少年の覚悟と少女の決意
番外編1
目が覚めたら、そこは見慣れた病院の天井だった。
いつもと違うことは、目の前に、頭に包帯を巻き、左目に眼帯を着けた美琴の姿がそこにあったことだった。
「み、さか?っ!!」
起き上がった上条に美琴が抱きついた。
「よかった!本当によかった!!あんたが起きなかったらわたし、わたし!」
泣きじゃくる美琴を上条は優しく抱きしめる。
「心配かけてごめんな。でも大丈夫だ。俺もお前もこうして生きてる。もう終わったんだ」
隻眼のオティヌスはその右手で倒した。
もしかしたら負けていたかもしれない。
それでも立ち上がれたのは美琴がいてくれたからだ。
5分後、上条は泣き止んだ美琴に話しかける。
「なあ、返事を聞いてくれるか?」
「うん」
「夏休みの最後の日にある男と約束したんだ。御坂美琴とその周りの世界を守るって。
最初は責任みたいものと思ってた。でもお前と過ごしていて心からそうしたいと思うようになっていった。
守りたいって。一緒にいたいって気づかないうちにそう思うようになっていった」
上条は心の全てを打ち明ける。
「俺も御坂が好きだ!お前といると楽しい。お前と一緒にいたい。俺と付き合ってくれ!一生そばにいさせてくれ美琴!」
少女が自身の気持ちを打ち明けたのだ。
自分も気持ちを伝えなくてはならない。
今にも泣きそうな美琴が答える。
「とう、ぜんじゃない」
ここに新たなカップルが誕生した。
「ねえ、受け取って欲しいモノがあるの」
美琴が上条の右手にあるものを握らせた。
ハワイで買ったキューピットアローのタグリングだ。
「これは?」
上条は尋ねる。
「ハワイで買ったの。浮気防止用の指輪。2つを合わせると1つの模様になるの」
「ありがとう御坂。一生大事にする」
「そ、それとさ」
美琴が少し顔を赤らめながら言う。
「み、御坂じゃなくて、美琴って読んで欲しいな。わ、私も名前で呼ぶから」
「だめ、かな?」
「だめじゃない」
上条の鉄壁の理性も、美琴の上目遣いの前では紙にも満たない。
「み、美琴」
「と、当麻」
お互いの名前を呼び合う2人。
甘い雰囲気が漂う。
「美琴」
「当麻」
2人が口づけを交わそうとしたその時
「上条ちゃーん!起きたかー?」
病室のドアを開けたのは雷神トールだ。
どうやら最後の最後に不幸の女神は上条に微笑んだようだ
「ト、トール!」
「お、上条ちゃん起きたようだな。それに」
そして雷神トールはとんでもない事を口にする。
「いやー良かった良かった。ミコっちゃん、無事に指輪渡せたようだし、告白も成功したみたいだし」
「「・・・・・・え?」」
驚く2人を二人に雷神トールは言う。
「あ~ミコっちゃんには言わなかったっけ?ハワイでのことは全部FCEで見てたって。
指輪のことも空港でのことも全て筒抜けだったってわけ。当然、ミコっちゃんが上条ちゃんが好きってことも。
いやーあん時ミコっちゃんを呼び出し甲斐があったもんだ」
「ふ、ふにゃ~」
恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になって上条に倒れこむ美琴。
「み、美琴!?」
当然、上条も恥ずかしいのだが愛しの彼女が倒れ込んだのだ。介抱するしかない。
「じゃあねーお二人さん。幸せに~。結婚式には読んでくれよ~」
からかうだけからかって帰っていく雷神トール。
病室には顔の真っ赤な2人が取り残されただけだった。