とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part10

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プール


太陽はさんさんと照り輝き、入道雲が朗らかに笑う中、
上条当麻の表情は死んでいた。

周りはきゃきゃとさわぐバカップルばかり。
真夏のプールなんてそんなものだ。

上条は思う。どうしてこうなった?

数度目の回想が頭をよぎる。




「……準備できたか―?」

「……もう、ちょっと」

「だぁーだい!!」

結局プールに行くことになった。
美琴は肩を落としながら荷物をまとめている。

あの時の嫌な予感は的中した。
佐天涙子という人物が自分を誘うだけでは済まないだろうなとは思っていた。
故に、あの一瞬で上条が誘われた時の予防策を5つは考え付いたのだが、

『土御門さんや上条さんもご一緒にどうです!!?』

まさか彼女が土御門兄に声をかけるとは思わなかった。
そちら経由で上条がついてくるなら、美琴には止める理由がない。
ちなみに、この作戦にはかの土御門ですら舌を巻いていたりする。

「どーしてこうなった?」

だって、こいつに、水着姿を見られるんだよ佐天さーーーん!!
そんな感情をこの鈍感が気づくわけがないのだった。

「それはこっちがいいてぇよ」

夏の水辺、去年からの短い人生だが、碌な思い出がない。

「いや、プールじゃなくても町でも山でも海でも平原でもいい思い出なんてねーけどね」

不幸だ、とぼやく
さらにドアを開けつつ、さっき美琴が言ったセリフを呟く。

「「「どうしてこうなった??」」」

おや? 両サイドのお隣さんも出てきたぞ?
さらに全員でハモったぞ?
そして、知り合いの、声だったような????

冷や汗を流しながら上条はゆっくりブリキ人形のように、みしみしと右を向く。

そこには、顔を真っ青にしてあんぐり口を開けた



一方通行がいた。


見なかったことにしてゆっくり左を向く。

そこには猫に追い込まれたネズミのような顔をした



浜面仕上がいた。

浜面と一方通行の目も合った。


そして三人は。





なかったことにした。

そのまま『あれ? なんで出ないのよ?』とか『早くいこうよアナターーってミサ』とか『はまづら?』とかの声がする方に進み、いったん扉を閉める。

その後


「「「不幸だーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」


という3人の声が近所迷惑になるほどまき散らされたのだった。



そう、この3人がご近所さんだった。
これで何もないわけがないのだ。
必ず何かが起こる。








いや、もう起きた。

暗い顔をしていたのは、上条だけではなかったのだった。

「ふざけんじゃねぇぞ第3位ぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいい!!!」

「お、白井じゃんよ」

「なんでアンタたちもここまでついて来るのよ!!」

「あ!! お子様!!」

「木山先生!! 水着を脱ぐのはさすがにアウトなの!!!」

「ショーーチーートーールーー!!!」

「隣にオリジナルが住んでいたなんて……」

「あなたは、 結標淡希!!」

「先生ぇー、なんでわたしたちが先生の面倒見てるんですかー!!」

「くろにゃんはっけーーーん!!」

「ぎゃーー佐天!! く、来るなーー!!」

「しかし、暑いのならば、仕方ないし、白井君の水着を見てみるんだ、あれなら着ない方がましではないかい?」

「なにがどうしてグループまで勢ぞろいしてるぜよ??」

「アホ毛ちゃん?」

「いつかの風紀委員のツインテちゃんやないかー!! これは運命の再会やでーー!!」

「なんでここにあなたがいるのよ白井黒子!!?」

「子供!!!」

「み、御坂さんが、どうしてここに??」

「にぎやかだなー、兄貴」

「すぴーーzzzz」

「やーめーろーよー!!!」

「フレメアさんも、打ち止めさんもきちんと準備体操をですね……」

「滝壺さん、超起きてくださいよ」

「だぶ、だーぶだ!!」






…………カオス!!

「……もう、帰りたい」

「奇遇だな大将、オレもだ」

「でも、帰った方が後で地獄なのもわかってるんです」

「……クソッタレ」

三人はまったく同じポーズで立っていた。
日差しが肌を焼く。蝉の音がそろそろ耳障りだ。
しかし、ここで、

『少しは静かにしやがれ』

『上条さんとしてもみんなで仲良く楽しく遊びたいです』

『はら、ここは大将に免じておとなしくしとこうぜ』

などといったところで、いうこと聞くどころか、悲惨な目に合う3人だ。
世の中正しいことを言っても認められるとは限らないのである。
よって、

「さ、行きますよー」

「ちょ、ちょっと!!」 


「あー、めンどくせェ」

「アナタ、どこに行くのーってっミサカはミサカはけなげについていく!!」


「じゃ、あそこらへんに行くか」

「はまづら、おはよう」


何もかもなかったことにしたのだった。




そして、そんなことできるわけがなかったのだった。

「水中バレー大会!! ってミサカはミサカは高らかに宣言!!」

こうして、ボロボロ3ヒーローの近くできゃいきゃい騒がしい音が響き渡っていた。
この3人がプールサイドで干からびるのは強制イベントだったらしい。

3人の目に青空と入道雲が映る。

やってられないのだった。



「もうやだ、あいつら」

「……」

しかし、

ここはロシアの戦場ではない。

「負けないわよーー!!」

暗部の襲撃もない。

「まーま!! がんがれー!!」

グレムリンの襲撃もない。

「むぎの、がんばって」

木原の陰謀も

「番外個体!! 下剋上だーってミサカはミサカはお姉様に宣戦布告!!」

統括理事の暗躍もない。





この青空が、暗く染まることはもうない、

「……ほんと、不幸だ」

上条当麻は、笑顔でぼやくのだった。











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