日本語の言葉の造り

日本語における活用(派生語の作り方)を例を出し、解説していきます。

名詞の作り方

  • 連用形を名詞とする。
    • 造り、話、飾り、譬え、慰め、光
  • 「さ」や「らしさ」を付ける。専ら形容詞に付く。
    • 美しさ、楽しさ、温かさ、自分らしさ、女性らしさ
  • 「み」を付ける。専ら形容詞に付く。
    • 楽しみ、温かみ、重み、面白み
  • 「こと(事)」を付ける。専ら動詞に付く。
    • 私は動くことが好きだ、しっかり寝ることが大切である
  • 「の」を付ける。専ら動詞に付く。
    • 彼は食べるが速い、見ず知らずの人と仲良くするがうまい
  • 「性」を付ける。
    • 可能性、安全性、適応性
  • 「ら」を付ける。
    • 賢しら、半ら、清ら

ク語法

言葉の名詞化で古くから用いられた方法。動詞のほか、形容詞、助動詞にも付く。意としては「~こと」を表す。
言葉の例:いはく(曰く)、おもはく(思はく)、おいらく(老らく)など
作り方は四段活用・ラ変動詞は未然形に「く」。形容詞は「けく」。その他は終止形に「らく」が付く。
「いはく」は原形の「いふ」が四段活用なので、未然形の「いは」に「く」を付け「いはく」となる。
「おいらく」は「おゆらく」の変化した語で「おゆ」が上二段活用なので、終止形の「おゆ」に「らく」を付け「おゆらく」となる。
また、ク語法の派生語として打消「なく」、推量「まく」、過去「しく」または「けく」がある。
付け方は「なく」と「まく」は未然形に付き、「しく」は連用形に付く
「知らないこと」はク語法で「知らなく」。「掛けようとすること」はク語法で「掛けまく」。「言ったこと」はク語法で「言い(言ひ)しく」となる。

動詞の作り方

+ 動詞活用表
確認方法 -ず -て -とき
-こと
-ども 現代仮名遣いあ行の四段活用の多くは元来は「ふ」。
未然形は「は」であり、現代においては「わ」。
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 備考
四段活用 -a -i -u -u -e -e 「会う」や「打つ」、「敷く」など。
上二段活用 -i -i -u -uる -uれ -iよ 「睦ぶ」や「滅ぶ」、「落つ」など。
下二段活用 -e -e -u -uる -uれ -eよ 「定む」や「冴ゆ」、「束ぬ」など。
上一段活用 -i -i -iる -iる -iれ -iよ 「着る」や「見る」、「生きる」など。
下一段活用 -e -e -eる -eる -eれ -eよ 「上げる」や「伝える」、「出る」など。
カ行変格活用 くる くれ 「来」のみ。
サ行変格活用 する すれ せよ 「為」と「おわす」のみ。
ナ行変格活用 ぬる ぬれ 「死ぬ」と「往ぬ」のみ。
ラ行変格活用 「あり」と「居り」、「侍り」、「いまそかり」のみ。
  • 「する」や「る」を付ける。
    • お茶する、制する、害する、けちる、愚痴る、事故る、道化る
  • (ぬを除いた)う段のいずれかを付ける。
    • 速やく、戦ぐ、あやかす、独り言つ、楽しむ
      • 「く」の例は「絞く」(罠の動詞化)。
        「す」の例は「直す」(直の動詞化)。「す」は使役の助動詞。
        「ぬ」の例は「連ぬ」(列の動詞化)。
        「ふ」の例は「繕ふ」(作るに継続・反復の助動詞「ふ」を付け動詞化。)。「ふ」は継続・反復の助動詞。
        「ぶ」の例は「否ぶ」(否の動詞化)。
        「む」の例は「癖む」(癖の動詞化)。
        「ゆ」の例は「栄ゆ」(咲くと関連がある)。「ゆ」は自発・受身・可能の助動詞。
        「る」の例は「焦がる」。「る」は自発・受身・可能の助動詞。
      • ぬを付けた場合、打ち消しの意になるので動詞化させる目的であれば、正確に伝わらない可能性が出てくる。
        ただ、純粋な動詞として「死ぬ」や「往ぬ」、「寝ぬ」などがある。
  • 「じる」、「ずる」を付ける。
    • 信じる、投じる、安んじる、肯んじる
      • 「じる」と「ずる」に大きな違いは無い。強いて言えば「じる」が口語体で「ずる」が文語体程度の違いである。
  • 「ぶる(振る)」を付ける。
    • 勿体振る、偉ぶる
  • 「がる」を付ける。
    • 有難がる、嬉しがる、得意がる
  • 「なる」を付ける。
    • 白くなる、力になる、大きくなる
  • 「つく」を付ける。専ら副詞の語幹に付く。
    • ふらつく、ざわつく
  • 「めく」を付ける。専ら副詞の語幹に付く。
    • 揺らめく、犇めく、響めく
  • 「かす」を付ける。
    • 散らかす、はぐらかす、誑かす、光かす
  • 「張る」付ける。
    • 嵩張る、欲張る
  • 「なう」を付ける。
    • 担う(荷なう)、伴う(共なう)、誘う(いざなう)、諾う(うべなう)
  • 「化」を付ける。動名詞化させる働きがある。
    • 温暖化、商品化、効率化
  • 「ばむ」を付ける。
    • 黄ばむ、汗ばむ、戯ばむ
  • 「染みる」を付ける。
    • 田舎染みる、年寄り染みる
  • 「びる(ぶ)」を付ける。
    • 大人びる、古びる

形容詞の作り方

+ 形容詞活用表
確認方法 -ず -て -とき
-こと
-ども
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 備考
ク活用 けれ シク活用はク活用の終止形を除いたそれぞれの頭に「し」をつける。
ク活用とシク活用の確認方法は言葉の後に「なる」と付けて確認し、
「~しくなる」であればシク活用となる。
から かり かる かれ
  • 「い」や「しい」、「し」を付ける。
    • 黄色い、面倒い、羨ましい、勇ましい、騒がしい
  • 「い」、「しい」の関連語
    • 「がましい」、「がまし」
      • 痴がましい、押し付けがましい
    • 「けし」
      • 長閑けし、豊けし
    • 「こい」、「こし」
      • 油っこい、丸っこい
    • 「たい」、「たし」
      • 焦れったい、めでたい
    • 「たらしい」、「たらし」
      • 長ったらしい、憎たらしい
    • 「っぽい」
      • 色っぽい、怒りっぽい
    • 「ない」、「なし」
      • 切ない、忙しない
    • 「めかしい」、「めかし」
      • 古めかしい、艶めかしい、子めかし
    • 「らしい」、「らし」
      • 男らしい、阿呆らしい
  • 動詞の過去形(た形)を形容詞として扱う。
    • 使われた、肥えた、古びた、馬鹿げた
      • 国文法では動詞の過去形は形容詞に当たらないが、実質的な働きは同じであることによる。
  • 「か」や「やか」、「らか」を付ける。
    • 華やか、細やか、速やか、大らか
  • 「みたいな」を付ける。
    • 夢みたいな、嘘みたいな
  • 「のよう(様)な」を付ける
    • お伽話のような、子供のような
  • 「がち(勝ち)」を付ける。
    • 遠慮勝ち、忘れ勝ち
  • 「たげ」を付ける。
    • 言いたげ、行きたげ
  • 「風」を付ける。
    • 和風、現代風
  • 「的」を付ける。
    • 印象的、形式的
  • 「げ(気)」を付ける。
    • 大人気、恐れ気
  • 「気味」を付ける。
    • 風邪気味、太り気味

助字

助字とは語調を整えるもので実質的な意味が薄い言葉をいいます。

接頭辞

  • 相~
    • 相伴う、相従う
  • い~
    • い漕ぐ、い隠る
  • ()ち~、うっ~
    • 打ち嘆く、うっ開く
  • (お/み/ご/ぎょ)
    • 御前、御負け、御飯、御下げ、御家芸
      • 本来なら丁寧語化させるものであるが、一部の言葉は専ら単体より「御」を付けた形で用いられているため、助字としての働きも有していると考えます。
  • 押し~、押っ~
    • 押し留める、押し削ずる、押っ始める、押っ魂消る
  • か~
    • か弱い、か細い、か黒い
  • 搔き~、掻い~、掻っ~
    • 掻き消す、掻い摘む、掻い潜る、掻っ穿る
  • け~、気~、毛~
    • けざやか、気怠い、気懐し、毛二歳
  • さ~
    • さ迷う、さ夜
  • 差し~
    • 差し迫る、差し控える、差し放つ
  • た~
    • た易い、た謀る
  • 立ち~
    • 立ち寄る、立ち入る、立ち騒ぐ
  • つい(突い)~、つっ(突っ)~
    • つい蹲う、つい潜る、つっ走る
  • 手~
    • 手厚い、手短、手広い
  • 取り~
    • 取り繕う、取り乱す、取り囲む
  • 引き~、引っ~、引ん~
    • 引き忍ぶ、引っ絡む、引っ背負う、引ん剥く
  • ぶち(打ち)~、ぶん(打ん)~、ぶっ(打っ)~
    • ぶち壊す、ぶち殺す、ぶん殴る、ぶん投げる、ぶっ飛ばす
  • 罷り~
    • 罷り通す、罷り要る

接尾辞

  • (し/す/こ)
    • 帽子、様子、拍子、杓子、扇子
  • ~こ
    • 餡こ、端っこ、隅っこ
  • ~っぽ
    • 先っぽ、空っぽ
  • ~ね(根)
    • 屋根、杵ね、羽根
  • ~ま
    • まほらま、かえらま
  • ~ら(良、等)
    • 野良、荒野ら、稀ら
  • ~ろ
    • 嶺ろ、日ろ

その他

  • ~っ~
    • 片っ端、ちっとも、奇っ怪
  • ~ん~
    • みんな、あんまり、そのまんま
  • 重ね言葉
    • 嘘偽り、正真正銘、津津浦浦、実に誠
最終更新:2023年03月04日 19:06