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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/恋する美琴の恋愛事情/Part06

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恋する美琴の最終決戦


 風が吹いていた――

 川面に吹く風が鉄橋の上の二人にも容赦なく吹き付ける。
 既に日も沈み、町を夜の闇が覆っていた。住人のほとんどが学生であるこの街ではこの時間ともなると人の気配は少なくなる。特に商店街や学生寮から離れたこの鉄橋の上では人の姿を見かけるほうが稀である。
 それでも、この時間、この場所に二つの人影があった。

「……よく逃げないで現れたわね」

 一人は少女。投げかけた言葉の先にいる者に対して視線を外そうとはしない。

「……ああ」

 一人は少年。しかし、その言葉に一言そう答えただけだった。

「こうしてこの場所でアンタと対峙するなんて、何日ぶりかしらね」
「………」
「あの時、アンタはいつもの力で私の電撃を打ち消す事も、避ける事もせず、ずっと受け続けた。ボロボロになってまで、もしかしたら死んでたかもしれないのに。アンタは私の荒れ狂った心をずっと受け止め続けてくれた。そして、私に代わって『一方通行(アクセラレーター)』と戦って、あの子達を解放してくれた」
「なあ、御坂――」
「ううん。その事には感謝してるし、恐らくどうあっても私にはあの借りを返す事なんてできないと思ってる」

 少女は少年の言葉を遮り、さらに言葉を重ねる。

「今日の事は本当に私の我が儘。アンタが付き合う義理は無いんだけど、でもね、やっぱりこれはアンタでないと駄目な事だから」
「御坂……」
「だから、お願い。私と本気で戦って。アンタの全力で私と戦ってほしいの」

 少女――御坂美琴はニコリと微笑んだ後、全身から電撃を発生させる。そこに悲壮感はない。そこに哀愁は無い。ただ、決意に満ちたその瞳と闇の中で光るその姿はヴィーナスを想わせる輝きを放っていた。

「……あー」

 少年――上条当麻は特徴的なそのヘアスタイルの髪を掻き上げると、今度こそ美琴に視線を向ける。

「御坂。手加減できないぞ?それでいいか?」

 当麻の瞳に揺らぎはなかった。その瞳からは決して嘘や誤魔化しの無い強い意思を感じられた。

「ええ、お願い。恐らくこれがアンタと最後の勝負になると思うから。上条当麻」
「そっか。結構楽しかったんだけどな、お前との追いかけっこは……わかった、やってやるよ」

 そして、少年と少女、二人の想いを懸けた戦いの幕が今切って落とされた。


      ********


 さて、二人の戦いの前にほんの少しだけ時計の針を戻そう。

 今度こそ告白を決意した翌日、美琴は当麻に会うべく、久しぶりにいつもの公園に来ていた。本当は彼の学校や寮を知っていたなら直接そこに出向きたかったのだが、残念ながら美琴はその情報を知らなかった。(もちろんデーターバンクにハッキングすればその程度の情報はすぐにわかるのだが、何故か美琴はそれを躊躇った)

 そして、どれくらい時間が経っただろうか、普段なら姿を現す時間になっても当麻は現れず、さらに時間が経ち、空は真っ赤な夕焼色に染まり始めていた。既に公園内だけでなくその周りの歩道からも人の気配は少なくなっている。

「………」

 やはり、しばらく顔を出さなかったのがまずかったのだろうか。もう彼はこの道を通らなくなったのではないか。美琴の心に不安が渦巻く。

「……ばぁか……」

 誰に向かってか小さく呟いた美琴は、普段蹴り上げることしかしなかった自動販売機の側面に身体を預け、膝を抱えて俯く。
 もしこれで会えなかったら、彼との縁はここまでと言う事なのだろうか。そう思うと身体中が引き裂かれたような気持ちになる。

――まだ始まってもないのに終わってたまるか!

 崩れ落ちそうになる気持ちをその一心で奮い立たせる。まだ終わりと決まったわけではない。

「ビリビリ、何やってんだこんなところで?」

 だからその言葉を聞いた時、待ち望んだその声を聞いた時、不覚にも涙がこぼれ落ちそうになってしまった。

「私の名前は御坂美琴っていちゅも言ってりゅでしょ!ヴィリビリいうな!」

 その場で立ち上がり、なんとか体裁を整えるため、普段と同じ言葉使いをしたが、熱くなった眼頭と緩みきった頬でうまく言えたかどうかの自信は無い。

「今日は電撃を飛ばさないんだな?」

 普段と違う態度に当麻は違和感を感じていたようだが、どうやら気付かれなかった様子に美琴は安堵と共に不快感を感じてしまう。まあ、これが上条当麻の上条当麻たる所以なのだが……

「で、その御坂美琴様は上条さんに何かご用でも?」

 と、当麻は相変わらずの態度を貫いている。腹は立ったが、話がこじれても困るのでさっさと用件を伝える事にする。

「今晩7時、あの鉄橋の上で待ってるから。決着をつけましょう」

 まっすぐに当麻を見つめる美琴。これをいつものようにのらりくらりとかわされたら困る。だから、逃げられないよう、視線に強い意思を込める。

「決着って御坂……」

 当麻はいつものように誤魔化そうとしたが、そのまっすぐな瞳に圧倒されたかのように続きを言えなくなってしまった。

「……本気なんだな?」
「ええ、そう。言ったでしょ、決着をつけるって。それはそのままの意味」

 だから当麻もまっすぐに美琴を見つめ返す。そして二人の視線が交差し、先に目をそらしたのは当麻だった。

「わかった。今夜7時だな」
「ええ、必ず来てよね」

 当麻はそのまま踵を返し、公園を出て行く。そして、完全に姿が見えなくなるまで美琴は当麻に視線を向けたままでいた。

「……うっ……ひぐっ……ばかぁ……ふぐっ……上条当麻のばか……」

 当麻の姿が見えなくなり、周りに誰も居ない事が判ると、美琴はほんの少しだけ泣いた。もう、後には引けないんだと、自分の心に納得させるためにも。


      ********


 そして、時計の針は再び戻り、決戦の時となる。

「このぉ!!」

 美琴の放った電撃は、当麻の右手によって払われ、誘導されたかのように全く別な場所へと落とされる。今まで右手で打ち消すしかしてこなかった当麻しか知らない美琴にとってそれは驚愕の事実だった。

『打ち消すだけならそのタイムラグをつけると思ったのに、いつの間にこんな戦い方を覚えたのよ!?』

 美琴も上条当麻がいつも誰かを助けるために戦いに身を投じていることは感じていたし、この間の病院逃走劇からも判っていた事ではあったが、それにしてもここまで戦い慣れしているとは思いもよらなかった。

「それならっ!」

 今度は電撃を分散し、三方向から狙う。能力を打ち消す力は右手にしか宿っていない事は知っている。だから、多方向からの同時攻撃には対処しようがない。

「甘いっ!」

 当麻は落ちていたスチール片を電撃に向け投げる。その瞬間、スチール片が避雷針となり、電撃が1箇所にまとまる。そして、それを右手で払うと、当麻は美琴に接近すべく、一歩前に踏み出した。

――ジャキン!

 その瞬間、黒い影が当麻を狙い迫ってくる。当麻はそれをギリギリで躱す。

「ちっ!」

 勢いを殺し、その場で立ち止まる当麻。電撃を躱した先に見た美琴の手にはいつか見た砂鉄の剣が握られていた。

「アレすらもフェイクかよ」
「言ったでしょ。全力をだすって」

 不敵に笑う美琴。もちろんさっきの電撃が効果ないことなどわかっていた。だから、当麻の接近は予測できていたし、接近のために右手を使うその瞬間を狙ったわけだが、そう簡単には行かなかった。

「そういえば、初めてだな」

 当麻は何か感慨深げに言葉を漏らす。その瞳にはどこか嬉しそうな優しい光が浮かんでいた。

「何が?」
「俺と御坂がこうやって誰かのためじゃなく自分の為に真正面からぶつかるのって」

 その言葉に御坂もようやく笑みを零す。

「そうね。……ね、だったらこれもいい機会だし、賭けない?」
「何を?」
「この勝負、勝った方が負けた方に何でもひとつだけ言うことを聞かせられるって」
「はは、どこかで聞いたことある賭けだな」
「そうね。あの時のは有耶無耶になっちゃったから、今度こそきちんとするってことで」

 美琴は片目をつむり、当麻に不器用なウィンクを投げる。それを見た当麻は苦笑を浮かべ――

「いいぜ、御坂がこの勝負に勝てるって言うのなら、俺の全力でおまえのその勝利の幻想をぶち壊す!」

 美琴へ勝利の宣言する。

「言ってなさい!」

 再び、美琴は当麻の周りに電撃を放つ。もちろん効果は期待しないが、目隠し代わりにはなる。

「このぉっ!!」

 当麻が右手で電撃を打ち消した瞬間、今度は全方位からの砂鉄攻撃。もちろんこれも囮、目的は美琴が狙う距離まで当麻を誘導すること。

「同じ手は通用しないぞ、御坂!」

 やはり、前方の砂鉄を打ち消し真正面からの攻撃を仕掛ける当麻、しかし、それこそが美琴の狙い。

「これで!」

 美琴は更に今度は砂鉄の弾丸を当麻に向け打ち出し、そして、それと同時に砂鉄の剣を一気に伸ばす。これだけの近距離ならば、弾丸を打ち消したとしても砂鉄の剣は当麻に命中する。

「ふっ」

 しかし、当麻はそれを読んでいたかのように、弾丸を打ち消した後、砂鉄の剣を軽く握り、自分の方に引き寄せた。

「え!?」

 驚いたのは美琴の方だった。先程の電撃を逸らしただけでも初めて見た戦法なのに、まさか掴むことが出来るなんて。そして、剣を掴んでいた右手ごと当麻の方に引っ張られてしまう。

「きゃっ!」

 体ごと当麻に引っ張られる美琴。当麻は既に左手を振りかぶり、美琴へと打ち下ろす準備をしている。そして――美琴の驚愕の表情は"勝利の笑み"に変化する。

「これを待ってたのよ!」

 美琴は引っ張られた瞬間、自らの脚力で当麻の方へ飛び込む。そう、これこそが美琴の考えた勝利の距離。本当の意味での美琴の全身全霊をかけた一撃。既に当麻の左手が打ち下ろすには遅い距離。

「とうまぁ!!」
「えっ!?」

 だから、当麻も驚きのまま何も出来なかった。
 そして、美琴は作戦通りにそれを実行する。
 その瞬間、時が止まったように静寂があたりを包んだ。

「「!!」」

 それは美琴の気持ちを、当麻に対する想いを込めた最強の一撃。

 美琴の唇が当麻の唇があわさり、美琴の柔らかい唇の感触が当麻の唇を包みこんでいた。

 ドサッ! そして、その勢いを殺せぬまま、二人は縺れるように倒れこむ。もちろん、当麻はその行為に驚きながらも、美琴が怪我しないように両手でかばうことを忘れない。

「「……」」

 しばらく無言の状態が続く。当麻は美琴をその胸に抱きながら、美琴は大人しく抱かれ続けながら

「あ、あのな、御坂」

 それでも先に声を出したのは当麻だった。

「なんで、あんな事を?……」

 そのセリフに反応したかのように美琴は顔を上げる。自分のやったことの大胆さに恥ずかしいのか、顔中真っ赤にしている。

「わからないの?」
「え、いや……その……」

 当麻も顔を真赤にしながら、美琴の視線から逃れるように顔をそらす。

「ね、当麻。私言ったよね。全力で戦うって。これが私の全て。私の気持ちの全部だよ。それでもわからないなら、私は何度だって言うよ、私は当麻が――きゃっ!」

 しかし、その先は言葉にできなかった。当麻は美琴ごと身体を起こすと、更に力強く抱きしめる。

「そこから先は俺に言わせろよ」

 当麻は抱きしめる力を緩めると、美琴の顔をまっすぐに見つめる。

「……御坂、お前のことが好きだ……俺の彼女になってほしい……ダメか?」

 しかし、美琴は

「駄目じゃない!駄目じゃないよ!!ヴァカァ!!」

 涙を流し、顔をくしゃくしゃにしながらも受け入れた。

「バカはどっちだよ。あの時の話、やっぱ嘘じゃなかったんじゃねぇか。誤魔化すのが下手すぎるぞ」
「ヴァカッ!ヴァッカ!どうまのヴァカッ!」

 そう言って泣きじゃくる美琴を当麻は再び美琴を優しく抱きしめた。

「そうだな、馬鹿だよな、俺」
「そうだよ、当麻のせいなんだからね!ヴァカッ!!」

 そして、美琴が泣き止むまでそのばで二人はずっと抱き合ったままだった。

「ね、当麻……」
「ん?なんだ、御坂?」
「私まだ肝心の言葉を聞いてないよ」

 ようやく泣き止んだ美琴のその台詞に当麻は苦笑する。やっぱり、美琴は美琴なのだと。

「そうだな。わかったよ」

 それでも、確かにこれはケジメだから、決着をつけないといけないだろう。当麻は嬉しそうな美琴の視線を受けながら、ゆっくりと口を開く。

「参りました。俺の負けですよ、美琴」

 そして、その言葉と同時に美琴に口付けする当麻。それこそが、当麻の敗北の証として。そして――

――美琴の本当の意味での勝利の味だった。