キノウツン藩国 @ ウィキ

桜の民

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桜の民

L:桜の民 = {
 t:名称 = 桜の民(人)
 t:要点 = たくさん,色々,ありました
 t:周辺環境 = 世界の終わり
 t:評価 = 体格2,筋力2,耐久力7,外見2,敏捷2,器用2,感覚1,知識1,幸運0
 t:特殊 = {
  *桜の民の人カテゴリ = ,,汚染種人アイドレス。
  *桜の民の刃物使用時白兵戦闘補正 = 歩兵,,(刃物を使う場合での)白兵攻撃、評価+8。
  *桜の民のイベント時食料消費 = ,条件発動,(一般行為判定を伴うイベントに参加するごとに、食事として)食料-2万t。
 }
 t:→次のアイドレス = ムラサメード?(職業),牙?(アイテム),最低の傭兵?(職業),虐殺者?(職業)




キノウツンには桜があった。
かつての話だ。今はもうない。
焼け落ちたのか、切り倒されたか。
その末を、誰も知らない。
不意にそんな桜のことを、思い出した。

序話

新芽の季節。キノウツンに幼子たちが生まれた。
希望を帯びたその子らを、大人たちは桜の民、とそう呼んだ。
見た目に何ら変わりは無くとも、その子らに希望を託すために。


親が子に語る話に、そうそうバリエーションは無い。
昔話に御伽噺、創作童話に童謡、子守唄。
何処の国でもそう変わらない。
そしてこの国で、寝物語に子どもが請うたのは、昔話だった。
己の祖父が、己の祖母が。あるいは己の両親が関わる昔話を、彼らは好んだ。

辛い話も、悲しい話もあった。今もなお、苦しむ人々も居た。
しかしそれを受け入れて、大人達は子どもへと、悲喜交々全て含め、語った。
新芽となる子ども達へと語り継いだ。
希望とは、闇を踏み越えたところにあるのだと、そう信じて。



それに最初に気づいたのは、当然の話だが親であった。
公園の中、空き地、道端。子ども達の遊ぶ姿を微笑ましく見守る中。
ごっこ遊びが、目に留まった。

目を疑った。いや、疑うことさえ出来ずに呆然としていた。
地に倒れているのは、被害者の役目の子どもだろうか。
それに寄り添っているのは、家族の役の子どもだろうか。
どちらにも別段怪我はなさそうで、見るべきところもなかった。
そう。目が留まったのは、そこではなかった。

残る三人の少年。
恐らく内二人は、ムラマサの真似を。
そして残る一人は、イアイドの真似をしているのだろう。
手に持った木の枝は、日本刀の代わりか。
子どもらしくちゃんばらのように、振り回す。
その描く軌跡が、足使いが、目を惹いた

殺陣と言うには、それは真に迫っているように思えた。
両の目を煌々と輝かせ、互いの振るう枝を避け、叩き落し、一撃を狙う。
語りに上った、イアイドとムラマサの戦いのように。
そこには昔語の再現があった。

慌てた大人が止めに入り、素直に手を止めた子ども達の様子に、普段と変わるところは無かった。
ムラマサの毒に犯されるでもなく、子供たちは素直に、笑っていた。
変わって見えた瞳の色も、何時もと変わらぬそのままだった。

幾度も崩壊し、再建し、また失くし、そして立ち上がる。
そんなキノウツンに桜の新芽が芽生えたのだと、人々は囁いた。




















※桜はイメージです

L:桜の民 = {
 t:名称 = 桜の民(人)
 t:要点 = 
 t:周辺環境 = キノウツン藩国





桜の民とは

桜の民と名づけられた子ども達が出て早数年。
アイドレス世界の時間経過は早いので、そういう趣味の方々には残念ながら、彼らもとうにおっちゃんおばちゃんである。
桜の民が世に出始めてからの変化は早かった。
見た目が西国人と変わりないことから、特に大きな差別が起きなかったことも、スムーズな変化に一役買っていたといえる。
一部の人間たちは排斥に動いていたようだが、ある朝起きて、彼らの子どもが桜の民に変わっていたことを知ると、その排斥運動も沈静化していった。
そして続いて大人達の中にも桜の民と呼ばれうるだけの力を持つものが現れ、気がつけば桜の民はキノウツンの中において、国民の一人として混ざり合っていった。

今、桜の民はどこにでもいて、どこにもいない。
日々の暮らしの中、例えば飲食店のウエイトレス。例えば呉服屋の店主。例えば学校の先生。
桜の民と呼ばれた、そんな人々は、一人の人間として日々を送っている。
見た目に変化の無い彼らは、一度民の中に混ざれば、只人の一人でしかない。
中にはその反応速度に関する特性を生かして、戦いの道を選んだものもいるようであるが、いずれにせよ彼らにとってその高い反応速度は目的ではなく、スキルであった。
彼らの中にある目的は、己らが希望になることであって、力を振るうことではない。
年に一度、幾日か咲き乱れ、それを見た人間の心に灯りを与える。
桜の民はそんなものでいいのだと。笑って今日も彼らは、日々を送っている。

桜の民の外見にはこれといった特徴はない。
剣士なら剣士、メイドならメイドの服装である。

ただ、一部の者は桜吹雪をあしらった防寒外套を愛用していたという。
これは防砂外套が必要なかった一時のキノウツンでの外套である。




小話「キノウツンでの桜の民」


「――普段はみんなそれぞれ色々な職業についてて、普通に人々に紛れて暮らしているんだけど、
 いざ危機が迫ると、そいつは ふい に現れてその力を発揮し始めるのさ。
大衆に混じって、自分の力を伝え与え、まわりに広げて、そう

 冬の後に、急に咲きあふれる桜のような、

――そんな奴らなんだよ。
 しらないうちに散り散りに消えちゃうとこも含めてね」

桜咲くその時を

彼/彼女は、下を向いている。
他人と自分が違っているのに気付いたのはいつ頃だったか
砂利道で転んで運良く擦り傷一つ負わなかった時か。
喧嘩で殴られたのに、相手の方が拳を傷めた時か。
とにかく、ふとした事で自分が、周りと違うんだ、と知った気がする。
だがその程度だ。自分を取り巻く世界が変わるわけでも、誰かとの付き合いが悪くなったわけでもない。
そう感じているだけだ。だが誰も彼もが自分を奇異な目で見ているとしか考えられない。
疎外感、いや、
くそ、と悪態をつきながら今日も下を向いて歩いている。

必然と言うべきだろう。そんな歩き方をしていれば誰かにぶつかるのだ。
普段ならなあなあに謝って流すだけだっただろう。だが、イライラしていたなら別だ。
目の前の男に敵意を持って睨み付ける。ぎろり、と視線を向けられる。
途端に足が、すくんだ。
まるで猛獣を目の前にしたかのように、全身の筋肉はぴくりとも動かない。
こつこつこつ、と近づいてくる足音。
動けない俺/私は―

気がついたらコーヒーをご馳走になっていた。
「まあ相手が悪かったなあ」
コーヒーを入れてくれた男は、全然大変じゃなさそうな顔でそう言った。
「あの人のメンチ食らって動ける奴は早々いないよ」
…メンチってレベルではない。間違いなく食われるかと思った。
「街でお前さんみたいな不安定そうな奴を見つけてはここに連れてくるんだよ」
不安定って何だそれは。
「鬱々としてる、ってな感じかなー。思春期みたいな」
何だそれは。そんな理由でメンチ切られたのではたまったものではない。
「コーヒー入れてやったろうが。それで帳消しにしとけ」

コーヒーを飲みながら、ぽつりぽつりととめどない話をする。
「自分が人と違う目で見られているような気がする。ねえ」
自意識過剰とかは判っているから言わないでほしい。
「いやいや、自意識過剰結構。むしろ自分を意識しないで何が判るって言うのかね」
何が判るというのか。明らかに違うという、拭えない違和感を誰が判るというのか
「なら、それを種に周りと溝作ったら格好悪いと思わないか?」
判っている。でも俺には/私には、出来ない。
誰もが貴方みたいには考えられないんだ―
「そうだな、当たり前の話だ」
誰だってそうだろうよ、と男は言った。
「何、俺達も昔はただ報酬で命を張るだけが全部だとそう思っていたのさ」
「まあ、あの人に会ってそーいうのだけじゃない、というのもアリかなって思えてな」
キャラじゃないけどな、と苦笑いしながら二杯目のコーヒーを入れてくれた。

「どんな事だって最初は受け売りから始まるんだ。いいじゃねえか、違うなら違うで」

その言葉も受け売りですか。
「そう。受け売りの言葉を俺の言葉に直して、俺のものに少しずつしていこうと思ってるところだ」

「だからよ、次にお前が自分と同じように鬱々としてる奴を見たら、何でもいい」

「同じように、そいつが下じゃなくて上も見られるような言葉にして渡してやれ」
そう言って、その男は空を眺めた。つられて俺も/私も空を見上げている。


その人の名前は思い出せないけれど、今でもコーヒーの味とその時の会話は覚えている。
あれから、周りの友達とは、思い切って話をしてみた。
今でも違和感はある、けれど不快ではなくなった気がした。
同じような悩みを持っている人達とも何度か会った。借り物の言葉だけじゃなく自分の言葉でも、話してみている。

あの時。
あのコーヒーを貰った人の言葉と、笑顔。
それに恥ずかしくない、かっこ悪くない生き方を俺は/私は出来ているだろうか。

今も空を見るたびに、あの時の空の青さを、心の中に桜の花を思い浮かべる。

スタッフ

イラスト:はる
文章:浅田・その他キノウツンの人たち