とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part10

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被害者・旅掛


御坂旅掛は一歩ずつゆっくりと歩みを進める。

(確か、この子が小学校一年の頃だったかな?)

そのなかで、回想はあちこちに及んで、

(最後に泣き顔を見せたのは)

この二十数年の月日が、なんとも短いものだったと実感する。

(確か、人形が近所のやんちゃな子に壊されたんだったか?)

その幸福な短い時間において、

(恐怖とか悲しみよりも、『助けられなかった』と悔しさで泣いていたな)

彼女がいつも自分の世界の中心にいた。

(それ以降泣き顔は見ていなかった。せいぜい目に涙をにじませる程度で済ます強い子だ)

足取りが重い。

(あんなに泣いた顔を見たのは久しぶりだ)

目の前ではあの憎たらしい男が待っている。

(……様になってるじゃあないか)

着いてしまった。

(まったく、コイツが連れてくる奴がどんな男かと思っていたが)

これ以降、彼女が頼る男は自分ではない。

(憎たらしいことに非の打ちどころがない)

自分が立ち止まっても、隣の娘は歩を進める。

(更に憎たらしいことに奴ならば……)

彼と未来を歩むために。

(……この子を自分よりも幸せにできてしまう)

彼の隣に立った娘は、今までで一番美しかった。
旅掛はこの世で最も憎らしく、この世で最も信を置く『息子』の言葉を思い出していた。


『オレは!! なんとしてでも娘さんのとその周りの世界を守ってみせます!!
 なので、どうか!! オレの世界に一番必要な娘さんをください!!
 お願いします!!!!』


世界に足りない物を示すことを生業としている自分が、
娘の世界に足りない物に、気付かないわけがなかった。
だから、

(ビジネス、成立だ。 契約違反だけはするなよ)








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