「お。あれ、妹は?」
「ん、帰っちゃったわ」
「3個買っちまったんだがなぁ」
「ん、帰っちゃったわ」
「3個買っちまったんだがなぁ」
何を、と思ったら袋から肉まんが出て来た。
当麻は私に渡して、それから自分の分を取って食べた。
当麻は私に渡して、それから自分の分を取って食べた。
「じゃ、私が2人分食べるわよ」
走ってお腹空いたし、と言い加えて当麻の袋を奪う。
「太るぞ?」
「煩いな。成長期よ成長期っ」
「煩いな。成長期よ成長期っ」
白いツヤのある肉まんに被りつく。
丁度いい温かさで美味しかった。
丁度いい温かさで美味しかった。
「で、どうする?これから」
「ふぇっ?」
「ふぇっ?」
暫く黙々と食べてたら、気付いたら当麻は食べきっていた。
私はまだ半分も食べてないんだけど…。
私はまだ半分も食べてないんだけど…。
「いや、イルミネーションは見るけどさ。この後、だよ。門限とかあるだろ?」
「あー、ほっか…」
「あー、ほっか…」
口にモノを入れたまま、ぽつりと言う。
門限…とか気にしてたら、とっくにアウトはアウトなんだけどね…。
頭の中で考えは巡らず、肉汁が口の中を巡る。
門限…とか気にしてたら、とっくにアウトはアウトなんだけどね…。
頭の中で考えは巡らず、肉汁が口の中を巡る。
「その、俺の家はー…歓迎はしたいけど居候がいるしな…」
その発言にちょっとむっ、とする。
何も言わずに肉まんに強く八つ当たる。
何も言わずに肉まんに強く八つ当たる。
「じゃあ私はそのまま寮に帰るわよ、もう9時だし」
「…悪い。こそこそしてて悪いけど、今度ちゃんと迎えるからさ」
「………わかった」
「…悪い。こそこそしてて悪いけど、今度ちゃんと迎えるからさ」
「………わかった」
やっと1つ食べ終えた。
胃にすとん、と溜まったような感触が表れ、2個目に抵抗が出来て来る。
……きっつ…。
胃にすとん、と溜まったような感触が表れ、2個目に抵抗が出来て来る。
……きっつ…。
「――――っと、そうだ。御坂」
「ん? …ふごっ!?」
「ん? …ふごっ!?」
当麻は、それでも意地に肉まん2個目に手…というより口を付けた私を引っ張る。
「むぐ…… ちょ、何処行くのよ!」
「いやほらさ、プレゼント交換はしたけども。記念が欲しいじゃんか、やっぱりさ」
「はぁ?」
「だから、写真だよ写真」
「いやほらさ、プレゼント交換はしたけども。記念が欲しいじゃんか、やっぱりさ」
「はぁ?」
「だから、写真だよ写真」
そう言って、当麻はポケットからインスタントカメラを取り出す。
「さっきの店でこっそりとな。…それとも嫌か?」
「っ! …い、いいわよ。写真くらい」
「そっか、良かった」
「…その代わり私の分もちゃんと写真ちょーだいよ?」
「当たり前だろ。俺は一人でお前との記念をニヤニヤするよーなヤツだと思われてんのか」
「…スタイルいいやつにはそういう目、する癖に……」
「…それは、男の性ってやtうぐっ!!」
「肉まん、お腹いっぱいだから食べてて」
「っ! …い、いいわよ。写真くらい」
「そっか、良かった」
「…その代わり私の分もちゃんと写真ちょーだいよ?」
「当たり前だろ。俺は一人でお前との記念をニヤニヤするよーなヤツだと思われてんのか」
「…スタイルいいやつにはそういう目、する癖に……」
「…それは、男の性ってやtうぐっ!!」
「肉まん、お腹いっぱいだから食べてて」
口に肉まんを突っ込んでおく。
「ったく」と言いながら、残った肉まんをあっさりと平らげてしまった。
……あれ、むかついて黙らせる為に食わせたけど…間接キスよね…?
「ったく」と言いながら、残った肉まんをあっさりと平らげてしまった。
……あれ、むかついて黙らせる為に食わせたけど…間接キスよね…?
「…今更間接キスなんか意識すんなよ」
「なんでそこでそんな哀れむのよ。乙女の純情は硝子なんだから」
「だーれが乙女だって?」
「ぶっ放すわよ?」
「ごめんなさい」
「なんでそこでそんな哀れむのよ。乙女の純情は硝子なんだから」
「だーれが乙女だって?」
「ぶっ放すわよ?」
「ごめんなさい」
撮影プレイス、なる場所に辿り着き、当麻がインスタントカメラを通行人に渡す。
全く以て善意だけの行為なのだが、承諾して頂き、イルミネーションが綺麗に写る場所を背景にする。
…私はどうしていいか分からず、体の前で手を交差させて横で立つ。
「撮りますよー」の声にビクッとして、尚更強張った。
全く以て善意だけの行為なのだが、承諾して頂き、イルミネーションが綺麗に写る場所を背景にする。
…私はどうしていいか分からず、体の前で手を交差させて横で立つ。
「撮りますよー」の声にビクッとして、尚更強張った。
「御坂、笑えよ」
「っさいわね…キンチョーするっての」
「…そんなもん?」
「そんなもん」
「ふーん……」
「っさいわね…キンチョーするっての」
「…そんなもん?」
「そんなもん」
「ふーん……」
カメラを持つ人が、「3」からカウントダウンしていく。
…笑おうとしてみるも、やっぱり無理!
…笑おうとしてみるも、やっぱり無理!
「当麻、笑えないって…」
「意外と可愛いトコあんだなお前」
「か、可愛いって何処が!」
「意外と可愛いトコあんだなお前」
「か、可愛いって何処が!」
当麻の顔を見て突っ込んだ瞬間、かしゃっ、と音がした。
「――――あー……」
当麻と通行人の嘆息が漏れる。
「アンタが悪いんでしょ!!」
「だー、分かった分かった」
「だー、分かった分かった」
当麻が申し訳なさそうにもう1枚要求すると、相手も了解してくれた。
今度は当麻がちょっと私の方に近付く。
自然と肩が当たり、私はびくっとして、反射的に退く形で横に動く。
今度は当麻がちょっと私の方に近付く。
自然と肩が当たり、私はびくっとして、反射的に退く形で横に動く。
「動くなって」
そう言いながら当麻は、私の肩に手を回し掴み、引き寄せる。
「きゃっ!?」
「ほら、カップルなんだから」
「か、カップ……」
「ほら、カップルなんだから」
「か、カップ……」
私がその単語に困惑してると、当麻が相手方に合図する。
「ほら、1+1は?」
「…古臭い」
「なんだよ、じゃあ"にー"って言いなさい、御坂さん」
「アンタも笑うわよね?」
「当然だろ。ほら、3,2,1…」
「…古臭い」
「なんだよ、じゃあ"にー"って言いなさい、御坂さん」
「アンタも笑うわよね?」
「当然だろ。ほら、3,2,1…」
混雑した会場で、カシャッ!という乾いた音は確かに聞こえた。
―――――――――
「………現像、見たくない…」
心優しい通行人の人は当麻にとても感謝され、立ち去った。
笑った、には笑ったけど…なんかヘンな気がする。
笑った、には笑ったけど…なんかヘンな気がする。
「何だよ、別に笑ったならいいって」
「笑ったのを笑われかねないっ! ……顔、だったと、思う」
「笑ったのを笑われかねないっ! ……顔、だったと、思う」
はぁ…と大きな溜め息一つ。
「なぁ御坂」
「何」
「何」
俯いてたのを止めて、当麻の方を見る。
ぱしゃっ
「……え」
「いや、撮影可能枚数まだあるからさ」
「……ちょ、や、やめ!今のナシ!消して消してっ!!」
「何でだよ。折角喜怒哀楽の御坂撮れそうなのに…っと」
「いや、撮影可能枚数まだあるからさ」
「……ちょ、や、やめ!今のナシ!消して消してっ!!」
「何でだよ。折角喜怒哀楽の御坂撮れそうなのに…っと」
ぱしゃっ、とまた一枚。ちゃんとレンズは私を収めていた。
「あ、アンタねぇ……」
「大丈夫だって。御坂は御坂だし、俺は好きだぞ。どんな顔しててもな」
「なっ……」
「元々可愛いんだしよ。だからさ、自信持て…とは言わねぇが、俺の前では照れなくていいぞ」
「――――………うん」
「よしっ」
「大丈夫だって。御坂は御坂だし、俺は好きだぞ。どんな顔しててもな」
「なっ……」
「元々可愛いんだしよ。だからさ、自信持て…とは言わねぇが、俺の前では照れなくていいぞ」
「――――………うん」
「よしっ」
頭を、撫でられた。
びくっ、とはしたが、気持ちよかったのでそのまま撫でられる事にした。
びくっ、とはしたが、気持ちよかったのでそのまま撫でられる事にした。
「さて、帰るか?」
「…そう、ね」
「大丈夫か?」
「…まぁ、うん。最悪黒子にテレポートして貰うわ」
「そっか。…じゃあ前までは送るか」
「ていうか学舎の園までね。抜け道はあるけど、そこまででいいわ」
「ん、そうか。じゃあ、そこまでだな」
「…そう、ね」
「大丈夫か?」
「…まぁ、うん。最悪黒子にテレポートして貰うわ」
「そっか。…じゃあ前までは送るか」
「ていうか学舎の園までね。抜け道はあるけど、そこまででいいわ」
「ん、そうか。じゃあ、そこまでだな」
未だ全体的に不変な会場を道のりに抜け出す。
「…ねぇ当麻」
「ん?」
「………その、さ。 …手、繋いで…くれる?」
「ああ。いいぜ」
「ん?」
「………その、さ。 …手、繋いで…くれる?」
「ああ。いいぜ」
何の躊躇いもなく、強過ぎない力で手を握ってくれた。
手袋を付けてない手なのに、どこか温かく、心地良い。
私達はバスに乗って行った。
手袋を付けてない手なのに、どこか温かく、心地良い。
私達はバスに乗って行った。
――――――――
中で座って、どうしようかと悩んでたら、当麻は終始握っていてくれてた。
移動中は他愛もない話で、私の愚痴やらアイツの愚痴やら。…愚痴ばっかね。
学舎の園前駅の一つ手前で降りてこっそりと園の前に訪れる。
移動中は他愛もない話で、私の愚痴やらアイツの愚痴やら。…愚痴ばっかね。
学舎の園前駅の一つ手前で降りてこっそりと園の前に訪れる。
「…ありがとね、当麻。楽しかった」
「俺も楽しかったよ。プレゼント、大事にする」
「当たり前でしょーが。私も大事にするって」
「…壊れないようにしねーとな」
「壊されてたまるもんですか。その時は遠慮なくぶっ殺すわよ」
「…きっついな」
「それくらいは当然。男に贈り物なんて、する事なかったしねー」
「俺も楽しかったよ。プレゼント、大事にする」
「当たり前でしょーが。私も大事にするって」
「…壊れないようにしねーとな」
「壊されてたまるもんですか。その時は遠慮なくぶっ殺すわよ」
「…きっついな」
「それくらいは当然。男に贈り物なんて、する事なかったしねー」
車が一台通り過ぎる。
バスの中で訪れた眠気が欠伸を醸し出し、白い吐息に変わる。
バスの中で訪れた眠気が欠伸を醸し出し、白い吐息に変わる。
「つまり俺は幸運なヤツだってわけか」
「超が3つ付いてもいいくらいにね」
「これで俺もレッテルとおさらばだな」
「不幸な男、って自分で言ってるだけでしょうが」
「お前も散々事ある度に言ってたじゃねえか」
「ん?そだっけ?」
「超が3つ付いてもいいくらいにね」
「これで俺もレッテルとおさらばだな」
「不幸な男、って自分で言ってるだけでしょうが」
「お前も散々事ある度に言ってたじゃねえか」
「ん?そだっけ?」
まぁ、色々言ってた気はするけど、どうでもいいでしょ。
園の周りを回って、行きに使った抜け道を見つけ出す。
園の周りを回って、行きに使った抜け道を見つけ出す。
「あったあった。んじゃあ当麻、また今度ね」
「ん、ああ。メールとかするよ」
「白けたり、素っ気無かったら怒るからね?」
「はいはい」
「ん、ああ。メールとかするよ」
「白けたり、素っ気無かったら怒るからね?」
「はいはい」
じゃあね、と園の抜け道を通ろうとする。
「御坂」
呼び止められて、動きを止めて振り返る。
「ん、なに―――――」
――――――空白。
温かくも、冷たくもない感触。当麻の匂いが、近くでする。
ただ、頭が真っ白で、心の中だけで分かってた。
何秒もしない間、それは続いて、終わった。
温かくも、冷たくもない感触。当麻の匂いが、近くでする。
ただ、頭が真っ白で、心の中だけで分かってた。
何秒もしない間、それは続いて、終わった。
「―――――嫌だったら、ごめん」
当麻が、自分から"した"くせに、謝る。
「…………謝らないでよ」
「……ごめん」
「アンタ言ったでしょ。"謝るより、笑ってお礼を言え"って」
「……ごめん」
「アンタ言ったでしょ。"謝るより、笑ってお礼を言え"って」
ふぅ、とすると、また白い息が長く伸びていく。
「――――ありがと」
私はそう言って、当麻に背を向けて去った。返事は聞いてない。