とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part05

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匿名ユーザー

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第2章 ①安らぎの時


「あのー、美琴さん」

「なーに?」

「そろそろ帰らないと寮の門限に間に合いませんよ」

「…これから一緒に暮らすのに何言ってるのよ?」

「はぁ!?」

一昨日の夜から付きっ切りで美琴に夏休みの宿題を手伝ってもらっていた上条は、
何とかこの日…夏休みの最終日の午前中に宿題を無事に終わらせることに成功していた。
そして息抜きに外で散歩をしていたところ絶対能力進化の実験に関わっていた芳川に救援を要請され、
一方通行をギリギリのところで救い出し、最後の妹達…打ち止めも無事に助け出すことが出来たのだった。
そして先ほどまで例の病院で調整を受けることになった打ち止めと仲良く会話を楽しんでいたところである。
その場には一方通行も居合わせ、一方通行と美琴の間には終始気まずい空気が流れていたが、
打ち止めの放つ無邪気さがその空気を緩和していた。
そして先ほど二人は上条の部屋に戻ってきたばかりなのである。
自分が作るものとは比べものにならないほど美味しい美琴の手料理をここ数日食べ続けて、
このまま休みが続いていたら完全に餌付けされてしまうという危機感に襲われていたらの爆弾発言である。

「一緒に暮らすって常盤台は全寮制だろ?
 それに年頃の男女が一緒に暮らすなんて許されるわけ…」

「常盤台のほうには家の都合で寮を出るって伝えてあるから心配しないで。
 パパが色々とコネを使って周りにも了解を得てるから何も問題ないわよ」

「いや、それだけじゃなくて倫理観の問題が…」

「何よ、インデックスとは暮らせて私は駄目なわけ?」

「駄目に決まってるだろ!!
 インデックスは妹みたいなもんで、美琴は俺の恋人だ!!
 こういうことを口にするのは憚られるけど、どうしたって異性として意識しちまう。
 美琴はまだ中学生だし、俺は正直理性を保つ自信がないんだよ」

「わ、私だってそういうことはまだ早いと思ってるわよ。
 でもどうしても少しでも長く当麻の傍にいたいの」

美琴の表情を見て上条は我に返る。
上条と美琴は学園都市に対して喧嘩を売ろうとしている。
美琴の父である旅掛はいずれ反撃の狼煙をあげるタイミングが来ると言っていたが、それが何時になるかは分からない。
いつまで平穏な時を過ごせるか美琴も不安なのだ。
ましてや先日になって、やっと悪夢のような日々から抜け出せたばかりだ。
もしかしたら一方通行に会ったことによりトラウマが蘇ったのかもしれない。

(美琴を一生支えるって誓ったのは他でもない上条当麻、お前だろ!!
 お前が理性が持たないとか倫理観とかを言い訳にして美琴のことを第一に考えられないっていうなら、
 そのふざけた幻想をぶち殺す!!)

「…分かった、俺も美琴と少しでも長く一緒にいたいって気持ちは同じだ。
 美琴が望むなら一緒に暮らそう」

「ゴメンね、我侭言って」

「いや、上条さんもずっと美琴の傍にいられるのは幸せですよ」

「…ありがとう」

そうして上条は床に布団を敷いてベッドに並ぶ形で横になる。
そしてその手は美琴の手をしっかりと握っているのであった。

次の日の夜明け前、上条は鼻を燻るいい香りで目を覚ますことになった。
そして自分の前方に妙な温もりを感じる。
上条が何事かと思って目を開けると、まず初めに目に飛び込んできたのはサラサラとした茶色い髪だった。
美琴が上条に抱き枕の要領で抱きついているのだ。
上条の胸のあたりにちょうど美琴の顔があり、
そしてお腹の辺りに慎ましいながらも女性であることをハッキリと主張する双丘が当たっている。
これは色々と拙い。
決して美琴を傷つけまいとする上条の鋼の精神に早くもヒビが入り始めた。
しかしそのヒビは美琴の顔を見た瞬間に、すぐに修復された。
美琴の顔には一筋の涙が零れ落ちた跡があった。
今の状況で美琴が涙する理由など一つしか考えられない。

(やっぱり無理してるんだな。
 大丈夫、何があっても俺は美琴のことを傍で支え続ける。
 だから安心して今はゆっくりお休み…)

上条は心の中でそう言うと優しく美琴のことを抱きしめ返すのだった。



美琴が目を覚ますと自分の置かれた状況に激しく赤面するが、平静を装い朝食の準備に取り掛かる。
しかし目玉焼きを作るのに卵を二つも犠牲にしてしまったところを見ると、どうやら見た目以上に動揺が激しかったようだ。
そして食事中も顔を赤く染めながら上条の顔を直視できない美琴に対し上条は言った。

「…悪かった、気付いた段階ですぐに布団から出れば良かったんだが」//

「ううん、私もその…当麻の温もりが感じられて気持ちよくてつい」//

少々過酷な運命を背負った以外は初々しいカップルそのものである二人はお互いに顔を染めながら食事を進める。

「今日って常盤台も午前中授業なのか?」

「うん、新学期初日だからね」

「それじゃあ午後から合流して何処か遊びにいかないか?」

「え?」

「付き合い始めてから実家に帰った時も両親と挨拶しただけだし、帰ってきても俺の宿題で夏休みは潰れちまったからな。
 出来れば美琴とゆっくり何処か遊びに行きたいわけですよ。
 もちろん妹達と打ち止めにも何かお土産を買ってさ」

「…今も当麻と一緒にいられてこんなに幸せなのに、私だけ楽しむようなことをしてもいいのかな?」

「…気持ちは分かるけど、美琴の幸せを妹達も願ってくれてると思うぞ。
 過去を忘れずに目を背けないことも大事だけど、それ以上に前に進むことも大切だと思う。
 美琴が抱えてるものが簡単に消えないのは分かっているけど、少しずつでいいから美琴の重荷を軽くしていってあげたい。
 だから上条さんのデートのお誘いを受けていただけませんか?」

「…うん」

朝食を食べ終えると二人は出掛ける準備をして玄関を出る。
今日の夜前に美琴の荷物が届くらしいので、それまでに帰ってこなければならない。
そこで今日のデートは遊園地など一日遊べる場所はまたの機会にして、
屋内のアミューズメント施設など比較的気軽に遊べる場所で行うことにした。
二人はしっかりと手を繋いで学校へ向かう道を歩いていく。
本当は上条は電車を使ったほうが早いのだが常盤台と上条が通う高校との間に位置する駅がないため、
二つの学校の分かれ道まで一緒に歩いて通学することに決めたのだった。
しかしその光景を上条は記憶にないクラスメイトに見られており、
上条は殆ど知らない人間に囲まれて自分のクラスでの立ち位置というものを知ることになる。

「上条当麻」

「はい」

おでこな巨乳少女の有無を言わさぬ迫力に教室の真ん中に正座させられた上条は完全に萎縮していた。

「貴様が常盤台の生徒と手を繋いで登校していたという目撃証言があるのだが、それは本当か?」

「はい」

別にやましいことをしている訳ではなく普通に恋人である美琴と登校していただけなので、
上条は特に警戒することなく返事をしてしまう。
しかしこれが上条の運命の分かれ道だった。

「そんな、あの上条君が夏休みの間にフラグを回収しちゃうなんて!?」

「くっ、上条がフラグを回収したのは喜ばしいことなんだろうけど相手が常盤台のお嬢様とは納得出来ねえ!!」

「でも夏休みの浮ついた雰囲気による関係なら、私達にもまだチャンスがあるかも…」

どうやら記憶を失う前の上条は相当モテたらしい。
実は今の上条も俗にいうカミジョー属性と言われるフラグ体質を引き継いでいるのだが、
今の上条は完全に美琴一筋な為その体質が今のところ顕著に現われたことはなかった。
しかし思いがけぬ形で前の自分のツケが回ってくる形になり、上条は前の自分に対して心の中で恨み言を呟く。
いっそのこと記憶喪失であることを話してしまおうとも思ったが、
何となくこの状況で自分の弱みを喋って同情してもらうのも躊躇われた。

「上条当麻、貴様はその常盤台の生徒と付き合っているのか?」

「ああ、ちゃんとご両親の許可も貰ってる」

「そんなカミやん、僕達デルタフォースは永遠の負け組みのはずじゃ!?」

「黙れ、青髪ピアス!!
 上条当麻、それはこれから不用意にフラグを立てないと受け取っていいのか?」

「フラグっていうのが何のことかは分からないが、俺は完全に美琴一筋だ」

「…どうやら本気のようだな。
 なら私達も貴様のことを祝福しよう」

「あ、ありがとう」

「だが貴様が今までに数多くの女子を泣かせてきたことは事実だ。
 だから貴様に判決を言い渡す」

「え、判決?」

「死刑」

「えっ、何?
 上条さんは訳も分からぬまま殺されちゃうの!?」

そうして上条は名前も知らないクラスメイトから祝福という名のリンチを喰らうことになるのだった。



壮絶な祝福を乗り越えたり、とある事件から救い出した少女…姫神秋沙の転入イベントがあったり、
記憶喪失である上条の新学期デビューは中々騒がしいものだったが、お陰で自然とクラスに溶け込むことが出来た。
そしてあっという間に放課後になり上条は美琴との待ち合わせ場所に向かおうと学校から出ると、
何と美琴が校門のところで上条のことを待っていた。
あくまで上条の通う学校は一般的な学校であり、
お嬢様学校である常盤台の制服を着ている美琴が立っているだけで異彩を放っている。
美琴は上条がやって来たのを確認すると顔を輝かせて、上条のところに駆け寄ってきた。

「当麻!!」

「えっと、美琴さん…何故ここに?」

「当麻に早く会いたくて、待ちきれなくて来ちゃった」

周りからの嫉妬という名の殺意を上条はヒシヒシと感じていた。
そんなことは露知らず、美琴は上条の腕に手を回してくる。

(朝はあまりデートすることに乗り気じゃなかったのに。
 まあ俺と一緒に出掛けることをここまで楽しみにしてもらえるのは嬉しい限りですが…
 はぁー、明日も騒がしくなりそうだ)

明日の我が身への危機感に襲われながらも、愛しい恋人である美琴と並んで上条は歩き始める。
そして美琴のことを猛烈に慕う一人の後輩がそんな二人の後をつけているのだった。

上条と美琴がやって来たのは第六学区にある地下街だった。
第六学区にはアミューズメント施設が集中しており、今日はどの学校も半日授業だったためか多くの学生で賑わっていた。
一つの地域に同じような施設が集中していると施設のいくつかは寂れてしまいそうなものだが、
そこは各施設がターゲットとする客層を暗黙の了解で分けているので、
ある程度の人気の優劣はあっても完全に寂れてしまう施設が出ることはなかった。
そして二人は屋内のアミューズメント施設の中でも比較的中規模なゲームセンターに来ていた。
このゲームセンターはいくつかの別料金であるゲームを除き、少し高めの入場料を払えば基本的に遊び放題という
ゲームセンターというよりは一般的な遊園地のような料金プランを採っていた。
これなら一回料金を払ってしまえばお金を気にすることなく遊ぶことが出来るので、懐が寂しい上条にも安心だった。

「お昼ごはんはどうしようか?」

「うーん、俺は何でもいいぞ」

「もう、そういうのが一番困るんだって」

「だってさ、美琴の作る料理のほうが美味しいんだから何処で食べたって変わらないって」

「あ、ありがとう」//

自然と惚気る上条だったが、突然背中に学校で感じたものとは比較にならないほど鋭い殺気を感じる。
空耳かどうかは分からないが、類人猿という訳の分からない叫びまで聞こえた気がした。
美琴も背筋が凍るような悪寒に襲われたが、取り敢えず二人は施設内のレストランに入るのだった。

レストランで簡単な昼食を済ませると、二人は施設内のアトラクションを制覇するべく歩き始める。
仮想空間内でのシューティングゲームや実際の動きのモーションを読み取って戦う対戦ゲームなど、
二人は時間が許す限り施設内のアトラクションを楽しむのだった。
上条が美琴の横顔を見ると、今は辛い過去を忘れて楽しんでいるように見える。
実際はそんなことはないのだろうが、それでもこの一時が美琴にとって安息の時になるよう上条は願うのだった。
そして二人で施設内を歩いていると、有料コーナーのスペースにUFOキャッチャーが置いてあった。
その中の一つに美琴の目が留まる。

「何だ、そのカエルが欲しいのか?」

「カエルじゃなくてゲコ太!!
 今まで気付かなかったけど、こんな所にも限定のラヴリーミトンのシリーズが置いてあるのね」

UFOキャッチャーの中にあるのは宇宙服を着たゲコ太だった。

「欲しいならやればいいじゃねえか?」

「うーん、そうなんだけど私ってどうもこの手のゲームが苦手みたいで…」

「よし、それなら上条さんに任せなさい!!」

「えっ、でも当麻もゲーム関係は…」

「この手のゲームは運ではなく実力で勝ち取るのだよ、美琴さん!!」

上条は財布からワンコイン取り出すと機械の中に放り込む。
そのまま前後左右の位置取りを完全に計算すると、
以前テレビでやっていたUFOキャッチャーの達人が言っていた技術を上条は実践する。
そして見事一発で宇宙服ゲコ太のぬいぐるみを手に入れるのだった。



「ほら」

上条が美琴にゲコ太を手渡すと、美琴は嬉しそうにゲコ太のことを抱きしめる。

「何だ、そんなに欲しかったのかよ?
 もし欲しいものがあった時は上条さんに言ってくれれば…」

「ううん、当麻からの初めてのプレゼントだから嬉しいのよ」

「うっ、初めての彼女へのプレゼントがゲームセンターの賞品とは。
 男として少し情けない気が…」

「そんなことないわよ、当麻が私だけのために取ってくれたものだもの。
 一生大事にするから!!」

「…俺も美琴のことを一生大事にするよ」

「ちょっ、いきなり何言ってるの!?」//

「別にー?
 ただ上条さんは少しそのゲコ太に嫉妬しただけですよ」

「もう!!
 …私だって当麻のことを一生愛し続けるんだから!!」//

そう言って美琴はゲコ太を抱きながら上条の腕に抱きつく。
そして上条も美琴の肩を抱きよせるのだった。
そんな二人の様子にとある風紀委員の我慢の限界が頂点に達しようとしたその時…

「―――見いつっけた」

異形の目玉が上条と美琴を捉えた時、初めての科学と魔術が交差する戦いが始まる。









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