とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part17

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ごっつんこ


彼らが記憶喪失になって3日がたった。

「えと、あの、く、黒子、大丈夫?」

「だ、だい、じょう、ぶですの」

(データの3分の1が無くなりましたもんね)

晴天の下、いつもの公園にて買い物帰りに後輩に絡まれた美琴さんの図。

「はい、この前の写真です」

「あ、ありがとう、よく撮れてるわね」

「あのカメラ高かったのに……」

「プライベートを覗こうとしたのが悪い」

そう、佐天が持って行ったのは普通のカメラではなかったのだった。
2日目にして能力の使い方をマスターした美琴は隠しカメラを爆破。
お詫びに家族写真を撮ってもらっている。

「……御坂さん、上条さんとの生活はどうですか?」

「どうって?」

「ぐっ、ぐはぁ」

「白井さん、しっかりしてください」

「幸せなんじゃないですか?」

「………………そうね、きっと、しあわ……」

ホントに?

「「御坂さん?」」

「………………ごめん、やっぱ違う、かな?」

「……」

「ど、どうしてですか?」

「あたしが逃げ出すほどお二人ともいちゃいちゃしてたのに!!」

「だって、今の環境って、わたしが自力で手に入れたものじゃないでしょ?」

「いや、元からお二人とも恋人で……」

「ううん、きっとそんなことない。当麻が告白するイメージも、わたしが告白できたイメージもできないもん。理由は、女の勘でしかないんだけどね」

困ったように彼女は笑った。
入道雲の横で飛行機雲が伸びる。

「だから、さっさと記憶を取り戻して、きちんと、正面から挑みたいかな」


3人が何も言えなくなった時、

「おーい、美琴~」

目の前の階段の下でご本人登場。

「あ、噂をすれば……当麻~!!」

「まーま!! あーいー!!」

「元気ねー、インデックス。で、どうしたの?」

インデックスが美琴の腕に向かうのと同時に上条がスーパーの袋を受け取った。

「あーやっぱり買ってないか。洗濯用の洗剤切れててさ、美琴携帯持ってってないだろ?」

「あ、そういえば無くなってた」

「っつーことでオレは今からスーパーに行くけど、お前はどうする?」

「……そうね、わたしも行こうかな」

しかし、上条が足を踏み出した時それは起こった。
例の不幸(あれ)だ

「「へ?」」

上条のちょうど足もとにテニスボールがうまいこと入り込み、
上条は後方の階段に向かって倒れこむ。
美琴を巻き込むように。

次の瞬間、黒子は飛んでいた。
美琴を助けるためにではなく、

美琴の視線が示す意思をくみ取って、空に投げられたインデックスを助けに。

白井が着地に成功した時、

「「ぎゃああああああああああああああああ」」

というまぬけな声が響いた

あの時同様みんなで階段を駆け降りると、

「ちょっと!!! なに抱きついてんのよアンタはーーー!!!!」

「不可抗力だろうが!! さっさとどk……ってオレの上で帯電すんnあばばばばばばばばば」

いつもの、いや、元に戻った二人がいた。

「……あーあ、もとにもどっちゃってるよ」

「この数日の記憶もないようですね」

騒々しい喧噪の中、インデックスは、白井の腕の中で不思議そうに入道雲を眺めていた。


コツン、と机の上にマグカップが置かれる。
カエル顔の医者は苦虫をかみしめたような顔をしていた。
コーヒーが苦いわけではない。
業務が夜まで長引いたからでもない。

数日前にやって来た常連たちが原因である。

その表情のまま再び、口に黒い液体を流し込んだ。

「……いよいよ、なんだね?」

彼が目を向けた先に、あの建物はない。




「……信じられねーよなー」

脱衣所で独り言をつぶやくのは上条当麻だ。
風呂上がりに寝巻を着て、濡れた頭をガシガシとバスタオルでふく。

この数日間またまた記憶喪失でした。なんて冗談だと信じたい。
自覚なんてないのだった。

「なーんか、夏休みを3日損した気がする」

不幸だ、と呟いた。
とはいえ事実に違いないのだ。
美琴が自分達の記憶にない写真を持っていたのがその証拠。
これでいっか、と暑中見舞いのお返しにその写真を使うことにした。
今、美琴がパソコンで格闘していたはずだ。

美琴に抱かれたインデックス。そしてその隣に立つ自分。
3人ともカメラに向け、笑顔でいるその写真はまるで……。

顔を赤く染めた上条の耳に

「当麻―――!!!」

という、美琴の叫び声が聞こえた。
あわてて脱衣所を出る。

「どうした美琴!!」

リビングには、一生懸命手招きをする美琴がいた。

「当麻!! 早くあれを見て!!」

そちらの方に視線を動かし、上条は目を見開いた。

「う、うー」

インデックスが椅子の足をその小さな手でつかんでいた。
そして、

(頑張って!!インデックス)

その自分の手のひらに収まるほどの足を床に向ける。

(頑張れ!! インデックス!!) 

そして、あらん限りの力を振り絞り、

「あ、あう、ぱ、ぱーぱ、まー……まう!」

たったの3秒、
たったの3秒だが、

確かに、彼女は
自力で、

立った。

「「やったーーーーーーーー!!」」

瞬間、魔法が解けたかのように二人は動き出した。

「すごいぞ!! インデックス!!」

「頑張ったね、頑張ったね!!」

「うー……あい!!」

「当麻!! インデックスが立った!!」

「ああ、ああ、やっ……美琴、今、当麻って……」

「へ? あ……べ、別にいいじゃない!! そんなことより、今日はお祝いよ!!」

「そ、そうだな!! 頑張ったなーインデックス!!」

こうして、上条家に喜びの声が広がった。


その2日後、暑中見舞いのはがきはあちこちに飛んで行く。

もちろん、

「おや? これは、上条さんからなのでございますよ」

イギリス清教の女子寮にも届き、

「お、本当ね、インデックスはやはりまだ赤子のまんまか」

彼女たちの手に渡った。

「おや? ミス神裂、どちらに行くのデースカ?」

そんな中、ポニーテールの大和撫子が少し大きな風呂敷を持ち、いつもの冷静な顔で

「はい、ちょっと学園都市まで」

なんてほざくところで、今回は終わりにしたい。













おまけ!!


学園都市の街の真ん中で、きょろきょろ周囲を見回す不審者が1人。

「……潸然、ここにもいないか」

その男は、まだ探し続けていた。

「悄然、ここ数日ばったり会えなくなってしまった。断然、これもあのいまいましい赤髪のせいに違いない」

ステイルにしてみれば、とんだとばっちりである。
それでもアウレオルスはその結論になんの迷いもなく、
あいつを体の内から破裂させてやりたいなんて物騒なことを考えていた。
そんな時、彼の第六感は反応したのだった。

「歴然、あっちかーーーーーーー!!!」

そして本当にいたのだった。
家族三人で仲良くお買い物中だった。
買い物袋は二人で持ち、インデックスは上条に抱かれている。
その3人の目の前に、緑髪の白スーツが躍り出た!!

「寂然、お久しぶりです!!!!」

ビックウゥ!!と驚く御両親をしり目に、
アウレオルスはこの前手に入れた情報を提示する!!

「快然、皆さまに聞いていただきたい!! 
廓然、私の名はアウレオルス=イザードというのです!!」

「「そ、そうですか!!」」

「あだー、げこー」

蝉の声が虚しく響いた。
戸惑ったのは、アウレオルスである。
あれ? この2人、記憶喪失前の私を御存知でない?

(蓋然、この子と関係があるならば、記憶喪失前の私と知り合いだと思ったが……)

まあ、知り合いでないなら仕方がない、
今までと同様に

「依然、なんとしてもその少女を抱かせてもらう!! 確然、記憶をよみがえらせるために!!」

その瞬間、
雷鳴が響いた。

「……わたしたちが記憶を取り戻すのと、アンタにインデックス抱かせるのと、なんの因果があるってのよ」

もうなにも聞こえていないであろう、真っ黒になり、プスプス音を立てる男の残骸。
恐ろしい形相で怒鳴りつける彼女(仮)。
袋の中で香ばしいにおいを放つ野菜たち。
本当に電撃姫だったことがわかった彼女(仮)。
その惨劇におびえるどころかはしゃぎ出すたくましいわが子(仮)。

上条はいろいろ考えるのをやめた。









おまけ


とある高級マンションの一室。
ちょっと露出が多いネグリジョ姿で、
白井黒子はベッドの上で、しずかに天井を睨みつけていた。
思い出すのはあの時の事。

あの男が、バランスを崩し、後方に倒れそうになったあの瞬間、間違いなくこちらに視線を向けていた。
彼の背にいるはずの美琴が、こちらとアイコンタクトを取っていたのに気付いていたとしか考えられない。
声には出していなかった。しかし上条も、美琴と同じ意思を自分に送っていた。
とすると、あの一瞬で、類人猿は全ての状況を瞬時に察し、
インデックスも美琴も、最も安全になる行動をとっていたことになる。
数日前のあの時と同様に。
数日前は動けなかった自分とは違って。

いやな汗が流れる。
今日は、きっと寝付けない。










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