とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part51

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ぱぱ


「そっか、君が……」

「いや、そんなに大したことしたつもりはないんですけどね?」

食後の一服。御坂旅掛と上条はコーヒーを飲んでいた。

(オティヌスを止めたのが、大したことない、か……)

彼の仕事がら、あの時の情報はあちこちから入っていた。
いや、それだけではない。
そのあとしばらく続いた争乱も、第三次世界対戦も、最後の審判事件も、断片的だが、確かな情報を手にしている。
その全てに登場するキーワード、「ツンツン頭の日本人の少年」

(…………間違いない)

旅掛には、それでも信じられなかった。

彼は、どう見ても恋に奥手なただの男子高校生だった。

(こんな子供が、世界に多大な影響力を持っているとはな)

もうすぐコーヒーもなくなる。


皆さんはとっくの昔にご存知だと思うが、
上条当麻は不幸であり、

御坂美琴も結構不幸である。
そんなこんなで




彼女達は出会ってしまったのだった。

「あ」

「あ」

「あ」

「ん?」

くるり、と美琴は後ろを向き、
ばったり会った寮監たちから全力疾走で逃げ出した。
いや、未来へ向かって走った。
ゲコタカーに乗っているこの子のことで尋問されたら、当麻との同居がばれてしまう。
殺される!!

「待て、御坂」

シュバッと走りだす寮監を止めた人物が2人。

「み、御坂さん!! 逃げて!!」

「は、早く!! できるだけ遠くへ!!」

かわいそうに、白井は初春に投げ捨てられた。
それでも寮監につかみかかった初春と佐天はそれぞれ1秒で片付いた。

「うわー」とか、「あーれー」とか叫んで飛んでいったが、デフォルメされてたし、ギャグ補正で無傷だろう。
しかし、美琴は一切笑えない。

(ギャァァァアアアアアアアアア!!)

半泣きで走る美琴。
でもインデックスは猛スピードで走るゲコタカーにご満悦である。


上条と旅掛はレストランを出ていた。
後でおこるであろう殺人事件の犯人と被害者は、すっかり意気投合したようだ。

「なるほど、そんなに焦る必要はないんですね?」

「あぁ、その子のペースに合わせるべきだ。まだ離乳食を食べたくないなら、無理に食べさせるもんじゃない」

ゆっくりで大丈夫だ、という旅掛。
やっぱりリアルな先輩パパの助言は頼もしい。
その時、目の前から何かが走ってくる。
ドドドドドドドという効果音がうるさい。
後方は「歴戦の勇者」だとか「戦場の死神」だとか「首刈り女」だとかの異名が似合いそうな怪物。
そして、前方を走るのは、

「!!?美k「美琴ぉぉぉおおおお!!!」!!!?」

旅掛が動くよりも先に、上条は彼女達の間に入っていた。
あと2秒遅かったら間に合わなかったかもしれない。

「当麻!!」

「ぱーぱ!!」

上条は、寮監の右手を左手で防いでいた。
そのあと迫ってくる左手をしゃがんでかわし、もう一度近づいた右手を左手ではじくと、再び襲いくる左手をバックステップでよける。
ザザッ、と地面をこする音が耳に入るとともに、冷や汗が頬を伝う。

(……コイツ、強い!!)

手合わせするだけで強さがわかるようになってしまったか、上条よ。
なんか泣けてきた。

「テメェの狙いはインデックスか?」

「私の目的は御坂だ。キサマは誰だ?」

「へっ!!ただの高校s「ちょ、ちょっと、当麻」御坂、悪い、庇いながら闘うのは難しい。インデックスを連れて逃げ「いや、うん、嬉しいんだけども、あの「早く行け!! ……こっからはオレが相手だ!! お前が美琴を好き勝手できるっていうなら、まずは!! その幻想を!!ぶちこ「当麻!!」なんだよ!!「あの人、うちの寮の寮監なの」

へ?
彼らの頭上を赤トンボが通過する。
上条は顔色が悪くなり、さっきとは違う冷や汗がドバドバ流れる。

「美琴、お前、この当麻くんと、一緒に、暮らして、いるのか?」

「へ? え? なんでパパがここにいるの?」

パパ?
上条の顔は完璧に血の気が引いた。
なんとまぁ、さっきまでわたくしは自分を殺してくれなどと申しそうろうか。


「どうも、御坂旅掛です。娘がいつもご迷惑を」

「ご挨拶が遅くなりました。寮の管理をさせていただいています。確かに娘さんは少しやんちゃな面がありますが、生徒のいい見本ともなっていまして、私も助かっています」

保護者どうしの話の横で上条夫婦はドタバタ……いや、失礼まだ夫婦でなかったね。

「な、なんでパパと一緒にいたのよ!!」

「いや、不良から一緒に逃げたんですよ!! メールしたでしょ!!」

「と、とりあえず、アンタと私は別の場所に住んでる、いいわね!!」

「い、いや、悪い、知り合いの女の子と住んでるって言っちまった」

「ちょっ!! ……い、いや、別の……」

別の……?

「そ、そうだな、別の「ダメ!!」へ?」

「別の子と住んでるって設定はなしで!!」

でも、それって寮監に殺されることを意味しますよね?

「あ、うん、わかっ……」

あれ? でもそれって御坂パパにいろいろと宣戦布告することになるんじゃ?
しかし、ここで、嘘だけはつけない。つきたくない。

「「……」」

あ、ここまでか。

「美琴、短い人生だったが、楽しかったよ」

「わたしも、本当に、幸せだった」


カツンとハイヒールの音がする。

「……さて、御坂、その彼とその赤ん坊について、説明してもらおうか」

そっと、上条達2人は手を繋いだ。

「彼は……」「オレは……」

「彼は美琴の許嫁ですよ」

「「「へ?」」」

「おい、美琴、ちゃんと報告しないとダメだろ」

旅掛は2人に歩みよりながら続ける。

「へ? え!!?」

「な、なん!!」

何かを言おうとした上条と美琴の耳元で、

(本当のことを言って欲しいのか?)

と旅掛が呟いたため、ピタッと2人は固まった。
その状況を見て、クイッとあの眼鏡が上がる。

「許嫁?」

「えぇ、最初付き合わせて欲しいと彼に言われた時には、殺してやろうと思いましたがね」

その覇気を知っている上条は笑えない。

「まぁ、話をすると、気に入ってしまいまして」

え? へ?

「まだ清い関係のようだし、付き合うからには最後まで責任取れって言ったら、わかったなんて言うもんだし、じゃあ許嫁だということに……」

「ちょっ!!? ちょっと!!」

「なんだ? 美琴、今更恥ずかしがるなよ」

そして、父親は、今日の目的に目を向ける。

「お前は今でもその覚悟があるんだろ?」

一瞬の迷いもなかった。

「はい、もちろんです」

バブフンッ!! と美琴が爆発したのを全員無視。

「ね? こんなやつだから、寮が壊れたんなら、
いっそ今から2人で暮らして慣れておけってことになったんです」

キョロキョロいていたインデックスがはっとした。
彼女はお利口さんなのだ。

「だっ!! あう!! こーちゃ!!」

「おぉ、よく挨拶できたなぁ、偉いぞ~」

しゃがんだ旅掛に、その子は? という問いが投げ掛けられる。
旅掛はなでなでをやめない。

「あぁ、うちの親戚ですよ。いろいろあって預かることになったんですが、
オレは仕事で海外にいるし、妻は朝から晩まで大学ですしね」

さらに、能力の才能があるみたいなので、学園都市に早めに入れたかったのだと続ける。
寮監はしばらく考えた。
視線が美琴と上条を交互に見る。
そして一瞬微笑んだが、すぐいつもの表情に戻った。

「大変失礼しました。不純異性交遊ならば対応が必要かと思いましたが、
ご両親公認の仲なら問題ないでしょう」

「いえ、こちらも美琴がきちんと報告せず、ご迷惑をおかけしました」

失礼します、といって寮監は立ち去る。
美琴の横を通りすぎるとき、「よかったな」という言葉を残して。


「さて、こんな感じで良かったか? ミコっちゃん?」

「ふにゃ~……はっ!! ミコっちゃんいうな!! いや、えっと、いろいろ聞きたいけど、何しに来たのよ?」



「違うだろ、美琴」

美琴は息を飲む。
いつものふざけた空気はない。
厳格な父親がそこに立っていた。

「まずは、『ありがとう』だ。
何かをしてもらったら礼をする」

一瞬インデックスに視線を移し、
そのまま父は娘を叱った。

「子育てをしている自覚を持て。
お前の行動全てがこの子の手本なんだぞ」

「ご、ごめんなさい」

その言葉を聞き、ようやく旅掛はいつもの表情に戻った。

「……いろいろあったんだが、お前の楽しそうな顔見て、
安心したんだろうな。まぁ、許してやるかってなった」

「??? 仕事の、話?」

「……もっと大事なことさ。まぁ、済んだことだ」

チラッと上条を見た。
再びツンツン頭にナイアガラの滝のごとく汗が出る。

「上条くん、少し美琴と話をしたいんだが、いいかな?」

「え? あ、はい」

インデックスを連れて上条が少し離れたことを確認すると、
旅掛は突然美琴を抱きしめた。

「わ!! ちょ!! なに!!? どうしたの!!?「美琴……」…………??」




頑張ったな。




たった一言だった。
恐らく、父はなにもわかっていない。
自分か怪物と戦ったことや、自殺をしようと考えるまで追い詰められたこと、
何度も死にかけたなんて考えもしていないだろう。
でも、




暖かい。

「…………うん、ありがとう」

「1つだけ、確認したい」

「なに?」

「いま…………幸せか?」

目を閉じる。

「………………ぅん。今までにないくらい」

「…………そうか」

ゆっくり、旅掛は美琴から離れた。

「じゃあ、オレは帰るとしよう。
大覇星祭、楽しみにしてるぞ」

父は立ち去ることにした。
ただ、これだけは忘れて行けない。
彼は最後に上条の正面に立った。

「1つだけ、言っておく」

「はい」

「美琴を泣かせたら、地の果てまで追いかけて、潰す」

「大丈夫です」

驚いた。
先ほどと同様に少しも怯まない。
まったく我が娘ながら、

「掘りだしもんだな。買い物上手め」

頭に?を浮かべる上条を尻目に、旅掛は手を振りながら去っていった。
しばらく、その背を見送っていた上条のズボンが引っ張られる。
もちろん、彼女だ。

「ぱーぱ!! たゃえお!!」

「当麻、帰ろう。私たちの家に」

「…………そうだな」

上条は帰る。
決意を新たに。










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