ようこそ悪いユメの中

         ~これまでのあらすじ~

ヴァルハラ「やったよ、デビル!……ついに強対主催四天王を倒したんだね」
フラグ建築士「これで生き残っている協定外の参加者は後一人かな?」
ワンキュー「そういうこった、7人の魔女……来てやったっぜえええええええええええ!」
(シュタッ)
車輪「人間ワープもできたのですか、でたらめですね」
ワンキュー「おおっと、そうだ。言っておくことがあったんだったぜ!
    テメェらはこの俺を倒すのにゃあ真紅の悪魔の五部作を詠唱しきる必要があると思ってるみてえだが……
    HAHAHAHAHAHAHA、その予想を裏切るッッッ!!!
    ぶっちゃけ5MeO-DIPTの恐怖でも悶死するぞおおおおッ!
    ロリイイイヤッッッホーーーーう!!!」
無常の騎士「な 何だってーー!? ……というか、それ、むしろ死闘秘法のキャラじゃないですか」
ワンキュー「最終決戦はシリアスだというその予想も裏切るッッッ!!!
      ついでに後々面倒くせえことになりそうな“狼”は俺が撲殺しておいたぜッ!
      さあ、これで後腐れなく戦えるってもんだ! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY! HURRY!」
(ゴゴゴゴ)
百万「いや、あんたアーカードを書いたこと無かったではないか」
ワンキュー「その予想をry「あー、分かった分かった」」
デビル「う~☆ ちょっと、わたしにもしゃべらせないさいよ!
    あれよ、あれ! なんかもう一人メンバーがいた気がするけど、別にそんなことはなかったわ!」
ワンキュー「れ」

(ガバッ)
カオスクライw「『れ』ってなんだよ!? ヒナギクか、ヒナギクなのか!? そりゃうちでもあんな死に方しちゃったけども!
       というか僕の扱いひどすぎじゃない!? どうしてはぶるのさ!
       って何、横にある『w』っていう不名誉ものは――っ!?」
デビル「ダメよ、くらい。あなたはサラマンダー担当なのよ!え、既に殺してる?しっらないっわ、そんな事実♪」
クライwww「ぐぬぬぬ勝手に殺害数0にされるなんて……! ……そうだ、いいのかな、みんな? 
      僕をぞんざいに扱ったりしたら、僕が掴んだ取って置きの情報が手に入らないんだよ?」
無常の騎士「取って置きですか?」
クライ(笑)「そうだよ、実はワンキューを倒すには『5MeO-DIPTの恐怖』っていうタイトルで」
百万「さっきワンキュー本人がベラベラとしゃべりおったわ。
   お前、見込み違いだったから帰ってもいいぞ、うむ!」
クライ(出番終了)「ちょ、あなたが巻き込んでおいてうわ離せ何を、出番終わりですか――――!?」
(バタン)

車輪「気を取り直していきますよ、皆さん。標的、漫画ロワのワンキュー!」
ワンキュー「さあ来い魔女共! エフッエフッエフッ!」



――――魔女達の絆がワンキューを倒すと信じて……



……なんて、夢を見た。


「ちょっと、もう少しでいいところじゃない!ワンキューを倒して『わたしってば最強ね!』なとこまで見せなさいよ!」

目を覚ました真紅の悪魔が最初にしたのはツッコミだった。
真紅の悪魔には今見た夢に覚えがあった。
『夢であるよう、あらぬよう』
少女の最初の会い方でもあった今は亡き深淵の教皇の作品そっくりなのだ。
いや、正確にはその作品の序文もまたかのギャグ漫画のオマージュなのだが。
ともあれ原作に従えば一番の見せ場であるこれからというところで目を覚ましてしまった真紅の悪魔は、晴れ舞台を奪われたとばかりにわめき散らす。

「はあ、空しいわ。誰も返事してくれないし。人を閉じ込めているんだから紅茶くらい出しなさいよ」

加えて囚われの身にありながらお茶を要求するのだからずうずうしいことこの上ない。

――ただ、それは少女なりに心を守ろうとしての行動だったのかもしれない。
――あるいは、そうでもして気を紛らわせていないと正気を保てなかったからかもしれない

目前に広がるのは、果てしない暗闇。
真紅の悪魔の意識が彷徨っているのはその奥底。
自分はどうなってしまったのか――
上下の感覚も、時間の感覚も何もない。
生きているのか、死んでいるのかすらも分からない。
気が狂いそうなまでに何も無い世界の中で少女は一人ぼっち。
流石の真紅の悪魔といえど精神的に相当参っていた。

「ふんっ、いいわよ、いいわよ。そっちがその気ならわたしは勝手に暇を潰させてもらうんだから!」

故に少しでも気を紛らわせて圧し掛かる虚無を誤魔化そうとデビルは一つの作業に取り掛かることにした。
何もこの空間から脱出しようと大暴れしようというのではない。
というか今ここで騒いでいる彼女は一種の精神体みたいなもので肉体を伴っていないのでそんなことはするだけ無駄なのだ。
だが、身体が無くともできることはある。
ロワ内でもよく行われる非肉体労働――考察だ。

「なんせわたしは見かけはレミリア、頭脳はコナンのチートキャラ! 考察の一つや二つ訳でもないわ!」

むしろ中身は⑨やルーミアだろとツッコミを入れてくれる書き手は勿論おらず、真紅の悪魔は満足いくまでぺったんこな胸を張る。
とはいえコナン程ではないにしろ、実際のところ真紅の悪魔は考察だってそれなりにできる。
彼女が馬鹿と呼ばれる由縁は頭脳のなさではなく、目先のことしか考えない行動とすぐにガクブルしてしまうことなのだから。
……こいつ、ほんとに吸血鬼か?
やっぱ妖精の一種だろ、おい。
地の文にまで散々に言われているとは露知らず、デビルはお題を確認する。

僅かの間だが相方だった少女、魔王ヴァルハラがどうして覚醒できていないのか、だ。

忘れられがちかもしれないが真紅の悪魔は優勝路線。
首輪の外し方や主催者の倒し方を考える意味は無い。
となれば特に有用ではない、されど気になっていた疑問を解決しようとしてもいいはずだ。
心の中でうんうんと何度でも頷く。それにまったく役に立たないわけではない。

「本当に助けに来てくれるかもしれないしね。既に種は蒔いているんだし!」

こつこつと投下し続けているだけあってヴァルハラの投下数は今や666に迫るものがあった。
覚醒してくれれば単純計算で戦力は2倍になるということだ。
まあ二人合わせてもかのギャルゲ写本の投下数には届かなかったりするのだが。
あれは別格だから気にしたら負けである。
さて、話を戻そう。
ヴァルハラがどうして覚醒できていないのかを考えるにあたり、真紅の悪魔は情報を集めることにした。
ここで言う情報とは言うまでもなく書き手としての作品のことである。
基本書き手ロワのキャラクターはその性格や能力が書き手の癖や特徴、書いた作品に由来しているのだからいい判断と言えよう。

「ふっふっふ、それにしてもわたしったらついてるわ! 
 なんでか知らないけれどヴァルハラの作品の記憶が全部ここにはあるし!
 これも日頃の行いの賜物かしら? 神様っているものね♪」

いやあんた悪魔だろ。しかもここは悪魔の体内の中だし。
ってか神様に好かれてるんならそもそもデビル四国に飲まれたりしないだろ。
地の文は声を出して言いたくなるのを冷静にこらえ裏方に専念する。
尚、彼女が得た作品のデータはヴァルハラと同一人物であるヨッミーATの魂由来のものであったりする。
強化外骨格の特性ゆえか、スパロワ出典のデビルガンダムの性からか、修羅王に力を貸した彼の最後の輝きの幾分かを紅死国が蒐集していたのだ。

「それじゃあでびるのパーフェクト考察教室はっじまっるよ~♪」

残り滓程度に過ぎずたいした情報密度も無いデータではあったが、自身も物質存在ではない今の真紅の悪魔からすれば十分事足りる。
手に入れた魔王ヴァルハラの書き手紹介や作品群に目を通し、早速思考の海にダイビングするのであった。

――カーディナル・デビルがことの真相に行き当たるまでに時間はそうかからなかった。

     * * *

眩しかった陽のこと… そんな朝の陽のこと…

「なんで……わたし、生きてるんだろ」

時を遡ること早朝、お決まりの文句をわたしは馬鹿みたいに呟いていた。
わたしはヴァルハラ、魔王ヴァルハラ。
魔王とは名ばかりのあっけなく返り討ちにあい死んじゃったはずのまぬけな女の子。
でも、わたしは生きている。
朝日が眩しいと確かに感じられる。

「ああ。ああ……あああ」

涙が出てきた。
生きている――自分の大好きなロワで物語を書ける、読める。たったそれだけのことがこんなにも素晴らしいことだなんて。
同時に思う。
そんなあたり前だけど本当に大切なことにさえ気付けていなかった自分如きが優勝できるもんかと。
脳裏に浮かぶのは鮮烈なまでに記憶に刻まれた一人の少女の姿。
私に覚悟を問うた一つのロワを率いる投下数トップ書き手、ギャルゲ写本。
確固たる意思をもって四十をも超える作品を毒にも挫折にも負けずに書き上げてきた偉大な人。
きっと古今東西あらゆるロワの書き手が集結したこの書き手ロワにはあの人にも匹敵する人がまだ何人もいる。
それを。
相手が一人でさえ手も足も出なかったあの人みたいな書き手達を。
生き残るために私は殺していかなくちゃならない。

「そんなの……無理だよ」

分かってる、作品数だけが書き手を測る全てではない。
投下数が1、2作な人でも、その僅かな作品が心に残るものだったことはざらにある。
けれども、投下数の多い書き手は、それだけの数の作品を仕上げられるに見合う熱意と力を持っているのは事実。
もはや終盤にして盛況ロワであるGR2のトップ書き手が魅せた42の作品の壁は未だに100話にも満たない過疎ロワ書き手にはあまりにも大きすぎた。

「もうやめよっかな、戦いなんて」

勝てるわけがない。
わたしなんかじゃ届くはずがない。
鎌首をもたげた弱い考えは見る間にわたしの心を蝕んでいった。
そして同時に浮かんだのは弱いわたしの強い仲間達のこと。
同じRPGロワの書き手達のこと。
どんなに絶望的な状況でも彼らへの信頼という光だけは、わたしの中に消えず輝いたままだった。

「そうだよ、RPGロワのみんなはすごいんだもの。
 わたし一人くらい何もしなくたって誰かは生き残ってくれる。ロワだって完結させてくれる」

次々と脳裏に浮かぶのは知らない人にとってはどうでもいい、けど、わたしにとっては言葉で言い尽くせない意味を持つ英数字。
◆6XQgLQ9rNg、◆Rd1trDrhhU、そして◆FRuIDX92ew。
大切な家族(同じロワの書き手)を表すトリップだ。
一人目はOPも書いたお兄ちゃんで、わたしのすぐ下の弟。
RPGロワ随一、いや、古今東西いかなロワを見てもトップクラスの文章力と面白さ、さらには原作愛も兼ね備えた狂人スヴェルグ
二人目はここのところ身長(投下量)がぐんぐん伸びてきている次男坊。
卓越した心情描写により揺さぶりが得意な――特には魂さえも揺さぶる燃え展開をも書く剣客オボロ。
最後に最近久しぶりに顔を見せた奔放がちな末っ子。
各ゲームの小ねたをふんだんに取り込み読者をにんまりとさせる帰ってきた勇者、アイギス。
3人が3人ともわたしの自慢な大切な弟達。
あの子達なら対主催エンドでも優勝エンドでも乗り切ってくれるに違いない。
ううん、男子三日会わなければなんとやら。
一人くらいは、なんて失礼だ。
3人が3人とも生き残って、力を合わせてこの会場から脱出だってできちゃうことだってありえるよ、うん!
そしたらRPGロワは安泰だよ。
繋ぎ手が一人居なくなったところでクオリティが落ちるわけでもないし、何気にみんな繋ぎもこなせるし。
いつか弟達に身長を抜かれちゃうのは世の常だもんね。
だいじょうぶだいじょうぶ。
3人なら、だい、じょう……ぶ。
3人、なら……。
あれ?
なんで、わたしは、泣いてるんだろ?
泣く必要なんかないじゃない。
RPGロワはちゃんと完結するに決まってるんだよ?
わたしが、わたし一人が、いなくたって。
いなくたっ……いやだ。

「三人じゃ、嫌だ……。三人じゃ、やだよお。わたしも、あそこに、いたい……。」

だってわたしは好きだから。
RPGロワが、共に歩む書き手達が、みんなの作品が。
好きで好きで大好きだから。

そのためにもわたしは優勝しなくちゃならない。
パロロワにはベターエンドはあっても、ベストエンドはない。
全滅を免れ、対主催集団が勝利したとしても生き残った誰も彼もが多かれ少なかれ大切な人を失っている。
ロワが無事完結するとはそういうことだ。
幾多もの人死にの果てにのみ終わる物語。
書き手2の生還者が正規参加者内では一人しかいないことを踏まえても、書き手3完結時に自ロワの書き手が全て生き残っていることなんてまずありえない。
だからこそ死者蘇生を否定する現行の対主催エンドじゃ駄目なんだ。
4人もの同郷出身の参加者が誰一人欠けることなく無事に生還するためには優勝して願いを叶えてもらうしかない。
分かってる。
あの主催者達が本当に願いを叶えてくれる保証なんてないってことくらい。
OPでは書かれなかったからとか屁理屈を言って公約を無視するかもしれない。
それでも、わたしは藁にすがる想いで己が手を血に染めようと決意したんだ。

ロワを完遂させる為に汚れ役になる覚悟――わたしは、殺す、誰もかも
たとえ恨まれても、文句を言われていても完結させる覚悟――わたしは耳を閉じず、目を開いて、わたしが成した全ての結果を受け止める
辛くても、苦しくても、書く事を絶対に諦めない覚悟――腕の一本が折れようとも、足の一つがひしゃげようとも
毒はかれても、挫折を味わっても折れない覚悟――折れても立ち上がってみせるから。負けないんだから!
どんな時でもその自分のロワを愛しぬく覚悟――これに関しては愚問、言われるまでもないよ!

「わたしは、わたしは、お姉ちゃん(トップ書き手)なんだからあー!!!」

何が何でも最後まで全てを貫き通すと覚悟を決めたんだ、旅の扉をくぐる前に。

ああ、なのに。

あれから数時間経った今、いったい何をやってるんだろ。
すぐにでもあの居場所にいたいから優勝しなきゃと思う心を押しとどめて、他のロワの書き手を助けようとしてる。
スヴェルグのような技巧も、オボロのような心もない。
アイギスの知識や、ここにはいない◆SERENA/7psさんみたいに5部作を書いたこともない。
わたしは、未熟。
でも、でも、でもでもでもでも!
未熟なことはいけないことなの?
そうは思えない。
こんなことを思うのはトップ書き手としては失格かもしれないけど。
わたしは上手でなくても、早くなくてもいいから、みんなと一緒にRPGロワで書きたかった。
助けを求める多くの人を見捨ててでも、スヴェルグとオボロとアイギスとわたしの4人で、
ううん、新人さんも時々書いてくれる人も含めた全員で、
ずっと、ずっと、ずっとずっとずううううううう~~~~っと一緒に居たかった!

だったらわたしはどうして3人を探しに行かないで、かといって誰も殺さず真紅の悪魔を助ける為に仲間を集めようとしているの?
車輪さんの言うとおりだ。
我がままとも言える願望の為に何が何でも勝たなきゃならないわたしからすれば、
盟友が早くも使い物にならなくなったことを嘆きこそすれ、殺人の手を止めてまで救ういわれはないはずだ。
ただでさえ弱いわたしには生き残ることで手一杯。
真紅の悪魔の救出はわたしがやらなくたって実力のあるお人よしの対主催が勝手にやってくれるかもしれない。
ふさわしい人が居るなら任せたっていいよね?
本当は死の恐怖の体現である狂った四国といかつい男の元になんて味方になってくれる人ができても戻りたくない。
すんでのところで拾った命。
RPGロワのみんなと帰るためにも捨てるわけにはいかないのに。

泣いてるように見えたあの子の顔を思い出すと、見捨てることはできなかった。
先に助けられたのはわたしなんだし。
それに、何よりも。
知ってしまったから。
あの子が泣いていたわけを。
感じてしまったから。
居たかった場所に居られなくなってしまった寂しさを。

わたしは知らない。
どうしてあの子の基になった書き手が自分のトリに終了宣言を出したのかを。
何を想ってのことか、そのことに対して他の書き手や読み手がどう想っていたのかなんて。
けれども一つだけ分かっていることがある。
あの子は。
真紅の悪魔は。
◆CFbj666Xrwは。
あの日、あの時、あの場所に――ロリショタバトルロワイアルに居たかったんだ。
じゃなくちゃ泣いたりなんてするもんか。

わたしなら耐えられない、◆iDqvc5TpTIとしてRPGロワに居られなくなることなんて。
他人であってもこの苦しみだけは見たくない!
デビルの涙を思い出すだけでわたしは辛いもん。

あの涙が気のせいだったというのならそれでいい。
わたしの気持ちが自分勝手な同情だというのなら頭を下げて謝ろう。

わたしは『お姉ちゃん』なんだからー!!!

再び誓いの言葉を心の中で口にする。
ちっぽけな理由だと舞い踊る車輪や無常の騎士は笑うかもしれない。
けど、これ以上に自分を鼓舞する言葉は見つからない。
挫けないで居られるのも。わたしが自ロワのトップ書き手で、そしてデビルのお姉ちゃんだと思えばこそ。
レミリアも姉なのよってあの子は言うかもしれないけれど、東方の原作じゃ妹の方が強いということで勘弁してもらおう。

『だいじょうぶよ。多分、あなたは“覚醒”してないだけなのよ。
 だってあなたはトップ書き手なんだもの。
 今にきっと、わたしなんかよりずっとずっと強い力に目覚められるわ。
 わたしがピンチの時でもバーンと助けてくれるくらい強く』

うん、そうだよね。
だいじょうぶだいじょうぶだいじょうぶだいじょうぶ。
あなたを置いてったりしないから。
二人で優勝だって約束したもんね。
きっと、絶対、助けてみせるから。
泣きやんでよ、ねえ……

【一日目 午前/フォレストエリア】
【魔王ヴァルハラ@RPGロワ】
【状態】健康、下着マント
【装備】エクスカリバー@ギャルゲロワ2、王者のマント@動物ロワ、エッチな下着@LSロワ
【道具】支給品一式
【思考】
 0:真紅の悪魔を助け出す。そのために協力してくれる人を集める。
 1:みんなで元の世界に帰ってロワ完結させる為に優勝する。
【備考】
※外見はナナミ@幻想水滸伝Ⅱです。

     * * *

「謎は全て解けたわっ!!」

ふふんと薄い胸を張って真紅の悪魔はふんぞり返っていた。
魔王ヴァルハラが何故覚醒できていないのか?
簡単だった。実に簡単な謎だった。
吸血鬼の少女からすれば自身の叡智あってこその解答だが、ヴァルハラの作品を読み、彼女の内面に幾ばくか触れた書き手なら同じく正解に至れただろう。
しかし今現在この島にてその条件を満たし探偵役となりえる生きている人物は真紅の悪魔しかいないのは事実。
どんなに探偵が馬鹿っぽくても一聞の価値はある。
探偵は語りだす、そもそもどうして力を使えないなんてことが起きたのか、まずはそこが問題よと。

「今までの書き手ロワなら外見の基になったキャラが弱かったからで済んだでしょうけどこの書き手3じゃわたし達はタイトル技が使えるのよ?
 書き手ロワに呼ばれている例外を除いて一作以上は書いているはずなのだから、ヴァルハラだって自作にちなんだ技や能力があってもおかしくないじゃない。
 なのに全く特殊な力がないなんて変よ。わたしだって訳の分からない一つ以外はなんとな~く最初っから使い道が分かってたんだし、不思議だけど。
 主催者の嫌がらせって線も無い訳じゃないけれど、ってかわたしも書いたわね、主催者からの嫌がらせ。
 大量破壊兵器拡散防止。あれは楽しかったわね、ふふふ。あら、これってタイトル技として使えばなんかすごそうなことにならない?」

気分はすっかり江戸川コナン。
聞く者の居ない舞台で独り朗々と饒舌に真紅の悪魔は推理を続けていく。
本当はかなり長いのだが見ての通り何度か脱線しているので以下省略。
一気に解答編の見せ場へと移ることにしよう。

「真実はいつも一つ、犯人はお前だ!」

ばばーんと決め台詞と共に指差すはさっきまで目を通していたヴァルハラの作品群の一つ。
ヴァルハラの記念すべき10作品目であり、奇しくもRPGロワ全体からしても一つの節目である50番目の作品。
そのタイトルは

『三人でいたい』

魔王ヴァルハラは基本繋ぎ書き手だが所謂クライマックスが書けないわけではない。
というか、こちらのほうが本領だと言われたら納得してしまう作品を二つだけだが投下している。
RPGロワの代表作としてもちょくちょく話題に上がるくらいだ。
片や『夜空』、もう片方がこの『三人でいたい』だ。
当ロワにおけるヴァルハラの姿がこの話の主役であるナナミなことからもその影響力は知れよう。

そんな書き手ロワ3のルールにのっとっていえば切り札にもなりえる代表作というカードが、
けれど、ヴァルハラが弱い理由だと悪魔は断じる。

「誰が言い始めたのかしら、書き手ロワでの強さというのは作品の数や質以上に書き手ロワ内での書き手としてのあり方によるものが大きいって。
 書き手ロワ2ndでカオちゃんが死んだあたりだったかしら?
 あながち間違っていないって話よね、これ」

だったら、さ。
真紅の悪魔は一度息を吐き、吸って、遂に核心を突く。

「もしも“無意識とはいえ心から自分の代表作を否定しちゃってるような書き手”が力を存分に発揮できると思う?」

真紅の悪魔は思い出す。
魂のファイアーボンバーに乗って林道を西へ向かっている間にしたヴァルハラとのおしゃべりを。
魔王の名に似つかわしくないどこにでもいそうな普通の少女は自分を奮い立たせるように何度も言っていた。

――3人じゃ嫌だ、四人で帰るんだ

それが答え、それが正解。
三人じゃ嫌だと少女は心の底から思ってしまっていた。
あれでは発動に想いを込めてタイトルを唱えればならないタイトル技は使えまい。
少女がちょっと前に心を込めずに呟いた『大量破壊兵器拡散防止』のように何も起こらないで終わりだろう。
嘘でも必要だからでもヴァルハラが『三人』を許容することはできないからだ。
そしてタイトルが作品そのものを表す以上、タイトルの否定とは作品の否定に他ならない。
更にはこの地での心や身体の大きな構成要因である己が代表作の否定は、
他のタイトル技が使えないことや、身体能力の微妙さにも表れているのではないか?
冗談みたいな話だが、ここは書き手ロワ。
そういう世界だ、恐らく間違っていない。

「だからバカじゃないって言ったでしょ、ふふ!」

見事謎を解き明かしたことに有頂天になっていたデビルだが、
ふとあることに気づき、一転顔を青ざめさせる。

「あれ? これってもしかしてわたしピンチ?」

助けに来てくれたとしても前述の推理によるとヴァルハラの覚醒は非常に難しいからだ。
一番手っ取り早いのはヴァルハラに感情を抑えて想いを偽ってもらうことだが、そんな器用なことをあの少女ができそうかと問われればNOだ。
それができるくらいならあの弱さで正面から戦うマーダーになろうなんて馬鹿な考えは起こさないだろう。
ステルスマーダーや扇動マーダーになった方がまだ勝率が高いというものだ。
これがギャルゲ写本やワンキューなら本音の一つや二つ目的のためなら平気で偽れたであろうに。
もう一つ解決策が無い訳ではないが、そっちの方はもっと絶望的だ。
RPGロワの面子と同じくらいに心から一緒に居たいと思えるヴァルハラ本人を含めた“3人”を新たに見つるなんて。
そもそもだ。
自らの代表作を偶然とはいえ否定してしまう程に自分の4人で帰ることを望む魔の王が、
帰る場所もない消え逝くだけの悪魔なんかを助けにくるだろうか?

来てくれるわけがない。
自分は既に終わった書き手。
助けたところでヴァルハラには何の得もない。
◆CFbj666Xrwの名がRPGロワの予約スレに刻まれることは永久に無いのだから。

「……良いなあ、RPGロワの人たちは迎えに来てくれるお姉ちゃんが居て」

自分には迎えに来てくれる仲間はおろか、待っていてくれる人さえ居ないのに。
後に続く言葉を止まらせたのはただの意地か、それとも別の理由か。

「やめたやめたー!もうバカでいいわよ!」

書き手2とは異なりダイダルゲートが設置されていないこのロワではDG細胞に取り込まれたからといって負の波動を送り込まれることは無い。
怒りも。悲しみも。憎しみも。疑いも。嫉妬も。恐怖も。絶望も。狂気も。
スパロワのミオとは違いどこの誰とも知らない人間の感情を押し付けられないで済む。
されど、だからこそ。
外からではなく、内側から芽生えてきた感情は抑えられない。
抑えられないのならと少女は逃げた。
選べる最も安易な一つの道へと全力全開で逃げた。

「天才だの吸血鬼だの言っても、私はただの大バカよ!」

自分一人で思いでも悲しみもも抱え込んで。
誰とも一緒に笑えず世界中で馬鹿をし続けて。
誰にも叱られず傲慢になっていって。
それをする自分自身を一等バカな者に仕立て上げて。
侮蔑も、憐憫も、同情も、哀れみも。平気な振りして裸の王様として生きていく少女は

「もう寝よっと。おやすみなさ~い」

夢の世界へ逃げ出した。

【一日目 午前/紅死国内部】
真紅の悪魔(カーディナル・デビル)@LSロワ】
【状態】生体ユニット(本作では意識体)
【装備】(刀銀十字路/楼観剣@LSロワ)
【道具】(支給品一式)
【思考】
基本:これでもマーダー路線です。
1:ZZZ
※:『Humpty Dumpty sat on a wall. Humpty Dumpty had a great fall.
  All the king's horses, And all the king's men, Couldn't put Humpty together again.』
  のタイトルも必殺技になっているようですが、何が起きるのか当人も判っていません。

     * * *


真紅の悪魔はまどろみの中で願い続ける。
願わくばソードマスターな夢の続きだけは見ることのないように。
たった一人で、ひっそりと死んでいく。
それがあの夢の元ネタの結末だから。

   カーディナルデビル
だから《真紅の悪魔》は夢を望む。
幸せな居場所で朽ちる夢求む。

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その名はモケーレムベンベ 真紅の悪魔(カーディナル・デビル)  ?
その名はモケーレムベンベ 魔王ヴァルハラ 問1「人の繋がりとは何か」

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最終更新:2010年03月02日 17:59
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