小ネタ ツンデレは心の中でもツンデレなのか
私は今、二枚の恋愛映画のチケットを握り締めて歩いています。
先程コンビニで雑誌を立ち読みした時に、
『この映画をカップルで観ると、更に距離が縮まる』という記事を読みました。
それとは全く関係ありませんが、私はたまたま映画館に寄り、速攻でチケットを購入したのです。
しかも間違えて二人分の料金を支払ってしまいました。まぁ、仕方ないですね。
そして偶然にも、私が歩いている先にはあの馬鹿の学校があります。
別に会いたいなんて思ってもいませんが、
もし会ってしまったら声くらいかけてやろうかな、なんて思ってます。
ただもしかしたら、あの馬鹿に声をかけて雑談してるうちに、
ついでに映画に誘ってしまうかも知れません。
一枚捨てるのも勿体無いですし、特に誰を誘うとかも決めていないので、
話の流れで万が一にもその相手があの馬鹿になってしまう可能性も無きにしも非ずです。
とは言ってもあの馬鹿とはカッ! …カッ…プ……ル…とかでも何でもないですし、
そんな関係になろうとも微塵も思っていませんが、
仮にもし記述通りに距離が縮まってしまったのなら、それは唯の事故な訳で、
私がそうなるように仕組んだとか、そういう事ではないですから。
…っと、そうこうしてるウチにもうあの馬鹿の学校の校門前です。
ちょっと歩き疲れたので、電柱の影で休憩を取ろうと思います。
決して、あの馬鹿が出てくるのを待っている訳ではありません。
◇
…30分程経ちましたが、まだあの馬鹿は出てきません。
朝にアイツの携帯電話にモーニングコ…間違い電話をしてしまった時に、
『今日は補習がある』と言っていたので、まだ帰宅はしていない筈なのですが……
何だかこれでは、まるで私がアイツを待っているみたいで居心地が悪いです。
ああ、もう! とっとと来なさいよあの馬―――
「はあぁ…やっと終わったよ……けど宿題もたっぷり出されちまったし…
あー、もうホントに……不幸だー…」
「ぅぉぉおりゃああああああ!!!」
「うおう、なになに!!? 何でせう!?」
コイツが校門から出てきたので…じゃなくて! 何か急に走りたくなったのでダッシュしました。
コイツに会えただけで胸がドキドキしてるのは、きっと全力疾走したせいです。
それ以外の理由はありません。
「って、美琴か!?」
「あ…あはははは。ぐ、偶然ね。こんな所で会うなんて」
「いや偶然って…ここ、俺が通ってる学校なのですが…?」
「そんな事より、私、映画のチケットが二枚あるんだけど!」
「そんな事!? 何、急に…映画? 唐突にまた何で?」
「いいから! 行くの!? それとも行かなくないの!?」
「その二択って一択だよね!? 上条さんの意思とか反映されてないよね!?」
私はさり気なくチケットを差し出します。
危惧していた通り、やはり流れで一緒に映画に行く羽目になりそうです。全く、やれやれですよ。
「…? あ、この恋愛映画ってアレだろ。確かカップルで観ると距離が縮まるってヤツ」
「は…はああぁ!!? な、なな、何、変な期待してんのよ!!!
私はただ、恋愛映画が好きなだけなの! この映画を選んだのもたまたまなんだから!
べべべ、別にアンタとの距離を縮めようとか、そんなの全然思ってないんだから!
あわよくば館内で手を握ったり肩を寄せたり一緒のジュースを飲んだり、
キ、キキキキキスシーンが流れたら私の事も意識してくれたらいいなぁ~、とか!
全然そんな事思ってないんだから勘違いしないでよねっ!!!」
「お、おう…そうですか…」
ふぅ~、危ない危ない。危うく誤解されるところでした。
◇
まぁ、そんなこんながありまして、この馬鹿と映画を観に行ってきた訳ですが、
後日その事を佐天さんに話したら、 (´・д・`) ← 何故かこんな顔をされました。