2G(ゲームと現実)で叶える夢
4月のとある日
「アンタ、マジ?」
「マジだ」
「本当なの?」
「そうだよ。不純物なしの真実だ」
「そんな…そんなことってありえるの…?」
「ありえるもなにも俺はそうなんだ」
「信じられない…」
「こっちだってまず知られたくなかった」
そう言って上条は淋しそうな表情を浮かべる。
「ごめんなさい。アンタのこと考えてなかった」
「いや、いいんだ別に。そのこと知ったからって、御坂の俺に対しての接し方が変わるわけじゃないだろ?」
「当たり前でしょ!ねぇ、私に心当たりがあるの。お詫びに私に任せてくれない?後悔はさせない!」
「いや、でも…いいのか御坂」
「良いったら良いの。ここは美琴先生に任せなさい」
言うなり美琴はない胸を叩いt… すみません言いなおします。
慎ましい胸を叩いた。
実に頼もしい。
数日後
「はいこれ」
美琴は大きな荷物を抱えていた。
「なんだこれ」
「言ったでしょ。任せなさいって」
「じゃあこれが…」
「そうよ」
「まさに神様仏様御坂様だな。サンキューな御坂」
「べ、別にいいわよこのくらい」
「さっそく家に帰って遠慮なく使わせていただくよ」
ちなみに上条は美琴からもらった大切なものを落とさないために非常に高いスーツケースを土御門から借りていた。それが仇となったのか、家に帰る途中ギャング(?)のような集団に出くわし、スーツケースを奪われてしまった。
ギャング(?)を10人ほど殴り倒し、自らも3か所脱臼するなど重傷を負って、神奈川県の上空300mでようやく無傷で取り返したらしい(集団はヘリに乗って逃走しようとしたため)。
「不幸だ…」
その一言で済む上条さん、さすがです。
家に着いた上条はさっそく荷物を開封した。
姿を現したのはパソコン。
そう、上条さんはパソコンを持っていなかったのだ。美琴が驚いたのも無理ない。いくら貧乏とは言え、学園都市の住人は普通持っているものだ。佐天さんさえ持っているのに…
なぜ上条がパソコンを持ってないことが美琴の知る所となったか。
そもそもの始まりは美琴がはまっているリアルな人生ゲームを上条にも薦めたことからだった。
頑なに参加を拒否する上条を怪しく思った美琴が追求(拷問)を続けた結果、発覚したのだ。
「うお、なかなかすげえな。中古だって言ってたけど、新品そのものだな」
「いや~あいつには感謝しなくちゃな」
1時間の時間を費やして、上条はパソコンをセットさせた。
パソコンが机の上に乗っかっているだけで、リッチな気分に浸れる。
最初は興味を示していたインデックスは、それが食べ物でないと知るやいなや、小萌先生の家に行ってしまった。
「んじゃ、電源オン」
「………あれ?起動しねえ…」
上条は気づく。
「あっ、音量調節ボタン押してた…」
非常に情けない。学園都市に住んでなくてもそのくらいは分かる。このご時世なら小学生でも知ってそうだ。
「改めまして、電源オン」
今度はちゃんと起動したようだ。
それから上条はとりつかれたかのようにパソコンをいじり、操作方法を急速に覚えていった。
パソコンを触るようになってから1週間後、いつものようにパソコンを操作していた上条は、デスクトップに隠しファイルがあることに気付いた。
それを表示させると、あるアイコンが出てきた。名前は『日記』。
「これ見ていいのかな…いやいやなにを言ってるんだ俺は!アイツにこんな恩を仇で返すような真似をしちゃダメだろ!」
「………でも気になる。もしかしたらなにかに巻き込まれるかもしれない。そうこれは調査なんだ。アイツが変なことに巻き込まれてないか確認するだけだ」
誰に対して言い訳しているのか、上条はデータを開いた。
そこに表示されたのは…
12月20日
あいつに会った。またツンツンしちゃった。そんな態度とるつもりなんてなかった。本当はもっとアイツと仲良くしたい。
どうしたらツンツンしなくなるんだろ…今度舞夏にでも聞いてみようかな
12月21日
アイツに会えなかった。かなり鬱な気分。明日は会えるよね
12月22日
今日も会えなかった。もしかして嫌われたのかな…
そんなこと考えてたくもない。
きっと明日こそ…
12月23日
うっひょおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉx!!!!
アイツを明日誘えた。これってもしかしなくてもデートよね。
少しは意識してくれるかな。早く明日にならないかな
12月24日
かなりショック。告白したのに気づいてもらえなかった。
途中までは楽しかったのにな…
今日はもう寝よう
日付は飛ぶ。
2月14日
あいつに本命チョコを渡した。
アイツは本命だって気付かなかったみたい。
どんだけ鈍感なのよ。手作りでハートの形よ。義理なわけないでしょ!
でもアイツ鈍感じゃなかったら、とっくに他の人と付き合ってそう。それは絶対やだ
3月9日
最近アイツに会えない。なんで?まさかまた一人で…
なんで私のこと頼ってくれないんだろ
そんなに頼りないかな、私…
3月18日
アイツが入院したって聞いた。慌てて病院行ったらアイツ集中治療室で手術を受けていた。
アイツが死んじゃうんじゃないかってすごく恐かった。神様お願いします、アイツを助けてください。
3月27日
アイツの容態が落ち着いて、今日から面会可能になった。久々にみるアイツの顔は前と変わっていなかった。
アイツはいつもの笑顔で私に話しかけてくれた。すごく嬉しかった。嬉し過ぎて涙がでちゃった。
アイツは優しい顔で落ちつくまで私を撫でてくれた。すごく照れくさかったけど、ずっとこの時間が続けばいいと思った。
4月1日
新しい学年になった。この1年で絶対アイツを私のものにするんだから!いくわよ御坂美琴!えい、えい、おー!
ここで日記は終わっていた。
全てを読み終わった上条は美琴への申し訳なささ、尊敬、感嘆そして愛おしさで胸が一杯だった。
(ごめんな御坂、そしてありがとうな…)
(にしてもそこまで俺を…)
この瞬間、上条の中で何かが生まれた。
いままで知らなかったような莫大な感情が。
そして上条は自分だけに誓った。
(御坂…俺はもう二度とお前を…)
6月後半
リアル人生ゲームで左手の薬指に装飾品をつけたツンツン頭の男性と栗色の髪の女性が寄り添って、歩いている姿が目撃されている。
目撃者によると、歩く彼らはすごく幸せそうだということだ。
そしてその光景は現実でも…
end