とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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小ネタ 新種の風邪ひいちゃったのよ



 秋。食欲の秋。人々が素晴らしい秋の味覚にうなり、とあるシスターの胃袋が(季節とは関係ないが)うなり、
 とある高校生が(これも季節とは関係ないが)財政難にうなる秋。
 上条当麻は、2000円札も無慈悲に呑み込むあの自販機脇に立っていた。
 勿論、何か呑み物を買おうと思ったわけではない。御坂美琴に呼び出されたのである。
上条「…不幸だ…」
美琴「何よ、そんなに私に会いたくないっての?」
 どぅわっ!!と振り向いた上条が見たものは、バッチンバッチンと体から盛大に放電している御坂美琴であった。
 振り向きざまにとっさに右手をかざしてしまったのは、もはや習性の域であろう。
上条「…で、美琴サマはどうしてお怒りになられているわけで…?」
美琴「あ、アンタが私に会うことを『不幸だ』とか言うからじゃない!」
上条「あー、ソレな……」そう言って上条は、クイッと魔の自販機を指差した。
美琴「? それがどうし……あ、アンタひょっとして…」
上条「…そうですよ、また金を呑み込まれましたよわたくしは!!あーもう笑いたきゃ笑えよチクショー!」
 これは上条の策略でもあった。きっと笑いで怒りは引っ込む。それでいい、さぁ乗ってこいビリビリ。
 ここで、上条は2つの誤算に直面した。1つは、美琴が全く笑わなかったこと。もう1つは、ビリビリが全く収まらないことである。
上条「あー……御坂サン?」もしかしたら今日は一日追いかけっこの日になるかもなー、と上条は考えた。
 しかし、帰ってきた言葉は小さく。か細く。
美琴「どうして、……こんな事になっちゃったのかな」
 そして、最も予想外の言葉であった。
美琴「たすけて……」
上条「……御坂。何があったのか、詳しく説明しろ」
 それは学園都市でも7人の超能力者とか、常盤台のレールガンとかではなく、ただ一人で震える女の子に見えた。
 一陣の風が、二人の間を駆け抜ける。

 二人の負けられない闘いが、始まろうとしていた。



 へくちっ。

美琴「…新種の風邪ひいちゃったのよ、今流行ってるやつ」ズビッ
上条「なんだ、そんなことかよ…」
美琴「そんなこととは何よそんなこととは!!」
 まさかレベル6シフト計画か魔術サイドの攻撃か、と思っていた上条が安堵のあまり本音を漏らすと、バチィッ!と電撃が飛んだ。
 しかしその電撃は、見当違いの位置へと着弾する。
 新種の風邪。『自分だけの現実』の観測に干渉し、能力を制御不能に、ひどい場合は暴発させるという特殊な風邪である。
 それでも大した騒ぎにもなっていないのは、その干渉度合がレベル4の上位以上でなければさほど気にならない程度であるからだ。
 逆に言えば、レベル5である美琴に対する影響は大きい、ということである。常に漏電してしまうほど。
上条「病院には行ったのか?」
美琴「行ったわよ。そしたらあのゲコ…じゃなかった医者、コレ呑んで頑張れって」
 美琴は、ゴム製の袋に入った薬を投げた。そうでもしなければ薬がビリビリ、である。
 受け取った薬を見ると、「葛根湯」と書いてあった。この学園都市でも風邪には葛根湯なのか、とそのギャップに笑いそうになる。
上条「で、何で風邪ごときで俺を呼んだんだ?」
美琴「あー…ほら、アンタの右手って【幻想殺し】じゃない?」
上条「?ああ、それがどうした?」
美琴「ホラ、こんな状態じゃ自分の部屋にすら入れないじゃない?だから…」

  「治るまで、あ、アンタと手でも繋いでれば大丈夫かなぁ…と」

上条の負けられない闘いが、始まろうとしていた。


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