定番と云うか、上条は予想がついた。
その少女は登山家のようなバックパックを背負い、シスターらしき格好をしている。
らしきと言うのは蝶ネクタイをしており修道服にはあまり見えない。のでシスターとは違うかもしれない。
しかし、上条が出会ったシスターの奇抜なこと、ミニスカ修道服の他にベルトを巻いただけと言った服装、魔女なのかシスターなのか微妙な姿、そんなモノばかり上条は見てきた。
そして本来は違うだろうと言いたいが上条の経験則ではシスターを見たら魔術師と思え、なのだ。
それに佐天が何と言っていたか?
「教えて貰った商売の基本の一つ、アフターケアも大切に」
アフターケアと言うなら白井にマジックアイテムを売った本人に間違いない。
「テメェがバルビナか?」
「うん、そう。暴走している気配を感じて探したらバッチリ」
現在上条が陥っている状況の諸悪の根元、であるはずが何か雰囲気が違う。
「佐天から連絡を受けて探してたけど、ご迷惑をおかけしました」
「あー、その助けに来てくれたのか?」
いつもと展開が違い、拍子抜けしてしまう。
「その通り、でも必要なかったみたいだね」
上条の傍らで美琴は夢見心地。
「じゃあ何で白井が倒れてんだ?」
ゴンという音は明らかに殴った音、
「あー、正気には返ってた。けど不純異性交遊ですの、不純異性交遊ですのとぶつぶつ言って危ない空気を醸し出してたから黙らしたよ」
「…………」
「恋が上手くいかなくても、ずっと固執していたらいけないでしょ? 次に進めないもの。相手に恋人ができてたら醒めるように組んでたのに、この子は元からこうなの?」
「それは……どーなんだ?」
バルビナの問い掛けを上条は美琴へ
「えっ、あっ、あー……今回は特にヒドいけど、概ねこんな感じ」
「じゃっ、セーフティーは働いてたんだ、そりゃあれだけ熱いベーゼを見れば効いてくれないとね」
「み、見てたんか!」
「にゃ、にゃにゃ」
「あれだけ堂々とやっておいて何?」
「うあぁああああああーーーっ!ってそれより、テメェなんでこんな危険な物売りさばいてんだッ!」
「それは人助けに決まってるよー」
「人助けだー?」
「恋に悩む男女の背中を軽く押してあげてるだけだもの」
「にゃ、にゃにゃ」
「ウソつけ、白井だってこんなになっちまってんだぞ?」
「それは効きすぎただけ、ホントに効力は気持ちを一押しするだけだよ。たださ、薬にも副作用があるじゃない、体質に合わない人もいるじゃない、一定割合でそーゆー人もいるってだけ!」
「だからって、なんで学園都市なんだ!」
上条が詰問するとバルビナはキョトンとした顔を覗かせ、ちょっと考え込む。
そして、手をポンと叩くと
「あーあーあー蔓延させて学園都市を混乱させるつもりだった!」
「にゃ、にゃにゃ」
「やっぱり、学園都市を狙って来てたんじゃねーかっ!」
「イヤーすっかり忘れてた、ダメだよね、困らせるより、人助けの方が燃えちまうっ、おまけに人助けもできて稼ぎもがっぽりだからホント忘れてたよ!」
「はぁ、わっ忘れてた?」
「そーそー、蔓延させようとしてね、それには客のニーズに応えなきゃってある人に教えて貰ったショーバイの基本を実践したら売れるから、悩んでる人の助けになるしで忘れてましたよ」
忘れていた、というのはどうも真実らしい。
「誰だよ……そのある人ってのは?」
「にゃ、にゃにゃ」
が、背後で操っている者がいるかもしれない、と思い聞いてみる。
「えーと、待ってね」
ごそごそと手帳を取り出すとバルビナは
「この人、この人。カーニバルの期間中に会った上条刀夜さん」
「………………親父?」
「にゃ、にゃにゃ……親父って大覇星祭のときに会った、あのお父さん?」
人語を話せるようになった美琴が確認する。
「俺の親父は一人しかいねーからそれで間違いないけど、ホントに親父?」
「あの人の息子さん?……いつもトラブルに巻き込まれる? いつもの事で理不尽な目に遭っても周りの人は指差して笑う事しかないぐらいの? 不幸を取り除いてやりたいと悩んでいたあの人の?」
「あー、間違い無さそうだな……」
「ふーん、佐天から無病息災のアイテムを尋ねられたけど、ってことはアレは効果無かったか!」
何故かテンションが変わる。
「これは何とかしないとー!」
バルビナはバックパックを降ろすと荷物を広げ始める。止めるヒマも無い。
「お、おい?」
「佐天からの頼みだったから最後にと思ったけど、これは燃えるー!」
「な、なんだ?」
荷物の中からバルビナは得体の知れない人形やらペンダントにキーホルダーを次から次へと取り出す。
「とりあえず持ってけ!あの人の息子さんだ!料金はいらねえ!!」
バルビナはそれらを上条に押し付けて来る。
「こんなもん貰っても!」
パリン、パリン、パリン
つい右手で受け取ってしまった物から小さなガラスが割れる音がした。
「ありゃ?」
アイテムから効力が失われるのを目の当たりにしてバルビナは怪訝そうな顔になる。
「あー、俺の右手は幻想殺しといって異能の力を打ち消しちまうんだ、だから」
役に立たない、と続けようとしたが
「それなら、左手だけで受け取って!」
そう言うとバルビナは再び荷物をあさり始める。
「いいんだ、親父にも言ったがこんなもんに頼んなくても……それにこの右手でも幸せは掴めたと思ってる」
「?」
その言葉の意味が分からない美琴。
(不幸だあ、なんて言ってるクセに?)
その美琴をチラッと見る上条。その二人を見るバルビナ。
「あー、そーゆーことね、うんうん、わかったわかった。でも迷惑かけないようにこれ持ってきな! 自分のためじゃなく心配かけないためにな!」
そう言うとバルビナは一揃えのリングを上条の左手に渡す。
「えっ、だから」
「左の指にしとけよ!」
いくら上条でもそれがどういう意味かわかる。
リングは二つ在るのだ。
それに左の指につけるにしても左手だけではつけられない、右手を使わないでとなると誰かにつけて貰うことになる。
そしてバルビナは
「これで店仕舞い!」
と勢い良く言った。
「さっきも最後と言ってたな?」
「そろそろ追っ手がかかってるみたいだし、『明け色の陽射し』のボスからも忠告が入ってた!あっ、幻想殺しには気をつけろと言われてたんだっけ、あんたのことか!見逃してくれるとありがたい!」
バルビナは降ろしてあった荷物をまとめ始める。
「バードウェイとも知り合いなのか? じゃ、」
返事を終わる前に
「悪いね、また縁があったら!!」
バックパックを背負うとバルビナは駆け出していた。
唖然と見送る上条と美琴だったが
「一応、これで解決?」
まず美琴が問う。
「どーかな?販売元はこれで無くなったんだよな」
「そうね」
釈然としない物が残る、のと美琴には一抹の寂しさ。恋人役もこれで終わり、演技というカムフラージュも無くなり素直になれていた魔法の時間は終わった。
「白井を病院に連れて行くか?」
散々に電撃を浴びた白井、確かに心配であるが、
「……鈍感」
とある病院のとある病室
白井黒子がベッドに横になっている。上条と美琴に運び込まれ、外傷などは幸いにもなかったが精神面での障害が残ってないか経過観察を兼ねた入院だった。
しばらくして白井の目は覚め、
「ごめんなさいですの」
シュンとして傍らにいる美琴に謝罪していた。ちなみに白井を担ぎ込んだもう一人、上条はロビーの方にいる。白井を刺激しないためと以前にあったような不幸を防止するためだ。
「覚えてるの?」
「はい…」
あの状態を記憶している、というのは白井とはいえ恥ずかしいことだろうと察しはつく。普段の二乗は変態だったのだ。
「ご迷惑をお掛けして、お姉様を刺そうなどと、ああ黒子一生の不覚ですの」
「気にしないで、黒子は変なもんに影響されてたんだから」
「ですが」
「これからも黒子は私の後輩でルームメート、パートナーであることは変わりないんだから」
「あんまりですの」
「へっ?」
「わかっておりましたの、お姉様があの殿方をお慕いしていることは」
「そ、それは」
「思い詰めた挙げ句の黒子の行為。黒子はその資格を失いましたの、その言葉は残酷に響きますの」
「そんなに思い詰めなくても」
「黒子は知っておりますの」
「黒子は知っておりますの」
「な、何を?」
「お姉様があの殿方と本当はお付き合いをしておらないことですの」
「いや、まあ。そうなんだけど、その……何で断言できんのよ」
「それは密かに……黒子にはお姉様の隠し事など一目瞭然ですの、故にまだチャンスがあると暴走してしまいましたの」
「はぁ」
美琴は白井が何処へ話しを持って行きたいのか判らない。まだ精神的に不安定なのか、と思うが
「それを」
「それを?」
「あのような茶番」
「茶番って、あれは黒子を正気に戻すためにっ!」
「では、黒子の責任といたしましょう。しかしっ!」
「しかし? ナニよ、もういい加減に」
それ以上は不味いという予感が美琴にはした。話しを先に進めてはいけないと話しを打ち切ろうとした。
「私のお姉様はあのような行為をお付き合いもされていない殿方となさる方ではありませんのっ!」
が、白井が一息に述べ挙げる。
「あ、あああのような行為ってな、ナンのことかなぁぁぁ」
「このマナコでシカッと見た行為ですの!ハッキリ言った方が宜しいですの?」
「よ、宜しくないっ!」
美琴にしてみればアレはその場の勢いというか、自然な流れに流されてというか、ファミレスでの事が有ったからというか、このチャンスを生かさないといけなかったというか、演技がカムフラージュとなり普段できないことをやってしまったというか、取り敢えずそんなところ。アルバムの奥にそっと仕舞い込んで、時折覗くだけにしたい記憶だった。
改めて誰かに言われたくない気持ちが強い。その上、その相手方、上条もどう思ってるか不明なのだ。聞くに聞けない、聞くのが怖い、演技だからノーカンなのか、役得程度に思われていたら嫌だ、そんな思いがぐるぐる廻っている。
「お姉様?」
「あ、ああ、うん。それでどう話しが繋がんのよ?パートナーの資格を失ったとかと」
「けじめですの。お姉様があの殿方とお付き合いをされておられるからこそキスをされていたと」
「はっきりゆーなっちゅうのっ!」
「いいえ、ここははっきり言わせて頂きますの、後先は構いませんの、お付き合いもしてない者同士がキスをされるなどふしだらですの、けじめをつけてお付き合いをされて欲しいのですの、それでこそ私のお姉様、私はお姉様のパートナーになれますの」
「お、お付き合いって私と当麻が! それって私に告白して来いってこと?」
後退る美琴。白井がベッドで寝ていることを良いことに出口の方へと移動していく。
「それ以外にありませんの!」
脱兎のごとく
「ぜ、善処するからっ!」
言葉を残してドアの向こうへ美琴は消える。
残された白井は
「私の望んだ形でのパートナーはもうありえませんが、これで良かったのですわ」
涙をこぼす。
一方、ロビーに控えていた上条は土御門からの電話にでるため屋外に場所を移していた。
『カミやーん、バルビナに最後に会ったのがカミやんって情報が入ったんだが、本当かにゃー』
「あー、会ったぞ」
『本当にカミやんはトラブルの中心に巻き込まれるにゃー、それでカミやんが捕まえておいてくれたのかにゃー』
「いや」
『いや?逃げられたのか、カミやんも?』
「逃げられたっ、つーか捕まえる気がなかったとゆーか、取り敢えずバルビナはもう学園都市の外じゃね?」
『外?…………カミやん』
「なんだ、土御門?」
『バルビナ、顧客名簿みたいな物を持ってなかったかにゃー』
土御門が恐る恐る聞いてきた。
土御門の問いに
「手帳で確認してたな」
『……その手帳は?』
聞かずとも答えは解るだろうに奇跡を信じたいかに尋ねてくる。
「そりゃ、バルビナが持って行ったぞ、それがどーした?」
『はーーーーーーーーーーーーー』
長い溜め息が聞こえた。
『カミやん、バルビナが去ってもこの件は解決にならないんだぜい』
声のトーンがひとつ落ちている。
「はぁ?」
『バルビナがいなくてもアイテムは効果を発揮しちまうんだぜい、残されたアイテムを回収しないと意味が無いんだにゃー。顧客名簿があれば個別対処も可能だったんだが、回収の言い訳が、あー有害物質でも混ざってたとか、回収の広告でも出さんと、幾ら掛かるんだ?回収仕切れないのもでるだろうにゃー、どうするかにゃー』
正直に魔術の品ですから回収します、とはいかないのだろう。
上条はバードウェイと知り合いらしいのでそちらから手を回せないかと考えたが、その前に
「個別対処はどうやってするつもりだったんだ?」
土御門が上条を巻き込むときは大概、ろくでもないことが多いので聞いてみた。
『そりゃー、もちろんカミやんの右手で壊して回って貰う計画』
「おい!推定でもいいが一体、何個あるんだ」
『千個は下らないにゃー』
「そんなの一人でやってられるか!お前の方で何とか回収しろよ!」
『何とかするぜい、これもオレの仕事だからにゃー。その代わりカミやん、しばらく恋人ごっこを続けて貰わんとならないんだぜい』
「あー、はいはい。続けりゃ良いんだろ」
土御門は予想外だった、何でだ、と返ってくるものと思いイジる言葉も考えていたのだ。
『うん? 一日二日では無いんだぜい?』
それで土御門は思わず問い直す。
「ナンだったら無期限でもいいさ、一応これからの交渉次第だけどな」
『へっ?』
「おっと、美琴が出て来た」
『美琴?カミやん、いつから女の子を下の名前で呼ぶようになった?』
上条の云うとおり、病院の玄関に美琴の姿が現れる。上条を探しているのかキョロキョロしていた。
上条は土御門の問に答えず、
「美琴が俺を探しているようだから、もう切るな。あっ、そうだ後始末頑張れよ」
『うぉい、カミやーん。どう』
構わず電話を切ると上条は美琴に向けて手を振り、
「おーい、美琴。こっちだ」
呼びかける。
美琴は上条を探しながら悩んでいた。白井の脅迫めいた要望に応えるかどうか決心がつかない。
たとえ美琴が告白しても上条がそれに応えてくれるとは限らない、と考えているのだ。演技をしていたこれまでとは違う。
美琴は上条に会ってから決めよう、会えば自ずと答えがでると思い上条を探しているのだが、なかなか見つからない。待ち合わせのロビーに上条の姿が無い。
嫌な予感がする。上条の周りに次から次へとトラブルが舞い込むのはいつものこと、美琴は上条の姿を求め、知らないうちに上条がまた何処かへ行ってしまうのを恐れ病院の玄関から外へ出る。
既に日も沈み、辺りは街灯の光が照らしているだけだ。最終下校時刻も過ぎている。
本当に何処かへ行ってしまったのではないかと不安になる。
あたりを見回していると美琴を呼ぶ声がする。
其方へ目を向けると上条が手を振っている。
「そんな大きな声で呼ぶな!とう……アンタ!」
それに安心してしまう美琴は少し顔を赤らめる。
上条に近づくと
「ぷっ、そうだよな。美琴は俺のことを名前じゃなくアンタって呼ぶよな」
からかわれたと思ったのか不機嫌そうな顔をする美琴。
「ナニよ」
それも可愛いと思ってしまう上条。
「大したことじゃねーよ、それより美琴……頼みがあるんだ」
落ち着けと上条は自分に言い聞かせた。
「頼み? 今回のは解決したのよね? また、ナンかあったわけ?」
やはり終わったと思えば早速、次のトラブルか、と美琴は呆れる。
「それがな、まだ解決した訳じゃないってさ、どうもアイテムを全部回収しないと終わりじゃないらしい」
「全部? それって……いつまでかかるのよ?」
「一日二日では無理みたいだな」
「その間、恋人役を続けてくれってこと、頼みって云うのは?」
「まーな」
「いつまで続けないといけないんだか」
続けるなら、告白せずとも白井に言い逃れができる。慌てて告白する必要も無くなったと、美琴はホッとして気持ちとは裏腹のことを言うも、
「そーだな、100年ぐらい?」
とんでもない数字が上条から返ってきた。
「ひゃ、ひゃ100年?」
「そんくらい上条さんは長生きしたいんですよ」
「あ、アンタが長生きするのとこれが、ナンの関係があるって言うのよ!」
「それはだなバルビナに貰ったこのリング、勿体ないから回収に出しません」
上条は左手に持っているリングを美琴に見せる。
「ですから、回収は終わりません。俺は死ぬまで手放す気は無いからな」
「死ぬまでって、回収にだ、出さないって、そんな、なんで」
「そーしたら美琴が一緒にいてくれるだろ?」
「えっ?」
「100年も演技させるのも悪いから『役』を取っ払っちまってもいいかな」
「えっ?」
『役』を取り払うとはどういうことか、上条は恋人役を美琴に頼んでいるはず、その役がいらないとは、その意味が真綿に染み込むように美琴の心に染み渡っていく。
が、
「アンタ、それの影響を受けてる訳じゃないわよね?」
左の手のひらにあるリングを指差して言う。
「開運グッズみたいなもんで、恋愛系とは違うだろ」
リングはペアリング、恋愛系じゃない訳なかろうと美琴は口に出かかる。
その前に
「そうだったとしても影響を受けてるにしても、この気持ちはウソじゃねー」
「あう」
「美琴は俺のことアンタって呼ぶよな」
「それさっきも言ってたけど」
「ファミレスで一回、あの時だけアンタって呼んだよな」
美琴は演技中、上条の名前を常に呼んでいたつもりだった。
「記憶を無くす前も今もアンタは変わらない、同じ上条当麻よ。あのときアンタのことを好きになったって、あれが美琴の気持ち、あれは演技でなく美琴の本心からの言葉だよな」
「ギャーーー!」
素だった、全くの素だった。演技中だから本当のことを言っても嘘になるから、と本当のことを言ってしまっていた。まさかそんな落とし穴があると思わなかった。普段通りアンタと呼んでしまい、それが演技でなく本心であると見抜かれると思ってなかった。
「あれはっ!」
「だから、俺も嘘は言ってねー」
「えっ?」
「あれが山の頂きに立ったときだよ、俺が自分の気持ちにはっきり気づいたときだ」
「本当に?」
「考えたらおかしいんだよ。俺が記憶している美琴、一方通行と戦う前、鉄橋で美琴を見つける前、二回しか会って無いんだぜ、それなのに美琴の事を信じていた、美琴の事が分かっていた。記憶を失う前のことも心に残ってたんだ。それ以外は話した通りだ」
「なあ、美琴。このリング俺一人じゃ着けられないんだ、着けてくれないか」
「わかった、その……当麻、はっきり言って貰っていい? 私も言うから」
「いいさ、言うぞ」
「うん」
「上条当麻は御坂美琴を愛してる、これは演技じゃねー」
「御坂美琴は上条当麻を愛してる、これは演技じゃない」
芝居が終わり、幕が降りる。
演技マジックは本当の魔法
そして今日も今日とて、とあるファミレスでは
「ここのコーヒー苦ェな、何でこンなに苦くしてンだァ?」
「それは今日もミサカが絶好調な理由と一緒だね」
「はァ?」
「怨嗟の声が満ち満ちてるの、ってミサカはミサカはネットワークの状況を伝えてみる」
「あァ?……あれかァ」
「大体、辛いか苦いかのメニューばっかしにゃー」
「超激辛カレーも超定番メニューになりました」
「おい、絹旗。最近よくこのファミレスに来てるって聞いてたけどよ、なんだこのメニューは?」
「超浜面と滝壺さんには超関係ありません、二人は限定メニューにしてれば良いのです」
「おいおい」
「今日は超超激辛カレーにしますか」
「なんだ、そりゃー?」
「超苦行ですよ」
「バルビナ、どこ行っちゃったのかな?」
「うーん。リコールしたのは全く別の企業のようですし、謎です」
「そっか、無事だと良いけど」
「無事と言えば白井さん?大丈夫ですか?」
「ふっ、黒子は悟りましたの、悟ったですの、これに耐えてこそお姉様のパートナーですの!耐えてみせますの!」
「お客様ッ! そんなに何度も証明して頂かなくても! 構いませんからっ!! ああ、くそっ、何分やってんだよ! このバカップル!」
終劇