とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part46

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匿名ユーザー

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うえでぃんぐ


カーテンがゆっくり開く。
目の前の光景を見て、彼女は固まった。
カーテンの向こうで待っていたのは、想い人。
彼は、自分と対になる真っ白なタキシードを着ていた。

めちゃくちゃカッコいいっていうか、自分がいつか本当に彼の横に立てたらなぁっていうか、ウエディングドレスとかはじめて着たっていうかスッゴク恥ずかしいっていうかなんていうか

結局そんな思いが暴走する。

「う……ぁう……」

そんな声が出るばかり。
美琴には、相手も自分同様顔を赤く染めていることに気付く余裕はない。

実は上条の方が追い詰められていたのである。
美琴のウエディングドレス姿が上条の理性を吹っ飛ばした。
うつむいている美琴に、上条の右手が伸びる。
彼女の顎にその指が「まあまあ!! 予備のサイズがピッタリ!! お二人ともお似合いですよ!!」届かなーーーい!!

ギュインなんて音と共に、上条の右手も本能もひっこんだ。
上条と美琴がその声の方を向くと、さっきのおばさんである。

「おばさんも若いころはアンタ達のようにラブラブだったんだよ。で、2人の結婚式はいつなんだい?」

「「いやいや結婚しませんって!!」」

互いにラブラブを否定してないことに気づかない。

「結婚の前にはそういう気分になぁるのよー。マリッジブルーっていうんだけどね」

「いやいや、そうじゃなくて、わたし、中学生」

「オレ、高校生」

「へ? 嬢ちゃんがチューが癖で、お兄さんがこうこうしろとリードする? あら、おばさんノロケられちゃったよ」

「「いやいやいやいや」」

おばちゃんは最強である。

「おや、もうこんな時間だよ、さぁ、次のプログラムは式場で撮影だ」

2人ともまたまた引きずられていく。


一方通行は、結局皆を呼ばなかった。
いや、正確には、呼んでいいのかわからなかった。

この光景を見て、アイツらはどう思うだろうか?
黄泉川がこの結婚を望んでいた場合、自分は祝福したいのか、反対したいのか。

できれば、相手に暗い匂いがあれば良かった。それならキチンと反対の姿勢を示せた。
しかし、どうもそうではない。働き盛りの真面目な男性。
隙も多い。アンチスキルのような戦闘経験者でもないようだ。

「いい人みたいね」

いつの間にか右隣に芳川がいた。

「ヨミカワを褒める言葉がここまで届いてくるって、ミサカはミサカは相手の熱気を微笑ましく見守る大人なのだ!!」

左側にクソガキが、その奥にワルガキがいる。

「因みに、わたしはあなたより先に愛穂を見つけてたわよ」

「ミサカは真っ白な怪しい人がこそこそしてるという話を聞いてきたの、ってミサカはミサカはアナタの保護者として当然のってチョップはやめて!!」

ドタバタしだした空気を止めたのは、
意外にも、番外個体だった。

「……ヨミカワ、幸せそうだね」

3人も黄泉川の方を向く。
テーブルの辺りは日光に照らされている。
彼女は、楽しそうに笑っていた。
彼女が幸せなら、祝うべきなのだろう。
だが、

「わたしたち、ヨミカワの、邪魔なのかなぁ、って、ミサカは、ミサカ、は……」

窓からの光は、ここまで届かない。



日光がステンドグラスを通り、カラフルな光が降り注ぐ。

「はーい、こっち向いてー」

祭壇の前で上条と美琴は並んで撮影されていた。
このカメラマンもノリノリで人の話を聞かない。

「あ、あの、わたしたち、まだ結婚しようとか、考えてなくて……」

「ね、年齢とか、オレたちには、いろんな壁がありまして」

付き合ってすらいねぇだろ。

「うんうん、わかったから」

わかってない!!と突っ込む前に、
後がつかえてるから、早くポーズとってといわれ、かれこれ5枚目だ。

「じゃあ、次は腕を組もうか」

「「へ?」」

腕組んでー、と繰り返される。
聞き間違いではないようだ。
ゆっくり上条が作った腕の隙間に手を通す。
もう、顔が暑くて仕方ない。

「2人とも、もっとくっついて」

上条は自分の頭から湯気が出てないか心配になった。
??? あれ?なにこの腕の柔らかい感触? ダメだオレ!!考えるな!!

「よーし、ありがとう」

ふぅ。

「じゃあ次はねぇ」

!!!!???


無限に続くかのような長い撮影の後、
上条と美琴は式場で待機を命じられた。
地獄……ではないけどもいろいろ辛かった。
今のうちに出ればいいのだろうが、そんな気力がない。

(あ、あんなことをしてしまった!!)

上条は、隣に顔を向けられない。
しかし美琴はそのレベルでない。
立ったまま意識を失っていた。

彼女は夢を見ていた。
新郎と新婦が教会のドアを開ける。
新郎のツンツン頭はハニカミながら言った。

『これから、夫婦ってわけだが、至らないことも多いと思うけど、よろしくな』

それに、新婦は微笑んで返すのだ。







『任せとけェ、三下ァ』




「ぎゃぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!」

「ぬおっ!!?」

「結婚が!! 当麻で!! 一方通行に!! 夫婦にゃああああああああああ!!」

掴みかかってきた美琴の肩を必死に押さえつける上条さん。

「落ち着け美琴!! 意味がわかんねぇ!! そ、それに……」

近い。という言葉を発する前に、入り口の大きめのドアが開く。

「お二人とも、スタッフの方がようやく人違いをしていたことを把握しました、とミサカは説明が面倒だったぜ、という愚痴………………」

「あぅ!! まーま!!ぱーぱ!!」

御坂妹の動きが止まる。
彼女の視界に飛び込んできたのは、
密着している2人。
上条の胸に飛び込んでいる美琴は爪先立ちして彼の胸ぐらを掴み、
上条は美琴の肩を包み込むように掴んでいる。
2人の、現状は、まるで、誓いの、口づ……



その映像がミサカネットワークに流れた瞬間、動いた影が1つ。

「その結婚!! 待ったぁぁぁああああああああ!!」

ドタバタ飛び出て番外個体は黄泉川に抱きついた。

「!!??? ワーストじゃんか!! どうしてここにいるじゃんよ!!?」

「そんなんどうでもいいよ!! とりあえずこの結婚には反対だーーー!!」

少しして、てちてちと走ってきた打ち止めも黄泉川に抱きついた。

「ヨミカワには幸せになってもらいたいけど、まだ離れたくないよ!!ってミサカはミサカは自分でもどうしたいかわからないことを正直に叫んでみる!!」

「打ち止め!!? とういことは……」

「……よォ」

「一方通行、桔梗……お前たち、なにしてるじゃん?」

「えーっと、愛穂さん、この方たちは?」

な、名前呼び!!?

「あぁ、さっき話した今一緒に暮らしてるやつらだよ」

「なるほど、この方たちが」

番外個体が涙目で彼を睨み付ける。

「ヨミカワを嫁にやってたまるか!!」

「どうしてもというなら、私達と一方通行を倒してけー!!ってミサカはミサカはめちゃくちゃムチャぶり!!」

勝手に名前を使われた一方通行は、男の左手に、あれを確認する。

(薬指に指輪!!?? コイツ、そこまで……)

そのとき、

「……やっぱり、この話はなかったことにしてほしいじゃん」

と言って、黄泉川は鞄から髪止めの輪ゴムを取りだし、髪をまとめる。

「……わかりました、お母様にも伝えておきます」

親公認だと!!??

「いいの? 愛穂?」

「今じゃなきゃいけない理由はないじゃんよ」

男がふと気付いた。

「おっと、失礼しました。ご挨拶がまだでしたね」

がさごそと名刺を取り出す。

「わたくし、結婚コンサルタントをしているものでございます」

……………………ん?

「キチンと好みをリサーチし、最適な人物とのお見合いをセッティング。デートのスケジュール管理やアドバイス。式、ハネムーンのマネジメントとその後の生活のフォローまでワンストップで行います」

んん!!??

「『結婚しましょう!!』を合言葉に活動しております。今回は愛穂様のお母様に、愛穂様のコンサルティングを依頼され、お伺いいたしました」

………………。
視線が1ヶ所に集まる。
彼女は危険を察し、すでに逃げ出していた。

「「「ヨシカワァァァァアアアアアアアアアアアア!!!」」」




数十分後、帰路に笑い声が響いていた。

「はっ、ひぃ、はっはっはっ!! わ、私が、ぷ、プロポーズされたと思って、み、みんなそんなに、ぷっ、くっく、動揺したのか?こ、これは、傑作じゃんよぉ、くぁはっはははははははははは!!」

3人はそれはもう不機嫌な顔である。
もう1人はいつもの表情だが、大量のたんこぶが似合わなすぎる。

「そういえば、なんであんならしくない格好をしてたの?」

「あのあとお見合いのために写真をとる予定だったじゃんよ。あの格好とウェディングドレス姿の2パターンなんだが……」

なんでお前たちが撮影されてたんだ?
といいながら、後方を向く。
ついてきてるのは、顔を真っ赤にした上条と美琴。
そして美琴に抱っこされたインデックスは、すやすや寝息をたてていた。
妹はさすがに黄泉川に会うのは面倒なので、先に退散している。
なんでなんて、こっちが聞きたい。

なにも答えない後ろの2人に対し、仕方なく黄泉川が話を続ける。

「まぁ、おかげで今回のキャンセル料は迷惑料としてチャラになったし、よかったじゃん」

「でも、愛穂、いい機会だったんじゃないの?」

「なんだよ桔梗、それだと追い出したいみたいじゃんよー」

そんな会話を聞きながら、一方通行は考える。
そう、今回は勘違いだったが、いつかは別れが来る。
別に悲しい理由とは限らない。
例えば、先に芳川に縁談が来るかもしれない。
打ち止めが学校に行けるようになって、寮生活になるかもしれない。
もしくは自分や番外個体が……。
一方通行の足が止まる。
彼の後ろを歩いていた大人2人も立ち止まった。

「テメェら……」

「「???」」

「もし、本当に……幸せになる、チャンスが、あったら、俺たちの事は、気にすンじゃねェぞ……」

あっけにとられた2人は、少しして同時に彼にチョップを入れる。

「「生意気」」

「っ!! テメェら!!」

「さぁ、帰って食事にしましょう」

「おい、桔梗、作るのは私じゃんか」

「無視すンじゃねェ!!」

そんなわいわい騒ぐ後方に耳を傾けていた2人の姉妹は、
知らないふりして歩を進める。

「よかったね、おチビ。ヨミカワが結婚しなくて」

「ん~、実は喜んでいいのかどうかをまだ決めあぐねているんだ、ってミサカはミサカはヨミカワの冬が長いことに一抹の不安を感じてみる」

「ギャハ!! 最後まで売れ残ったりして。……でさぁ」

「うん」

彼女たちの意識は、いちばん後方を歩く2人に向いた。

「妹達【私たち】はあの2人にどうなって欲しいんだろうね」

「こっちの方が関わる妹達は多いもんね、ってミサカはミサカはそれでもみんなが……」

最期の言葉は、出なかった。
全員が幸せになる道を祈っているが、
そんな道は、この問題に存在するのだろうか?

10032号は、帰路の途中で立ち止まり、オレンジ色に変わりゆく空を眺めていた。










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