とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part17

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5日目 佐天編 その1


放課後、佐天と初春の二人は第7学区をブラブラしていた。

「てか初春は風紀委員の仕事はいいの? またサボってると白井さんに怒られるよ?」
「そんなしょっちゅうサボりませんって。今日は普通に非番です。
 本当に最近は休みが多くて嬉しい限りですよ。これも上条さんのおかげなんですかね?」
「上条さん…か……」

上条の名前を聞き、佐天はほんの少し目を細めた。
それは、昨日気付かされてしまった、自分の初恋の相手の名前だ。

(ダメダメ! あたしは御坂さんの応援するって決めたんだから!)

首を振りながら葛藤する佐天。
ちなみにその二人なら、心配しなくても今頃恋人(役)になっているはずだ。

と、初春が急に病院の前で足を止めた。
幻想御手事件の時にお世話になったあの病院だ。

「? どうしたの初春?」
「いえ……今病院に入っていったアホ毛の女の子、どこかで見覚えが…………
 あっ!!!思い出しました! あのアホ毛ちゃんですよ!『打ち止め』って子!!」
「あぁ、一昨日そんなこと言ってたね。 御坂さんの知り合いだっけ?」
「ちょっと私様子を見てきます!」
「えっ、ちょ、初春どうしたの!?」
「以前、ホスト風の男がその子を探してた事があるんです!
 で、怪しかったので『そんな人知らない』って言ったら……」
「…言ったら?」
「襲われました。それはもう見事に。」
「えええ~~~!!? てか初春は大丈夫だったの!?」
「はい。私は平気だったんです。白い人が助けてくれましたから。」
「白い人?」
「髪が白かったので勝手にそう呼んでます。 それで打ち止めって子とはそれきりだったので……」
「そんな子が病院にいたら、そりゃ心配にもなるね……」
「なのでちょっと行ってきます!」

そう言って初春はアホ毛の女の子を追いかけていった。
しかし取り残された佐天も、ふとあることを思い出していた。

「(白い髪…? それってもしかして……)待って初春!! あたしも行く~!!」



病院内に入った佐天と初春は、さっそく女の子を見失っていた。

「いや~、病院って広いよね…」
「もう! 佐天さんが呼び止めなければ見失うこともなかったんですよ!?」
「だってさー、気になったんだもん。 その白い人って眼は紅かった?」
「眼ですか? そう言えばそんな気が……」
「間違いない!! その人絶対『子連れアルビノ男』だよ!」
「な、何ですかそれ?」

「子連れアルビノ男」、それは「不幸な王子様」や「シャケ弁ハンター」と肩を並べる、
今(一部で)話題の、3種類の都市伝説の一つである。
その内容とは、白髪赤眼の男が子供を連れて夜な夜なコンビニを徘徊し、缶コーヒーを買い漁って行くのだという。
それだけなら大した事はないのだが、ひとたび連れている子供に手を出すと、普段は温厚(?)な彼が豹変するらしい。
黒い翼を生やし暴走し、最後はinbf殺wpされるのだ。
それはもう、●見ると死ぬ●聞くと死ぬ●とりあえず死ぬという、ダムダムゾンゲルゲのような男に変わるのである。
サーヴァントとして召喚されれば、彼は間違いなくバーサーカーの器【クラス】が得られるだろう。
しかしそうなると、セイバーは神裂、ライダーは浜面あたりだろうか。
見た目的にはアメリカ大統領の方がライダーっぽいのだが。

「―――っていう都市伝説があるの。」
「でもその人がそうだとは限りませんよ? 実際周りに子供はいなかったですし。」
「じゃあその『打ち止め』って子が連れてる子供だったりして。」
「そんな偶然ありますかね?」
「打ち止めがどうかしたかね?」
「「うわぁ!!?」」

突然後ろから話しかけられ、佐天と初春は飛び上がった。
そこにはいつかのカエル顔の医者が立っていた。

「君達は彼女の関係者かなにかかね?」
「か、関係者っていうか…と、友達です! ねっ!初春!?」
「そ、そうなんです! けどどこに行ったか分かんなくなっちゃいまして……」

カエル顔の医者は少し考えて、

「まぁ友達ならいいか。 ついてきなさい。案内するんだね?」


「それじゃあ、あの子に怪我があるとかじゃないんですね!?」
「うん。あの子達はただお見舞いに来ただけだからね?」
「はぁ~~~良かったです……ん?あの子『達』?」
「着いたよ。この部屋だね?」

カエル顔の医者に連れてこられたのは、入院患者のいる病室だった。
佐天達はドアの前についている、患者の名前が書かれたプレートを見る。

「黒夜海鳥さん…ですか。」
「失礼しま~す。」

病室のドアを開けた二人の目に飛び込んできたものは、

「やめろっつってんだろ! てめっ! マジでぶっ殺すぞ!!」
「やれるもんならやってみれば~? ホレホレ、猫耳クロにゃんの完成~!!
 ギャハハハハ!! こんだけ似合ってりゃ軽音部にも入れるんじゃね?」
「あああぁぁぁ!! またやりやがったな!? マジだぞ!マジで殺すからな!!」
「ん~?クロにゃんは涙目になってどうしたのかな~? また泣いちゃうのかにゃーん。」
「な、泣くかバカァ!!!」
「泣くぞ すぐ泣くぞ 絶対泣くぞ ほら泣くぞ。」
「だいっきらいだ!! つーかテメェ等、私の見舞いに来たんじゃねぇのかよ!!」
「ううん、ヒマだからクロにゃんと遊ぶために来ただけ。」
「私『と』じゃなくて、私『で』だろォォォがァァァァァ!!!」

ベッドに横になっている少女(入院患者なのだからこの子が黒夜だろう)に、
ギプスをはめた女性が無理やり猫耳カチューシャをつけさせているという、中々シュールな光景だった。
その横にはあのアホ毛の少女がオロオロしており、隣の空きベッドでは白髪の男性がごろ寝している。

「これだけ元気ならそろそろ退院してもいいかもしれないね?」

この騒ぎの中、カエル顔の医者は淡々と診察する。おそらく日常茶飯事なのだろう。

「君の骨折も大分良くなってきたみたいだね?」
「ホ~ント、どっかの馬鹿が下手に折ってくれたおかげで、治りが遅くて嫌んなっちゃうわ。」
「…チッ……」

嫌味を言われて白髪の男性が起き上がる。

「ところでさっきから気になってたンだが、テメェ等は誰だ?」

紅い瞳でギロリと睨まれ、佐天と初春はビクッと固まる。

「おや? 君達の友人だと言うから連れてきたんだけどね?」
「あン?(そォ言や髪の短けェ方は見覚えがあンな)」

するとアホ毛の少女が駆け寄ってきた。

「あー!! 初春のお姉ちゃんだ!ってミサカはミサカは抱きついてみたり!」
「…ソイツの知り合いか。」
「あ、はい! 実は以前、貴方にもお会いしてるんですけど……」
「(あァ、あのクソメルヘンと殺り合った時、近くにいた女か。)
 あン時は世話になったなァ。 そのガキを助けてくれたンだろ?」
「いえいえ! 結局あの後、私も貴方に助けられましたし! ……え~と………
 そう言えば、お互い名前を知らなかったですね。 私は初春飾利。こう見えても風紀委員です。 それでこっちは…」
「佐天涙子です! ヨロシクお願いします!」
「はいはーい!ミサカは検体番号んがんぐ!?」

自己紹介しようとしたアホ毛の女の子の口を、白髪の少年が塞いだ。

(バカ野郎ォ! 自分がクローンだってペラペラ喋る気かテメェは!!)
(むぐぐぐ…ごめんなさい……)

コソコソ話している二人を横目に、佐天達も小声で話し始める。

(やっぱりあたしの睨んだ通り、この人が『子連れアルビノ男』だったね。)
(えぇ、しかもあのアホ毛ちゃんが連れている子供っていうのも、佐天さんの言う通りでした。)
(今日のあたしは冴えてるって自分でも思うよ。 もう一個気付いた事があるし。)
(気付いた事…ですか?)

佐天は、まだコソコソと相談している二人に話しかけた。


「すいません、さっき『ミサカ』って言ってましたけど、もしかして『御坂美琴』さんの妹さんですか?」

言われて二人はビクッとする。
ちなみに初春も、「言われてみれば確かに!」と、驚いた顔をしている。今頃気付いたのか。

「コイツはアレだ……オリ…超電磁砲の親戚の………名前が…
 (オリジナルが『美琴』、母親が…『美鈴』だったかァ? ならコイツは…)
 み、美笛【みふえ】だァ!! 御坂美笛!」

とっさにつけた名前だけあって、正直微妙である。
まぁ、もう一つの候補であった「美太鼓」よりは遥かにマシだが。
しかしこの世界、個性的な名前が多いせいか、誰もそのことにはツッコまなかった。

「美笛ちゃんか…いい名前だね!」
「あ、ありがとう佐天のお姉ちゃん、ってミサカはミサカは精一杯の笑顔で誤魔化してみる。」
「ンで俺が―――」

と、白髪の男が自己紹介しようとした瞬間、さっきまで黒夜で遊んでいた女性が割り込んできた。

「あぁ、コイツの名前は『鈴科百合子』。
 ちょっと猟奇的なツンデレキャラだけど、実はとっても寂しがり屋でクラスの動物委員を務めてます。ギャハ☆」

彼女はこの白髪の男にイヤガラセするのが、趣味であり日課であり生きがいである。
だからといってこれはない。
というかそもそも、そんな見え透いた嘘、誰も信じやしないだろう。

「じょ、女性だったんですか!?
 ボーイッシュなファッションとハスキーなボイスで男性かと思ってましたけど……
 確かに男性にしては腺が細すぎますもんね!」

信じたよ初春【この子】。

「あ、あたしも都市伝説では男ってなってるからてっきり……
 言われてみればそうですよね! セーラー服とか似合いそうですし!」

佐天【こっち】も信じたよ。
プルプル震える百合子ちゃんを横目に、笑いを堪えるカエル顔の医者と黒夜と美笛ちゃん。
百合子ちゃんは、骨折中の女性の襟首をガッと掴んだ。

「そォ言えばテメェの紹介がまだだったなァ!!
 コイツの名前は『御坂パンスト太郎』! れっきとした美笛の兄貴だァァ!!」

いやいや、仕返ししたいのは分かるが、さすがにそれはない。
というかそもそも、そんな見え透いた嘘、誰も信じやしないだろう。

「オ、オネエ系ってことですか!? いやー、全然気付きませんでしたよ……」

信じたよ初春【この子】。

「ってことはその立派なお胸はシリコンですか!? 流石は学園都市製……違和感が全く無いですね。
 あっ! もしかして、下の方も工事済みなんですか?」

佐天【こっち】も信じたよ。
プルプル震えるパンスト太郎くんを横目に、もう笑いを堪えきれないカエル顔の医者と黒夜と美笛ちゃん。
そしてついに二人がブチギレた。

「上等だよ第一位【ゆりこちゃん】!! ロシア以来の殺意が湧いたぜクソッタレ!!!」
「そりゃこっちの台詞だ番外個体【パンストたろう】ォ!! 今すぐ愉快なオブジェにしてやンよォォォ!!!」

こうして、「病院内では静かにして欲しいんだね?」という医者の意見をよそに、二人の争いが始まった。
とてつもない力と力のぶつかり合い。 当然、病室は半壊することになる。
最終的に一番可哀相なのは、病院側ではなく、とばっちりを受けて退院が長引くことになった黒夜かもしれない。





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