第十話 焦り
―12月22日夕刻 常盤台中学女子寮付近―
御坂美琴の心は不安と焦りに満ちている。 理由はここ最近の上条当麻の事。
不安のきっかけとなった上条の“駆け足での帰宅”は止まず、例の目撃の件も気になる。
さらに、以前その件を友人二人(初春・佐天)に話した時の反応が…
不安のきっかけとなった上条の“駆け足での帰宅”は止まず、例の目撃の件も気になる。
さらに、以前その件を友人二人(初春・佐天)に話した時の反応が…
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―――
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佐天『もしかして…浮k』
初春『ちょちょちょ、ちょっと待って下さい佐天さん! それは絶対無いです!』
佐天『う、初春?! なんでそう言い切れるのさ…』
初春『なんでって、佐天さんも一端覧祭で見たじゃないですか!
御坂さんと一緒にいる時の上条さんの幸せそうな表情(かお)を!』
佐天『表情(かお)って…それだけで判るもんじゃ無いでしょ…』
初春『判りますよ! あれは人の信頼に背を向ける人の表情(顔)ではありません!』
佐天『んな事言ったって、じゃあ実際に御坂さんが見た異変はどう説明するのさ…』
初春『それは……きっと別の理由があるに決まってます!』
佐天『別の理由って? 一体何なのさ』
初春『そ、それは…その…』
初春『ちょちょちょ、ちょっと待って下さい佐天さん! それは絶対無いです!』
佐天『う、初春?! なんでそう言い切れるのさ…』
初春『なんでって、佐天さんも一端覧祭で見たじゃないですか!
御坂さんと一緒にいる時の上条さんの幸せそうな表情(かお)を!』
佐天『表情(かお)って…それだけで判るもんじゃ無いでしょ…』
初春『判りますよ! あれは人の信頼に背を向ける人の表情(顔)ではありません!』
佐天『んな事言ったって、じゃあ実際に御坂さんが見た異変はどう説明するのさ…』
初春『それは……きっと別の理由があるに決まってます!』
佐天『別の理由って? 一体何なのさ』
初春『そ、それは…その…』
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…不安を消し去りたく話したが、余計に不安を増大させてしまう結果になってしまった。
実を言うと初春飾利、答えに詰まったのはなんとなく正解が見えてきものの
それを直球で言うと後に差し障ると踏んだからであり、
親友の佐天涙子もその初春の脳内の答えが想像でき『相変わらず乙女だな初春…』と
脳内でツッコんでいたのだが、精神的に余裕のない美琴にそんな事は不可能である。
それを直球で言うと後に差し障ると踏んだからであり、
親友の佐天涙子もその初春の脳内の答えが想像でき『相変わらず乙女だな初春…』と
脳内でツッコんでいたのだが、精神的に余裕のない美琴にそんな事は不可能である。
他にも複数の親しい知人友人(黒子以外)に同様の話をしたが不安は拭いきれず、
おまけに上条もここしばらく補習やら課題やら何やらで色々と忙しくあまり話が出来ていない。
おまけに上条もここしばらく補習やら課題やら何やらで色々と忙しくあまり話が出来ていない。
美琴「……」
あまりの不安に、精神的疲労は既にピーク。
気分転換の立ち読みすら億劫(おっくう)になり、美琴は女子寮に帰還した。
気分転換の立ち読みすら億劫(おっくう)になり、美琴は女子寮に帰還した。
舞夏「おやー? この時期に日没前に帰ってくるとは珍しいなー御坂ー」
という声にも大した反応もせず、部屋に入るなり着替えもせず、ベッドに倒れこむ。
そのしばらく後、シャワールームからルームメイトの白井黒子が出てきた
そのしばらく後、シャワールームからルームメイトの白井黒子が出てきた
美琴「……」
黒子「お姉様……」
―同日のほぼ同時刻 某パン屋付近―
上条当麻の心は不安と焦りに満ちている。 理由はここ最近のゲコ太制作の事。
最初はただの布地だったそれも、今や部品は繋ぎ合わされ、綿も半分以上詰められている。
最初はただの布地だったそれも、今や部品は繋ぎ合わされ、綿も半分以上詰められている。
だが、それゆえに合鍵所有者である美琴の訪問がある可能性がある門限前には
制作作業が出来なくなり、必然的に作業時間は減る羽目になる。さらに1科目だけとはいえ
上条にとっては天敵とも言える、朝までナマ居残りの危険性のある科目「記録術(かいはつ)」の
補習なんてのがあるものだから更に窮地に追い込まれる。祝日であるはずの明日(23日)も
補習が決定。土日(24・25日)予定が組まれている小萌先生のスケジュール上、そうするしか
冬休み前に補習を終わらせることは出来ないらしい。
制作作業が出来なくなり、必然的に作業時間は減る羽目になる。さらに1科目だけとはいえ
上条にとっては天敵とも言える、朝までナマ居残りの危険性のある科目「記録術(かいはつ)」の
補習なんてのがあるものだから更に窮地に追い込まれる。祝日であるはずの明日(23日)も
補習が決定。土日(24・25日)予定が組まれている小萌先生のスケジュール上、そうするしか
冬休み前に補習を終わらせることは出来ないらしい。
当麻「はぁ……本日もタイムセール終了後の補習終了ですよ。まったく不幸だ……」
上条にとって、この状況は致命的である。
当麻「とりあえず、今日も青ピの居るパン屋で晩飯仕入れて来るか…」
こんな偏った栄養状態と補習疲れと精神疲労の溜まる体で、クリスマスに間に合わせなきゃならんのだから。
青ピ「いらっしゃいまs……なんや、カミやんか」
当麻「ぅい~っす。今日も晩飯買いに来たぞ~」
当麻「ぅい~っす。今日も晩飯買いに来たぞ~」
“なんや”とは失礼だな…というツッコミすら出来ないぐらい精神疲労の溜まっている上条。
そんな状態で本日の晩飯を物色している上条に向かって、青ピが口を開く。
そんな状態で本日の晩飯を物色している上条に向かって、青ピが口を開く。
青ピ「……なぁ、カミやん」
当麻「ん? 何だ? 青髪」
当麻「ん? 何だ? 青髪」
青ピ「お前、本当にカミやんか?」
当麻「?……何を言い出すんだ急に」
当麻「?……何を言い出すんだ急に」
青ピ「カミやんが何を悩んでるか知らんが、コレだけはハッキリと言っといたる。
ボクの知ってるカミやんなら、悩みという壁が立ち塞がっても諦めたりせんと
いつも全力で立ち向かって、それでいつも何とかしていたと思うで?」
当麻「……!」
ボクの知ってるカミやんなら、悩みという壁が立ち塞がっても諦めたりせんと
いつも全力で立ち向かって、それでいつも何とかしていたと思うで?」
当麻「……!」
思いもよらぬ激励。これが上条の気力を復活させた。
お礼とばかりか、4~5食ぶんの惣菜パンを購入し、お金を渡しつつ「お釣りはチップな」と言い駆けだした。
お礼とばかりか、4~5食ぶんの惣菜パンを購入し、お金を渡しつつ「お釣りはチップな」と言い駆けだした。
青ピ「……チップ言うてもな…お釣りなんて10円も無いやないか」
……さすが上条クオリティ。 ……後日何か奢ってやれ、上条。
―同日ほぼ同刻 常盤台中学女子寮208号室内―
黒子「お姉様……」
美琴「……ん? 何? 黒子」
美琴「……ん? 何? 黒子」
黒子「お姉様がここ暫く何を悩んでいらっしゃるのか、私には存じませんが、
少なくとも私の知っているお姉様なら、悩みを抱えたまま布団に倒れこんだりせずに
まずはその悩みの原因に向かって真っ直ぐに突き当たってらしたハズですわ」
美琴「……! あ、ありがとう黒子! …そうね。よし、ちょっと行って来る!」
黒子「いえいえ、例にはおよびま…って、もう駆け出してしまわれましたわ。門限も近いと言いますのに」
少なくとも私の知っているお姉様なら、悩みを抱えたまま布団に倒れこんだりせずに
まずはその悩みの原因に向かって真っ直ぐに突き当たってらしたハズですわ」
美琴「……! あ、ありがとう黒子! …そうね。よし、ちょっと行って来る!」
黒子「いえいえ、例にはおよびま…って、もう駆け出してしまわれましたわ。門限も近いと言いますのに」
美琴は寮の外へ駆け出しつつ、携帯で電話をかけ始めた。相手はもちろん……
美琴(お願い……出て! 当麻!!)
―同日ほぼ同刻 上条の寮付近―
prrrrrr………
当麻「ん。電話だ」
その電話の主は……
当麻「おーっす、どうした? 姫神」
姫神『上条君。極めて重要な。連絡事項がある』
姫神『上条君。極めて重要な。連絡事項がある』
―ほぼ同刻 第七学区内路上―
美琴「……話し中か」
僅かな時間差で話し中だった。
―場面は戻り、上条の寮付近―
当麻「なんだってぇ!?……マジかよ姫神」
姫神『間違いない。前に。課題とゲコ太の“目”を届けた時。寮の下で。偶然会った。
その後から。彼女さんの様子がおかしかったし。私や吹寄さんと目が合ったとき。
まるで。「ビクッ」としたかのような。反応をしていた。』
当麻「………」
姫神『どうする? このまま。浮気を疑われるよりは。いっそ話――』
当麻「連絡ありがとう姫神! 早急に対処する! じゃあな!」
姫神『間違いない。前に。課題とゲコ太の“目”を届けた時。寮の下で。偶然会った。
その後から。彼女さんの様子がおかしかったし。私や吹寄さんと目が合ったとき。
まるで。「ビクッ」としたかのような。反応をしていた。』
当麻「………」
姫神『どうする? このまま。浮気を疑われるよりは。いっそ話――』
当麻「連絡ありがとう姫神! 早急に対処する! じゃあな!」
上条は急いで電話を切ると、すぐさま美琴に電話をかける。
―同刻 第七学区内路上―
prrrrrr………
美琴「!?…(ピッ)…と、当麻!?」
当麻『悪ぃ、今、大丈夫か?』
美琴「うん、ちょうど今話したいことがあって電話しようとしたとこ――」
当麻『俺も美琴に話したい事がある。…けど今日は遅いし明日も時間がとれねぇ。
明後日の昼過ぎ……2時ぐらい、うちに来てくれるか―――――――――
美琴「……わかった、明後日の2時ね。約束よ」
当麻『悪ぃ、今、大丈夫か?』
美琴「うん、ちょうど今話したいことがあって電話しようとしたとこ――」
当麻『俺も美琴に話したい事がある。…けど今日は遅いし明日も時間がとれねぇ。
明後日の昼過ぎ……2時ぐらい、うちに来てくれるか―――――――――
美琴「……わかった、明後日の2時ね。約束よ」
美琴(……明後日……何がどうなってるのか、絶対聞き出してやる…!)
―同刻 上条の部屋―
電話が終わると、急いで部屋に戻った上条。
当麻「いいぜ……今この状況が窮地だって言うんなら……――
テーブルの上には、先程購入した大量のパンと、作りかけのゲコ太。
当麻「その窮地(げんそう)をぶち壊すッ!!!」
急げ上条! 補習の時間を差し引けば、もう殆ど時間ないぞ!