とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part32

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夏祭り



花火が夜空を彩る。
1発目の音に驚き、美琴にしがみついたインデックスは、2発目で空に花開く光に言葉を無くし、4、5発目からはしゃぎだした。
その後、3人は近くのベンチに座る。

「ぱーぱ!! どー!!」

「うん? ああ、大きな音だな」

「まーま!! どー!!」

「ん? あれはね、花火っていうのよ」

「はーび?」

「そう、花火」

「はーび!! どー!!」

「…………飲み物買ってくるよ、美琴、なにがいい?」

「じゃあ、ヤシの実サイダー」

「了解」

上条の背中を見送る。
そして、思うのだ。

(こんぐらいで舞い上がっちゃうなんて、末期ね)

次々と夜空に大輪の花が咲く。
ひとつひとつの花が咲くたびに、上条との日々が走馬灯のように浮かんだ。

『連れがお世話になりましたー』『あーまたかビリビリ中が『で、何だコイ『だから泣くなよ』けは、きっとお前は誇『またな、御坂』らさ、一体何をやれば恋人っぽ『―――――』
ックスと風斬『探したぞ、ビリビリ』んだ!お前に怪我なんてして『そいつらと少しずつ変えていけばいいんだ。もちろん、俺も協力する』『お? 殺気!?』『しかし、そっかー。御坂にとって俺との出会いは宝物かー』しもし。恋人より重たくなってますよ御坂さん』イザーが欲しい!! お前だけが頼りなんだ! 任せられるか!?』ら最後の笑いが超胡散臭かったからッ!!』んだ。上条当麻っていうのは、記憶のあるなしぐらいで揺らぐものじゃないんだよ』えると、助かる。記憶喪失だなんてさ、変に気『……ダメ?』(まだ、やるべきことがある)り顔をしている俺だって今何が起きてい『必ずこの失敗を取り戻す。それをやるまでは帰れな『はいはい幻想をぶち殺す。ゲンコロゲンコロ』『頼むよ話が進まない』ットでややこ『頼む。あいつら「二人」を助けるためにお前達の力を俺に貸してくれ』『俺が、そうしたいからだ』

……。

(…………骨抜きじゃん)

つい苦笑する。
ちょっと悔しい。
これでは完全白旗武装解除平身低頭の完敗だ。
そんななか、この幸福が偶然転がりこんで来た。
もし他の人が先に彼に出会っていたら、まず間違いなく今の生活はない。
それをオティヌスが来たことで思い知らされた。
インデックスが元に戻るまで、上条の寮が修繕されるまで、常盤台の寮が完成するまでの生活。
できるだけ長くこのままでいたい。
そのためには、この想いを上条に受け入れてもらうしかない。

(…………やっぱり、恐いよ)

この生活が大事だからこそ、
彼が拒絶することを恐れる。
おそらく、失敗したら、今の幸せを失うだけでなく、以前の関係に戻ることさえかなわない。
その頬に、小さな手が添えられる。

「まーま、だーぶ?」

この子にも、不安が伝わってしまったか。
美琴は、そっとインデックスを抱き締める。

「ありがとう、インデックス。ママ、頑張るね」



その彼女の様子を見て高台を去る影が1つ。
雷神トール。
彼の笑みには力がない。
そこに、声がかけられる。

「やぁ、落ち込んでいるな、負け犬」

カッチーン

「なんだよ、見てたのかよ。性格悪いぜ」

上条クンにも嫌われるぞ、と付け加える。
元魔神はまだ姿を現さない。

「ふっ、まさに負け犬の遠吠えだな。今の状況を受け入れてしまっている貴様に、弁明の余地はあるまい?」

「ぐっ…………でも、わざわざ美琴ちゃんを困らせたくはないし」

「なんだ、うじうじと、貴様らしくないな」

トールは苦虫を噛み締めたような表情でうつむく。
ふん、とため息をついた後、オティヌスは言葉を続けた。

「なぜ、悩ませてはいけない?」

肩が震える。

「別にいいじゃないか。こっちも悩んで苦しんでるんだ。向こうにもそれぐらいしてもらわないと、割りに合わん」

そこで一端切り、それに、と彼女は続けた。

「それに、うまくいった後、それでよかったのだと、笑えるほど幸せにしてやればいい」

少し考えて、はっ、とトールは苦笑する。

「…………強いな」

「当然だ私を誰だと思っている」

木の影から出てきたのは、猫にまたがったオティヌスだった。
トールは歩くスピードを下げる。

「で、そっちはまだ気持ちを伝えられていないようだけど?」

「貴様とは違う。勝てる状況を作ってからだな」

「…………じゃあ、あっちは伝えないでいいのか?」

トールは立ち止まる。

「体をもとに戻せば戻すほど、寿命は減ってるんだろ?」

しばらく、魔神も無言だった、が、ゆっくり、誰かに言い聞かせる。

「同情で勝ち取るものではないだろう?」

「……ホントに、強いよ、アンタ」



420円飲まれた。

「…………てめぇ」

睨み付けても、自販機はうんともすんとも言わない。
おかしいと思ったのだ。
不幸な自分に、小銭がちょうどあるなんてことがおこったのだ。
嬉々として小銭をいれたらこの様である。
しかし、野口さんを召喚するのは癪だ。
上条はキョロキョロと周囲を見回すと、

「チェイサー!!」

と回転蹴りをはなった。
ちょうど2本出てくる。
1本ヤシのみサイダー、もう1本がガラナ青汁。
やはり、上条は不幸なようだ。

上条は花火を見ながら戻る。
その道はちょうど、美琴と出会い、警報を鳴らす自販機から逃走した時の道だった。
当時の自分と美琴の姿がぼんやりと浮かぶ。

『愉快に現実逃避してないでジュース持ちなさいってば』

「なんか、ずいぶん昔のように思えるなぁ」

一歩歩むごとに、彼女の虚像が目の前で暴れる。

『あの子達を助けるには、もう私が死ぬしかないんだから!『だ…から、あ、あり』『うるさい! 黙って!ちょっと黙って!お願いだから少し気持『アンタ、こんなトコで女の子に押し倒されて、何やってる訳?』『アンタ……どうして……?』ゃーっ!つっかまえたわよ私の勝利条件! わは『ん…』『だから今度は、みんなを守りたい』『べあっ』『べっ、別に男女って書いてあ『ごめんごめん、止める間もなく始めちゃうわよ』チのは母のアドレスが登『アンタの中にはそれぐらい大きなものがあ『ふにゃー』『あいよー。言っておくけどこれは貸しだかんね』どういうつも『ただし、今度は一人じゃない』『アンタと私は、同じ道を進んでいる。その事を忘れんじゃないわよ』『私これ訳したくない』あああ!!アンタこんな所で何『任せて』『初めて勝てたけど……思ったよりも虚しいわね、これ』

長い長い回想のなか、自然と笑みがこぼれる。

そして、
上条は固まった。

花火の音が遠く感じられる。
赤、青、緑、黄、さまざまな色で周囲が点滅する。
彼女は、赤子を抱き、微笑みかけていた。
それだけの光景だった。
しかし、それでも彼はたったひとつの事実を思い知った。





上条当麻はもう







御坂美琴なしには












生きられない。










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