ここはマウンテンエリア。この地に停車する長足クラウン号の中に、ロキューダと
三遊亭鏡はいた。
「…………」
放送を聞いた彼らの表情は、沈痛なものだった。彼らの分身である全世界地雷原(ワールドイズマイン)、その名が呼ばれてしまったのだ。
「覚悟していたとはいえ……。なかなかに堪えるものだな」
「ええ。ですが、我々が落ち込んでいたところで彼女が喜ぶはずがありません」
「ああ、そのとおりだ」
鏡の言葉に、ロキューダは大きくうなずく。
「俺たちのやるべき事は、あいつの分までボマー商会の仕事をやり遂げることだ」
「ですな」
「では行くとするか。長足クラウン号、発進!」
ロキューダの号令と共に、クラウン号は勢いよく走り始めた。
◇ ◇ ◇
同じく、マウンテンエリアの一角。山と山の間の平坦な道を、一組の男女が歩いていた。
ディフォアと最速兄貴の二人である。
「それにしても困りましたねえ。
這い寄る鬼面さんや空気王さんとはぐれてしまうなんて……」
「まったくです。おかげで、また私一人であなたのボケに対応しなければならない羽目に……」
「おや? この音は……。気をつけてください、最速兄貴さん。向こうから何か来ます」
「私の発言は無視ですか。ああ無視ですか」
愚痴をこぼしつつも、最速兄貴はディフォアの指示に従い警戒心を強める。
やがて彼らの前に、奇妙なデザインの電車が現れた。
「あれは……」
目の前にやってきた電車を見て、ディフォアは目を輝かせる。
「長足クラウン号!! まさか実物を見られるなんて!!」
「ああ、ちょっと待ってください!」
ためらうことなくクラウン号に駆け寄っていくディフォアを、最速兄貴は慌てて追いかける。
彼も元
漫画ロワ書き手、クラウン号に感動するディフォアの気持ちはわからないでもない。
だが誰が乗っているかわからない以上、迂闊に近寄るのは危険すぎる。
彼はそう考えたのだが、結論から言えばそれは杞憂であった。
「よう。乗っていくか?」
ドアの向こうから姿を見せた、蝶々仮面の男が気軽に話しかけてくる。
「パピヨン! ひょっとして、あなたも漫画ロワの書き手さんですか?」
「ああ、俺はロキューダだ。『あなたも』ってことは、そっちも漫画ロワの出身だな?
エレオノールになってるってことは……。ディフォアか?」
「そのとおりです! 一発で当てるとは素晴らしい! ぜひとも我がしろがねサーカス団に!」
「サーカス団か……。悪くない……。だがNON!」
ディフォアからの誘いを、ロキューダは手で大きく×を作って拒絶した。
「俺はあくまで、運び屋ボマー商会としてこのロワを生きる。というわけで、さっそく商談だ。
何か支給品を一個貰えれば、好きなエリアまで送っていってやるが?」
「うーん、入団していただけないのは残念ですが……。クラウン号にはぜひとも乗ってみたいですね。
ここは乗せていってもらいましょう」
「私には意見すら聞かないんですか……」
背後で最速兄貴がぼやくが、もちろんディフォアは聞いていない。
「さて、それでは支給品をお払いいたしませんと……。何にしましょうねえ」
「あ、それなら私が支払いましょうか? どうせ支給品が余ってましたし」
「え?」
悩むディフォアの耳に、最速兄貴でもロキューダでもない声が届く。
驚いたディフォアが周囲を見渡すと、いつの間にか彼女の側にクソ長いお下げの少女が立っていた。
「はちゅねまして! 私、ウィーヴといいます!」
◇ ◇ ◇
長足クラウン号は、タウンエリアに向かって走っていた。
できるだけ中心部に近く、人が集まりそうなところ、というディフォアのリクエストに応えた結果である。
そしてクラウン号の乗客席には、ディフォア、最速兄貴、ウィーヴの三人が座っていた。
「さて、ウィーヴさん。最初にお会いした時から、どうしてもお聞きしたいことがあったのですが……」
「しろがねサーカス団にぜひ入団を……!」
「団長、それは後にしてください」
ディフォアをたしなめ、最速兄貴は本題に入る。
「あなたは漫画ロワ書き手のはずですよね? なのになぜ、漫画ロワにまったく関係のない初音ミクの姿になっているのですか?」
「当然の疑問ですね。わかりました、少し長くなりますがお話ししましょう」
真剣な表情で、ウィーヴは語り始める。
「私に与えられた称号は【無貌】……。その名のとおり、私は最初決まった姿を与えられませんでした。
その代わり、最初に出会った書き手の姿をコピーする能力を与えられたのです。
そして私が出会ったのが、初音ミクの姿をした書き手さんだったんです。
残念ながらその書き手さんは、名前を聞く間もなくマーダーに殺されてしまいましたが……」
「そうだったんですか……。あなたも苦労したんですね」
ウィーヴの話を聞いたディフォアは、目にうっすらと涙を浮かべながらウィーヴの手を握りしめる。
ウィーヴも、無言で手を握り返した。
(ふふ、ずいぶんあっさりと騙されちゃったねえ……。まあ、そっちの方が都合がいいけど)
感動のシーンを演出しながら、ウィーヴはその心中でほくそ笑む。
もちろん今述べた話は、全くの作り話。ウィーヴがあらかじめ考えておいた捏造エピソードだ。
(第一放送までは、結局暗殺ばっかりだったからねえ……。今度こそは、黒幕として暗躍させてもらうよ。
そして、あわよくば彼女を……)
ウィーヴの口元が、かすかに歪む。彼の本質はフェイスレスである。エレオノールの姿をしたディフォアと出会って、何も思わないわけがない。
(これから先が楽しみだねえ……)
表面上は穏やかな列車の中。だがその場には、少しずつ不穏な空気が満ちてきていた。
◇ ◇ ◇
「ん?」
一方その頃、車掌のロキューダは何かに気づき怪訝な表情を浮かべていた。
「どうしました?」
「いや、今そこの山を何かが走っていったような……。まあ見間違いかもしれんし、気にすることはないだろう」
鏡の言葉にそう返すと、ロキューダは再び列車の運行に意識を集中し始めた。
しかし、彼が見たものは決して見間違いではなかった。
◇ ◇ ◇
「あ? 今、何か走ってたか? まあいいか……」
グリモルディを操り山道を駆けるシナクは、いったん停止してそう呟いた後再び走り始めた。
単純な移動手段としてならヘルダイバーの方がいいのだが、今の彼はデイパックを持っていない。
つまり
カラオケボイスから受け取ったドスをしまうことができないわけで、これでバイクに乗るのは危険極まりない。
そこでグリモルディを具現化し、その腕にドスを持たせているわけである。
(しかし俺、外見鳴海なのになんで阿紫花のフル装備再現してるんだ……。
まあ、そんなことはどうでもいい。一刻も早く、あのガキを見つけないとな……)
悪魔の表情を浮かべたまま、シナクは駆け続ける。
エレオノール、フェイスレス、そして鳴海。
「からくりサーカス」の主演を張る者の姿を持つ書き手たちが集まりかけ、しかし集まらなかった。
今後、改めて彼らが集結することはあるのか。それは、機械仕掛けの神のみぞ知る。
【一日目・朝/マウンテンエリア】
【しろがねサーカス団】
担当:団長兼アクロバット
【【命熱】ディフォア ◆d4asqdtPw2@漫画ロワ】
【状態】健康
【装備】ヴィルマの投げナイフ@漫画ロワ(2/2)
【道具】支給品一式、生命の水(三人分)、不明支給品0~2
【思考】 基本:バトロワ? そんなことよりサーカスしましょう!
1:最速兄貴の担当を決める。
2:団員を勧誘する。
3:這い寄る鬼面と空気王を探す。
【備考】
※外見は才賀エレオノール@からくりサーカスです
※しろがねサーカス団への入団条件は『銀髪であること』。銀髪の人を積極的に勧誘します。
しかし銀髪でなくても、才能や熱意のあるものは『生命の水』で強制的に銀髪化することも……。
担当:石食い男(?)
【最速兄貴@
マルチジャンルバトルロワイアル】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】 基本:やりましょうサーカス!
1:新人を勧誘して『石食い男』を押し付ける。
2:とのさ~ん!!貴方もサーカスにご招待しますからね~!
【備考】
※とのさんとは、
想いのとと@マルチジャンルバトルロワイアルのことです
※外見はストレイト・クーガー@マルチジャンルバトルロワイアルです
【
【無貌】ウィーヴ@漫画ロワ】
【状態】健康、初音ミクの姿
【装備】リシュウの仕込み杖@
ロボロワ、北高の制服@
kskロワ
【道具】支給品一式×6、カラオケマイク@ライダーロワ、光成の服@初期装備、防弾チョッキ@原作
竜殺し@アニロワ、犯人追跡眼鏡の発信機@漫画ロワ、鋼鉄の斧@
DQロワ、バーニィシューズ@
AAAロワ、ヤンデレ妹の包丁@
ニコロワβ
DMカード(カタパルト・タートル)@ニコロワ、キャスターのローブ@ギャルゲ2、ミニ八卦炉@LSロワ、スモールライト@アニロワ
不明支給品0~3
【思考】基本:「黒幕」を演じ、他の参加者をもてあそぶ
1:しろがねサーカス団に潜り込み、惨劇を起こす
2:ゆくゆくはディフォアを……
※デフォルトの外見は徳川光成@グラップラー刃牙、能力と性格はフェイスレス@からくりサーカスです
【運び屋『ボマー商会』】
【
【恋哀】ロキューダ ◆6YD2p5BHYs @漫画ロワ】
【状態】健康。長足クラウン号の車掌状態
【装備】ニアデスハピネスの核鉄@漫画ロワ、『ボマー商会』の旗@自作、長足クラウン号@漫画ロワ、
【道具】支給品一式、不明支給品1~4、ブラックラグーン号@LSロワ、
爆熱ゴッドカレーパン(食べかけ)@二次スパ、ゼロのマント@コードギアス
【思考】
基本:まともにロワの相手をせず、適当に楽しくやる。
1:しろがねサーカス団をタウンエリアまで送り届ける。
2:……これで『ボマー商会』もあと2人か。
3:ま、仕事中の安全は俺が『ニアデスハピネス』で守るか。
[備考]:
多少はマジメなパピヨンです。
【三遊亭鏡 ◆G/G2J7hV9Y氏@らきロワ】
【状態】健康。長足クラウン号に乗車中
【装備】『ボマー商会』の襷@自作
【道具】支給品一式、フラップター@らきロワ、不明支給品1~3
【思考】
基本:まともにロワの相手をせず、適当に楽しくやる。
1:えー、今度こそここらで一席……。
2:商会内での私の立ち位置はまるで山田君……雑用係ですな。ま、それもいいでしょう。
[備考]:
笑点のピンクです。
[ボマー商会 共通思考]
1:真面目にロワの相手をしない。マーダーも対主催もしない。仇討ちとかも考えない。
2:とりあえずは『運び屋』として他の参加者の長距離移動を支援しつつ、テキトーに過ごす。
3:客の運搬中はその安全を全力で保障。ただ、着いた先で何が起きてもそれは知らない。
4:戦闘はできるだけ避ける。客がルール破ったらそのときだけ本気出す。
5:運賃はどこに行く場合でも支給品1個。複数セット支給の品物は「支給品枠1つ分」で。内容は不問。
6:余ってる支給品の交換にも随時応じます。これも「支給品枠1つ分」同士の交換で。
【【車輪】シナク@漫画ロワ】
【状態】悪魔<デモン>状態
【装備】グリモルディ(能力により具現化したもの)@漫画ロワ、阿紫花のドス@ロボロワ
【道具】なし
【思考】
基本:熱血対主催!
1:悪魔のフラグ建築士を殺す
※外見は加藤鳴海@からくりサーカスです。
※【車輪】は「漫画ロワに登場した、車輪の付いたアイテムを具現化する」能力です。
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最終更新:2009年07月19日 14:22