とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part51

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~外伝 とある未来の新電磁砲~


「はい、当麻。あ~ん」

「あ~ん。もぐ」

「……」

上条麻琴は、箸を止め目の前の桃色空間にまたかよといったうんざりとした表情を向ける。

「おいしい?」

「当たり前だろ。美琴の料理はいつだっておいしいよ」

いちゃいちゃらぶらぶ、どこの新婚夫婦だよといったことを繰り広げているのは、麻琴の両親、上条当麻と上条美琴だ。
中学2年の娘がいると言うのにこのイチャイチャっぷり。
両親の友人に聞く限り、昔もこんな感じだったらしいが本当にいい年してバカップルである。
いつものこと…なんだろうが、たまに娘が帰ってきたときくらい自重してほしいものだ。
麻琴は常盤台中学に通っている。
当然、全寮制で麻琴も普段はそこで暮らしている。
実家が学園都市内で、しかも寮からそう遠くない所にあること、母の美琴が麻琴の能力開発に関わっていることなどから、月に1~2度こうして実家に帰っているのだが、そのたびにこの光景を見せ付けられるのはいかがなものか。
麻琴とて、お年頃の少女なのだ。
人並みに恋だってしてみたい。
……なぜかここで友達のはずの少し年上の少年の顔が思い浮かんだが、たいした意味はないだろう。
まぁ、なんというか、年頃の少女にとってはこの光景は目の毒なんじゃないかということである。
傍から見れば毒どころじゃねぇだろ!
と突っ込まれそうではあるが、生まれてから今までずっとこの両親の元で育ってきているのだから、麻琴の感覚も世間とは結構ずれているということに本人は気付いていない。

「お父さん、お母さん、いい加減にしてよ」

「はっ、す、すまん。ついいつもの調子で」

「あ、あははは~」

「少しは抑えてよ……この間も街中で痴話喧嘩して、警備員(アンチスキル)と風紀委員(ジャッジメント)の人からあたしが怒られるわ、バカップル全開なのを友達に見られてからかわれるわ……」

この両親の騒動を思い出しげんなりとする。
仲がいいし、良い両親なのは確かなのだが、何かのきっかけで箍がはずれると止まらない。
元々美琴がもっとも有名なLEVEL5だったこともあり、何かと話題に上りやすいのだ。
最も今でも学園都市最強の電撃使い(エレクトロマスター)は美琴なのであるが。

「っと、いけねぇ! そろそろ出ないと遅刻しちまう!!」

げんなりしている麻琴を尻目に、上条が慌てはじめた。
時計の針が彼の出勤時間を指し示している。

上条は現在、自分の母校の高校で体育教師として勤めていて、警備員にも所属している。
右手に宿る幻想殺し(イマジンブレイカー)は、能力者の生徒たちに対して活躍しているらしい。
美琴は、昔はある病気の治療法確立のため研究所に勤めていたが、ひと段落し、今は専業主婦をしながら時折、病気や能力の研究に協力している。

上条はしっかりと美琴の作った朝食をすべて平らげると、すばやい動きで準備を完了し、玄関に向かう。

「じゃ、行ってくるな」

「行ってらっしゃい当麻。早く帰ってきてね」

「出来るだけ早く帰ってくるよ」

口付けを交わし、上条は職場に走って行った。
しかし、まぁ、いってきますのちゅーとか、見てるこっちの方が照れそうである。

「麻琴、あんたもそろそろ出ないとまずいんじゃないの?」

上条を見送った美琴が、のんびりと食事をしている麻琴に時計を指し示す。
常盤台の寮からならともかく、確かに実家からではそろそろ出ないとまずい。

「うわ、いつのまに!?」

常盤台のお嬢様の面影はどこへやら、食事を無理矢理にでも口に押し込んで租借する。
こういう所は上条に似ているのだ、と美琴は思っている。
全て食べ終えてから、身だしなみを整え、元気よく玄関から出て行った。

「いってきま~す!!」

「はいはい、いってらっしゃい」

家を出てから、麻琴は割とのんびりと歩いていた。
確かにそろそろ出ないとまずい時間ではあるが、それは別に遅刻ギリギリとかそういうことではない。
単純にこうやってのんびりと歩いていくのには時間が足りなくなるということだけだ。
慌てふためいて学校へ向かうのが嫌なので少々早めに家を出ている。

「今日もいい天気ね~」

雲ひとつない空を見上げる。
少し眩しそうに麻琴は目を細めた。

「か~み~じょ~う~!!」

ばさぁっと麻琴のスカートがめくられる。
ただでさえ短い常盤台のスカートだ。
めくられてしまえばすぐに中が見えてしまう。
まぁ、麻琴は短パンを履いているので最悪の事態は回避されるのだが、だからといって突然こんな公衆の面前でめくられて恥ずかしくないわけはない。

「ひゃあっ!!??」

「はァ。マコってばまた短パンなンて履いて……」

「ル~リ~ッ!! アンタがいつもめくるから履かなきゃいけなくなってんのよ! 大体いつも言ってるでしょ、スカートめくんな!」

「いやァ、親友がちゃンとパンツ履いてるか気になるのよ」

「履いてる、確かめなくても履いてるわよ!」

麻琴のスカートをめくったのは鈴科琉璃(すずしな るり)、麻琴の幼馴染であり、親友であり、クラスメイトであり、更に常盤台の寮のルームメイトだ。
サラサラの長い黒髪、きめの細かい白い肌、鋭い眼つきに真紅の瞳、一見すると冷たい攻撃的な印象のある少女。
だが実際は、人懐こい快活な少女だ。
そのギャップに多くの人が困惑してしまうのは確かだが。

「まァまァ、落ち着いて、なンなら私のパンツ見る?」

「だぁ~っ! 自分のスカートめくりあげようとすんな、見えちゃうから、周りに人いるから!!」

とぼけた調子で自分のスカートをつまむ琉璃を麻琴があわてて抑える。
この親友の調子にいつも麻琴は振り回されてばかりである。

「あっはっは。やっぱりマコはいじりがいがあっていいわ」

「あたしは琉璃のおもちゃか……」

「それはそうと……マコ、あなた昨日のデートどうだったの?」

「デート? 誰が誰と??」

琉璃の言葉に麻琴は首をかしげる。
自分には恋人なんて関係の人物はいない。
要するにデートなんてしたくても出来ないのだ。

「例の彼と一緒だったンじゃないの、実家に帰るまでは」

「あ、あ~。アイツは彼氏じゃなくて友達よ。だからデートじゃなくてただ一緒にゲーセンで遊んでただけ」

ようやく合点がいった。
確かに昨日、男友達と一緒に二人でゲーセンで遊んでいた。
麻琴としては遊んでいただけなのだが、どうやらこの親友はデートと感じたらしい。
まぁ、確かに自分と親しい男友達なんてアイツしかいないけど、何でそういう勘違いになったんだろうと不思議に思う。
出会いが自分の不幸体質でスキルアウトに絡まれていた所をその少年が助けてくれた(というか結局、助け出そうとしたが失敗して麻琴が電撃で追い払ったのだが)のだが、それが、傍から見るとそんな恋愛沙汰の出会いに見えてしまうんだろうか。

「アイツが彼氏ね。ありえないわ。アイツだってあたしのこと友達としか思ってないみたいだし」

「そうなの……(そういえば、この子、結構そういうのに鈍感だったわね。まァ、ご両親があれじゃ恋愛関係のレベルが一般より数段高いンでしょうけど……。あれだけ彼はマコのこと意識してるのバレバレなのに気付いてもらえてないなンてねェ)」

前途多難ね、と琉璃は麻琴に惚れている少し年上の少年に同情するのだった。

(そうよ、ありえないわよ。何でアイツがあたしの彼氏……。確かにあたし自身を見てくれてるし、優しいし、いざというとき頼りになったり……あぁ、もう! 何でアイツのことなんて考えてるのあたし! それにアイツだって高校生だし、もう彼女とかいるんだろうし……なんなのよ、なんでイライラしてるのよ!!)

麻琴は麻琴で正体不明の感情に心を掻き乱されているのだった。
考えれば考えるほど、正体不明の感情はモヤモヤと膨らんでいく。
それが余計に苛立たしい。

「あ~。もぅ! 考えるのはやめやめ。ぐじぐじとあたしらしくない!」

頭を2~3度振って、モヤモヤした気分を振り払うと、麻琴はそのまま駆け出していった。
琉璃をその場に残して。

「あ、こら、マコ! ちょっと待ちなさい」

琉璃もすぐさま後を追って駆け出した。
その場には相変わらず雲ひとつない空から柔らかな日差しが降り注いでいる。
未来の学園都市は今日も平和なようだ。


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