無しさん (2008-04-20 00:01:12) - ちくしょう、目が変な汁で見えねぜ。 -- 有拳 (2008-04-09 04:35:23)
- ご指摘ありがとうございます。
修正しました -- 4-320 (2007-12-07 06:32:53) - 休んだも…
いいところなのに! -- 名無しさん (2007-11-16 12:09:44) - テラ家族計画w -- 名無しさん (2007-10-09 06:25:17)
- 目から汗が止まらねえぜ・・・ -- 名無しさん (2007-10-09 01:11:13)
- あれ?おかしいな前ガミエないや・・・ -- 名無しさん (2007-10-06 23:18:51)
- 目から汁が・・・ -- 名無しさん (2007-10-06 13:45:11)