とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part07

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匿名ユーザー

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―――20分、です。
相当な疲労が溜まっている私の脳にある言葉が蘇った。
あれ、20分って何だっけ…誰の…
そんな事を走りつつ夢中に考えてると、当然の如く足がもつれた。

「きゃっ!」
「御坂!!」

少し前を走ってた当麻が素早く反応して、前に倒れていく私を抱き止めてくれた。

「あ、ありがと…」
「気にするな。ていうか大丈夫か?」

そう言うアンタもね。
お互い厚着してるせいで、外気は冷たいが中から発熱していた。
お陰で額に溜まった汗は顎に流れていき、正直鬱陶しい。

「今、何時?」

私が聞くと、当麻は腕時計を見て「8時15分」だ、と言う。
…休みはしたけど結構走ったわね。しんど…


「御坂大丈夫か?」
「えっ、ああ…ま、大丈夫よ」

肩で息をしてるんだが、別にそれだけだ。
…ていうか何でバス使わなかったのか…ああ人多いからだっけ。

「人ごみ見る限り、もう走る必要も無いな…」
「そう、ね」

大きな溜め息。当麻と同じタイミングで吐いた。
それに気付き、当麻を見ると向こうもこっちを見てて、笑った。
改めて現状を見ると、何かがおかしかった。
場所はあってるのに、何でだろう。
悩んでると、後ろにいたカップルの発言を聞いて理解した。

「あれ、イルミネーションついてないわよね」

そう、電飾が全く点いてなかった。

{イルミネーションのシステム只今調整中です。もうすぐで終わりますので――}

若い女の人のアナウンスが少し遠くにいる私達にも聞こえる。

「こんな時期に調整だなんて。そりゃあ無きにしも非ずだけどさー」
「俺達にとってはいいんじゃねぇか?ほら、点いた瞬間の輝き見れるし」
「…そう、ね」

…………あれ?


「ねえ当麻。今何分?」
「またか。 …ええっと、今はー…18分だな」

18分。8時18分。
引っ掛かっていた『20分』が、何となく分かって来た。

「20分まで、あと何秒?」
「はぁ? んーと…45秒か」

計算ずく、ね。
ていうかプレゼント買うのに長引いて間に合わなかったらどうすんのよ…。
頭で愚痴が出てくるのに、笑みが零れる。

「あと何秒?」
「15秒だな」
「ねぇ、魔法、使ってあげるわ」

どうせなら、とことん利用だ。

「10…9…」

人差し指をぐるぐると回しながら、カウントダウンをしていく。
体内時計に関しては、大丈夫。自信ある。

「3…2…1…」

そして私は電飾のある方にステッキを振るかのように指をさす。

「ゼロっ!」

瞬間、イルミネーションは復活した。

目映い灯りが私達の前方で発生し、順番にこっちに光が向かって来る。
人ごみのあらゆる場所で感動の声が漏れ、騒ぎ始めた。

{大変お待たせしました。完全に復旧いたしましたので――}

謝罪するアナウンスの声に皮肉でも言ってやりたいところだが、ぶつっと切れた。
今ここにいる人だかりはもはやストレスは一時的にでも払拭されただろう。

「すげぇな」

当麻も伸びて来る灯りを見上げながら言う。

「ホント、綺麗ね」
「…ま、そっちもだけどさ。お前も」
「え?」
「ほら、20分ジャストに点いただろ?まさかお前がいじってたんじゃないだろうし、すげぇよ」
「…あ、あはは…」

…やりきってから、少し恥じて来た。やっちゃったもんは仕方ないけども。
足を止めてた群衆が歩き始めたので私達も歩き始めた。

――――――――――
電飾の門を潜り抜けると、更に明るくなった。
城を形に取り付けられたモノや、路肩の木についてるモノがとても綺麗だ。
時折見かけるジャッジメントの腕章を付けた人達もずっと見ている。
…支部が違うから黒子はいない…はず。
上を見上げてると、顎の下にもふっとしたものが当たった。

「あれ?御坂妹」
「どうも。とミサカはいぬの感触を味わわせながら挨拶します」

来たか。やっぱり。

「野暮用はもういいのか?」
「はい。先程は飲み物ありがとうございました。とミサカは感謝の気持ちだけですが感謝を述べます」
「いいっていいって」
「…ちょっとお姉様をお借りして宜しいですか?とミサカは雰囲気壊してるのを感じつつ貴方に尋ねます」
「ん?ああー俺はいいけど…」
「では」

私の目を見つめ、用がある、と告げて来る。まぁ私も用があったけども。
当麻に謝ってから、ちょっと人ごみの少ない端っこに行く。

「間に合ったようで何よりです。とミサカは安心します」
「やーっぱりアンタか。名詞もなしに時間指定だけで分かりきるワケないでしょ」


『20分、です』―――ちゃんと思い出すと『8時20分、です、とミサカはお姉様にだけ教えます』だ。
それはこの子が別れ際に私の傍でぽつりと呟いた言葉だ。

「お姉様はきっとココにいらっしゃると思ったので。
   折角なのですから点灯の瞬間は見るべきか、とミサカはちょっとした配慮をしてみました」
「まさかシステム不調もアンタが?」
「いいえ、それは違います。
   ミサカは修理に呼び出されたので復旧時間を8時20分に合わせただけです、とミサカは仕事内容をお教えします」
「…ありがとね。お陰でいいもの見れたわ」
「ミサカもお姉様が魔女っ子になりたいのを初めて知りました、とミサカは無表情で初耳だと言います」
「………はぁ!!?」
「お姉様の事ですから利用するとはお思いでしたが、とミサカは掌握してるかのような発言を取ります」
「…み、見てたのかぁ!!」

思わず声を荒げてしまう。けど、こちらを見るのは周囲の人のみであんまり興味なさげだった。

「ミサカはまたメンテナンスがありますので、とミサカは別れを告げます」
「え、ホントにそれだけなの?」
「はい。では、とミサカはいぬの手を振らせながら去るとします」
「あ、うん。…貸し一つね」
「じゃあいつか、いぬの餌を下さればそれで結構です、とミサカは言い残しておきます」
「はいはい」

一礼して去っていった。
…じゃあ、ああいう事か。嘘はついてないけど、分かり難いっつーの…。
他の人にも貸しがありそうな事を理解しつつ、私は当麻の元へ戻りに行った。


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