第6章 ①衣替えの季節
「それでねー、あの人ったらレトルト食品か外食ばっかりで最初の内は別に良かったんだけど最近は流石に…って
ミサカはミサカは毎日こんなに美味しいものを食べてるヒーローさんに軽い嫉妬を覚えながら文句を言ってみる」
ミサカはミサカは毎日こんなに美味しいものを食べてるヒーローさんに軽い嫉妬を覚えながら文句を言ってみる」
妹達の中でも末妹である打ち止めはフォークを休めることなく口に運び続けている。
「まあ確かにこんな美味い料理を毎日食べられる上条さんは幸せだと思うぞ」
「ナチュラルに惚気られたことにミサカは驚愕しながらも、頬を染めているお姉さまにお代わりの催促をしてみる」
「駄目よ、もう三杯もお代わりしたでしょ。
これ以上食べるとお腹壊しちゃうわよ」
これ以上食べるとお腹壊しちゃうわよ」
「うー、でもお姉さまの作った料理をもっと食べたい」
「それなら、来たい時にいつでも遊びに来て構わないぞ」
「本当!!」
「ああ、打ち止めは美琴の妹なんだから俺の妹も同然だ
ただ分かってるな?」
ただ分かってるな?」
「うん、一人で出歩いちゃ駄目なんだよね」
「そうだ、何処か出掛ける時は必ず一方通行と一緒に出掛けること」
「…ねえ、今度あの人も連れてきていい?」
「…」
「ご、ごめんなさいって、ミサカはミサカはお姉さまに向かって無神経なことを言ったのを謝ってみる」
「…わよ」
「え?」
「いいわよ。
緊急事態だもの、今度打ち止めが来る時は一緒に連れて来なさい」
緊急事態だもの、今度打ち止めが来る時は一緒に連れて来なさい」
「うん!!」
その時、打ち止めの持つ携帯電話が鳴った。
「あの人からだ、下まで迎えに来てくれてるって!!」
「そうか、それじゃあ俺と一緒に下まで行くか」
上条と打ち止めは立ち上がると部屋の玄関に向かう。
そして打ち止めは美琴の方を振り向くと大きく頭を下げて言った。
そして打ち止めは美琴の方を振り向くと大きく頭を下げて言った。
「…お姉さま、色々とありがとう」
美琴が返事をする前に打ち止めは玄関から外に向かって出て行ってしまう。
打ち止めを一方通行に預けた上条は部屋に戻ると、何処か浮かない顔の美琴を背中から抱きしめる。
「…偉かったな」
美琴は上条の言葉に黙って頷く。
美琴にとって一方通行は悪夢の象徴そのものだ。
前に向かって進んでいても過去が消え去るわけじゃない。
美琴は呟くように言った。
美琴にとって一方通行は悪夢の象徴そのものだ。
前に向かって進んでいても過去が消え去るわけじゃない。
美琴は呟くように言った。
「私はアイツのことを死んでいった子達の分まで決して許しはしない。
でも打ち止めのためにも、いつか憎しみを消し去りたいな…」
でも打ち止めのためにも、いつか憎しみを消し去りたいな…」
上条は美琴を抱きしめる腕に力を加える。
「そう思えるのは美琴の優しさと強さだ。
俺はこの件に関して美琴に何も無理強いすることは出来ない。
でも美琴のその気持ちを俺は尊重してあげたいと思う」
俺はこの件に関して美琴に何も無理強いすることは出来ない。
でも美琴のその気持ちを俺は尊重してあげたいと思う」
「ありがとう、当麻…」
上条の方へ顔を向けた美琴と上条は軽い口づけを交わすのだった。
「そういえば明日から衣替えか。
美琴は制服買え替えたりするの?」
美琴は制服買え替えたりするの?」
「私は去年一年で大分身長が伸びて四月に買え替えたばかりだから特にその予定はないかな?」
「それじゃあ明日は午前中授業だし何処か遊びに行くか?」
「何だか最近、私達遊んでばかりじゃない?」
「美琴が嫌なら仕方ないんだけど…
もうすぐ中間テストも始まるし、出来ればその前に遊び納めしておきたいかなって」
もうすぐ中間テストも始まるし、出来ればその前に遊び納めしておきたいかなって」
「うっ、その誘惑に勝てない自分がいる」
「なあ、美琴。
それで出来れば明日にも…」
それで出来れば明日にも…」
「却下!!」
「…」
「今度はあっちから攻めてくるんだから自衛でしょ?
それなら私も力になることが出来る」
それなら私も力になることが出来る」
「でも!!」
「あのねえ、この間だって本当は当麻を助けたかったのに泣く泣く陰からのサポートに徹したのよ。
当麻は自分の身の安全よりも学園都市全体を守る決意をした。
そして卑怯な言い方かもしれないけど、私よりもより多くの命を救う選択肢を選んだ」
当麻は自分の身の安全よりも学園都市全体を守る決意をした。
そして卑怯な言い方かもしれないけど、私よりもより多くの命を救う選択肢を選んだ」
「…悪い」
「ううん、当麻を責めてるんじゃないの。
当麻は私のことを周りの世界も含めて守ろうとしてくれてる。
だから私も当麻と当麻の周りの世界を守るために戦いたい」
当麻は私のことを周りの世界も含めて守ろうとしてくれてる。
だから私も当麻と当麻の周りの世界を守るために戦いたい」
神の右席、その構成員のヴェントと呼ばれる女性が近い内に学園都市に攻め込んでくるらしい。
ヴェントの実力は分からないが、その纏う雰囲気から只者ではないことは分かっていた。
誰かに警告して抵抗するものが増えたら、その分犠牲になる人間が増えると上条は脅されている。
しかし完全に準備をすることなくその日を迎えるわけにもいかず、上条は周りの人間に危機に備えるよう警告していた。
カエル顔の医者は患者のことだけは何があっても守ると約束し、
一方通行はもしもの時は命を懸けて学園都市内の妹達と打ち止めを守り抜くと言ってくれた。
学校の友人にも魔術師という単語は伏せて危機が迫っていることを伝えたが信じてもらうことは出来なかった。
友人の一人である土御門だけは柄にもなく妙に神妙な顔をしていたが…
そして最後に上条は美琴に学園都市を出るように説得を続けていた。
大事な人だけ外に逃がそうとする行為に上条は少し恥を感じたが、それでも美琴のことが何よりも大事だった。
しかし美琴が首を縦に振ることはなかった。
ヴェントの実力は分からないが、その纏う雰囲気から只者ではないことは分かっていた。
誰かに警告して抵抗するものが増えたら、その分犠牲になる人間が増えると上条は脅されている。
しかし完全に準備をすることなくその日を迎えるわけにもいかず、上条は周りの人間に危機に備えるよう警告していた。
カエル顔の医者は患者のことだけは何があっても守ると約束し、
一方通行はもしもの時は命を懸けて学園都市内の妹達と打ち止めを守り抜くと言ってくれた。
学校の友人にも魔術師という単語は伏せて危機が迫っていることを伝えたが信じてもらうことは出来なかった。
友人の一人である土御門だけは柄にもなく妙に神妙な顔をしていたが…
そして最後に上条は美琴に学園都市を出るように説得を続けていた。
大事な人だけ外に逃がそうとする行為に上条は少し恥を感じたが、それでも美琴のことが何よりも大事だった。
しかし美琴が首を縦に振ることはなかった。
「無理はしない。
まだやらなくちゃいけないこともあるし、当麻と一緒に帰ってこなくちゃ意味がないもの。
だから私も当麻の隣で戦わせて!!」
まだやらなくちゃいけないこともあるし、当麻と一緒に帰ってこなくちゃ意味がないもの。
だから私も当麻の隣で戦わせて!!」
「…分かった」
「当麻!!」
「俺は必ず美琴の隣で美琴のことを守ってみせる。
だから何かあったら必ず俺の傍から離れるなよ」
だから何かあったら必ず俺の傍から離れるなよ」
「うん!!」
美琴は返事をすると上条に抱きつく。
イタリアでの一件で美琴は上条に対する過度なスキンシップは抑えると宣言したものの、今はすっかり元に戻ってしまっていた。
美琴が言うには何かあった時は覚悟を決めているらしく、彼女としてのスキンシップにシフトチェンジしたらしい。
上条としては美琴に手を出す気はまだ無いので、再び生殺しの状態に戻っただけだった。
割と上条から美琴にソフトなスキンシップを図ることはあるのだが、上条は美琴からのスキンシップに妙に弱かった。
さっきも自分から美琴の背中に抱きついたくせに、今は美琴に抱きつき返されて顔を赤くしている。
そうして平和な時間は何事もないように過ぎていく。
しかし上条も美琴も自覚していた。
この心地よい平穏な時間が制限時間付きのものだということを…
大きな戦いへと繋がる事件が起こる前日の夜は静かに更けていくのだった。
イタリアでの一件で美琴は上条に対する過度なスキンシップは抑えると宣言したものの、今はすっかり元に戻ってしまっていた。
美琴が言うには何かあった時は覚悟を決めているらしく、彼女としてのスキンシップにシフトチェンジしたらしい。
上条としては美琴に手を出す気はまだ無いので、再び生殺しの状態に戻っただけだった。
割と上条から美琴にソフトなスキンシップを図ることはあるのだが、上条は美琴からのスキンシップに妙に弱かった。
さっきも自分から美琴の背中に抱きついたくせに、今は美琴に抱きつき返されて顔を赤くしている。
そうして平和な時間は何事もないように過ぎていく。
しかし上条も美琴も自覚していた。
この心地よい平穏な時間が制限時間付きのものだということを…
大きな戦いへと繋がる事件が起こる前日の夜は静かに更けていくのだった。
「それで何でアンタがここにいるの?」
「リハビリを兼ねた外での生活訓練だとミサカ懇切丁寧にお姉さまに説明します」
「ううん、そんなことを聞いてるんじゃないの…
何でアンタが当麻に抱きついてるのよーーーー!!!!」
何でアンタが当麻に抱きついてるのよーーーー!!!!」
この場には美琴と同じ顔をした少女がもう一人いる。
少女はミサカ10032号…通称・御坂妹。
現在その呼び名はあんまりだということで上条と美琴が一万人の妹達の名前を捻り出している最中である。
しかしながら取り合えず今は御坂妹と呼ばれていた。
そして御坂妹は美琴の目の前で上条の左腕にピッタリと抱きついているのだ。
少女はミサカ10032号…通称・御坂妹。
現在その呼び名はあんまりだということで上条と美琴が一万人の妹達の名前を捻り出している最中である。
しかしながら取り合えず今は御坂妹と呼ばれていた。
そして御坂妹は美琴の目の前で上条の左腕にピッタリと抱きついているのだ。
「お姉さまは普段からこの方と生活を共にしているのだから、偶にはミサカが甘えたっていいじゃないですか?
この方はミサカたちにとってもヒーローなんですから…」
この方はミサカたちにとってもヒーローなんですから…」
「それはそうだけど…」
美琴もそのことは分かっている。
上条はみんなのヒーローで独占されるべき人物ではないことを…
だから上条が五和に優しくしても美琴は上条のことを責めるようなことはしなかった。
しかし上条に必要以上にくっ付くことは別だ。
それは美琴にだけ許された恋人の特権だった。
美琴は上条の隣は自分のものだと言わんばかりに右腕に抱きつく。
上条はみんなのヒーローで独占されるべき人物ではないことを…
だから上条が五和に優しくしても美琴は上条のことを責めるようなことはしなかった。
しかし上条に必要以上にくっ付くことは別だ。
それは美琴にだけ許された恋人の特権だった。
美琴は上条の隣は自分のものだと言わんばかりに右腕に抱きつく。
(これは外から見たら幸せな状況なんだろうが何となく嫌な予感が…)
上条が空を見上げながら不幸とは決して口に出せないが不幸な状況に億劫としていると、目の前で何かが地面に落ちる音がした。
上条が顔を下げると、嫌な予感が当たったことに頭を悩ます。
目の前で青髪ピアスが信じられないものを見たという様子でワナワナと震えてる。
落ちたものの正体は青髪ピアスのカバンだった。
上条が顔を下げると、嫌な予感が当たったことに頭を悩ます。
目の前で青髪ピアスが信じられないものを見たという様子でワナワナと震えてる。
落ちたものの正体は青髪ピアスのカバンだった。
「カミやんが御坂ちゃんとラブラブなのは知ってたんやけど、まさか色んな意味で家族ぐるみの付き合いだったなんて…
…カミやん、明日は覚悟しといた方がええで」
…カミやん、明日は覚悟しといた方がええで」
上条が弁解をする前に青髪ピアスは奇声を上げながら走り去ってしまう。
明日は少しばかり過激な一日になりそうだった。
明日は少しばかり過激な一日になりそうだった。
「…当麻、大丈夫?」
「…明日帰ってきたら、いつも以上に優しく出迎えてもらえると嬉しいかな?」
「…うん」
そんな感じで魔術師という脅威よりも明日のクラスメイトによる裁判の方に目が向き始めた上条だったが、
今は恋人である美琴を誘った本当の目的を果たすの先である。
治療の調整があると言って病院に帰っていった御坂妹と別れ、上条と美琴は学園都市内の喫茶店でお茶を飲んでいる。
今は恋人である美琴を誘った本当の目的を果たすの先である。
治療の調整があると言って病院に帰っていった御坂妹と別れ、上条と美琴は学園都市内の喫茶店でお茶を飲んでいる。
「いやー、助かったよ。
この間19090号に会った時にどの子か分からなかったら悲しい顔をされちまってさ。
本当は見ただけで分かれば一番いいんだけど、流石にそれはまだ難しいからな。
取り合えず今は何か見分けがつくプレゼントをしたいと思ってな」
この間19090号に会った時にどの子か分からなかったら悲しい顔をされちまってさ。
本当は見ただけで分かれば一番いいんだけど、流石にそれはまだ難しいからな。
取り合えず今は何か見分けがつくプレゼントをしたいと思ってな」
上条のカバンの中には四つの小包が入っており、それぞれ違うペンダントトップが付いたネックレスが入っている。
先ほどまで足を運んでいたアクセサリーショップで購入したものだ。
今度病院を訪れた時にでも学園都市にいる妹達にプレゼントするつもりだった。
先ほどまで足を運んでいたアクセサリーショップで購入したものだ。
今度病院を訪れた時にでも学園都市にいる妹達にプレゼントするつもりだった。
「当麻って思ったよりもそういう点に気が利くわよね。
きっとあの子達も喜ぶと思う」
きっとあの子達も喜ぶと思う」
そう言いながらも美琴の心境は複雑だった。
自分はまだ上条からアクセサリーといった感じのプレゼントをされたことがない。
醜い嫉妬だとは思いつつも、妹達にどうしても妬みを感じずにはいられなかった。
しかし次に発せられた上条の言葉に美琴の心は晴れやかなものになる。
自分はまだ上条からアクセサリーといった感じのプレゼントをされたことがない。
醜い嫉妬だとは思いつつも、妹達にどうしても妬みを感じずにはいられなかった。
しかし次に発せられた上条の言葉に美琴の心は晴れやかなものになる。
「それで実は美琴にもプレゼントがあるんだ」
上条はそう言うと学生服のポケットから小さな箱を取り出した。
妹達へのプレゼントが長方形の箱だったのに対して美琴へのプレゼントは正方形に近い箱だった。
美琴は胸が高鳴るのを感じた。
妹達へのプレゼントが長方形の箱だったのに対して美琴へのプレゼントは正方形に近い箱だった。
美琴は胸が高鳴るのを感じた。
「開けてみていい?」
美琴の言葉に上条は黙って頷く。
中に入っていたのは一組のペアリングだった。
小さなダイアモンドがあしらわれており、シンプルながらも美琴好みの可愛らしいデザインをしている。
中に入っていたのは一組のペアリングだった。
小さなダイアモンドがあしらわれており、シンプルながらも美琴好みの可愛らしいデザインをしている。
「前にさゲーセンで取ったゲコ太のぬいぐるみをプレゼントしたろ?
あの時から美琴にはちゃんとしたプレゼントをしたいと思ってたんだよ。
本当はイタリアに行った時もプレゼントを探してたんだが、流石に桁が違くてな。
学生は学生らしく身分相応なものを買うことにしたんだ。
まあその中でも無能力者の俺が買える程度のもんだから、本当に大した値打ちがあるもんじゃないけど…」
あの時から美琴にはちゃんとしたプレゼントをしたいと思ってたんだよ。
本当はイタリアに行った時もプレゼントを探してたんだが、流石に桁が違くてな。
学生は学生らしく身分相応なものを買うことにしたんだ。
まあその中でも無能力者の俺が買える程度のもんだから、本当に大した値打ちがあるもんじゃないけど…」
「ううん、そんなことないわよ…凄く嬉しい。
ねえ、当麻から私の指に嵌めてくれる?」
ねえ、当麻から私の指に嵌めてくれる?」
美琴はそう言って上条に指輪を手渡す。
「ああ」
上条が美琴の左手の薬指に指輪を嵌めると、美琴は嬉しそうに指輪を撫でる。
しかし晴れやかな気持ちの二人とは対照的に、空は徐々に曇り始めていた。
学園都市に流れる空気は何処か嵐が来ることを感じさせるのだった。
しかし晴れやかな気持ちの二人とは対照的に、空は徐々に曇り始めていた。
学園都市に流れる空気は何処か嵐が来ることを感じさせるのだった。