被害者・未来
ドМ自販機二世がある公園に一人の少年が入って行った。
余りにも細い線。栗色の瞳に髪。
女性といわれても違和感がない。
アイドル並みの美貌の少年である。
しかし、
余りにも細い線。栗色の瞳に髪。
女性といわれても違和感がない。
アイドル並みの美貌の少年である。
しかし、
「はァァァァァまづらくゥゥゥゥゥゥン!!!
相変わらずの恰好で、ホモ野郎でも誘ってるンですかァ!!?」
相変わらずの恰好で、ホモ野郎でも誘ってるンですかァ!!?」
台無しである。
その口調が、ではない。
彼からあふれ出る殺気。
一流の軍人でも冷や汗が出るほどのその殺気が、
彼の美貌を台無しにしていた。
一流の軍人でも冷や汗が出るほどのその殺気が、
彼の美貌を台無しにしていた。
それほどの殺気を受けても、ベンチに座ったその少女は微動だにしない。
ボサボサの黒髪にベージュのジャージ。
あまりにボーイッシュな格好だが、
体つきが女性であると強く主張する。
ボサボサの黒髪にベージュのジャージ。
あまりにボーイッシュな格好だが、
体つきが女性であると強く主張する。
「……」
少年からの言葉に反応もせず。
少女は無表情であり続けた。
少女は無表情であり続けた。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……すぴー」
「寝てンのかよ!!!」
「……おはよう、よみかわ」
「昼だっつゥの!! ……三下はどうした?」
「むう、たいしょうも女の子なのに『三下』は酷いよ」
「てめェの『大将』はどうなんだよ?」
「たいしょうはまだ来てないよ」
「そうか……しかし、この前のパーティはいろいろすごかったな」
「たいしょうのお父さんの誕生日パーティ、すごい顔ぶれだった」
「親父(統括理事長)にイギリス王室、イギリス清教最大主教……」
「お父さん(世界トップクラス企業社長)、元米国大統領にローマ教皇……」
「参加者一万強。まァ、過半数は叔母だがな」
「でもあの二人はもっとすごかった」
「主役か……もう40すぎだろォ??」
「うん、でもあのイチャイチャっぷり」
「人前で手をつないだままなのは当然」
「抱き合うのは序の口」
「恥ずかしいセリフはしょっちゅう出るし……」
「……キスなんか普通にしてた」
「謝って回る三下は不憫だったなァ」
「顔を真っ赤にしてたね、恥ずかしいと思うよあれ」
「親があれだと苦労すンな」
「土下座、上手だったね」
「慣れてるしなァ」
「しかも、そのたいしょうの扱いが」
「自分の両親の発言が原因としても……」
「あれは「ごめーん、待ったー?」ない」
「アァ、あれ「もしもーし」はないわ」
無視。
『二人の親友に笑顔で手を振りながら走り寄る』という姿勢のまま少女は固まった。
肩まで伸びた茶色がかった黒髪は少し癖っ毛で、毛先はツンツンしている。
いい笑顔だ。少しずつ暗いオーラが出てきたが。
彼女の名は上条美弦といった。
肩まで伸びた茶色がかった黒髪は少し癖っ毛で、毛先はツンツンしている。
いい笑顔だ。少しずつ暗いオーラが出てきたが。
彼女の名は上条美弦といった。
「……人が、野良犬に追いかけられ、工事現場を六ケ所も迂回し、赤信号に十回以上も待たされ、不良と三回もガチバトルしながら全力疾走で来たのに、スルーするなんて、なんとも友達がいが「「遅かったな(ね)、『愛の結晶』」」一週間経ってもまだそれを言われ続けるのか!!! 怨むわよ、あのバカ親共!!!! あーもう不幸よー!!!!!!」
『わたしたちの愛の結晶です!!』
と両親に笑顔で16年間紹介され続けた彼女の悲鳴が平和な空にこだました。
と両親に笑顔で16年間紹介され続けた彼女の悲鳴が平和な空にこだました。
END