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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/未来からの来訪者/Part52

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~外伝 とある夫婦の育児記録~


「ふふふん、ふふふん、ふんふんふ~ん♪」

休日の朝、御坂美琴……訂正、上条美琴は鼻歌を歌いながら、朝陽が差し込むベランダで洗濯物を干していた。
常盤台の超電磁砲(レールガン)等と言われていたのは、もう随分昔の話だ。想い人であった上条当麻と結婚し、いまや一児の母親である。
今年で3歳になった愛娘・麻琴は、美琴の夫であり麻琴の父親である上条当麻と部屋で遊んでいる。
上条は娘を溺愛しているといっていい。はっきり言って親バカという奴である。きっと今も娘の行動にデレデレであろう。
そんな様子を思い浮かべ、美琴が小さく微笑む。
とは言っても、美琴も傍から見れば十分なまでに親バカであるのだが、本人に自覚はないようだ。
中学時代からの親友の一人、真っ白な銀髪シスター曰く、会うたびに娘がいかに可愛いかを延々と聞かされてうんざりなんだよ。しかも、とうまと揃ってサラウンドで聞かされるのは本当に勘弁してほしいかも、とのことである。
彼女の夫である赤毛の神父は親バカな二人の話を長々と聞いてしまい、一時若干ノイローゼ気味になるほどだったらしい。
なお、同じく中学時代からの親友で、今では同じく一児の母でもある佐天……ではなく鈴科涙子曰く、確かに麻琴ちゃんは美琴さんと上条さんのいい所を継いで可愛いかもしれません。ですが、うちの琉璃(るり)の方がもっと可愛いです、とのことだ。
そして、彼女の夫曰く、はァ? うちの琉璃ちゃンの方が数倍可愛いに決まってンだろォが、この天使の様な愛らしさがわかンねェのか、とのことである。
かつての学園都市最強もすっかり自分の娘に骨抜きな親バカパパさんのようだ。
なお、親バカな父親二人は時々どちらの娘が可愛いのかで大口論をしているらしい。

「ふふふん、ふふふん、ふんふんふ~ん♪ よしっ!」

洗濯物を干し終え、美琴が満足げな笑みを浮かべる。これで家事は一通り終わらせた。後は昼食まで家族3人でゆったり過ごせる。愛娘を上条に独占させるわけにはいかないのだ。
上条に言わせれば、普段美琴が独占してんじゃねぇか、といったところだが。

「ぴえぇぇぇぇぇぇ!!」

平和な日常に突然、大きな泣き声が響いた。
聞き違えるはずもない、大事な娘、麻琴の泣き声だ。
あわてて美琴が部屋へと戻る。
そこで美琴が見たものは、部屋で大泣きしている麻琴と、どうにか宥めようとオロオロしている夫の姿だった。
大丈夫だから、とか、すぐ治るからなどと言って慰めているが、麻琴は泣き止むそぶりを見せない。
上条の様子から見て、怪我をした、というわけではないようなのだが、泣いている理由が分からなかった。

「どうしたのよ。当麻、何があったの?」

「あ、美琴。それがな……」

「ままぁ……ひっく、げこた、けが、しちゃったの……ぴえぇぇぇ……」

麻琴がぽろぽろと涙を流しながら、抱えているゲコ太のぬいぐるみを美琴に見せる。
糸がほつれてしまったようで、腕のところから綿がはみ出している。
誕生日に買ってもらった麻琴の大切なぬいぐるみなのだ。

「麻琴。大丈夫だって、麻琴だって知ってるだろ。ママは魔法使いだからその位の怪我すぐに治しちゃうさ」

魔法使い……実際は超能力による電撃なのだが、幼い麻琴にはアニメに出てくる魔法なんだ、と思われてしまっている。
まぁ、科学的に云々というのはさておけば、学園都市の外からすれば超能力も魔法のようなものだから代わりはしないのだろうが。
しかし、それにしても電撃でぬいぐるみを直せとは無茶を言う。
上条としては一刻も早く麻琴を泣き止ませたいがために出た言葉なのだろうが、直すのは美琴の仕事なのだ。
普通にやれば難しくもないだろうが、能力でやれとなればどれだけ難易度が上がるのか。磁力で針を操ればやって出来ないことはないだろうが……。

「ひっく。ま、ままぁ。ままのびりびりのまほーで、げこたなおる?」

ひっくひっくと目にいっぱい涙をため、しゃくりあげながら見つめてくる。
期待と不安が入り混じった視線が美琴を捉えて離さない。ここで出来ないなどとは言えない。しかし、能力で裁縫なんてやろうものならまともに直すことが出来るのかわからない。
期待を裏切ることは出来ない…が、出来るというにはかなり分が悪い。
後で覚えておきなさいよ、と上条をギロリと睨む。

「えぇっと。麻琴。ママの魔法はゲコ太を治せないの「ぴえぇぇぇぇぇぇ」あぁ、待って泣かないで。ママがすごい腕のいいお医者さんに診せてくるから、すぐに治るから、ね?」

「ひっく、ひっく、ほんとうになおる?」

「えぇ。麻琴がちょっとパパと待ってたらすぐに治るわよ」

「まこ、ぱぱとまってる。まま、げこたをはなくなおしてあげて」

涙を懸命に堪えてゲコ太のぬいぐるみを美琴に差し出す。
悪いとは思いながらもその姿が愛らしくて、顔が緩みそうになる。

「いい子にしてればすぐに治るから」

麻琴の頭を優しく撫でる。
心配させないように慈愛に満ち溢れた柔らかい笑みを浮かべる美琴。
美琴の笑みに落ち着いたのか、麻琴が両手で涙をぐしぐしとぬぐう。

「うん。まこ、いいこにしてる」

涙を堪えたぎこちない笑みを浮かべ、美琴にぬいぐるみを手渡した。
泣いていたらいい子になれない、と思ったようだ。

「それじゃあ、ちょっと待っててね」

麻琴からぬいぐるみを受け取った美琴が部屋から出て行った。

「ぱぱ。まこいいこ?」

とてとて、と上条のもとまで歩いていき、膝の上に座る。きゅっと上条の胸元を掴みうっすら涙目で見上げる。
親バカ補正が相当入っている上条ではあるが、これは文句なしに可愛い断言しても誰も異論は唱えないはずだ。

「あぁ。いい子だよ」

ぽんと頭に手を置いて、優しく撫でる。
美琴もそうなのだが、麻琴も上条に頭を撫でられるのが大好きなのだ。
えへへ、と麻琴が小さく笑みを漏らす。少しくすぐったいのか上条の膝の上で身をよじった。
もう、先ほどまでの悲しみは見て取れない。撫でられたことで安心したのだろう。

「きっとすぐにゲコ太も治るから、もう少し上条さんと待ってようなー」

「うん。かみじょうさんもまってるー」

えへえへと上条の口癖を真似して、にぱぁっと満面の笑みを浮かべる。
麻琴はどうも上条の口癖が好きらしく、良く真似る。
美琴には、麻琴にそれが移ったらどうするの! と怒られるのだが、昔からの口癖だ。そう簡単には直らない。
それに、過去に未来から来た麻琴に上条たちは出会っているが、はっきり言って手遅れだった。ところどころで上条の口癖が思いっきり出ていたし……。

そのころ、美琴はソーイングセットを取り出し、リビングでゲコ太のぬいぐるみを補修していた。
さすがに能力は使用していない。そもそも能力関係なしに、美琴はペルシャ絨毯の修繕が出来るレベルの裁縫の技術があるのだ。能力で直すなんてことをしなければ、ぬいぐるみを直すくらい朝飯前である。
さっきだって、上条が魔法で直すなんて言わなければ、麻琴を更に泣かせるようなことにはならなかったのだ。
上条にも悪気があったわけではないので、怒るに怒れない美琴である。

「そういえば、私も昔、お母さんにカエルのぬいぐるみ直してもらったのよねぇ……」

ふと、麻琴と昔の自分の姿がダブった。
確かカエルのぬいぐるみがほつれて寝ている間に直してくれたんだっけ、と美琴が懐かしむ。
あの頃は、自分がこういう風に同じようなことをするなんて思いもしなかった。

「ふふっ♪」

なんだかおかしくなって笑みが漏れる。
愛する人と、愛する娘がいる。これが幸せなんだなと改めて思う美琴だった。

「さって、出来たっと」

そうこうしている内にあっという間にゲコ太の修繕は終わったようだ。
前より頑丈に縫い付けておいた。多少乱暴に振り回したってほつれることはないだろう。
ソーイングセットを片付け、部屋に戻る。

「麻琴。ゲコ太、お医者さんが治してくれたわよ~」

「げこた~!!」

麻琴に修繕の終わったゲコ太のぬいぐるみを見せると、本当に嬉しそうに輝くような笑顔を浮かべた。
上条の膝の上から立ち上がり、とてててて、と美琴に駆け寄り、ぬいぐるみを受け取る。治っていることを確認すると、ゲコ太のぬいぐるみをぎゅっと胸に抱きしめた。

「まま、ありがとう」

「今度は乱暴にしちゃダメよ。ゲコ太もイタイイタイってなっちゃうし、今日みたいにすぐお医者さんが来てくれるとは限らないからね」

「うん!」

麻琴はそのまま「げこた、げこた、げっこった~♪」と上機嫌に謎の自作の歌を歌いながらぬいぐるみと戯れている。
上条はその光景にふっと小さく笑みをこぼした。

「何笑ってんのよ」

「いや、可愛い娘に可愛い嫁さんもいて、上条さんは幸せだなってな」

「か、可愛い嫁……ふ、ふにゃー」

「ちょ、ちょっと美琴さん!? お前結婚して何年たったと思ってんだ。そんくらいで漏電すんじゃねぇー!!」

ビリビリバチバチと漏電する美琴に上条があわてて右手を差し出す。何年たってもこの辺は変わっていないようだ。
麻琴はその様子を見て、きゃいきゃいと騒いでいる。
休日の朝から本当に、にぎやかで、明るくて、幸せな上条一家であった。