とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part023

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第3章-03


「弱者の恫喝」という言葉がある。
失うもののない弱者が、強者を卑劣な
手段で恫喝することをいう。

某人民共和国が起こす数々の核実験や、
南欧州の小国が、借金は返さないとごね借金返済
を先延ばしするなどが実例だろうか。

御坂美琴は、昨日自分が行った数々の行為は、
「弱者の恫喝」にすぎないと
認識している。
ようは「アンタが私をじゃまをするなら
アンタの箱庭(学園都市)をいつでも止められるのよ」という話だ。

これが例えばあの僧正なら、自分の気分で壊して終りだろう。
アレイスタにいやがらせするなら。

だが、火力に乏しい今の自分には
あの窓のないビルを壊す手段がない。
一方通行にさえ破壊できないあのビル。おそらくICBM が
直撃しても破壊できないだろう。

いや・・壊すだけなら、手段はなくはない。
私の最終進化形らしいアレ アレになれば命を引き換えに破壊は
できるだろう。だが・・それは単なる自爆テロにしかすぎない。

アイツと上条当麻を愛し守るという目的からみれば本末転倒だ。

だがら、いつでも学園都市という箱庭を止める手段を
持っていることを誇示しつつ、
アレイスタを窓のないビルから引き釣り出すという話になる。
まあいい、初戦は大成功。いづれヤツは出る。
水槽から出る。あの1700歳とかという人間は

そのときはまあ・・その
ワンチャンスがすべてというわけね。

それにしても昨晩の攻防は脳神経を極限まで使った。
アレを使わなけらば5分で負けただろう。
アレか・・・
まあいい。私は一度は死んだ身。彼と同じステージに立ち、
彼を愛し、彼を救う
ためになんでもやると決めたのだ。いまさら何をためらうことがあろう。

それに、超能力者とは、レベル5とはそれになるためにすでに
脳を直接電極で刺激し、薬物を使用している。
御坂美琴はこの町の学生の最上層、当然のことながら
能力開発に使用する薬品はすらすらと暗唱できる。
その中にアンフェタミンという薬物の知識があった。
それが持つ魅力的な効用。睡眠抑止効果。
覚醒効果。疲労防止効果。

それが、常習性の高さから禁止薬物であることも
もちろん知っている。
だが、・・僧正襲来というイベントは彼女の多くの精神を破壊した。
だから普段なら絶対しない、禁止薬物というタブーを打ち破ることに
ためらいをなくさせた。

    • まあちょとならいいわよね。ちょとなら・・

その全能感は一時的に彼女の演算能力を向上させ、普段
ならできない
この町の主要システムのハッキング及びソフト書き換えを
可能とさせた。
そして昨晩の電脳大戦も薬物なしには維持できなかったろう。

むろん、御坂美琴にはわかっている。
こんな反則は続けてはいけないのだと。だからこれが終わったら
やめよう。
そう思っている。

まあいいわ・・あれさえ手に入れればアンタフェミンは無用よ。
あれさえ・・

そして、意識を元に戻し、周囲を見る。

さあ。。まずは食事・食事。
食事の準備をしましょ。

はあ・・・やっぱり頭を極限まで使うと疲れるわね・・・
腕を伸ばし、背伸びをする。生体電流を操作し、
乳酸を急速に分解する。
そして・・
耐火金庫から注射器と、小麦粉のようなものが
入った薬を取り出す。


美琴は、ハッキングでアンチスキルから入手した
アンフェタミン1回分を
注射する。そして5分もしないうちに、全身から
力がみなぎり、異様な高揚感を
感じる。

はあ・・薬てすごいわ・・いや脳波を調整すれば
いくらでも快感は得れるけど、
やっぱり直接ドーパミンを脳にぶち込むのはわけが違う。
だが・・こんな薬で得られる力なんかかりそめのものだ。
まあすべてが終われば、やめよう。こんなかりそめ
の力などないほうが
いいのだ。そんなことはわかっている。

そして手際よく、朝食の準備を始める。
焼き魚と、海苔と、香ばしい味噌の香りが鼻を刺激する。
ふふまるで主婦みたいね。

さあ当麻、インデックス、ごはんできたわよ。
スフィンクスさん、オティヌスさんはこっちよ。

ああ、私はこんな家族がほしかったのね。
本当に幸せだわ。

愛する人と交わすたわいのない会話、インデックスの愛らしい笑顔。
それをかいがいしく世話する自分
当たり前なのに、でもそのあたりまえのひとときが
今はとっても大切に感じる。
その当たり前の裏に多くの人のそれを
維持する普段の努力・労働・汗
それなくしては、この世界はすぐに壊れ、ただの
バックグラウンド環境に戻ってしまう。

そう。この世は簡単に壊れ、消滅する。
多くの偶然が重なり、生まれた生命、約40億年の
DNAの連鎖の先にある、
自分たちの命。
この壊れやすい、はかない命に宿った魂。

僧正に合わなければ一生気がつくことがなかった当たり前の真理
今はいいたい。僧正本当にありがとう。


そして、食事が終り彼との別離の時間。
今はこの幸せを失いたくない。そんな思いが、私に一言を言わせる。

美琴:当麻、学校頑張ってね。
   それと・・当麻まだ怖いわ。今晩も・・いやしばらく止まって
   くれない?
当麻:美琴は・・いや悪かった。まだ僧正の事忘れられないんだな。いいよ。
   それに、美琴のごはんはうまいしな・本当弁当も含めてありがとう。
   ああ、美琴のトラウマがなくなるまで、泊まるよ。
美琴:ありがとう。それと一緒に勉強しよ。
当麻:はは・・おてやわらかにな。天才少女。でもあんまりいじめるなよ。俺はおバカさ   んだからさ。
美琴:大丈夫。当麻は地頭は悪くないんだから。じゃ学校頑張ってね。
当麻:ああ、無理すんなよ。美琴・・

ふっと。気がつく罪悪感。
心の中の怜悧な御坂美琴の一言。
「アンタ、薬いつまでやるの?そんなこと彼に言える?」

    • 当麻の後ろ姿を見送りつつ、美琴は決心する。

金庫からアンフェタミン10袋を出し
すべてトイレに流す。
購入指示書をアンチスキルのサーバーからデータごと消去する。
そしてその紙は廃棄文書の指定とした。
おそらくは、今日中には裁断されるだろう。
そして証拠を隠滅する。

こんなもの、もういらない。
もうやめた やめた、私にはうじうじ悩む事は似合わない。
当麻にきっちと告白した。もう自分のやりたいことはほぼ
達成している。アレイスタの正体もほぼわかった。
この町の姿、目的も大体は理解した。
自分は何もしらない学生ではない。
自分は井の中の蛙もやめた。
こんな薬なんかもういらない。

当麻とともに歩くと決めた私にこんなかりそめの力なんていらない。
こんなかりそめの力でなにをしようと、たとえ相手が怪物だから、なんでも
やっていいなんて間違っている。他のもっとまっとうな方法を探そう。
いまならできる、すべてを知った今ならできるはずだ。
弱者の恫喝は所詮は時間稼ぎ。いづれは、ネタは尽きる。
本当の、代替案を見つけよう。
アレイスタと交渉できるときに当麻と一緒に話そう。

御坂美琴
弱い自分はもう終わり。
自分は誓うもう薬はやらない。
自分は誓う弱者の恫喝はしない。
何ひとつかけることがない幸福なハッピエンドを目指して戦うのよ。










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