とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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想いのかたち




とある週末のある日、
1日の授業が終わり明日から休み、そして補習の連絡も受けていない上条当麻は1人小さな幸せを感じていた。

「カミやん~」
上条当麻に話しかけたのは、友人の青髪ピアス(本名不詳)だった。

「なんだ青髪か、どうしたんだ?」
「あのなー、カミやんとよく一緒にいる常盤台の女の子ってカミやんの彼女なんか?」
「御坂のことか? アイツは彼女って訳じゃ……」

「だったら、あの子ボクに紹介してーな」
「はあ? 何言ってんだお前」
なんで俺がわざわざ知り合いに変態を紹介せんといかんのだ? 上条はしらけた目線で返した。

「ボク、あの子のこと好きになってしもて……」
突然のカミングアウトに上条は驚きを隠せなかった。
それと同時に自分の心にモヤモヤとした何かが引っかかった。
しかし上条はそれが何か分からなかった。

「何考えてんだお前、相手は常盤台のお嬢様だぞ?」
全然お嬢様っぽくないけどな、と思いながら上条はあまりの馬鹿馬鹿しさに頭を抱えた。

「身分やレベルの差なんて関係ないねん、ボクは愛に生きるんや! 一生に一度のお願いやカミやん、ボクにあの子を紹介して!」
青髪ピアスの目は真剣だった。
一生に一度の願いなんてロクなもんじゃないが、友人にそこまで言われたら上条も断ることは出来ない。

「はぁ……、分かったよ御坂に連絡してやるから」
「カミやん恩に着るで!」

そんなこんなで自宅に戻った上条は美琴に電話することにした。

「御坂か? 明日暇か? 暇なら明日会って欲しい人がいるんだが……」
『会って欲しい人って誰よ?』
「嫌なら断ってくれても構わないんだけど……」
『何よそれ』
「断ってくれたほうが上条さんとしてはありがたいんですが」
『アンタの知り合いに会うだけでしょ? 問題ないわよ』
「そうか……、じゃあ明日13時にいつもの自販機前に集合な」
『アンタが誘ったんだから遅れたら承知しないわよ』

美琴との電話を終えた上条は、青髪ピアスに電話をしようとしたが青髪ピアスの声が聞きたくなかったので、

『明日13時、公園の自販機前集合』

と、簡単にメールを送った。


翌日 12時00分

上条当麻は早くから青髪ピアスに呼び出され、すでに待ち合わせ場所の自販機の前に来ていた。
「まだ1時間前じゃねーか」
「カミやん、女の子より早く来るってのは男の常識やでー」
そう言うものなのか? と青髪ピアスに男の常識を説かれた上条は何か悔しい気持ちになった。
「早く来ないかなー、御坂ちゃん」

いきなり『ちゃん』付けかよ……
青髪ピアスの言葉に上条はわずかな憎しみを覚えた。


12時30分
「早いのねー、もう来てるなんて」
「おう、悪いなわざわざ呼び出して……」

「別にいいわよ……、そっちの人が私に会わせたい人なの?」
「ああ」
「ボク、カミやんの友達の青髪ピアスって言いますー、よろしくお願いしますー」

「御坂美琴です」
普段見せないような営業スマイルで青髪ピアスに答えた。
その顔を見た上条は、胸がきゅっと締め付けられるような気分になった。
(俺にはそんな笑顔見せたこと無いのに……って何考えてんだ俺?)

「御坂ちゃん覚えてないかなー? この間スキルアウトに絡まれてたボクを助けてくれたんやけど……」
「ああ、あの時の……」
きっかけは些細なことだった、不良に絡まれていた男を女が助ける。
王道的な男女のフラグの建て方だった。普通は男女逆だろうけど。

「お互い自己紹介も済んだところで、更に親睦を深めるためにとりあえず喫茶店でも行こかー」
「そうだなー」
と、上条が答えたその時上条の携帯が鳴り出した。

『上条ちゃんですか?』
「小萌先生、どうしたんですか?」
『今日補習があるから来るようにーって青髪ちゃんに伝言をお願いしたはずなんですが』
「聞いてないですよ?」
『むー、やっぱり忘れられてたのですー』
「……俺と青髪が行けばいいんですか?」
『いえ、上条ちゃんだけですー』
「今、青髪を1人にするわけには……」
『一緒にいたんですか? まったく困った子ですねー、青髪ちゃんは明日怒っておきますー、それじゃ上条ちゃん早く来て下さいねー』

そう言って小萌は電話を切った。
2人を残して補習か……、その悩みが胸をきりきりと苦しめる。



「……不幸だ」
「どうしたんやカミやん?」
「補習の呼び出し……」

「あああああ、ボクとしたことが小萌センセーの伝言を忘れてたー! ごめんなカミやん」
「……悪い、行ってくる」
上条の心にはもやのように不安が広がっているが、補習をサボるわけにもいかない。
「ちょ、ちょっと!」
突然の補習に美琴はなんともいえず悲しそうな顔をした。
美琴にしてみれば上条と会えるからここに来たようなものだ。

「小萌センセーによろしく言うといてなー」
青髪ピアスは美琴と2人きりになれると満面の笑顔で見送った。

「あははー、残されたねー。さすがに2人で喫茶店入るのは気まずいしねー」
「ええ、そうですね」
美琴もどうしていいか分からず、やはり営業スマイルを続けていた。

今までニコニコ笑っていた青髪の顔が急にまじめになった。
「君、カミやんのこと好きなんやろ?」
「えええ? 誰がアイツのことなんか!」
突然の青髪の発言に美琴は顔を真っ赤にして否定した。

「隠さんでもええでー、カミやんへの態度見てたら分かるさかい」
全てお見通しと青髪は優しく声をかける。
「……」
美琴は恥ずかしさのあまり声が出なかった。

「なんで告白せーへんの?」
「……」
美琴は真っ赤になって俯いている。
こんな仕草を見せられたら普通の男なら可愛すぎて悶え死んでしまう。
しかし青髪は普通の男とは違う変態紳士である、謎の耐性が彼には存在していたのだ。
上条も似たような耐性は持っているが、まったくの別物である。

真剣な表情のまま更に質問を続けた。
「振られるのが怖いんか?」
その言葉に美琴は小さく頷いた。
その様子を見てやっと本音を出したかと、ほっと息をついた。

「やっぱり御坂ちゃんも女の子なんやなー。でもな、ちょっとでも可能性があるなら告白するべきやで?」
「でも……、アイツは私のことなんて見てないから」
「そうか? カミやんの態度見てたらまんざらでも無さそうやで」
「それってどういう意味ですか?」
「ボクが君の事紹介してって言ったとき、めちゃめちゃ嫌な顔してん」
「え?」
「まあボクが変わり者すぎて知り合いに紹介するのが嫌やっただけかもしれんけどな」
「はあ……」
美琴は青髪の話にどう答えていいか分からず、ただ相槌を打つだけだった。

「ボクな、実は会う前から知っててん、君がカミやんのこと好きってこと。それでな、ちっとも2人の関係がちっとも進まんからイライラしてもうてな、本当は友達のカミやんをたきつけたほうが早いんやろうけど……」

「……どうして私を?」

「ボクも君と1回話してみたかってん、あの時助けられて君の事が好きやったって言った方が分かりやすいかな」
青髪の突然の告白、美琴は驚きの表情を見せた。
そして少し考えた後、美琴の返事は―――

「ごめんなさい……」

当然NOだった。
気まずそうに青髪ピアスの顔を見る。

「気にせんでええよ、ボクが勝手に好きになって、勝手に振られて、勝手に諦めただけや」
青髪は答えた。満足らしく笑みを漏らしているのがわかる。
どうしてそんなに笑顔でいられるの? と美琴は不思議に思った。

「不思議に思ってるやろ? でもボクは満足してるんや、君の気持ちを前から知ってたって言っても、実際に確認するまではボクの考えが間違ってたかもしれんし、ちょっとでも可能性があるなら告白するべきやと思ってさ。だからボクは後悔してないで、ボクのやりたいようにやっただけやから」



好きな子に振られて後悔しない人間はいないだろう、だが好きな子に告白出来ずに諦める後悔とは違う。

「カミやんはモテるからなー。いくら鈍感や言うても、早く自分の物にせんと誰かに取られるで?」

そう、鈍感なアイツの周りにはいつも沢山の女の子がいる。
その中から私を選んでくれるなんて思えない。
アイツが私を選んでくれるためには、私から動くしかない。

「もう君は想いをかたちにする方法を知ってるはずやで」

美琴はその言葉に胸が熱くなって、思わず涙が出てきそうになった。

「……はい」
いつの間にか胸からはモヤモヤした雲が消えている。
ただ何かを決意して、今までの相槌とは違う深い返事をした。

「カミやんの補習はもうすぐ終わるはずやから……、がんばりや!」

「ありがとうございます」
美琴は最初に見せた営業スマイルとはまったく別の笑顔で答えた。
そう言って去っていく美琴を青髪は肩の荷が下りたようにほっとした。

「小萌センセーには後でお礼言わんとあかんなー」

伝言を忘れてしまったことで小萌に怒られるのだが、それは青髪にとってはご褒美である。
青髪は美琴と2人っきりで話せる機会を結果的に作ってくれた小萌に感謝した。
その結果自分は振られてしまったが、友人のため、そして好きな女の子の幸せのために動けたことは満足していた。

「さて、明日からいろいろと面白くなりそうやでー」




そして月曜日

「カミやん~」
上条当麻に話しかけたのは、友人の土御門元春だった。

「なんだ土御門か、どうしたんだ?」
「カミやんとよく一緒にいる常盤台の女の子ってカミやんの彼女かにゃー?」
「ああ、そうだよ」

土御門の右ストレートを開始のゴングとして『上条当麻尋問会議』が開かれた。

議題は『カミやんへの罰』という理不尽なものだった。









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