とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part07

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匿名ユーザー

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まるで不死身のターミネーター。が、映画のあれほど無表情ではない。鬼気迫る気迫で歩んでくる。

「お姉様、黒子はお姉様と一緒になりたいのですの」

「いや、アンタ包丁で私のこと刺そうとしたじゃない、何が一緒になりたいのよ?」

「はい、黒子はお姉様の伴侶となって一緒のお墓に入りたいですの」

「答えになってないから」

「お姉様と一緒に伝説になりますの」

「意味わからん」

「美琴、ダメだこれは」

「類人猿がお姉様を呼び捨てにするとは何事ですの!」

さっきから白井はこの調子である。意味のある会話にならない。

ファミレスから脱出し、通りを抜け無関係な者を巻き込まない場所まで白井を誘い出すことには成功した。

しかしその後がいけない。予定通り美琴の電撃で気絶させようにも気絶してくれないのだ。

ここは躱す余地の少ない狭い路地、撃てば当たる状況を作り出していた。

それなりの出力は出している、普段なら痺れる程度の出力に抑えてあるが今はまずどんな相手であっても気絶する出力。

その電撃を浴びても白井はビクンとするだけ、美琴への愛を語りじりじり近づいてくる。

慣れと言おうか、不屈の闘志と言うか、まさに映画のターミネーター、恐ろしい。

勿論、まだ美琴も電撃の出力を上げられる、上げられるがこれ以上は命が危ない。どんなに白井が恐ろしくとも死なす訳には当然いかない。これでは打つ手がなかった。

「美琴、いっそのこと俺が」

多くを語らずとも上条の考えは分かる。

マジックアイテムの影響を白井は受けている。それなら上条の幻想殺しでそれを打ち消してしまえば白井は元に戻る。

しかしそれは危険だった。幻想殺しは飛び道具ではない、しかも幻想殺しがあるのは上条の右手の手首から先、手が届く距離まで白井に近づかなければならない。対して白井はテレポーター、距離を無視できる能力者、完全無欠の飛び道具、闇雲に突撃しても良い的になるだけだ。

上条の突撃を可能にするなら、美琴の電撃で白井の動きを止める必要がある。しかし上条が接近中に電撃を放てば上条が巻き添えになるし、放ってから上条が接近してもこれまでの白井の回復度合いから言って猶予は僅か、危険な賭けになる。

「また、類人猿がお姉様を呼び捨てにするなど言語同断ですの」





妖しい目つきで見据えてくる白井。白井の関心は美琴、美琴を手に入れることに向いているが邪魔者として上条を粛清するつもりなのだ。今は美琴が牽制しているが上条が飛び出せば躊躇わず上条を仕留めにかかるだろう。

「コ・ロ・シ・て・さ・し・あ・げ・ま・す・の」

白井の言葉に反応して美琴が電撃を放つ。前面に拡散した電撃が白井を飲み込んだ。電撃にはじかれ白井は吹っ飛ぶ。

これまで確保した地歩を白井は失うが倒れはしない。

「フ…フフ、コレを快楽として受け入れられるようになった黒子をお姉様、お誉めて下さいませ」

堪えていない。

「そんな変態、誰が誉めんのよっ!」

背筋がゾッとする。

「躊躇ってるヒマはねー、白井もこんな精神状態で長く持つはずがない」

白井は何度も電撃を受け肉体を酷使している、精神状態がおかしいにもかかわらずテレポートを行っている。テレポーターの演算は11次元に渡る精密な計算を行うもの、本来なら外傷や精神的刺激によっても狂う。

過てば、現在上条達がいるこの狭い路地などでは壁に突っ込んでしまう。

そんな危険性の他にもこの精神状態が続けば、たとえマジックアイテムの影響を排除しても元には戻れなくなる、精神崩壊一歩手前まで来ている、そんな予感がする。

妖しい目つきも力強さはない、美琴との妄想混じりの未来に希望を抱いた目ではない、虚ろな目をしている。

早く助けなければならなかった。

「ダメよ」

命を狙う白井をも気遣う上条、改めて美琴は

(このバカ、ホントお人好しなんだから……でもそんなところも)

と思う、だが認めることはできない。失敗すれば上条の命と大切な後輩を殺人者にすることになる、認める訳がない。

それに何の為に恋人役を引き受けたのか、マジックアイテムの影響を受けストーカー化した者から上条を守るためである。

それが美琴を慕う白井に上条が襲われることになっている、本末転倒だ。

恋人気分を味わえると邪な気持ちもありはした。それでも第一義は上条の力になること。

(私の方が迷惑かけてんじゃない!助けるって決めたのに、そばにいるって決めたのに、一緒に歩むって決めたのに!ナニやってるのよ私は!何のために演技までして……………………)

「えっ?」





思い出す。

上条を守るために何故恋人役をすることになったのか、説明では

『恋心が破れたら効果が消える、恋してる相手に恋人ができたら、そのショックで影響が消える』

白井はファミレスの外から眺めていただけだ。まだ、白井は上条と美琴が恋人同士である様子を見ていない。

白井に負けない気持ちがあれば効き目は薄いかもしれない。しかし状況を打開する術が他に見当たらない中では試す価値があった。

「黒子」

美琴が呼びかける。

「はいですの」

名前を呼ばれ白井の顔が綻ぶ。

「アンタの気持ちは嬉しいのよ」

「ああ、お姉様」

「でも、それは後輩として寮のルームメートとしてよ」

「そうですの、私はお姉様のパートナーですの」

やはり、やんわりと白井に断りをいれても効果は無いらしい。はっきりと言わねばならないようだった。

「私は好きな人がいるの!」

「……その方へのお姉様のお気持ちを必ず私へ向けさせてみせますの」

「無理、諦めて黒子。私はその人と付き合っているのっ!」

「えっ!」

白井の顔に動揺が走る。

「ほらっ」

美琴は上条の腕をとり、胸に抱く。

白井がショックを受けたように後ずさった。

「う、ウソですの」

効き目が表れている。

美琴は上条に

「(あ、合わせて)」

急に腕を取られ、美琴の胸に上条の腕は抱かれていた。ドギマギしていた上条だったが美琴の意図が読めた。

それに応える。

「お、おう。白井、俺と美琴は付き合ってるんだ。今まで言わなくてすまなかったな」

「そ、そんな」

今や白井はわなわなと震えている。

「私は当麻を愛してるの、もう当麻と離れられないのよ」

「あ、あっあ、あっ、あああぁあぁああああぁぁぁ」

「俺も愛してるんだ」

上条は美琴の胸に押し抱かれた腕を解くと、その代わりに背中へ手を回し美琴を引き寄せ、

「もう片時も離れてはいられないんだ!」

両手で抱き締める。

「美琴の全てを愛してる。この気持ちは誰にも負けない!白井、オマエにもだ!」

(な、ななにゃ、にゃにゃにゃにゃんちゅうことを!)

美琴はパニックに陥りそうになるが

「私も天が許さなくても、大地が怒っても運命が敵になっても当麻しか愛せない」

ここは勝負どころ、気絶する訳にはいかない、勝負に出た。

気持ちが高まる。





「美琴、俺も美琴しか愛せない」

「当麻、ありがとう」

美琴も抱き締められるだけでなく抱き返す。固く抱き合い上条と美琴の顔が触れ合う。

これで決まったかに思えた。白井の膝は崩れ全身を震わせている、今にも倒れ込みそうであった。

しかし、白井は粘る。

「まだですの、私のお姉様への愛はこれしきりで……障害があればあるほど……燃え上がりますの」

白井は最後の炎を燃やしていた。

まだ決定打を必要とした。言葉だけでは足りない。行動で示すしかない。

((ど、どうする?))

これ以上の行動を起こす事に戸惑いがある。戸惑いながらも自然に二人の身体は動いていた。

抱き締め合っていた腕を緩める。触れ合った頬が離れる。離れるためでなく、もう一度触れ合うために。

互いの顔しか見えない距離、見つめ合い、目を閉じる。目を開けておく必要はなかった、信じ合い距離を縮めればそのまま触れ合える。

惹かれ合う者なら当然。

そして、
































永い時間が過ぎ去ったかに感じたとき

ゴン!

という音が鳴った。

音は白井がいたところから、上条と美琴が驚き目を開けてそちらを見ると白井が倒れている。

その背後に見知らぬ一人の少女。










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