とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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上条くんと美琴たん



-上条くんと詩菜さん-

「あら? 当麻さんだけ?」
「父さんなら先に場所取りに……」

後ろから声を掛けられて、振り向きざまに返答した上条当麻であったが、その言葉は途中で止まった。
声を掛けたのは母である上条詩菜だ。それだけならば別に停止することも無かっただろう。
しかし、そのパーカーの下から覗く際どい水着は、とても高校生の息子がいるとは思えないくらいに官能的であり、上条を停止させるには十分過ぎた。
決して実母に興奮しているわけではなく、唖然としているというのが正しい。

「それなら私も先に行きますね。それと当麻さん、ちゃんと美琴さんに言う言葉は分かってますね?」
「え? あ、うん」

まだ停止気味の頭で何とか答え、予想通りビーチの注目を集める母を複雑な気持ちで見送る。
一見、深窓の令嬢のような詩菜に不釣合いなのがまた絶妙なコントラストとなっているのだろう。
そしてようやく母の言った言葉を反芻する。

(似合ってるって言えばいいんだよな)

夏休み、上条家と御坂家は泊まりで一緒に海に行くことになった。
発案者は上条の彼女、御坂美琴の母である御坂美鈴だ。ちなみに父の御坂旅掛は仕事の関係で、今日の夜に到着予定である。
美琴は最初乗り気では無かったらしいが、すぐに乗り気になったとは美鈴の談だ。
美鈴に何を吹き込まれたのかは分からないが、ロクでもないことなのは確かだろう。


-上条くんと美琴たん+1-

「お待たせ~」

その声に上条が振り向くと、美鈴の後ろに隠れて美琴がいるのが見えた。
美鈴の水着は露出は多いものの、詩菜ほどでは無いので上条が停止することは無かった。
そして美琴の方は顔は見えるが、肝心の水着姿が見えない。
付き合いたてなら首を傾げたところだが、これは恥ずかしがっているパターンだと上条はいい加減学習している。

「ほらほら美琴ちゃん、早く当麻くんに見せてあげなさい」
「ちょ、ちょっと押さないでよ!」

美鈴に後ろから引っ張り出された美琴は詩菜同様パーカーを羽織っており、前をガッチリと両手で閉じている。

「それじゃ見えないでしょ」
「分かってるってば!」

しぶしぶといった感じで美琴はジッパーを下ろし、白く細い腕をパーカーの袖から抜き取る。
白を基調とし、薄いピンク色の花柄があしらってあるワンピースの水着だ。

「どう……かな?」
「え~っと、似合ってるぞ」

上目遣いで不安そうに尋ねて来る美琴に、上条は頬を掻きながら照れ臭そうに答える。
美琴が着ている水着はおせじ抜きに似合っていて、可愛かった。

「そ、そうかな? えへへ」
「すごく可愛い」
「か、可愛い……」

付き合ってそこそこ経つのに、面と向かって可愛いと言われることに美琴は相変わらず免疫が出来ていない。
上条の言葉を聞いて耳まで瞬間沸騰してしまっていた。
上条の方もリハーサルで考えていた言葉以上のものを言ってしまい、美琴ほどでは無いが頬が紅潮している。

「じゃあ私は似合ってる?」

その様子を見ていた美鈴は意地悪そうな笑みを浮かべ、上条に尋ねる。
美琴同様上目遣いだが、そこに前屈みまで加わっていた。
当然の如くその豊満過ぎる胸はさらに強調され、上条の視線はその谷間に釘付けになった。

「……当麻?」
「は、はひっ!?」

地獄の底からの呼び声のような声に上条は一気に引き戻される。
俯いた状態で表情が見えないのがなお恐ろしさを際立たせていた。

「今、どこ見てたの?」
「い、いえ上条さんは決してその……」

しどろもどろになりながら弁明しようとするが、自分でもガン見していたことは分かっている。
さっきまでの甘い恋人同士の空気は一瞬で霧散してしまった。

「彼女の母親の胸見る彼氏がどこにいるのよ、このド馬鹿!!」
「ごめんなさい!」

いつものように飛んで来た雷撃の槍は右手の幻想殺しを前に出して防ぐ。
だが次の瞬間、一気に駆け寄ってから飛んで来たビリビリビンタは回避するわけにもいかず、甘んじて受けることとなった。

「ふんっ!」

ドスドスと怒りの電撃までも周囲に撒き散らしながら、美琴はビーチに出て行った。
詩菜とは別の意味で注目を集めていることは間違いないだろう。

(ごめんね)

とでも言いたそうにペロッと舌を出して手で詫びる美鈴に恨みがましい視線を送り、上条は炎天下の浜辺に大の字で寝転がることとなった。


-美琴たんと美鈴さん-

「当麻くんもやっぱり男の子ねぇ」
「ううっ……娘の彼氏を誘惑する母親がどこにいるのよ」

せっかく可愛いと言われて昂ぶっていた美琴の気持ちは、あっという間に沈み込んでしまった。
しかも彼氏の頬を叩くハメになり、つい手が出た自分にも自己嫌悪中である。
すぐに怒る短気なところを直そうと努力はしているのだが、どうしても頭に血が昇ってしまうのだ。

「誘惑って人聞きが悪いわね。ちょっと前屈みで谷間を強調しただけじゃない」
「それを誘惑って言うのよ!」

言われて美鈴の胸に目をやると、自分とは比べ物にならない完成された女性のバストがそこにあった。
上条と初めて出会った頃に比べれば段違いに成長したと言えるが、それでも美鈴には遠く及ばない。
それを改めて感じさせられると、溜め息も吐きたくなるというものだ。

「まぁ思春期の男の子なら反応しない方がおかしいし、当麻くんは正常よん」
「そんなこと調べなくていいわよ!」

ケラケラと笑う美鈴に悪びれた様子は無い。
こういう母だと美琴は十ニ分に分かってはいるが、これから先もこういう風にからかわれ続けるのかと思うと頭が痛くなる。


-上条くんと刀夜さん-

「まだ身体が痺れる……」

のそのそと不自然な動きをしながら、浜辺を歩くこととなりこれまた注目を集めることとなる。
変質者と間違われないことを祈るのみだ。

「あれ? 父さん、どうしたの?」
「当麻があまりに遅いから迎えに来たんだよ」

前からやって来た上条刀夜はそう言って踵を返し、上条と並んで歩く。

「いや、そうじゃなくて……」
「言うな……」

おそらく自分の左頬に付いているであろうものと同じ紅葉が刀夜の左頬にもクッキリと付いていた。
きっと母の機嫌は悪いのだろうな、と上条は思いつつ父子でとぼとぼと真夏のビーチを歩くこととなる。
しかし何故かそんな光景が母性本能を刺激したのか、逆ナンに遭遇し更なるパートナーの怒りを買うことになるのだが。




-上条くんと詩菜さん+1-

「当麻さん、刀夜さんのようにデリカシーの無い大人になってはいけませんよ?」
「はい……」

シートに着いて早々に正座させられ、母から有り難い説教を受けることとなった。
笑顔でありながらとてもつもない黒いオーラを背負う母からの忠言に素直に頷くしかない。
隣には刀夜が沈痛な面持ちで同じく正座させられている。
この広い海水浴場で父子で正座させられているのは間違いなくこの二人だけであろう。

「美琴さんを悲しませるようなことはしない。いいですね?」
「……こういう細かいことじゃ悲しませることはあるかも知れないけど、絶対に美琴を裏切るようなことはしない」
「よろしい。それじゃ美琴さんが待ってるから行ってらっしゃい」

足が痺れているのは、美琴の電撃のせいでは無いだろう。
そして刀夜への説教はまだ続くようだった。


-上条くんと美琴たん-

「いたいた」

上条の視線の先、10メートルほど沖に美琴がいるのが見えた。
美琴は大きめの浮き輪にお尻からすっぽりと嵌り込んでおり、プカプカと波に揺られている。
その浮き輪に掴まっている美鈴とお喋り中なようだ。

「お待たせ」
「遅い」

少し頬を膨らませて抗議する美琴に、ドキッと胸が高鳴るのを上条は感じた。
先ほどまで一緒にいた美鈴は少し泳いで来ると言って、行ってしまったらしい。
多分気を利かせてくれたのだろうと上条は解釈する。

「何かする?」
「ん~このまま浮かんでればいいや」

先程まで美鈴がそうしていたように、浮き輪に掴まり波に揺られることにする。
必然的に二人の顔は近くなり、近距離で見つめ合う形となった。

「どうかしたか?」
「なんでもない」

上条の質問に美琴はプイッと目を逸らす。
答えの分かっている質問を上条はしたが、素直に美琴が答えられないことも折り込み済みだ。
辺りを見回して、誰も見ていないことを確認してから上条は身を乗り出して美琴の頬にキスをする。

「ふぇっ!?」
「違った?」
「だ、誰かに見られてたらどうすんのよ!」
「大丈夫だって、誰も見てないから」
「ううっ……それでも恥ずかしいわよ」

またまた真っ赤になった美琴の頭を右手で撫でてやる。
万が一漏電されたらシャレにならないからだ。

「もしかして唇の方が良かったか?」
「ば、馬鹿っ!!」
「冗談だって」

何か言いたげにしている美琴だったが、撫でているせいか結局何も言わなかった。
上条もそれ以上は何も言わずに、まったりとしたこの時間を楽しむことにする。


-詩菜さんと美鈴さん-

「あらあら、当麻さんったら大胆ですね」
「当麻くんってもっと奥手だと思ってんですけど、結構やりますね」

そしてその様子を少し離れたところから見守る二人の母親……と未だに正座させられている父親。

「あの、母さん? そろそろ私も海に入りたいかな~って」
「刀夜さんは荷物当番お願いしますね」
「すみません、うちのもお願いします」
「はい……」

うな垂れる刀夜を放って、二人の母親が息子、娘の下へと泳いで行く。
もちろん今見たことをからかいにだ。
上条家と御坂家合同の旅行は始まったばかり。



終わり


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