George(2007-3-12)
≪魑魅魍魎 美食の宴≫第二章 天狐
∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽・∽
「はぁ… 本当に戻ったんだなぁ…」
「…そうでやんすねぇ…」
「ウン・・・」
ここ老舗旅館「黒塚亭」の二階で、切り切りトリオの三匹が疲労感と脱力感に
その身をさらしていた…。
しかし不思議な事に、それと同時に妙な安堵感でいっぱいである事も事実で
あり、今この瞬間が意外と心地よかった。
記憶が戻った事も理由の一つではあるが、実のところ女将鬼婆の調合した
精神安定剤と疲労回復を兼た漢方薬のお蔭だと言う事に、三匹は気付いて
はいなかった。
あの後女将にあれこれと聞かれ、洗い浚い知っている限りの事を白状したが、
不思議と後悔の念は三匹にはなかった。
女将はその後、旅館の仕事の為に部屋を出て行ったが、意外な言葉を三匹
に残して行った。
「部屋にある物は自由に使いな… 働くんだったら食事も風呂も世話して
やるよ… うん?」
その身をさらしていた…。
しかし不思議な事に、それと同時に妙な安堵感でいっぱいである事も事実で
あり、今この瞬間が意外と心地よかった。
記憶が戻った事も理由の一つではあるが、実のところ女将鬼婆の調合した
精神安定剤と疲労回復を兼た漢方薬のお蔭だと言う事に、三匹は気付いて
はいなかった。
あの後女将にあれこれと聞かれ、洗い浚い知っている限りの事を白状したが、
不思議と後悔の念は三匹にはなかった。
女将はその後、旅館の仕事の為に部屋を出て行ったが、意外な言葉を三匹
に残して行った。
「部屋にある物は自由に使いな… 働くんだったら食事も風呂も世話して
やるよ… うん?」
ゆらりゆらりと軽い足取りで消えていく女将を思い出しながら、網切が呟く…。
「しっかし、それにしてもあのバ… いやいや、女将には驚いたな?!」
「へい、あっしも自分の目を疑いやしたよ… まさかあんなベッピンだった
なんて… 本当の姿がアレだって言ってやしたよねェ?」
「ああ… ったく、俺様がこんな事言うのも変な話だが… 妖怪って奴ァ本当
見た目じゃわかんねェもんだよなぁ…」
「・・・ウン」
「…そう言や女将、゛この姿、宗旦以外に見せるのは久しぶり″とか何とか
いってやしたよね?」
「んあ? ああ、言ってたな…」
「・・・ウン」
「しっかし、それにしてもあのバ… いやいや、女将には驚いたな?!」
「へい、あっしも自分の目を疑いやしたよ… まさかあんなベッピンだった
なんて… 本当の姿がアレだって言ってやしたよねェ?」
「ああ… ったく、俺様がこんな事言うのも変な話だが… 妖怪って奴ァ本当
見た目じゃわかんねェもんだよなぁ…」
「・・・ウン」
「…そう言や女将、゛この姿、宗旦以外に見せるのは久しぶり″とか何とか
いってやしたよね?」
「んあ? ああ、言ってたな…」
「・・・ウン」
二階の窓の外からは、ポカポカとした日向の匂いが漂って来る。
先ほどから何か考え事をしているかのような網切に、子分の髪切り「髪助」
は気付いていた…。
初めは女将による「まいんどこんとろーるの術」の後遺症かとも思ったが、
髪助自身の意識をとうにハッキリしていたし、仲魔の黒髪切り「黒吉」の様子
を見ても、普段と何ら変わらないのは一目瞭然である。
「あのぉ、親分… どうかしたんでやんすか…?」
「んあ? おう、いやなぁ… これからど~すっかなぁと思ってな…」
「へっ?」
「フッ… 何か俺達ぁ、上の連中から見放された感じがしてなぁ…」
「ああ、そうでやんすねェ…」
「ウン・・・」
「俺達がここの連中にとっ捕まった時だって、誰も助けに来なかったみてェ
だしなぁ…」
「・・・・・・」
女将からこれまでの自分達の経緯を聞かされた三匹は、正直自分達の
所属する組織に疑問を抱き始めていたのだった。
組織にとって、自分達の存在価値はあるのだろうか?
自分達は組織の捨駒に過ぎなかったのか?
先ほどから何か考え事をしているかのような網切に、子分の髪切り「髪助」
は気付いていた…。
初めは女将による「まいんどこんとろーるの術」の後遺症かとも思ったが、
髪助自身の意識をとうにハッキリしていたし、仲魔の黒髪切り「黒吉」の様子
を見ても、普段と何ら変わらないのは一目瞭然である。
「あのぉ、親分… どうかしたんでやんすか…?」
「んあ? おう、いやなぁ… これからど~すっかなぁと思ってな…」
「へっ?」
「フッ… 何か俺達ぁ、上の連中から見放された感じがしてなぁ…」
「ああ、そうでやんすねェ…」
「ウン・・・」
「俺達がここの連中にとっ捕まった時だって、誰も助けに来なかったみてェ
だしなぁ…」
「・・・・・・」
女将からこれまでの自分達の経緯を聞かされた三匹は、正直自分達の
所属する組織に疑問を抱き始めていたのだった。
組織にとって、自分達の存在価値はあるのだろうか?
自分達は組織の捨駒に過ぎなかったのか?
しばらく三匹の間を、沈黙が支配する…。
「あっしと黒吉は… どこまでも親分に着いて行くだけでさぁ」
「ウン!」
「フッ… ありがとよ」
髪助の言葉に少し照れくさそうに応える網切であったが、すぐに表情を
変えると別の話題に切りかえる。
「そう言やさっきの話しだがな? ほら、女将が゛宗旦以外に見せるのは
久しぶり″ってヤツ!」
「あ、へいへい!」
「ウン!」
「ってこたぁ… まさかアノ二人はよぉ !?」
「!!」
三匹の顔がイヤラシイ表情へと変わる。
「ぎゃっはっはっはっはっ!! んな事ある訳ねェよなっ?! 狐と鬼婆が付き合って
たなんてよぉ !!!? ぐははっ!! ヤカンヅルが茶を沸かすぜ、なあっ?!!!」
「ひぃ~っ!そうでやんすよ、んな馬鹿な話っ!! でも面白いでやんすなっ!!!!」
「ウン!!」
「がははは・・・ はぁ・・・ 」
「ひひひぃ・・・ ふぅ・・・ 」
「・・・・・・」
「ウン!」
「フッ… ありがとよ」
髪助の言葉に少し照れくさそうに応える網切であったが、すぐに表情を
変えると別の話題に切りかえる。
「そう言やさっきの話しだがな? ほら、女将が゛宗旦以外に見せるのは
久しぶり″ってヤツ!」
「あ、へいへい!」
「ウン!」
「ってこたぁ… まさかアノ二人はよぉ !?」
「!!」
三匹の顔がイヤラシイ表情へと変わる。
「ぎゃっはっはっはっはっ!! んな事ある訳ねェよなっ?! 狐と鬼婆が付き合って
たなんてよぉ !!!? ぐははっ!! ヤカンヅルが茶を沸かすぜ、なあっ?!!!」
「ひぃ~っ!そうでやんすよ、んな馬鹿な話っ!! でも面白いでやんすなっ!!!!」
「ウン!!」
「がははは・・・ はぁ・・・ 」
「ひひひぃ・・・ ふぅ・・・ 」
「・・・・・・」
再び、しばしの沈黙が訪れる…。
「いい奴等だなぁ… あいつ等… 」
「でやんすねェ… 」
「ウン… 」
「まいんどこんとろーるの術」の実験台にされた挙句に、キツネ亭でいい様に
使われた事が、そんなに良い待遇には思えないのであるが、単純な分だけ
考え方もプラスで楽である。
しかしながら、普通敵の刺客を生かしておくなど人間界はおろか、妖界では
考えられない事であるから、やはりあの三凶と言う存在、他の妖怪達とは
どこか器が違うようである。
「でやんすねェ… 」
「ウン… 」
「まいんどこんとろーるの術」の実験台にされた挙句に、キツネ亭でいい様に
使われた事が、そんなに良い待遇には思えないのであるが、単純な分だけ
考え方もプラスで楽である。
しかしながら、普通敵の刺客を生かしておくなど人間界はおろか、妖界では
考えられない事であるから、やはりあの三凶と言う存在、他の妖怪達とは
どこか器が違うようである。
外では遠くの方で、以津真天が鳴いている。
「ねえ親分… 何つうかその… あっしは学が無ェもんで難しい事は
よっく解かんねェんでやんすがね? …あっし等はあっし等の道っつうモンが
あるんじゃねェかなぁ~と思うんでやんすよ…」
「・・・ウン」
「あっ… 出過ぎた事言っちまって申し訳ねェんでやんすが…」
「いや… そんな事ねェぜ髪助!」
「へっ?」
前までの網切であったなら、今の髪助の言葉に対して即座に怒鳴りつけた
であろう…。
しかし、今回の一連の騒動で、網切は親分としての器に磨きが掛かった
ようであった。
「ねえ親分… 何つうかその… あっしは学が無ェもんで難しい事は
よっく解かんねェんでやんすがね? …あっし等はあっし等の道っつうモンが
あるんじゃねェかなぁ~と思うんでやんすよ…」
「・・・ウン」
「あっ… 出過ぎた事言っちまって申し訳ねェんでやんすが…」
「いや… そんな事ねェぜ髪助!」
「へっ?」
前までの網切であったなら、今の髪助の言葉に対して即座に怒鳴りつけた
であろう…。
しかし、今回の一連の騒動で、網切は親分としての器に磨きが掛かった
ようであった。
「俺達には俺達の道がある! そうさ… いつでも答えは一つじゃねェ!!
正しい物とそうで無い物を完璧に見極める事なんかできやしねェ!!!!
…でもよぉ、自分の信念に反する事だけは解かる気がするぜっ!!!!!!!!」
「お… 親分っ!!!!」
「ウンッ!!!!」
「今、俺達切り切りトリオが成すべき事は、もらった義理はキッチリ返すって
事よっ!! そうだろ?髪助!黒っ!」
「へ、へいっ!!」
「ウンッ!!」
網切が立ち上がる。
続けて髪助と黒吉も立ち上がった。
「行くぜお前達! 俺達の居場所が決まったぜっ!!!!」
正しい物とそうで無い物を完璧に見極める事なんかできやしねェ!!!!
…でもよぉ、自分の信念に反する事だけは解かる気がするぜっ!!!!!!!!」
「お… 親分っ!!!!」
「ウンッ!!!!」
「今、俺達切り切りトリオが成すべき事は、もらった義理はキッチリ返すって
事よっ!! そうだろ?髪助!黒っ!」
「へ、へいっ!!」
「ウンッ!!」
網切が立ち上がる。
続けて髪助と黒吉も立ち上がった。
「行くぜお前達! 俺達の居場所が決まったぜっ!!!!」
そう叫んだ網切を先頭に、切り切りトリオの三匹は鬼婆の住処である
黒塚亭を後にした…。
黒塚亭を後にした…。
その足は、元自分達が所属していた組織、天狐軍団の居城のある
千邪ヶ谷へと向っていた…。
千邪ヶ谷へと向っていた…。
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