キノウツン藩国 @ ウィキ

サクラの並木

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kinoutun

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サクラの並木

L:サクラの並木 = {
 t:名称 = サクラの並木(アイテム)
 t:要点 = 道,たくさんのサクラの樹,咲いているサクラ
 t:周辺環境 = 花に気付く通行人
 t:評価 = なし
 t:特殊 = {
  *サクラの並木のアイテムカテゴリ = 藩国保有アイテムとして扱う。
  *サクラの並木の効果1 = 藩国内にサクラの並木道を作る事ができる。
  *サクラの並木の効果2 = 花見もできるので自然や季節を愛でるようになる。
  *サクラの並木の効果3 = 人の集まる場所に植える事で治安を+1上昇させる
 }
 t:→次のアイドレス = サクラ花見ブーム到来(イベント)
 }


イラスト(はる)

奴ならしょうがない

キノウツンに桜がやってきたのはいつの事だったか。
砂漠の国に桜を植えるなんて妙な事をする人がいるものだ、と皆興味本位に見に来たが、黙々と作業する男の顔を見て誰もが納得して帰っていった。
変わり者で名高い男だったからだ。
あいつならさもあらん、と誰もが言った。何故、桜の木を植えるのかという普通なら最初に至る考えすら誰も思わず。

やがて、砂漠の中に桜並木の道が出来た。
根を生やし、しっかり根付けるように土がかぶせられ、その上に生えた草が熱さを防ぐ。
遠い昔から始まった緑化計画の基本を組み合わせ、ついに砂漠に長い長い桜並木の道を作り上げたのである。
長い並木道に花が満開の時期は、物見遊山の人々が花を見上げていた。
不思議な事に桜の木には誰かが毎日水をやっており、しっとりと湿っているのだった。
そして並木の中の一本の桜の下には、いつも一人の男が泥だらけで昼寝しているのだそうである…

(高原鋼一郎)

桜爛春暄


「黄にして春の“はる”は誓う――」


/*/


 荒涼とした風が、薄桃の花びらを散らす。
 歓声。
 桜の舞う様は、確かに風情だった。

 世は花見ブームである。

「予定通りだな」
「うそばっかり」

 刀を地面に突き刺してさかづきを煽る髭男。
 さかづきの水面に、少女の顔がひょいとのぞくように映る。

「なにしてるの」
「実は俺が植えた桜を見ていた」

 その台詞に、少女の顔が露骨に歪む。

「...信じられない、こんな砂漠地帯に桜を植えるなんて。非常識」
「第二階層でオアシス、それなりに涼しい場所を選んだつもりだがな。」
「うそばっかり。いやがらせよ」
「去年はクリスマスプレゼント忘れてたんでな。いいじゃないか。
 なにせ、ヘソ出しの愛と芸術と学問の国にだって桜は咲くんだぜ」

 ため息が漏れた。
 得意になって笑う。
 砂漠に桜が咲くのはいいことだ。
 だが世話をする自信はなかった。
 自分は浅田ではない、植物の知識もない。

「予定通り?」
「嘘じゃないさ。水は高きから下へと流れる。流行も同じ」
「...たとえ、おかしいよ」
「過牛考」
「それなら――わかるけど」

「30マイルで桜並木が買えるなんて、安いと思わないか」
「ですから、その後の世話のことを考えないと...」
「それは高原に任せるよ」

 くうと寝ころがる。
 背中を蹴られたのだった。

 偶然だろうけど、背後から花見客の笑い声がした。


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「なにしてんだ」
「笑ってる」

ふん、と鼻で笑われた。

「酔っぱらいめ」

 髭の男はくつくつと笑う。
 設定状未成年なので酒は呑んでない、酩酊しているわけではない。

「やい、俺と勝負しろ」
「やめとけ、番長力5じゃ話にならん」

くそじじい、
 つぶやいて、興味を失ったのだろう。
 きびすを返して歩き出す音。

「――あいにく人は斬らんと誓ったんでな」
「いつ、誰にさ」
「この春に」
「軟弱め」
「そういうところは真似せんでもいい」


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「なにを、してるんですか」
「桜を見て、呑みあっている」
「誰と」

 それには答えずくつくつと笑う。

「なんで、桜の花びらは仄紅いのか――知ってるか?」
「くだらない話なら、聞く耳持ちませんよ」
「今は、それを信じたい気分なんだよ」

 髭の男は、地面に突き刺した刀に酒を浴びせて、自らもさかずきを飲み干す。
 刀を滴るアルコールは、刃をつたい地面の奥へと染み込む。

「俺は、この桜の花びらの一枚一枚の紅が血の色に見えてくる...」
「感傷に浸りたくて桜を買ったのですか」
「まさか。花見ブームが起こったときに桜がないと寂しいだろ」
「...そんな理由で、NWCで喧伝してたんですか」
「まあ、俺が花見したいだけだよ」

 風が吹いている。悲鳴のような荒涼とした風だった。

「桜が紅いのは、木の下に死体が埋まっているからだ――なんて、まさか本気で思ってるんですか。そんなの、悲しくないんですか?」
「まさか。」
 頭を振る。
「桜が赤いのは桜のせいだ。
  だが、この地はあまりにも多くの血が流れすぎた。
 幾千万の生命と赤き血潮が、砂の一粒一粒にまで染み込んで、滞っているのさ。
 理不尽な死の無念を俺たちに訴えるかのようにな。
――だから、さ」

 立ち上がり、男はまっすぐなまなざしで桜を見上げる。
 その瞳は、満開の桜のように爛々と輝いている。

「もし、桜がその血の赤きを、熱く暗くたぎる恨み、情念をくみ取って、最後に見事な花としてくれるっていうんなら。
 俺はそれを信じてもいいんじゃないかって、思うんだよ」


/*/


 風向きが変わり、暖かな春の風が頬をなでて通り過ぎる。
 その場にはもう誰もいなかった。
 男はしばらく飲んだくれていた。
 やがて、口を開く。

「命を運ぶと書いて運命と呼ぶ。なら、その命を運ぶモノとは何だ」

 胸のペンダントが、春の陽気に当てられて淡く黄色く灯る。
 太陽にも、春に咲く野花の色にも似た薄黄色。

「人は風に命を流され、運ばれていく。
 風に吹かれながら歩き、やがて風を背に走り出す。
 そしていつか風を追いかけて、風と共に進み、やがて風を追い越して先を走ろうとする。自らが定めた理想へと。」

 暖かな風は、地表に残っていた冷えた空気に押し上げられて上昇気流を生んだ。
 桜がうねり、幾千もの花びらを散らす。

「だが、その風があまりにも強ければ、風に巻き込まれて吹き飛ぶこともある。
 巡り合わせの不幸で、向かい風が吹くこともある。」

 地面につき立つ刀を引き抜く。
 酒に湿る土を払い、鞘に収めて身を引いた。

「おまえ達は、俺らの勝手に選んだ運命に巻き込まれ、強い風になぶられて...吹き飛ばされて、

――それでも、必死に生きようとした。

 俺は知っている。
 この風を懸命に走ろうとしたお前たちを。
――だから、」

金属の打ち合う小さな音。
 キンという響きの過ぎた後には、風の境目が斬れ溶けていた。
 風のうねりがほつれ、春の暖かな空気が地面へと降り落ちていく。

「黄にして春のはるは誓う。
 いつか、この運命を追い越すと。
この地に眠る全ての無念を背負って、それでも走りきってみせる。
 冬が過ぎれば春がくるように、俺たちの運命にも春があったのだと、無駄な命ではなかったのだと証明してみせる。
 だから、」

 髭面の男は顔を上げて、桜吹雪に笑いかける。

「まあ、ここで見てやがれ」

 春の陽気の様な笑い顔で。

(はる)
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