激劇
テケテケテケと小さな2つの足が駆けまわる。
それをさっと抱き上げたのは、ツインテールの少女。
それをさっと抱き上げたのは、ツインテールの少女。
「あう、くおこー」
「ダメですわよ。邪魔になってしまいますわ」
「まーま、びりり?」
「えー、あれは……」
白井の視線の先にいるのは、ドレスを着た美琴。
この前は美琴のあまりの美しさに息を飲んだ周囲が、
現在は恐怖に固唾を飲んでいる。
雷神様の堪忍袋がパンパンなのだ。
この前は美琴のあまりの美しさに息を飲んだ周囲が、
現在は恐怖に固唾を飲んでいる。
雷神様の堪忍袋がパンパンなのだ。
「アンニャロウ」
美琴の視線の先は、
嵐。
3D映像が見せる情景は、荒れ狂う大海。
水をぶっかけられ、ずぶ濡れの上条はリフトに揺られている。
映像でリフトは隠れ、まるで2人は本当に大波に揉まれているように見える。
そう、彼に寄り添う姿が1つあるのだ。
こっれが美琴が気に入らない。
プリンセスドレスを着た自分に対し、
マーメイドドレスを着た人物。
嵐。
3D映像が見せる情景は、荒れ狂う大海。
水をぶっかけられ、ずぶ濡れの上条はリフトに揺られている。
映像でリフトは隠れ、まるで2人は本当に大波に揉まれているように見える。
そう、彼に寄り添う姿が1つあるのだ。
こっれが美琴が気に入らない。
プリンセスドレスを着た自分に対し、
マーメイドドレスを着た人物。
「早くセリフいいなさいよ!! 先に進まないじゃない!!」
ついに堪忍袋が切れた。
「いい加減にしろや!! 食蜂!!!」
「やはり、あの約束を遂行するのは、自分ではなく、貴方でなければならないようですね」
数日前、
衣装合わせで海原は仮病をした後、上条とすれ違い様にそう言った。
退場した海原に代わり、王子姿に変身した上条。
衣装合わせで海原は仮病をした後、上条とすれ違い様にそう言った。
退場した海原に代わり、王子姿に変身した上条。
「ばぶふっ!! に、似合わなすぎでしょ~~!! ふっ、くっあははははは!!」
海原と違い、当然似合わない。
大爆笑の美琴。周りも笑いを堪えている。
上条ももちろんおもしろくない。
だからクラスの連中に、自分の学校でも執事&メイド喫茶の催しものがあるから無理だ、と言ってもらおうとした。
しかし姫神に連絡したら、青髪にこっちに戻らなくていいとキレられた。
なぜ、姫神は他の奴に代わるのだろうか。
大爆笑の美琴。周りも笑いを堪えている。
上条ももちろんおもしろくない。
だからクラスの連中に、自分の学校でも執事&メイド喫茶の催しものがあるから無理だ、と言ってもらおうとした。
しかし姫神に連絡したら、青髪にこっちに戻らなくていいとキレられた。
なぜ、姫神は他の奴に代わるのだろうか。
「ぶぷぷー!!」
「まぁま!! ぷぷー」
美琴はまだ笑いが止まらないようだ。
つられてインデックスからもバカにされた。
つられてインデックスからもバカにされた。
上条がため息を吐いた瞬間、入り口が大きく開かれる。
中央に立つ人物のポーズは見覚えがあるのに、そのシルエットは記憶になかった。
中央に立つ人物のポーズは見覚えがあるのに、そのシルエットは記憶になかった。
「主役の登場だゾ☆」
で、現在。
「アンタは!! いつまでアイツの凶器に甘える予定だったのよ!! 揉まれているのは波だけでなくてだとふざけんな!!」
「いやいや、美琴、オレはあの場面、意識がない設定なのにどないすればいいの!!?」
確かにドキドキしたのは認めるが、
今の方がドキドキしている。
美琴さん、顔近すぎなのですよー!!
今の方がドキドキしている。
美琴さん、顔近すぎなのですよー!!
「毎回毎回アイツとイチャイチャしやがって!!」
「台本的にしょうがないかと!! あとあの子とは初対面のはずなのに昨日も同じ内容で怒られた気がする!! 」
「金髪ロングがそんなに魅力的かい!!」
「えー!! 一言もいってないよー!!?」
「そんなにたゆんたゆんぷにぷにがええんかコラ!!」
「嫌い、ムキムキが好きって答えた方が問題だと思います!!」
「で、アイツとはどういう関係なの!!?」
「アイツって誰さ?」
「……」
「あれ? さっきから舞台の練習してるけど、いつになったら主役来るんだろうな?」
「毎度毎度しらばっくれやがって!! 大概にしろビリビリーー!!」
「あっぶね!! 効果音が口癖になってらっしゃる!!? 昨日もこんなくだりした気がする!!?」
そこにかわいい乱入者が現れた。
「ぱーぱ!! まーま!! けーか、めっ!!」
「うぐっ、ご、ごめんなさい」
「えっ? オレは悪く……わ、悪かったよ、泣くなよインデックス」
ぐずりそうだったインデックスを白井から受け取り、慌てて2人であやす。
そこに、声をかける人物が1人。
そこに、声をかける人物が1人。
「みぃーさぁーかぁーさぁーん」
「みしゃき!! こーちゃ!!」
「こんにちわぁー、インデックスちゃん。相変わらずキュート力抜群だゾ☆」
睨み付ける母に代わり、娘が元気に挨拶する。
もう一人も挨拶する。
もう一人も挨拶する。
「お、アンタが主役の食蜂か、よろしくな」
そろそろ美琴のデコに青筋が浮かんだと、気づく鋭さが欲しいところだ。
「……はじめまして、上条さん。わたしぃー、 御坂さんのお友達の食蜂操祈っていいますぅ。ヨロシクね♡」
「あれ? オレ名乗ったっけ??」
「ええい!! 毎日なによ!! おんなじコントしやがって!!」
「えー? 毎度毎度なんで美琴さんはお怒りになるの?」
「……死ぬ?」
「目にハイライト入れてよー、 恐いよー」
「ほんと、御坂さんこわ~い。ね、上条さん」
「へ?」
「アアン? アンタ、もう少しまじめに練習しなさいよ」
「え~? 監督は大絶賛力だけど?」
「能力使ってんだろォが!!」
「み、美琴さん、声が一方通行になってますよー……って顔も!!?」
白井はため息をついた。
このやり取りを何度見たかわからない。
このやり取りを何度見たかわからない。
呆れた白井の後方で、監督から練習再開の声がかけられた。
そして、しばらくして再び白井は息を吐く。
息の中身は異なる。
感嘆だ。
息の中身は異なる。
感嘆だ。
「『助けていただいたあの時から、あなたの姿が瞼の裏から離れないのです』」
視線はスポットライトの中にいる二人。
「『どうか、私と結婚してください』」
数日前までは、2人とも演技がボロボロだったはずなのだ。
上条は演技力どころかセリフを覚えてこれなかったし、
美琴は高い演技力を持っているはずだが、相手が相手なので、しょっちゅう気絶していた。
上条は演技力どころかセリフを覚えてこれなかったし、
美琴は高い演技力を持っているはずだが、相手が相手なので、しょっちゅう気絶していた。
彼らはそれを3日で修正してきたのである。
監督も素人の2人を絶賛していた。
それほどの演技だった。
監督も素人の2人を絶賛していた。
それほどの演技だった。
きっと想像できないほどの練習をしているのだろう。
さらに上条は人のために動くとき、通常の数倍のポテンシャルを発揮する。
それが好きな人ならやる気も数倍だろう。
戦闘時の頭の良さが発揮されれば、演技やセリフの習得や記憶も簡単なようだ。
しかも教えるのはあの美琴だ。観察眼は鋭く、説明は的確。
考えてみれば彼らが本気を出せば、すぐに上達するに決まっている。
それが好きな人ならやる気も数倍だろう。
戦闘時の頭の良さが発揮されれば、演技やセリフの習得や記憶も簡単なようだ。
しかも教えるのはあの美琴だ。観察眼は鋭く、説明は的確。
考えてみれば彼らが本気を出せば、すぐに上達するに決まっている。
このシーンも、文句なく終わった。
その演技を見た後、休憩の時間。
息を吐いたのは、外のベンチで座る食蜂。
あの景色を見るのが辛いというわけではない。
ただ、やはりあの「はじめまして」という挨拶が、重い。
だから、もういいかな? と思った。
そろそろ誰かに役を押し付けてさっさと消えよう。
頷いた瞬間、あの毎日想っている声が聞こえた。
息を吐いたのは、外のベンチで座る食蜂。
あの景色を見るのが辛いというわけではない。
ただ、やはりあの「はじめまして」という挨拶が、重い。
だから、もういいかな? と思った。
そろそろ誰かに役を押し付けてさっさと消えよう。
頷いた瞬間、あの毎日想っている声が聞こえた。
「おい、なにしてんだよ、食蜂」
比喩ではなく、心臓が止まった。
いつの間にか、頭が動いていた。
瞳には、幻でない彼の微笑む顔が写る。
枯れ葉が、風で舞い上がった。
その日から、毎日数時間上条の姿が消えるようになった。
瞳には、幻でない彼の微笑む顔が写る。
枯れ葉が、風で舞い上がった。
その日から、毎日数時間上条の姿が消えるようになった。
数週間後、
「ん? またその話?」
今日は劇の本番。
白井は美琴に駆け寄った。
しかし、対応は劇の練習期間中、なんども繰り返したものと同じ。
白井は美琴に駆け寄った。
しかし、対応は劇の練習期間中、なんども繰り返したものと同じ。
「しかし……」
「くおこ、だーじょぶ?」
「ほら、インデックスも心配しちゃった。気にしすぎよ、アンタは」
白井もそうだとは思う。
なんたって先日彼の覚悟を問うために、決闘を申し込んだのは自分だ。
あの覚悟が演技とは思えない。
しかし、
なんたって先日彼の覚悟を問うために、決闘を申し込んだのは自分だ。
あの覚悟が演技とは思えない。
しかし、
「では、あのお二人は毎日どこで何をしていますの?」
もし、食蜂に彼が操られていたらと白井は懸念する。
(その可能性は0なんだけどねぇ)
幻想殺し。
白井はその詳細を聞いていない。
それに…
白井はその詳細を聞いていない。
それに…
「さ、そろそろ出番よ」
ステージを見ると、食蜂が演技をしている。
「相変わらず、演技だけは素晴らしいですわね」
「……そうね」
広い劇場の客席、
あちこちから感嘆の声があがる。
食蜂の叫ぶ嘆きが、悲鳴が、観客の心をかきむしる。
あちこちから感嘆の声があがる。
食蜂の叫ぶ嘆きが、悲鳴が、観客の心をかきむしる。
最後のセリフだ。
「私は!! こんなにもあの人を愛しているのに!!」
食蜂が舞台の袖に駆けてきた。
次は美琴の出番だ。
食蜂とすれ違う際、
互いを一瞥するが、かける声はない。
次は美琴の出番だ。
食蜂とすれ違う際、
互いを一瞥するが、かける声はない。
美琴が出て、演技を始めた。
再び会場がざわめく。
息つく暇もなく、劇に飲み込まれたのだろう。
指の動き、表情、声、
その全てが、観客の心に突き刺さる。
再び会場がざわめく。
息つく暇もなく、劇に飲み込まれたのだろう。
指の動き、表情、声、
その全てが、観客の心に突き刺さる。
「なんで!! あの人はこんなにも遠いの!!!!?」
一部の警備員【アンチスキル】は防衛を忘れて泣いていた。
凶悪犯が脱獄したという噂があるけど、いいの?それで?
凶悪犯が脱獄したという噂があるけど、いいの?それで?
そんなことは考えもせず、白井は美琴の演技に見とれていた。
しかし、途中から、バタバタという無粋な音がする。
最初は無視していたが、ついに我慢の限界だ。
しかし、途中から、バタバタという無粋な音がする。
最初は無視していたが、ついに我慢の限界だ。
「なんなんですの!!?」
目をやると、一部の生徒が慌てふためいていた。
理由を聞き、白井は目を見開く。
理由を聞き、白井は目を見開く。
「少し前から、上条さんが戻っていない??」
時間を少し遡る。
上条と美琴、両者の演技がない空白の時間。
2人は近くの公園にいた。
上条と美琴、両者の演技がない空白の時間。
2人は近くの公園にいた。
いや、違う。
「で、なんの用だよトール?」
美琴にヒビが入る。
中から現れたのは金髪の戦神だ。
中から現れたのは金髪の戦神だ。
「お? よくわかったな」
「いいから要件いってくれよ、この王子の格好であまり出歩きたくない」
「……」
「……なんだよ?」
「今まで、ずっと言うのを我慢していたんだ」
「……」
雷神は大きく息を吸った。
「くっそ似合ってねーぞばぶふふふくふあはははははは!!」
「うっせーよ!! 自覚あるわ!!」
「ちょーうける!!」
「うるせぇ!! さっさと用件を言えって!!」
「悪い、悪い、あのさ、拳を構えてくれ」
木枯らしが木々を揺らす。
あまりにも、自然に言葉は紡がれたため、上条はその言葉を飲み込むのに多少時間を要した。
あまりにも、自然に言葉は紡がれたため、上条はその言葉を飲み込むのに多少時間を要した。
「殺し合おうぜ!!」
トールは笑顔で話す。
ようやく言葉の意味を理解した上条は、口からこぼれるままに音を発する。
ようやく言葉の意味を理解した上条は、口からこぼれるままに音を発する。
「な、にを、言っているんだ?」
「だから、殺し合おうぜ!!」
「い、いや、オレとお前が戦う理由なんてないだろ?」
「御坂美琴」
風の音がやんだ。
「1人の女に2人も男はいらない」
そうだろ?
ニヤリ、と笑いながらトールは拳を握った。
周囲の喧騒がフェードアウトする。
世界に2人しかいないような錯覚に陥りそうになっていたトールの耳に、
ニヤリ、と笑いながらトールは拳を握った。
周囲の喧騒がフェードアウトする。
世界に2人しかいないような錯覚に陥りそうになっていたトールの耳に、
「なにいってんの? 用事ないならオレ戻るよ?」
という信じられない言葉が飛び込んできた。
「は?」
今度はトールが混乱していた。
何かの間違いだと思った。
しかし、目の前の男は自分に背を向け戻っていく。
何かの間違いだと思った。
しかし、目の前の男は自分に背を向け戻っていく。
何故だ?
ヤツは自分の気持ちを知っているはずだ。
夏祭りで当て付けるように自分の感情を聞かせたから。
夏祭りで当て付けるように自分の感情を聞かせたから。
だというのに
ヤツは冗談だと笑いやがった
オレがどんな気持ちでここに立っているかも知らずに!!
あの少女の気持ちも察せないくせに!!
この覚悟を踏みにじる気か!!!!
呆けた顔が歪んだ時、
少年の覚悟が殺意に変わった。
少年の覚悟が殺意に変わった。
「まま??」
婚后の腕に抱かれたインデックスが、不安を込めて声を紡ぐ。
視線の先には愛しの母。
ドレスを纏った彼女はステージの上で佇む。
観客がざわつき始めた。
あまりにも、間が空いていた。
視線の先には愛しの母。
ドレスを纏った彼女はステージの上で佇む。
観客がざわつき始めた。
あまりにも、間が空いていた。
「もう少しお待ちください!!」
白井は叫ぶ。
相手は困った顔をした監督や責任者だ。
相手は困った顔をした監督や責任者だ。
「とはいっても、これ以上時間を空けるわけにはいかない」
「代役を用意しますので、そちらで対処するしかないでしょう」
白井はくじけない。
あの人が待っているのは、代役なんかではない。
あの人が待っているのは、代役なんかではない。
「お願いです!! 時間を稼ぐ方法ならありますの!!」
「そんな不確定の要素に賭けれるわけがないだろう? なにを用意すればいいんだい?」
「昭明をおねえ…御坂さまに集めるだけで構いません」
「よし、指示を急げ!!」
誰も、自分にリモコンが向けられたことに気付かなかった。
血が、飛び散った。
「て、めぇ!! 衣装に血がついちまったじゃねぇか!!!!」
「衣装?? …おまえは!! いつまでふざけてやがんだ!!」
攻撃を避け続けていた上条に、ついに拳が届いた。
口からこぼれる赤い液体が、王子の衣装を黒く染める。
口からこぼれる赤い液体が、王子の衣装を黒く染める。
「ふざけてんのは、てめぇだろうが」
「……わかった。ふざけてたかもな。手加減せず、きちんと殺してやるよ」
「……わかってねぇよバカ野郎。時間切れだ。もう付き合ってやれねぇ、沈めてやる!!」
「ふ、ふぇぇ」
「あぁ、どうしましょ!! どうすれば!!?」
観客席のプレッシャーに耐えられなくなったインデックスが、婚后の手のなかでグズりだした。
(インデックス…)
すぐに駆け寄ってあげたい。
抱きしめて安心させてあげたい。
すべてを投げ出したい衝動にかられた美琴の正面、
段々と階段のようになっている観客席の最上段、その奥の入り口付近に一瞬、
抱きしめて安心させてあげたい。
すべてを投げ出したい衝動にかられた美琴の正面、
段々と階段のようになっている観客席の最上段、その奥の入り口付近に一瞬、
(黒子?)
瞬間移動能力者の姿が見えた。
そして、次の瞬間、手元に荷物が届く。
そして、次の瞬間、手元に荷物が届く。
3メートルは浮かんだだろうか?
2、3度バウンドして上条は地面を転がる。
2、3度バウンドして上条は地面を転がる。
「ガハッ、グフッ」
酸素を吸おうとしているのに、
喉は血を吐くことしかしてくれない。
喉は血を吐くことしかしてくれない。
「あの雪原とは違ってここには鉄道はない」
上条の吐く血を浴びたトールの足が、そのまま上条の頭を蹴りあげる。
再び距離が開いた。
トールは呆れている。
流石のタフさだ。
普通の人間ならもう気絶してもおかしくない。
再び距離が開いた。
トールは呆れている。
流石のタフさだ。
普通の人間ならもう気絶してもおかしくない。
「てめぇにオレを攻撃する術はない」
だが、
自分の覚悟を踏みにじったコイツを賞賛する気には、さらさらなれなかった。
自分の覚悟を踏みにじったコイツを賞賛する気には、さらさらなれなかった。
「ここでてめぇを乗り越えて、アイツを奪い取ってやる」
この言葉を言い終わった後だった。
ヤツが、モゾモゾと動いた。
それだけではない。
虚ろな瞳で、ふらつく足で、朦朧とした意識で立ち上がり、
かすれた、しかし、強固な意思を孕んだ声を放った。
ヤツが、モゾモゾと動いた。
それだけではない。
虚ろな瞳で、ふらつく足で、朦朧とした意識で立ち上がり、
かすれた、しかし、強固な意思を孕んだ声を放った。
「…奪う?」
「あれは……ヴァイオリン?」
客席に座る硲舎佳茄は呟いた。
いつもお世話になっている御坂美琴が手にしたのはヴァイオリン。
美琴は弦を構えると、舞台の脇にいるインデックスに優しく笑みを送った。
視線が交わったのを確認すると、心のなかで頼りになる後輩に感謝し、弦を動かす。
戻った白井は、流れるメロディーを聞き、ふと声を漏らした。
いつもお世話になっている御坂美琴が手にしたのはヴァイオリン。
美琴は弦を構えると、舞台の脇にいるインデックスに優しく笑みを送った。
視線が交わったのを確認すると、心のなかで頼りになる後輩に感謝し、弦を動かす。
戻った白井は、流れるメロディーを聞き、ふと声を漏らした。
「キラキラ星?」