狭い関東そんなに急いでどこへ行く

「ククク……さぁ、始めるぞ……女……!」

レロリと手にしたナイフを舐めるのは、這い寄る鬼面
書き手ロワということもあり、本来の赤木しげるよりも強めに狂気のキャラ付けがされている。

「ちょっと待ってください」

鬼面が戦いを始めたくてウズウズしているのをよそに、銀髪の美女は彼に静止を求める。
まるで、飢えた男を焦らすのを楽しんでいるかのように。

「どうした……? まさか、臆したかッ……?」
「いいからちょっと座りましょう」

柔らかそうな掌をかざして、地面に腰掛けるように促す。
さっきまでノリノリで戦闘をおっぱじめようとしていた団長の意外な行動に、最速兄貴も怪訝そうな表情を見せた。

「ククク……騙まし討ちのつもりかッ……!
 稚拙ッ……! あまりにも幼稚ッ……! 駆け引きというのは……」

ディフォアの提案を不意打ちの罠だと思い、駆け引きのプロである鬼面は笑う。
そして、ギャンブルの極意を伝授しようとした。
その時だ。

「いいから座ってくださいッ!!」

響くディフォアの大声と……。

「ひげぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

なぜか鬼面の代わりに殴りつけられた最速兄貴の悲鳴。
女とはいえ、彼女が属しているのは漫画ロワという名の戦闘集団。
その力で殴りつけられた最速兄貴が三回ほどバウンドする。

「ククク……たまたま近くにいただけという理由で仲間を殴るッ……!
 なんという狂気ッ……! いいだろう。話を聞こう……!」

騙まし討ちだとしてもそれでいいと思わせるほどの奇行。
地面に腰掛けた鬼面は心底愉快そうに笑う。

「残念な話があります」
「残念な……話ですか、団長?」

鬼面の正面に座った団長の隣に、殴られた痛みもダメージも一切感じていない最速兄貴が座る。
北斗キャラレベルの打撃を与えたにも関わらず一切の傷を残さないという、彼女のギャグ補正がなせるわざである。

「時間がありません! なぜか前話のヒキでは戦闘するだけの時間はある的な描写だったのに、良く考えたらもう時間がありません。
 もう今すぐにでも旅の扉に向かわないといけない的な流れになってるのです!
 これは我々のうっかりが原因です。そうに違いない。ええそうに決まってます!」
「オーマイガ! うっかりなら仕方ないですね、団長」
「ククク……うっかりなら仕方ないッ……!」
「うっかりなら仕方ないですわね」

団長の言葉に頷く団員一号と、幽鬼と、いつのまにか会話に加わっている杉田空気王
焦るべき事態にも、意外と冷静な一同であった。

「というわけで一時休戦です! 最速兄貴、みんなを背負ってひとっ走りしてください」
「イエェェェェェェェェスゥ! 待ってましたよその命令を!」
「私もよろしいのですか!?」
「もちろんですとも、お嬢さぁぁぁぁぁぁん!」

走りたくてウズウズしていたスピードジャンキーが吼える。
自分も連れて行ってもらえることが分かって、空気王が安心したように笑った。
しかしそんな中で這い寄る鬼面だけが不思議そうな表情でディフォアを見つめていた。

「団員二号さん、どうしました?」
「ククク……団員になった覚えなどはないが……女、いいのか?」
「何がです? サービスカットでも必要でしたか?」
「違う……バトルだッ……! お前も、例のロワ出身なのだろう? バトルが惜しくないのか?」

死んでしまってはバトルどころではない。
だが漫画ロワ住人の荒っぽさとバトル好きは、もはやパロロワ界では有名な話だった。
彼女がバトルが出来ないことに全く悔しさを感じていないのが、鬼面には不思議で仕方ない。

「そういえばそうですね。俺の分身も団長と同郷らしいですから良く知っているのですが……」
「私も書き手ロワ2ndでその辺の事情には詳しいのですけれど、確かに変ですわね」

鬼面の疑問に、他の二人も同調する。
それを見てディフォアが深く溜め息をついた。

「貴方たち、漫画ロワだからって戦闘狂とは限らないでしょう。
 カレーが嫌いなインド人だっているのですから」
「なるほど! ホモが嫌いな女子だって少しはいますわ」
「ククク……確かに、麻雀が嫌いな「赤木さん」だって一人くらいはいるッ……!」

ディフォアの理論に納得する空気王と鬼面。
それを見ながら、最速兄貴の頭上に電球が灯る。なにか閃いたようだ。

「そうですよね団長! たこ焼きが嫌いな大阪人がいれば、味噌が嫌いな愛知県人だっています!
 つまり……つまり! 石食い男が嫌いな観客だっていr……ふげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「いるわけないじゃないですか、そんなものッ!!」

ここぞとばかりに石食い男の役職を否定した最速兄貴に再び拳がめり込む。

「まったく! 貴方ときたら……こちらの団員二号さんの方がよっぽど優秀ですね……!」
「ククク……だから俺は団員ではないとッ……!」
(あの新入り……この野朗! 本当ならお前が石食い男のはずなのに……!)

団長から褒められた鬼面に対抗意識を燃やす最速兄貴。
鬼面は団長からナイフの腕を買われているので、石食い男の役割は未だ最速兄貴を解放してはくれない。
鬼面本人には入団の意思すらないようだが……。

「み、みなさん……そろそろ行かないと……」
「おっとそうでした。最速兄貴、行きましょう!」
「え、えぇ……」

ジェラシーを燃やす最速兄貴にさっきまでの意気揚々とした様子はない。

「あ、ちょっとまってください。忘れるところでした」
「……どうしましたか団長?」

テコテコと一人で歩き出したディフォア。

「きゃあ!」

数メートルほど歩いたところで、なぜかディフォアは明らかにわざと派手に転んだ。

「だ……団長?」
「いたーい。足を怪我してしまいましたー」
「ククク……まさに大根役者ッ……!」

彼女が抱えた膝には小さな小さな擦り傷があった。
こんなもの、五歳児の少女でも唾をつけてほったらかす程度の傷だ。
それなのにディフォアは団員たちをチラチラと眺めながら棒読みで「いたーい」と繰り返している。

「団長……何を……ハッ!」
(分かったぞ! 団長は俺たちを試しているんだ! 団長がピンチのときに優しく手を差し伸べられる男こそが本当の団員ってわけだ!)

隣をみれば、鬼面はニヤニヤしながら団長のド下手糞な演技を眺めているではないか。
どうやらこのアカギ男は、団長の真意には気付いてはいないらしい。

(……勝った! 石食い男はお前だ、赤木しげる!)

やっとこの呪縛から解放される。しかもそれを気に食わない新人に押し付けられるのだ。
最速兄貴は心の中でバンザイを繰り返す。

「団長……」
「ハッ! そのこえはー、最速兄貴さんじゃあないですかーーーー。みてくださいー、このきずをーーー」

思ったとおり、団長が膝にできた傷を見せびらかしてきた。
余りに小さいその傷は、目を凝らさないと良く見えないほどだ。
しかし最速兄貴は精一杯少女を心配してみせる。

「オゥ、シィィ~~ット! これは酷い傷ですよ団長。
 さぁ、俺のたくましい肩につかまっt……ふげぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

まさかのパンチを食らって、最速兄貴が空中で10回転くらいしてから倒れる。
彼が地面にぶつかった瞬間に団長が勢いよく立ち上がった。

「馬鹿にしないでください! こんなの……全然『軽傷』じゃないですかッ!」

倒れた最速兄貴を指差してディフォアが叫ぶ。
……どうやら彼女は、漫画ロワ書き手の明言をどうしても言いたかっただけらしい。

「…………はい、すごく…………軽傷ですわ……」
「ククク……本当に……軽傷ッ……!」
「団長……それ、使い方違います……」

一同の総ツッコミも、満足して満面の笑みを浮かべる少女には届かなかった。
覚悟の人とか勇次郎の人とかにバレたら殺されるんじゃないかと最速兄貴は身震いをした。

「さぁーて! 観光しながら約十分で埼玉まで行きますよ!」
「えぇ。任せました最速兄貴!」
「観光しながら……十分ですか?!」
「ほぅ……それもまた、一興だッ……!」
「ラディカルグッドスピィィィィィド! 脚部限定ッ!」

最速兄貴が叫んだと同時に、一風より早く走り去った。
埼玉まですぐ行ってもつまらないので、関東一周旅行を存分に楽しむ。

「よし、ここが中華街だ! シューマイがとってもデリシャーーース!」
「ククク……あの国会議事堂の下に……巨大ロボとやらが眠っているのかッ……まさに狂気の沙汰ッ……!」
「見てください。ムィッキーとムィニーですよ! あぁ……あの醜悪極まりない顔! 素晴らしい!
 あ、ムィッキーの第六の首がドゥナルドゥーを捕食し始めました! なんて神秘的なんでしょう!」
「栃木と茨城もいいところですわ。何がって……色々といいところですわ、うん!」

関東地方を網羅した、誰が何と言おうとも絶対に関東地方を網羅した。
そんな一同は大急ぎで埼玉の旅の扉に向かう。

「見えてきました! あの教会です!」
「団長だけは、ちゃんと掴まっていてくださいよ!」

教会の扉を猛スピードでくぐる。
彼らが福島を出発してから、ちょうど十分のことだった。

【一日目・早朝】
【現在位置・新フィールドへ】

【しろがねサーカス団】
担当:団長兼アクロバット
【【命熱】ディフォア ◆d4asqdtPw2@漫画ロワ】
【状態】健康
【装備】ヴィルマの投げナイフ@漫画ロワ(2/2)
【道具】支給品一式、生命の水(三人分)、不明支給品0~2
【思考】 基本:バトロワ? そんなことよりサーカスしましょう!
0:いやぁ、いい旅行でした~。
1:最速兄貴の担当を決める。
2:団員を勧誘する。
【備考】
※外見は才賀エレオノール@からくりサーカスです
※しろがねサーカス団への入団条件は『銀髪であること』。銀髪の人を積極的に勧誘します。
 しかし銀髪でなくても、才能や熱意のあるものは『生命の水』で強制的に銀髪化することも……。


担当:石食い男(?)
【最速兄貴@マルチジャンルバトルロワイアル
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】 基本:やりましょうサーカス! ……ついでにこの会場内を観光する!
0:どうですか私のスピード! 見てますか、とのさぁーん!?
1:新人を勧誘して『石食い男』を押し付ける。
2:とのさ~ん!!貴方もサーカスにご招待しますからね~!
【備考】
※とのさんとは、想いのとと@マルチジャンルバトルロワイアルのことです
※外見はストレイト・クーガー@マルチジャンルバトルロワイアルです




【這い寄る鬼面@安価漫画ロワ
【状態】健康、頬に一筋の切り傷、左肩に銃創
【装備】ヴィルマの投げナイフ@漫画ロワ(17/20)
【持ち物】基本支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:参加者達を絶望の淵へと落とし、殺す。
   最終的に、失意の担い手との決着を着ける。
1:た、楽しくなんて……なかったんだからなッ……!
※見た目は、赤髪をした19歳のアカギです。
※投げナイフは、服の袖口に隠し持っています。


【杉田空気王@書き手ロワ2nd】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、気絶、対主催モード、亀の中
【装備】クレイジーダイヤモンドのDISC@書き手ロワ2nd
【道具】支給品一式、透明マント@アニロワ1st、ココ・ジャンボ@ジョジョロワ1st
【思考】基本:対主催
0:楽しかったですわ……。
1:どうしましょうか……。
※女性の姿の時は対主催寄りの思考、男性の姿の時はマーダー寄りの思考になります。
 切り替わる条件はぶっちゃけ適当です。

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みちのく二人旅 【命熱】ディフォア 一瞬のしろがねサーカス
みちのく二人旅 最速兄貴 一瞬のしろがねサーカス
みちのく二人旅 這い寄る鬼面  ?
みちのく二人旅 杉田空気王 エアーマンが振り向かない

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最終更新:2009年07月16日 17:20
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