とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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小ネタ 鬼は内に?




「豆まきするわよ!」

上条の部屋に入るなり、美琴は開口一番そう言った。
本日は節分。美琴はわざわざ邪気を払いにやって来た…というのを口実に、上条に会いに来たのだ。

「豆まき? いや、いいよ別に」
「何言ってんのよ! アンタ普段から不幸だ不幸だって言ってんじゃない!
 こんな事でも少しは効果があるかも知れないでしょ!?」
「そんなオカルトじみた事を学園都市【ここ】で言われてもなぁ……
 大体俺の不幸は幻想殺し【このみぎて】がある限りどうしようもない訳で―――」
「何を言っているのかな!」

二人の会話を聞いていたインデックスが割って入る。
てっきり上条の、「オカルトじみた云々」について異議を唱えるのかと思ったが、

「豆まきなんだよ! お豆をいっぱい食べられるんだよ!
 鬼払いの儀式『追儺』は平安時代から行われている伝統的な行事なんだよ!
 ここは日本人としてやっておくべきかも! お豆いっぱい食べたいんだよ!!!」

違ったようだ。豆が食いたいだけらしい。

「色々言いたい事はあるがなインデックス…
 とりあえず節分ってのは、年の数しか豆を食わないんだよ! 腹いっぱい食ってどうする!?」
「なっ!!! 短髪があんなに大豆をいっぱい持ってるのに、
 まくだけまいて少ししか食べないってどういう事なのかな!?
 それじゃあ逆にお腹が空いちゃうんだよ!?
 日本の美徳、MOTTAINAI精神はどこへやったのかな!?
 いつもは節約しろとか言ってるくせに!!!」
「豆をたらふく食うとろくな事にならないんだよ!
 ヤジロベーが仙豆を大量に食って、えらい事になってたのを忘れたのかっ!!?」

どんどん話がずれていく。
仕方が無いので、終了のゴングを鳴らすかのように、美琴は「バチバチッ!」と帯電させる。

「はいはい、終わったら好きなだけ食べていいから」
「ホントっ!!?」

目をキラキラさせるインデックス。そんなに食いたい物だろうか。
と、その時だ。
上条は美琴の荷物に、大豆以外の物が入っているレジ袋がある事に気がついた。

「あれ? その袋は?」
「ああ、これ? せっかくだから思いっきりやろうと思って、ドン・キで鬼のコスプレ買って来た」
「コスプレ…だと…?」

思わず生唾を飲む上条。
「張り切りすぎだろ」というツッコミが頭を過ぎらないほど、
「コスプレ」の響きに興奮した…のだろうか。

「んんっ! ま、まぁインデックスの言うように、伝統行事をやる事は悪い事じゃないよな!
 うん! 日本人として!」
「……とうま? どうして鼻の下を伸ばしてるのかな…?」
「き、きき、気のせいですぞっ!!?」

インデックスのジト目に、慌てて体裁を繕う上条。
美琴は頭に疑問符を浮べたが、「まぁいいか」を思い直しレジ袋からコスプレ用品を取り出す。

「じゃじゃーん! どうよ!?」
「おおおお…おお……おぅ……」
「…何よ? 急にテンション下げちゃって」

思いっきり期待していた上条だが、美琴が手にしている物を見て心の底からガッカリする。
美琴が買って来た物は、鬼のお面と角が生えたアフロのカツラだった。
所謂ドリフの雷様コントのアレである。
最強の電撃使いである美琴には、お似合いと言えばお似合いだが。

せっかく買って来たのにも関わらずイマイチなリアクションを取る上条に、美琴は口を尖らせる。
対して上条も反論する。

「いやだって! お面とカツラ合わせて、角4本になってんじゃん!」
「べ、別にいいでしょ何本あったって!」
「それになぁ! 鬼のコスプレって言うから、俺はてっきり…俺はてっきり!」

そして上条は、全国の男子を代表して心の底から叫びをぶちまけた。

「トラ柄ビキニだと思ってたんだぞ!? 水着の美琴たんを期待してた、数秒前の上条さんに謝れ!」

正に魂の叫びである。

「ビビビ、ビキニとか何考えてんのよっ!!? だ、だだ、大体今は二月でしょうがっ!!!
 水着が見たけりゃ、夏まで待ちなさいよ馬鹿っ!!!」

微妙にツッコむ所がおかしい美琴。夏になればいいのかよ。



「よっしゃ来い!」

「バッチコーイ」と両手をバチンと叩き合わせ、やる気満々の美琴。
美琴のコスプレ(お面とカツラだけだが)も完了し、
上条とインデックスも、持っている枡に大豆を入れて準備ができ―――

「もむもむもむ……はんふぁつ!(短髪!) おかわり!」

―――ていたのだが仕切りなおしだ。
山盛りだったインデックスの大豆が、何故か一粒残さず無くなっている。ミステリーである。

「食うなよ! まけよ!」
「…とうま。大豆っていうのは、畑のお肉って呼ばれる程に栄養があってね」
「聞いてねーよ! 大豆には良質なたんぱく質が豊富に含まれてるって事なんざ!」

テイク2である。

「よっしゃ来い! がおー!」
「鬼はー外ー」
「福はー内ー」

鬼が「がおー」と鳴くかは知らないが、ともかく鬼役の美琴に大豆を投げる上条とインデックス。
…と同時に、床に落ちた大豆を片っ端から食べていくインデックス。
しかしここで、上条が美琴に豆を投げる手をピタッと止める。

「がお……あれ? どうしたの?」
「んー…何つーか、このまま投げてもいいのかなって」
「別に対して痛くもないから、遠慮しなくていいわよ。アンタの不幸を何とかする方が大事でしょ?」
「そうじゃなくて…いや、それもあるけどさ。
 鬼を追い出すって事は、今の美琴を追い出すって事だろ?
 それって結局、意味無いんじゃねーか?」
「? どういう事?」

何となくで聞き返した美琴だったが、次の瞬間、上条からは思いもよらない言葉が返ってきた。

「だってこれ、俺の不幸を払おうとしてやってくれてんだろ?
 なのに美琴を追い出しちまったら、そっちの方が不幸じゃねーか。
 俺、美琴がいなくなるなんて嫌だぞ?」

余りにもさり気なく、余りにも自然に上条はそう言った。
この時の美琴とインデックスの表情を、何と表現したらいいだろうか。
どこかの国の諺に、「トマトが赤くなると医者が青くなる」という物があるが、
それに例えられるかも知れない。つまり、美琴がトマトでインデックスが医者である。
本来の諺の意味とは少し違うが。

上条は「何、二人して変な顔してんの?」とキョトンとしていたが、
この数十秒後、漏電【ふにゃー】と噛み付きのツープラトンを食らう事になる。

上条の不幸は、やはり豆まきぐらいでは払われないようだ。










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