とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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奢られデート 1 前日



―――第7学区のとある公園
まだ寒さも厳しい冬の公園では、完全下校時刻までには時間があるといえども公園で遊ぶ人影はなく、
殆どが通り道として使用し足早に去っていく中、二人の少年少女は向かい合い妙な空気を醸し出していた。


「御坂…その聞いてもらいたいことがあるんだが、いいか?」
「何よ、改まっちゃって」

「実はだな…………」

御坂美琴は考えていた。
彼、上条当麻がこれほど真剣な顔をするのは妹達や残骸事件のような、
誰かが危機に瀕している時だけだ。
誤解がないように言っておくならば、彼は誰かの危機にしか真剣にならないわけではない。
ただ優先順位が高いとでも言うのか、誰かを助ける時は掛ける意気込みが違う。
ならば自分にできることは上条当麻の悩みを聞き出し、
学園都市第3位『超電磁砲』の力で助けてあげることではないか。
そう彼女が決心したとき、上条当麻の口から続きの言葉が放たれた。

「実はだな…………今月の仕送りと奨学金、両方共使い切っちまって次の入金まで無一文なんだ。
 だからお願いです、この愚かな上条さんめをお助けして頂けないでしょうか」

「……はい?」

予想外の告白に御坂美琴はしばしの間呆然とするしかなかった。

         ☆

タイムセールをやっているスーパーから出てくる男女。
買物途中の仲睦まじい姿を見ていた周りの学生からはカップルに見えていたようだ。
本人達に自覚はないので噂が独り歩きする状況になるが彼らが冷静に現状を受け止められるなら、
素直になれない御坂美琴の照れ隠しという名のいつもの追いかけっこが始まるのであろう。

「いやぁ、悪かったな。お金出してもらちゃって」
「いいわよ別に。というかアンタはなんで無一文なのよ。
 普通財布の中に少しは残したり、口座の残高に気を配るものでしょ」
気にしてないとばかりに御坂美琴は上条当麻の礼を受け流すと今回の核心を突く。
上条当麻が目線をズラして「話したくないなー」ってポーズを取っているが、
御坂美琴の前髪に青白い電流が走った瞬間、誤魔化すことは諦めたようだ。

「それがなんと言いますか、不幸といいますか……
 上条さんは今月も入院したおかげで治療費諸々で残高が底をついてしまったのですよ」
「今までだって入院は何度もしてるじゃない。その時はどうだったのよ」
「この前までは以前から地道に貯めていた貯金があったのですよ。
 でも去年の夏から続く入院ラッシュであれよあれよと貯金が飛んでいって……あははー」
記憶を失う前の上条当麻は入院沙汰には縁がなかったのか、資金源を他にも確保していたのかは謎だが、
口座に貯蓄があったことを考えるに余裕はあったのだろう。
しかし今の上条当麻には、親の仕送りと学園から支給される奨学金以外に資金源のアテはなく
この口座に振り込まれたお金が尽きれば、無一文となるのも仕方ないことであった。
なお本人は否定してるが、白い居候シスターの食費が一番の出費だとか。

「っと、ここでいいや」
「寮の前まででいいの、部屋まで持ってってあげるわよ?」
「いやいや、お金を貸してもらった上に部屋まで荷物を運んでもらうなんて
 恐れ多くて上条さんにはお願いできませんよ」
「………気にしなくていいのに」
「え、何か言ったか?」
「何でもないわよ。そうねえ、アンタ明日暇?」
「明日は…補習もないし家でのんびりとした土曜を過ごす予定ですよ」
「じゃあ明日は私の買い物に付き合いなさい」
「あの、御坂さん?私めは無一文な上に先ほど御坂さんからお金を借りて、
 外出する余裕はないのですが」
「知ってるわよ、ご飯代ぐらい私が出してあげるわ。
 私に悪いと思ってるなら私に一日ぐらい付き合いなさいって言ってるのよ」
「荷物持ちとかでもいいんでせうか」
「問題ないわ、じゃあ明日の朝10時にいつもの自販機の前ね。遅れるんじゃないわよ」
「あ、あぁ。明日の10時にいつものとこだな、分かった」
「じゃあまた明日ね、バイバーイ」
ここに後輩の白井黒子がいればデジカメの容量限界まで写真を撮って永久保存版のビデオを撮影する。
休日を丸一日デートに誘うことに成功した御坂美琴の笑顔はそれほど眩しかった。
この笑顔を見たならば如何に鈍感フラグメイカー・上条当麻だろうと女性の御坂美琴を意識していただろう。

「御坂のやつあんなにはしゃいじまって、そんなに俺に貸しを作るのが嬉しいのか?
 でも事あるごとに勝負ふっかけてくる奴だしなぁ……明日のこと考えたら寒気がしてきましたよ」
だが振り返らない限り、上条当麻はその笑顔を見ることがないのはどちらにとっての幸運不幸なのか。
とりあえず鈍感野郎は出直してこい。


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