被害者・旅掛
御坂旅掛は一歩ずつゆっくりと歩みを進める。
(確か、この子が小学校一年の頃だったかな?)
そのなかで、回想はあちこちに及んで、
(最後に泣き顔を見せたのは)
この二十数年の月日が、なんとも短いものだったと実感する。
(確か、人形が近所のやんちゃな子に壊されたんだったか?)
その幸福な短い時間において、
(恐怖とか悲しみよりも、『助けられなかった』と悔しさで泣いていたな)
彼女がいつも自分の世界の中心にいた。
(それ以降泣き顔は見ていなかった。せいぜい目に涙をにじませる程度で済ます強い子だ)
足取りが重い。
(あんなに泣いた顔を見たのは久しぶりだ)
目の前ではあの憎たらしい男が待っている。
(……様になってるじゃあないか)
着いてしまった。
(まったく、コイツが連れてくる奴がどんな男かと思っていたが)
これ以降、彼女が頼る男は自分ではない。
(憎たらしいことに非の打ちどころがない)
自分が立ち止まっても、隣の娘は歩を進める。
(更に憎たらしいことに奴ならば……)
彼と未来を歩むために。
(……この子を自分よりも幸せにできてしまう)
彼の隣に立った娘は、今までで一番美しかった。
旅掛はこの世で最も憎らしく、この世で最も信を置く『息子』の言葉を思い出していた。
旅掛はこの世で最も憎らしく、この世で最も信を置く『息子』の言葉を思い出していた。
『オレは!! なんとしてでも娘さんのとその周りの世界を守ってみせます!!
なので、どうか!! オレの世界に一番必要な娘さんをください!!
お願いします!!!!』
なので、どうか!! オレの世界に一番必要な娘さんをください!!
お願いします!!!!』
世界に足りない物を示すことを生業としている自分が、
娘の世界に足りない物に、気付かないわけがなかった。
だから、
娘の世界に足りない物に、気付かないわけがなかった。
だから、
(ビジネス、成立だ。 契約違反だけはするなよ)