とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part24

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第2章 ②英国三派閥との接触


「上条さん、お久しぶりです!!」

「五和、元気だったか?」

「ええ、私達もすっかりロンドンの街に馴染んで…
 …それよりも腕の具合は如何ですか?」

「ああ、俺のほうも特に問題ない」

すると五和は上条の隣に立つ美琴の顔を見据えた。

「五和さん、私その…」

美琴は上条が大怪我を負ったのを引きずっていたため、五和から上条を守れなかったのを責められるのを覚悟していた。
しかし五和から出てきた言葉は意外なものだった。

「美琴さん、あなたも無事で良かった」

「え?」

「学園都市に神の右席が侵入して戦いが起こったと聞いた時は心配しました。
 あなたなら上条さんを助けるために無茶をすることが分かってましたから」

「五和さん…」

「それに、あなたに会ったら上条さんが悲しみますから…」

「…ありがとう」

美琴と五和は互いの顔を見つめると微笑を返す。

「五和、例の件なんだけど…」

「すでに上の人間に伝えてあります。
 私達も十字教内での立場がかなり緊迫した状況にありますので…」

「やっぱり何かあったってわけか…」

それまで口を閉じていたトールが思案顔で呟く。

「えっと、あなたは?」

「取り合えず、元グレムリンの直接戦闘担当・雷神トールって名乗っておこうかな」

「そうですか、グレムリンの…」

「あれ、十字教の魔術師がグレムリンって聞いたら、もっと敵意を向けられると思ったけど?」

「さっき言った通り、英国の立場はかなり悪い状況になっています。
 正直な話をすると、既にローマ正教とは敵対関係にあると言っても過言ではありません」

「なっ!?」

思っていた以上に英国が緊迫した状況に置かれていることに衝撃を受ける。

「そしてこのままでは英国内でも戦争が起こってしまうかも…」

「おいおい、それは穏やかな話じゃないな。
 外敵に晒されてるのに内輪もめとは、どうなってやがる?」

「それについては上の人間から話があると思います。
 ただお気をつけてください、もしかしたらその場であなた達に害が及ぶようなことがあるかも…」

トールの疑問に五和は何処か不安を誘う言葉を発する。

「どういう意味だ?」

「これから向かう先では王室派、騎士派、そして清教派のトップが待っています。
 でも彼女達の言うことを真に受けては駄目です。
 すみません、私は立場上これ以上は…」

「いや、助かったよ。
 サンキューな、五和」

五和は上条の言葉に頬を染めながら最後にこう付け加えた。

「上条さん、私達天草式は例え何があろうとも上条さんの味方です。
 上条さんが神の右席であろうとグレムリンであろうと、戦うことを決断されたなら必ず上条さんの味方として馳せ参じます」

「…ありがとう」

そして一向は各派閥のトップが待つというバッキンガム宮殿へと向かうのだった。



バッキンガム宮殿に着くと何故か超vip待遇で迎え入れられ、上条とトール、そして美琴はそれぞれ別室に通された。
五和の話を聞いていたので上条は美琴と別室に移動することを危惧したが、どうやら着替えをさせられるだけらしい。
これから会う人間の中には英国の王室派、要するに英国の王族もいるため普通の私服で会うわけにはいかないらしかった。
上条は堅苦しい燕尾服へを着替えることを強要され何となく動きづらさを感じる。
しかし着替えが終わって出てきた美琴を見た瞬間、上条は別の意味で固まることになった。

「その…変じゃないかな?」//

美琴が着ているのはピンクのイブニングドレスで、普段下ろしている髪も今日は結ってあった。
普段することが無い化粧も薄くされており、何処かのお姫様を連想させるような美しい姿だった。

「凄く綺麗だよ。
 正直、他の男には見せたくないくらいだ」//

上条の言葉に美琴は頬を染めて俯く。

「何か俺のこと忘れられてない?」

そしてその空気にその場にいたもう一人の少年トールは妙な疎外感を覚えるのだった。

三人は宮殿の使用人だと思われる人物に案内され、弧を描くように机が並べられた会議場だった。
そしてそのだだっ広い空間には上条たちを除き七人の人間しかいなかった。
テレビで見たことがあるイギリス王室の女王と三人の王女、30代半ばくらいの美男子、
そして異様に長い金色に輝く髪を束ねている女性と彼女に付き従うように佇んでいる黒髪の女が
上条たちに注目するように視線を向けている。

「良く来たな、学園都市からの使者に元グレムリンの構成員。
 英国にようこそ、歓迎するよ」

英国女王エリザードは気さくな様子で上条たちに向けて挨拶するが、他の人間達は明らかに上条たちを歓迎する様子ではなかった。
上条たちに向けて皆、猜疑的な視線を向けている。

「こりゃ一筋縄じゃいかないかもな…」

隣に立つトールが漏らした呟きに上条も頷く。

「今日はあなた達にお願いがあって来ました。
 実は神の右席と戦うに当たって、あなた達の力を…」

上条が代表して用件を述べようとしたその時、それを遮る者がいた。

「ちょっと待つし、少年達の話を聞く前に確かめなきゃならないことがあるし」

相手の陣地にいる以上は相手の話を先に聞くのが道理だと考えた上条は、第二王女キャリーサの言葉を待つ。

「少年達の願いは分かってるし、英国に神の右席やグレムリンに対して第三勢力として立ち上がれって言うんだろ?
 でもそれはリスクがでか過ぎる選択肢だし。
 だから少年達にはそれ相応の力…実力を見せてもらわないと。
 下手に会談したこたが他の組織に伝わると余計に英国の立場が悪くなるし」

キャリーサの言い分は尤もだった。

「それじゃあ、模擬戦闘でもするか?」

「こちらもちょうどそう提案するところだったし。
 ただし模擬戦闘じゃなくて殺し合いをしてもらうし、下手な遺恨は残したくないからな」

美琴はキャリーサの提案に顔を蒼くするが、上条は特に気にした様子もなく提案を受け入れた。

「分かった、形式はどうする?」

「代表者一名を選出して戦うし、こっちの代表者は私だし…」

「…そっちの女の人じゃなくていいのか?」

上条はイギリス清教の最大主教であるローラ=スチュアートのほうを見て言った。
上条の発言に対してトールがただ一人面白そうに口笛を吹く。
ローラ自身も何処か興味深げに上条を見て微笑みを浮かべていた。

「たかが清教のトップに英国の未来は任せられないし!!」

「ここは上条ちゃんに任せるわ。
 どうも俺のレベルアップには役立たなそうだし」

「…分かった」

心配そうにしている美琴を安心させるように上条は微笑を浮かべると、対決の場であるバッキンガム宮殿の庭園へと向かうのだった。



「母上、英国の未来が懸かっている以上、本気でやらないわけにはいかない。
 悪いけどカーテナ=セカンドを借りるし」

エリザードはキャリーサの言葉に無言で頷くと手にしていた剣…カーテナ=セカンドを手渡す。
それに対して第三王女のヴィリアンは抗議するように言った。

「お待ちください、あのような少年に向かって天使長の力を向けるのですか!?」

「だからお前は甘いと言ってるんだヴィリアン。
 あの少年達の目論見はどう転んでも英国にとって厳しい道を強いることになる。
 それを何の根拠もなしに受け入れてしまうほど、私達は甘くないし」

キャリーサの言葉にヴィリアンは黙って俯く。

「それじゃあ、あの少年の価値を見極めさせてもらうし!!」

上条とキャリーサは距離を取って対峙する。
そこに言葉は必要ない、上条は実力で自らの主張を押し通すしかないのだから…
女王の合図と共に二人の激突は始まった。

「悪いけど、これで終わらせてもらうし!!」

キャリーサはカーテナ=オリジナルを一振りした。
それは次元切断の術式、上条に向かって次元すら切断する斬撃が放たれる。
何の知識も持たずに挑むのは自殺行為であり、そして一部の例外を除き防御することが不可能な攻撃だった。
しかし上条はその例外を右手に持ち合わせていた。
上条は直感的に右手をキャリーサが振るったカーテナ=セカンドの剣先に向けると次元切断の術式を打ち消す。

「ちっ、それが幻想殺しと言われる力か!?
 でも特別な右手を持っていたところで、私には届かないし!!」

しかし本当に驚くべきことはその後の上条の動きだった。
キャリーサは英国王朝の王女三姉妹の中でも軍事の才能に秀でていると言われている。
それは軍の指揮官としてだけだなく、自身の武芸の腕においても特別な才能を持ち合わせていた。
そしてその鋭い剣筋から放たれる次元切断の術式は一般人が見切れるようなものではなかった。
しかし上条はまるでその剣筋を予知しているかのように次元切断の術式を掻い潜り、
避けきれない術式だけを打ち消しながらキャリーサへの距離を詰めていく。

「おいおい上条ちゃん、まさか見えてやがるのか!?」

トールは上条の異常な反射神経に驚きを隠せない、それは他の者も同様だった。
しかし以前から上条の戦いを数回見たことがある美琴は上条の反応速度よりも、上条の動きに驚いていた。
以前の上条はローマ正教のオルソラを追っていた部隊と激突した時もそうだが、直進的に攻めていくのが常だった。
しかし今の上条は手傷を全く負わずに、着実にキャリーサへと迫っている。
それは上条が寮監との厳しい修行の末に身につけた身体能力があってこそ為せる技術だった。
やがてキャリーサへの接近を果たした上条はカーテナ=セカンドを振るうキャリーサとの接近戦に臨む。
しかし接近を果たしたところでキャリーサには天使長の力が宿っており一発でもまともに喰らえば、
いかに頑丈な上条といえども一溜まりもない。
しかし上条はキャリーサの攻撃を受け止めるのではなく、両手を使って往なすように受け流していく。
上条が寮監からまず初めに叩き込まれたのは防御の技術だった。
上条の丈夫な体に頼っての無理な接近戦は命取りだと教えられていた。
そこで上条が身につけたのは柔の技とも呼べるこの防御技術だった。
相手の力を受け止めるのではなく受け流す。
そうすることによってキャリーサに生まれた隙を上条は見逃さなかった。
上条はキャリーサの攻撃を往なしながら流れるようにキャリーサの背後に回り、キャリーサのことを組み伏せていた。
キャリーサに宿る天使長の力を使えば無理やりにでも振りほどくことが出来たが、
一人の武人としてキャリーサは上条への敗北を認めざるをえなかった。
そうして上条とキャリーサの手合わせの雌雄は決したのであった。



「ハハハ、気に入ったし。
 私は井の中の蛙だったってとこかしらね」

上条に組み伏せられたまま、キャリーサは愉快そうに笑い声を上げた。
上条は一国の王女を組み伏せているという事実に遅ればせながら気付き、慌ててキャリーサの上からどく。
キャリーサは立ち上がると、ドレスに付いた泥を払いながら笑顔を浮かべていた。
やがて二人の戦いを見物していた人間達も二人の下に集まってくる。

「しかし、一国の王女を一般人が組み伏せたなんてパパラッチが知ったら大問題だし」

「す、すみません」

顔を蒼くする上条の肩を叩きながら、キャリーサは何処か意地の悪い声で言った。

「こうなったら責任を持って、英国王室に私を妻として婿に入るしかないし」

キャリーサの言葉に抗議を唱えようとする美琴だったが、その前に上条が口を開いた。

「すみません、それだけは出来ません。
 俺には生涯を共にし、添い遂げるって約束をした人がいますから…」

「このまま国際問題に発展させてもいいんだぞ」

「例え世界を敵に回しても、俺は彼女と彼女の幸せのために戦う覚悟があります」

「ハハハ、冗談だし。
 いや、少年を婿にしたいというのは冗談というわけじゃないけど…」

本気なのかどうか分からないキャリーサの発言に皆が苦笑いを浮かべる中、美琴は一人頬を染めていた。

「さて、君達の提案を受け入れるかどうかは別として、取り合えず話し合いの席を設けよう。
 キャリーサは着替えて来なさい、その格好のまま大事な話し合いに参加させるわけにはいかないぞ」

「えー、別にこれくらい構わないし…」

しかしエリザードの無言の圧力にキャリーサは渋々頷く。
そしてそれから一時間後、再び上条たちと英国三派閥の間で今後の行方を左右する話し合いが行われるのだった。








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