とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

17-56

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
 当事者たちは逆に気付かなかったが、この決定事項はつい昨日学園都市にいきわたったばかりなのだが、顔ぶれの豪華さ・・・・何しろ、未だ詳細不明の第7位と、現在その生死さえ定かになっていない第2位、そして中学生の超電磁砲を除く5人もの超能力者達、更にはバレンタインの決闘のビデオが出回ったことにより、最強の無能力者としてその名を学園都市中に轟かせていた上条当麻やら層々たる面子で、この試合がもはや従来のサッカーの枠を超えた、SFカンフー映画もびっくりの大覇星祭並みのショーになるであろうことは誰の目にも明らかえ、球技大会が他の学校より早く始まってちょうど休日に行われたこともあって、ドームは満杯だった。

 そんな中、自分の身に降りかかった不幸に思いっきり落ち込んでいる人物が居た。

「不幸だ……。よりにもよってやりたくもねぇキャプテンになるなんて神さま、上条さんは悪いことをしたのでせうか?」

 不覚にもジャンケンで勝ってしまった上条、自分のクラスのチームのキャプテンになったことを心底嫌がっていた。
 というのもこれでまた目立って街中で追い掛け回される確率が増える不幸に見舞われる、それが上条の考えである。
 しかしそんなものは全くもって今さらな話な上に、最近では追い掛け回されることが減って来ている傾向にあるのだが本人は分かっていない。

「ちくしょおおおおおおおっ! せっかくキャプテンになって頑張って吹寄にもっと認めてもらおうって思っグギャッ!」
「な、何言ってるのよこのバカ! しかし何て屈辱! まさか上条にジャンケンで負けるだなんてあたしのクラス委員長の威厳が……っ!」
「確かに屈辱。だけどそれ以上に。上条くんが。キャプテンになったことを。不幸とか言ってるのが。すっごく腹が立つ」
「そうだよ! せっかくキャプテンになれたのに上条くんの贅沢者!」
「全くだなァ。不幸とか抜かしてるせいで考えてねェのか? キャプテンになったテメェを御坂が更に惚れ直すって羨ましい展開をよォ」

 口々に不満や愚痴を言っているのは上条のグーに敗北したキャプテン立候補者達、その中で一方通行の言っていたことが根強く印象に残った上条。
 そしてイメージするのはキャプテンになった自分を何故かチアリーダーとして応援する美琴の可愛い姿だった。

「いよっしゃあああああっ! 俺は不幸じゃない! すっげー幸せ! つーわけで俺がキャプテンをやるからには絶対勝つぞーーーーっ! みんなもしっかりついて来いよ!」

 ポジティブシンキングになっていつも以上に大張り切りする上条にその場に居た全員が思った、爽やかだけど暑苦しいと。
 これでようやくいつもの上条のクラスに戻り、皆もいつもの調子を取り戻した所で白雪が土御門に尋ねる。

「ところで元春って魔術の使用制限とかされてないの?」
「使っただけで大ダメージ受けるんだぞ? 制限される以前にオレの方が使う気起きないぜよ。ま、月夜が居れば魔術に頼る必要性も無いからにゃー」

 純粋に自分を頼ってくれた土御門の態度が嬉しくなった白雪、人目も憚らずに自分の恋人に抱きついた。
 その様子を羨ましそうに見ていたのは一方通行、青ピ、浜面、服部、茜川の恋人が近くに居ない面々(上条は美琴のチアリーダー妄想で平気)。

「にゃー、何か色々と盛り上がってるみたいだからこっちでポジション勝手に決めちまうか。オレもルールくらいは知ってるからな」
「土御門、ちゃんと勝てるポジション選びしなさいよ。貴様のせいで負けたとか思いたくないから」
「わーってるって。吹寄さんのご所望通り、情報屋がカッコよく見えるようなグオッ! ……冗談ですたい」

 吹寄に頭突きを喰らうというアクシデントに見舞われつつも、土御門は自分のチームのポジションをテキパキと選び始めるのだった。

――――――――――

「では君達の得物はこちらで預からせてもらう。試合が終われば返すから安心してくれ」

 こちらでは魔術師の禁止事項の説明が終わった所で、闇咲がそれぞれの危険な武器を預かっている所だ。
 要は魔術師達のそれぞれの得物を預かることが禁止事項を守らせることと同義となるのだ。
 特にエツァリとショチトルは得物を取り上げられたことで落ち込んでいたが、持っている身体能力だけで頑張ると前向きに考えた。

「闇咲、僕のルーンのカードは預かりはしないのかい?」
「ステイル、君の場合はルーンのカードそのものに攻撃性を感じないと感じたからだ。イノケンティウスを使わなければ問題は無い」

 勿論相手への直接攻撃は禁止だ、そう闇咲が付け足したのを受けてステイルは素直に頷いて部屋から出て行った。
 ちなみにエツァリとショチトルが得物を取り上げられたのは魔術自体が危険なこととプレーが度々止まるを防ぐことが理由である。

「では闇咲さん、私の海軍用船上槍、確かにお預けします。これはサッカーには不要な物ですから」
「分かった。それと五和、後で他の魔術師達にも伝えておいてくれ。君達の得物を返すのは私ではなく」
「いやー悪い悪い。ちょいと遅れちまったのよ。で闇咲、俺が預かることになる……のは……」

 エツァリとショチトルも既に部屋を出ており闇咲と五和だけしか居ない部屋に入ってきたのは建宮だが、その建宮は五和の上半身メイド下半身ブルマーを前に固まってしまう。
 ちなみに建宮を呼んだのは闇咲で、彼も初春と対馬と同じ便でロンドンに向かう都合上、あと少しでここを発たないといけないという理由がある。

「い、五和……。お前さんとうとうそこまで手段を選ばんようになっちまったのか。教皇代理として実に悲しいのよな……。ま、それはともかく写真に収めヒイッ!」
「建宮さん、突き刺されたいんですか? それとも切り刻まれたいんですか?」
「じょ、冗談なのよね……。しっかし海軍用船上槍を取り上げられるとは……まあ球技大会だから当たり前か。けどこれで五和の戦力も半減って思ったがそうでも無いのな」
「流石に見抜いてましたか。というわけで試合、期待してて下さいね。私と当麻さんの愛に満ち溢れたサッカーを♪」

 そっち方面じゃ期待してねえっての、建宮は口にしたら殺されかねないことを心の中で思っていた。
 しかし上半身メイド下半身ブルマーの服装が天草式魔術としての効果を顕していたことには感心していたりする。
 闇咲に後を任された建宮は目の前にある魔術師達の得物を慎重かつ丁寧に管理をするのだった(特にエツァリの原典)。

――――――――――

「というわけで以上が君達専用の禁止事項だ。さあ、復唱したまえ」
「復唱ってアンタねぇ……。私らがそんなに信用できないっての?」
「言わないと分からなさそうな人間がいるからね。じゃあ早速だがムギムギ、君から」

 上条のクラスの相手チームで呼び出された対象者達、木山の子供扱いに噛み付いたのは麦野。
 しかし試合開始前からやる気満々の削板を見て仕方ないといった感じで折れることに。
 そして禁止事項の復唱が御坂妹、結標、麦野、絹旗、削板の順で開始された(心理掌握は元からサッカーなので除外)。

「当麻さんへのセクハラは禁止、とクールビューティーはここに宣言します」
「ボールとサッカーゴールの【座標移動】は絶対にしない」
「浜面へのセクハラの禁止……チッ。左腕でボールに触れたらハンド扱い。【原子崩し】使用の際は出力を抑える」
「【窒素装甲】でボールを掴んだら移動は超禁止です」
「【念動砲弾】を使う時は周囲に迷惑をかけない! 分かってるって! そんな根性入ってねぇマネはしねぇから安心しろ!」

 一部、能力と全く関係ない禁止事項があるが誰も気にしてはいなかった(相手への能力使用、攻撃禁止は基本なので省略)。
 木山は多少は不安ではあったが、目の前の少年少女を信じて控え室へと帰した。
 それから少しして今度は上条チームで唯一呼び出された一方通行が入ってきた、不満そうに。

「どうしたんだい? 私に呼び出されたのがそんなに不満なのか?」
「何で俺だけなンだよォ! 白雪は元からサッカーだからってのは分かンだけどよォ、茜川呼ばねェってのはえこひいきですかァ!」
「茜川は普段から知ってるからね、自分でやってはいけないことの区別はついているだろう。私がわざわざ言わなくてもね」

 白雪のダチってだけでアウトだろォ、一方通行は一瞬そんなことを思ったが茜川の普段の行動を思い返して何とか納得した。
 ちなみに茜川は衝撃波に周囲の人間を巻き込まないようにと考える一方で、土御門が提案した掛け声に紛れて相手への音波攻撃を考えていたりする(鼓膜破らないように)。
 木山はしかめっ面の一方通行など気にすることなく禁止事項を淡々と告げた。

「相手への能力使用の厳禁、これは基本だな。君個人の禁止事項は反射、黒翼と黒い悪魔の右腕の現出だ」
「妥当っちゃあ妥当だなァ。反射なンぞサッカーが盛り上がらねェし、翼と右腕はこンな所で見せるモンじゃねェしな。後は好きにしていいンだろ?」
「勿論だ。他の能力者達も私の設けた禁止事項の穴を察して能力を使ってくるだろうからな。それを見つけるのもこの試合の醍醐味というわけさ」

 一方通行は理解していた、黒翼と黒い悪魔の右腕は自分の切り札と共にその先、純白の翼に小さな輪を冠した天使を思わせる状態への取っ掛かりだ。
 自分の手の内を一般人が多く見守る中で見せるつもりは最初から無かったが、木山がそのことを配慮していたかのような禁止事項に一方通行は関心していた。
 それと同時にまるで木山が自分の能力について把握してるのではという疑問が湧き上がったが、上条の影響なのか木山を信用して深く考えることを中断する。

「私からは以上だ。試合、頑張りたまえ」
「テメェに言われるまでもねェ。それと相手がどンなトンデモ軍団だろうと勝つのは俺たちだ。俺らのクラスの団結力なめンなよ」

 あの学園都市最強が団結力を口にするとはな、木山はそう呟いて部屋から出て行った一方通行の成長とも呼べる変化を微笑ましく思っていた。
 自分のやるべきことを終えた木山は手早く部屋を片付けた後で、観客席へと向かうのだった。

――――――――――

『ええっ! 決勝戦は友愛高校じゃなくて第二十学区の全天候型スタジアムで行われるんですか!』
「ああ」

 試合開始まであと5分、闇咲は対馬と電話で話しており内容は学園都市出立の件についてである。
 電話越しでも対馬の驚きを感じ取っていた闇咲、冷静に彼女に指示を下し始めた。

「対馬、君は後半が始まる前までにタクシーをこちらに付けておいてくれ。地図は後で転送しておく。私達の荷物は空港にもう送ったのだろう?」
『は、はい。おそらくそれが飛行機に間に合う為の最良のスケジュールなんですよね? 闇咲さん』
「その通りだ……と言いたいが問題が出て来てしまった。初春のことだ」
『おおかた女教皇様がベッタリで抜け出すのが難しいんでしょうけど心配無用です。初春もそれを考えていなかったわけでは無さそうですから』

 イギリス清教では後輩にあたる闇咲に対して対馬が敬語な理由、それは年上として普通に尊敬できるという建宮が聞いたら怒りそうなものだった。
 普段の初春と神裂を思い返した闇咲、よくよく考えるとそれほど問題ではないと初春の件について結論付けることに。
 対馬との電話を終えてから少しして、グラウンドの方から大歓声が聞こえてきたので、闇咲は選手が入場したことを察するのだった。
ウィキ募集バナー