とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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なぁ、美琴の好きな人って誰だか知ってる?




『実は、美琴ちゃんの好きな人について調べてきてほしいのよ!』
「……はあ」

美鈴さんと電話でそんな会話をしたのは、つい先程だった。どうやら美琴には好きな人がいるらしい。
そりゃあ、まぁアイツだって女の子な訳で、いてもおかしくはないだろうけど。
…っと、自己紹介が遅れて悪かった。俺の名前は上条当麻。どこにでもいるような平凡な学生だ。
今日は全国的に日曜日。そして現在の時刻は朝の7時半を回った所だ。
学校も無いし、昨日の残りのカレー
(同じ鍋で大量に作るとその日の内にインデックスが全部食っちゃうから、
 あらかじめ違う鍋にも分けて冷蔵庫に隠しておいた)もあるから朝食の用意もしなくていいし、
上条さんも二度寝でもしようかな~、なんて思ってた所だったんだけど、
そんな時に携帯電話が鳴ったんだ。相手はさっきも言ったように、美鈴さんからだった。
珍しいなとは思いながらも電話に出たら、何か困ってる事があるみたいな事を言われたんだ。
話を聞いてみると、どうやら最近、美琴が恋愛事で悩みを抱えているらしい。
好きな相手とうまくいっていないのか、もしくは何か騙されているのか…
とにかくその相手の愚痴を、よく美琴から聞かされているみたいでな。
それで母親としては心配だから、俺に美琴の好きな人について調べてきてほしいんだとさ。
ちなみに「何で俺が?」って俺も聞いたんだけど、
美鈴さんは『他に学園都市で知ってる男の子がいないから♪』だって。
いやでも相談相手が男である意味はあんのか…? 白井や佐天だっていいだろうに…
しかしまぁ、依頼されたからには俺も調べてみようと思う。
美琴の知り合いに手当たり次第に聞いてみれば、誰か一人くらいは知ってる奴がいるだろ。
今日は特に予定も無いし、何より美琴の好きな相手ってのも気になるしな。
いや~、それにしても……

美  琴  に  好  き  な  人  が  い  た  な  ん  て 、
全   然   知   ら   な   か   っ   た   な  !


 ◇


俺は冷蔵庫から出したカレーを温め直しながら、インデックスに聞いてみた。
何故かいつも美琴と顔を合わせる度にケンカをしてるイメージがあるけど、
だからこそ何か知っているのかもしれない。

 [ 一人目 ・ インデックス ]

「なぁ、インデックス。美琴の好きな人って誰だか知ってる?」

すると、それまで上機嫌に「カ・レ・ー♪ カ・レ・ー♪」と、
スプーンを振り回しながら鼻歌を歌っていたインデックスの動きが、急にピタッと止まった。

「……とうま…? どうしてそんな事を聞くのかな…?」
「ん? いや、ただの興味だけど…」

アレ? 何だろこの空気。ものっ凄い嫌な予感がするんですけど。

「ふ~ん…興味なんだ。へぇ~」

マズイ! 上条さんの経験上、これはマジで噛み付く5秒前ではありませぬか!?
何か分からんけど急激に不機嫌になってる!
俺はインデックスの注意を逸らす目的で、オティヌスにも話を振ってみた。

 [ 二人目 ・ オティヌス ]

「オティヌス! オティヌスは何か知らないか!?
 美琴の好きな人…ああ、美琴ってのはお前も何度か会った事があるだろ!?
 あのいっつもビリビリしてる人! あの子の―――」

と、俺が言いかけているのに被せるように、オティヌスさんが一言。

「知るかっ!!!」

一喝でした。そしてインデックスさんの気も紛れてはくれませんでした。
こうして上条さんは、朝から頭を噛み付かれ、不幸な目に遭いましたとさ。…ちくしょう。


 ◇


あー、くっそー…ま~だ頭部がズキズキする……
このままじゃ上条さん、すぐに毛根が死滅して若ハゲに悩まされるようになる気がする……
まぁ、今から悩んでも仕方ねーし、それはとりあえず置いておこう。
俺は今、部屋を出ている。理由は単純に、美琴の好きな人について聞き込みをする為だ。
べ、別に部屋の中のインデックスとオティヌスが怖いからじゃないんだからね!?
そりゃ確かに、何でか知らないけどあの二人、妙に気が立っていらっしゃるけれども。
触らぬシスターにも触らぬ魔神にも祟りなしだけれども。
でもそんな事で逃げるように部屋を出る程、上条さんは臆病じゃないからね!
ホントだからね!?
っとまぁ、そんな事を言ってる矢先、さっそく何か知っていそうな人物がやって来たようだ。

「おはよー、上条当麻ー。今日も生傷だ絶えないなー」
「はよー。…ついさっき、インデックスに噛まれてな……」
「あははー! いつも通りだなー」

土御門舞夏。俺のクラスメイトで部屋もお隣に住んでる土御門元春…の、義妹だ。
今日も掃除用ロボットに座って、クルクル回っている。
確か彼女は繚乱家政女学校の研修で、常盤台の生徒とも交流があったはずだ。

 [ 三人目 ・ 土御門舞夏 ]

「なぁ、舞夏は美琴の好きな人って誰だか知ってるか?」
「んー? 知ってるぞー」
「えっ!!? マジで!?」

意外とアッサリ終わった。…舞夏が変にニヤニヤしてるのが気になるが。

「だ、誰なんだ!?」
「んー…私は言ってもいいんだがなー…それじゃあ御坂に失礼だろー?
 だからその人物のヒントだけでもいいかー?」
「ああ! 充分だ!」
「そうだなー…実はそいつ、兄貴や上条当麻と同じ学校に通ってる奴なんだなー」
「マジでかっ!!?」

衝撃の事実! 俺の学校に美琴の好きな人が!?
もしかして、俺も知ってる奴なのかな?

 [ 情報① ・ 美琴の好きな人は俺の学校の生徒 ]


 ◇


「そ、それで私にしか聞けない用って一体何だけど?」
「すみません雲川先輩。こんな朝っぱらから呼び出しちゃって」
「い、いや別に気にしてないけど!
 何だったら、むしろ頻繁に呼び出してくれてもいいんだけど!?」

俺は、俺の学校の事に詳しい、雲川先輩を電話で呼び出した。
つっても自分の携帯電話を部屋に忘れてきちまったんで、公衆電話からかけたんだけどな。
本当はファミレスとか喫茶店とか気の利いた場所でも良かったんだが…
俺の懐事情を考慮してくれたのか、先輩は人気の無い公園を待ち合わせ場所に指定してくれた。
う~ん、先輩。できた人だなぁ…(しみじみ)
心なしか、何かいつもよりオシャレしてる気がする…けどそれは多分気のせいだろう。
俺なんかと話すのに、わざわざ着飾る必要なんかないし。
さて、と。いつまでも二人っきりで公園のベンチに座ってる訳にはいかないよな。
先輩は気を使ってくれてるけど、本当は迷惑だろうし。

 [ 四人目 ・ 雲川芹亜先輩 ]

「ところで先輩。美琴の好きな人って誰だか知ってます?」
「……は?」

アレ? 何か先輩の目が怖くなったような…気のせいか?

「いえ、今ちょっと美琴…って知ってますよね。あの第三位の。
 で、訳あってその美琴の好きな人が誰なのかを聞いて回ってるんですけど、
 どうやらそれが、俺たちの学校の生徒らしいんですよ。
 それで先輩ならウチの学校の事にも詳しいし、知ってるかな~って」
「ふ~~~~~ん…?」

先輩、何かイライラしてきたような気もするけど…気のせい…だよな?

「ああ! 知ってる知ってる! 確かに知ってるけど!?」
「本当ですか!? それで、誰なんです!?」
「けど! お前には絶っっっ対に教えてやんないけどっ!!!」
「えええええ!!?」

そう言うと先輩は、すぐに立ち上がると、
そのまま不機嫌っぽいオーラを撒き散らしながら帰って行った。
お、俺…何か先輩を怒らせるような事言ったかなぁ…?


 ◇


ん~…困ったな。先輩なら協力してくれると思ってたんだけど…
こうなったら、佐天にでも聞いて…って、携帯電話、部屋に置きっぱなしだった…不幸だ…
じゃあもう一回公衆電話から…いや、ダメだ。もう小銭がねーわ……
仕方ない。このまま常盤台方面に歩いてくか。常盤台の人なら、知ってる人もいるだろ。
という訳で、俺は常盤台中学が建っている方向へと歩き出した。
っと、さっそく常盤台の制服を着た女生徒を見つける。
知らない子だけど、いきなり常盤台生に会えるなんて…
もしかして今日の上条さんはツイてるんじゃあ!?

「あの~、すみません。ちょっとお話よろしいでしょうか?」
「…へ? あっ、な! ど、どうしてアナタがぁ!?」

えらくビックリさせてしまった。参ったな…ナンパだと思われたのかも。

「あ! だ、大丈夫ですから! 本当に話がしたいだけですので!」
「あ、ああ、あらそぉ!? それならそれでぇ…私も会話力を出してもいいけどぉ?」

何か顔が赤いな、この子。やっぱ外、寒いもんな。
長話しちゃ悪いし、それにこの子も知らない男と話なんかしたくないだろうし。
手っ取り早く本題に入ろう。

 [ 五人目 ・ ???? ]

「あの、あなた常盤台の人ですよね? 御坂美琴って知ってます?」
「……知らなぁい」

…え? てっきり美琴って、常盤台では知らない人はいないくらいの有名人だと思ってたのに…
あっ、もしかして俺みたいな知らない男には、軽々しく情報を漏らせないって事か?
そりゃレベル5だもんな~…
そう言えば、常盤台には美琴以外にも、もう一人レベル5がいたんだっけか。
って、今はそんな事を考えてる場合じゃないな。

「いや、あの…信じてもらえないかも知れないですけど、俺、美琴の友達なんですよ」
「…友達力…ねぇ……」
「そうそう。だから―――」
「知らないったら知らないわよぉ! そんな貧乳力がレベル5の人の事なんてぇ!
 何よぉ! 私とお話したいっていうから期待力全開にしたのにぃ!
 ああ、もう! バーカバーカ! 『上条さん』の鈍感力ぅぅぅ! うわぁ~ん!!!」

……何か、泣きながら逃げ出してった。
んー…やっぱり知らない子に話しかけたのはマズかったかな…
次からはちゃんと知り合いに……って、あれ? 俺、『上条』って名乗ったっけか?


 ◇


「風紀委員ですの! 女性が変態に襲われて泣きながら逃げたとの通報がありましたわ!
 おとなしく捕まり―――って、貴方は類人え…こほん。もとい上条さん?」
「あっ、白井だ。『類人え』まで言ったんなら、『ん』も言っちゃえよ」

んー…どうやら、さっきの事を様子を見てた人が誤解して、風紀委員に通報したみたいだな。
にしても、こいつにだけは変態とか言われたくないな…

「お~ほっほっほっほ! どうやら本性を現したようですわね!
 貴方が痴漢を働いたと知れば、お姉様の目も覚めて、そしてわたくしがお慰めを……
 うひっ! うひゃひひゃはははひょふはひゃははひょひょひほはひゃほはぁ!!!」
「こ~わい! 笑い方こ~わい! つーか誤解だってば!
 あーそれと、そのお姉様の事でちょっと聞きたい事があるんだけど」
「はひゃほひゃひ……へ? お姉様の?」

白井に聞くのは何故か危ない気がするが…でも俺は敢えて危ない橋を渡ってみる事にした。
理由は二つ。白井は美琴のルームメイトであって、普段の美琴を一番よく見ているからという事。
そしてもう一つは、とにかく話を逸らしたかったからだ。
このままじゃ上条さん、冤罪で風紀委員にタイーホされちまう。

 [ 六人目 ・ 白井黒子 ]

「なぁ、美琴の好きな人って誰―――」

と俺が質問しかけた瞬間だった。
俺の頬をかすりながら、俺のすぐ後ろの壁に金属矢が突き刺さったのだ。
こ、これが噂の壁ドン…って訳じゃないよな…?

「あ、あの…白井…さん?」
「お喋りにならないでくださいまし。次に口を開いたら、先程のを脳天に突き刺しますわよ」

こ~わい! 考え方こ~わい!
俺も脳天に突き刺されたくはないので、喋らずに無言で頷く。

「何とか仰ったらどうなんですの!?」

どうしろと!?


「大体お姉様の好きな人が誰かなど、わたくしの口から言える訳ないではありませんの!
 しかも本人を目のm」

すると白井は、何かを言いかけてハッとする。『本人を目のm』…と言いかけて。

「ちちち違いますわよ! 今のはついウッカリと口を滑らせてしまっただけですの!
 決して『本人を目の前にその名を言えない』と言おうとした訳ではありませんからっ!!!」

そして白井は、慌てて逃げるように空間移動して消えた。
何はともあれ、俺が痴漢の冤罪で捕まる事態は避けられたらしい。
にしても、『本人を目の前にその名を言えない』………って言おうとしてなかったんなら、
白井は結局、何て言いかけたんだろう?


 ◇


俺は再び常盤台方面に向かって歩き出していた。
俺の学校について詳しい雲川先輩でも、
美琴のルームメイトの白井でも教えてくれないとなると、
もうこうなったら美琴本人に聞いた方が早い気がする。
っと、歩いて2~3分だが、いきなり美琴を発見―――

「ミサカに何かご用ですか、とミサカはほんの少し期待してみます」

―――美琴を発見…した訳じゃなかったみたいだ。

「ご用っていうか…何してたんだ? 御坂妹」
「はい。ミサカはこの猫と遊んでいました、とミサカは足下でゴロゴロしていた黒猫を抱きかかえます」

御坂妹が飼ってる(?)黒猫か。名前は確か…何て言ったっけかな? ……まぁ、いいか。
それより御坂妹は美琴のDNAマップから生まれた体細胞クローンだ。
もしかしたら好きな人も美琴と同じかも知れない。
なので俺は、御坂妹にもあの質問をぶつけてみる事にする。

 [ 七人目 ・ 御坂妹 ]

「でまぁ、用が無い訳でもないんだけどさ。今、好きな人っているか?」
「えっ!? な、何故そのような事を聞くのですか、
 とミサカはミサカ自身の体温の上昇を感じながら質問を返します」
「ん…いや、実は今、美琴の好きな人が誰かってのを調べてて、
 それでもしかしたら御坂妹も同じ人が好きなんじゃないかな、っと」
「……期待したミサカが愚かでした、
 とミサカはミサカの体温が下がっていくのを感じながら嘆息します」

何か分からないけど、もの凄くガッカリされたぞ。

「それで…どうなんだ?」
「…確かにミサカとお姉様の好きな方は同一人物です、とミサカはぶっちゃけます」
「本当か!? って事は、御坂妹も美琴が誰を好きなのか知ってるって事だよな!?」
「はい、とミサカは肯定します。
 ついでに言えばその人は貴方もよく知る人物です、とミサカは最大限のヒントを与えます」
「俺が…よく知る人物? ん~、誰だろ…」
「それ以上はミサカも言えません、
 とミサカはやたらと意味ありげに貴方を見つめながら立ち去ります」

結局誰かまでは分からなかったけど、重要そうな手がかりは貰えたな。

 [ 情報② ・ 美琴の好きな人は俺のよく知る人物 ]


 ◇


常盤台中学へと進む道、その途中。
俺のすぐ目の前には、風紀委員第177支部のビルがそびえ建っていた。
ん~…どうしようかな。ここには美琴の友達が多く在籍してるけど、白井もいるんだよなぁ。
さっきの事もあって顔会わせ辛いし、入るのもちょっと気まずいよな…

「あれ? 上条さん、こんにちは。風紀委員に何かご用ですか?」

と、丁度良いタイミングでこの支部の人が話しかけてきてくれた。
うん。やっぱり今日の上条さんは、いつもより不幸じゃない気がする。

「よう、初春。まぁ、ちょっとした聞き込みをな。
 それよりも初春こそ、こんなとこでどうしたんだ?
 デスクワーク派の初春が、ビルの外を歩いてるなんて」
「私は今、休憩時間ですから。なのでコンビニに行ってスイーツを買ってきたんですよ」

確かに初春の両手のレジ袋には、大量のロールケーキやらプリンやらが詰め込まれている。
それ…休憩時間に食いきれる量なのか? どこかの腹ぺこシスターさんじゃあるまいし。

「それで、ご用と言うのは? っと、その前に中に入りませんか?」
「ああ! いや、いい! すぐ済むから!」

中に入ったら白井がいるしな。

 [ 八人目 ・ 初春飾利 ]

「長話すると悪いから単刀直入に聞くけど、美琴の好きな人って誰だか知ってる?」
「ぬふぇっ!!?」

ぬふぇ?

「どどどどうしてそんな事を!?」
「聞いた人、聞いた人みんな同じような反応するな…」
「ほ、ほほ他の方にも聞いたんですか!?」
「うん、まぁな。…ちょっと気になるんで」
「そ、そそ、そうですか~。気になるんですか~」
「それで、知ってる事があれば何か教えてくれないか?」
「えっ!!? で、でで、ですが…その…私が言ってしまっても良いものかどうか…」
「せめて特徴だけでも」

俺がそう言うと、初春は渋々ながら口を開く。相当、名前を出したくない人物らしいな。
初春は、俺の顔をじっと見つめながらその特徴を言う。
まるで俺の顔を見る事で、その人物の顔を思い出しているかのように。
……似てるのか?

「そ…そうですね……髪はその…ツンツンしてます」
「なるほど。ツンツン、ね」
「それから…えっと…いつも気だるそうな顔をしていらっしゃいますね」
「へぇ…」
「わ、私からはそんな所でしょうか!」
「そっか。ありがとな」

 [ 情報③ ・ 美琴の好きな人はツンツンした髪型 ]
 [ 情報④ ・ 美琴の好きな人はいつも気だるそうな顔をしている ]

「おおっ!? 何ですか何ですか!? 随分と面白そうな話をしてますね♪」
「わひゃっ!? 佐天さん!」
「よう、佐天。……って、待て。YOUは何しに風紀委員へ?
 佐天って、風紀委員のメンバーじゃないよな」
「こんにちは上条さん! あたしはただ、初春と白井さんの所に遊びに来ただけですから」

風紀委員って遊びに来てもいい所なのか…?

「いえ、佐天さんだけです。そんな事をするのは」

心を読むな、心を。

「そ・ん・な・こ・と・よ・り・! さっきチラッと聞いちゃったんですが、
 上条さん、御坂さんの好きな人を知りたいんですって!?
 あたし知ってますよ! それはもう、ハッキリと!」
「ほ、ホントか!?」

 [ 九人目 ・ 佐天涙子 ]

「ちょ、さ、佐天さんっ!!? ままままさか!」
「いやいや、流石のあたしでも直接名前を言う程無粋じゃないよ。
 でも初春みたいに、その人の特徴を言うだけならいいでしょ?」
「それは…まぁ……」
「心して聞いてくださいね上条さん。その人のイニシャルはK・Tで最初の『K』は『か』ですつまり苗字が『か』から始まる人ですねそれと御坂さんとおそろいのストラップをつけてる人ですそう言えば上条さんも同じのを付けてますね偶然ですねあと他には大覇星祭の後夜祭で御坂さんとフォークダンスを踊ったりもしてましたねあっこれは御坂さんを問い詰め…じゃなくて御坂さんから聞いた話なんですけど何かにつけて『不幸だー』って言ってるみたいですよまるで誰かさんみたいですねっ!!!」
「そ…そうか。うん、ありがとう」


……よくもまぁ、息継ぎ無しで言えたもんだな…
しかも心なしかニヤニヤしてるし。で、それを聞いてる初春はあわあわしてる。
さて。佐天からの情報をまとめると、だ。

 [ 情報⑤ ・ 美琴の好きな人のイニシャルはK・T ]
 [ 情報⑥ ・ 美琴の好きな人の苗字は『か』で始まる ]
 [ 情報⑦ ・ 美琴の好きな人は美琴とおそろいのストラップを付けている ]
 [ 情報⑧ ・ 美琴の好きな人は大覇星祭の後夜祭で一緒にフォークダンスを踊った ]
 [ 情報⑨ ・ 美琴の好きな人は何かにつけて『不幸だー』と言っている ]

「……なるほど。その人、どこかで会った事がある気がする。少なくとも他人とは思えねぇ。
 まぁ、他の人からの情報も踏まえると、俺の学校の生徒でしかも俺の知ってる人だって言うんだから、
 他人だと思えないのは当たり前だけど…でもK・T…K・Tだろ?
 しかも頭が『か』…かー、かー……あっ! 垣根帝督かっ!!?
 いやでも、アイツはウチの生徒じゃないよな…? 大覇星祭にいたって話も聞かないし…
 ん~…俺も同じストラップは持ってるし、フォークダンスも踊ったけど、
 周りに美琴の好きな人とかいなかった……って、あれ?」
「「……………」」

何でだろう。二人がゴミクズでも見るかのような目でワタクシを見つめているのですが。


 ◇


常盤台に到着した。けどもうめんどくさいので、直接本人に聞いてみた。

 [ 十人目 ・ 御坂美琴 ]

「なぁ、美琴の好きな人って誰なんだ?」
「いいいいいいないなななないないないわよそんな人っ!!!
 べ、べべべ、別にアンタの事が好きとか全然そんな事ないんだからっ!
 きゅきゅ、急に変な事聞くのやめてよねっ!」

何だ、いないのか。じゃあ今までの情報は、全部誤報だったって事かよ。
はぁ…不幸だー。
まぁ、美琴に好きな人がいないって分かっただけでも良しとするか。
何かちょっとホッとしたし…あ、でも少しだけ残念な気持ちもするのは何でだろうな。

 [ 情報⑩ ・ 実は美琴に好きな人はいない ]


 ◇


「という訳で美鈴さん。美琴には好きな人はいないそうですよ」
『………あー、そう。ありがとう上条くん。
 あっ、ごめんなさいね。ちょっと詩菜さんに急用が出来たから、もう電話切るわね』
「あ、はい。母さんによろしく伝えてください。それじゃ」

こうして俺の日曜日は幕を閉じた。
にしても、今日はいつもと比べて大した不幸がなかったけど、
後でその分の不幸がキャリーオーバーでキャッシュバックしてくる…なんて事はないよな…?










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