とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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とある二人のバレンタイン



――午前、とあるファミレス店内――


学園都市に存在する、とあるファミレス。
度々来る常盤台中学の生徒二人が、今日も来ていた。

「お姉さま、本日は初春、佐天さんと何処へ参りましょうか」
「そーねぇ……今月は2月――ああっ!」

レベル4の白井黒子、学園都市レベル5の一人超電磁砲の御坂美琴の二人は、
友人の佐天涙子、初春飾利らとの待ち合わせの中のようだ。

「お姉さま!? とりあえず店内で叫ばれるとほかの御客にご迷惑が掛かりますわよ」
「……黒子、アンタにだけは言われたくないわ、私行きたい所があったのよ」
「行きたい所? 何処ですの?」
「デパ地下よ」
「御坂さん、デパ地下に行きたいんですか?」
「なら私もアレ買いますから賛成ですよ~」

普段所構わず変態行為を行う黒子に注意を受け、脱力気味に行き先を告げると
横から待ち人である、佐天と初春が現れ、
さらにその後ろには余り見たくない顔が映り、向こうもこちらの視線に気づいた。

「よォ、超電磁砲元気そうじゃねェか」
「一方通行……何でアンタがこんな所をウロウロしてんのよ!」
「お、お姉さま!?」

声を掛けて来たのは、美琴と同じくレベル5の一人、一方通行だった。
美琴としては、『妹達』の件があり、あまり関わりたくない相手だった上、
今は黒子達も居る、下手な事にならないようしないと。

美琴の対応に、黒子や佐天達も若干動揺しているようだ、
ほかの客も美琴の声に一度振り返ったが、直に元の雰囲気に戻って行き。
一方通行は口元を吊り上げ、楽しそうな声で返事を返す。

「ハッ! 随分な嫌われようじゃねェか、数ヶ月ぶりに会ったっていうのによ!」
「一方通行……うーん、あっ! 学園都市レベル5第一位の一方通行さん?」
「あァ、誰だお前? オレはたしかに一方通――!?」
「女性に対して、もう少し言い方を考えた方が良い。ってミサカはミサカはアナタに指摘してみたり」

一方通行の後ろから小さな歩幅で歩いてくるアホ毛が特徴的な打ち止めが現れ、
それを見た黒子達は驚きの顔を隠せない、御坂美琴の幼少期ソックリだからだ。

「可愛い!」
「コ、コレハ!!」

佐天と黒子が各々の反応を示し、美琴は驚愕とし、初春は頭を撫でながら挨拶をしている。

「ようやく会えましたね、お姉様! ってミサカはミサカは抱きついてみたり」
「ちょっと! どういう事よ?」
「私は打ち止め。妹達の最後ってミサカはミサカは説明してみる」

そこでふと、ファミレスのドアが開き、
黒いトゲトゲした髪をした上条当麻と美琴と瓜二つな御坂妹が入ってきた。

「なっ! ちょっとアンタ、何でこんな所にこの子といるのよ!」
「み、御坂! いや~御坂妹に買い物に付き合って欲しいって、ほら男手が必要だからって。なぁ?」
「はい、デパ地下でとある材料を調達しに行く予定です。とミサカは懇切丁寧に答えます」
「ちなみに、食事を摂っていなかった為ミサカが8割という譲歩案を採りこちらで食事にする所です。とミサカは説明しつつ抱き付きます」

入ってきた二人に迫る美琴に当麻は驚き、御坂妹は口元を若干吊り上げ、
美琴に説明しながら、当麻の腕に絡まり美琴を挑発する。

「えっ、ミサカさんって双子だったんですか?」
「お姉様が二人!?」

「お前らもデパ地下かァ?」
「私達もデパ地下でお買い物だよ。ってミサカはミサカは真似して抱きついてみたり」

「一体どういう事ですの?」
「何だか、私達の知らない所で御坂さんも大変なんですね、何だか妹さんにあの人取られてるみたいですし」
「あの類人猿がぁぁぁぁ」

状況把握出来ない黒子の声は御坂達には聴こえず、
美琴、当麻、御坂妹の話を聞いていた一方通行と打ち止めも目的地が同じようだ。


――午後、デパ地下への道中――


一行は事ある毎に利用するデパ地下に向かっている。
結局、一方通行組み、当麻組みは食事を取れずに移動している。

「所で、何でアンタはこの子と手を組んで歩いてる訳!?」
「んなぁ事俺に言われても、という訳なんだが御坂妹、少し離れてくれないか?」
「断固拒否です。とミサカは強く抱き付きます」

「……アイツもいろいろと大変なんだなァ」
「大変ってどういう意味かな? ってミサカはミサカは聞き返してみたり」

「あの類人猿、金属矢を体内に……」
「し、白井さん、そんな事したら始末書では済みませんよ!」
「まぁ御坂さんがアレだからね~」

美琴は御坂妹の説得に諦め、黒子達と歩き始める。

「御坂さん残念でしたね~」
「……残念って何が?」
「お姉様!」
「ひゃっい!」
「今日は私達とのご予定がありますのよ! 少なくとも今日はあの類人猿……もとい殿方の事は忘れてくださいまし」
「そうよね、私は黒子達と予定組んでたもんね。……ごめんね、デパ地下は止めて別の所行こっか」
「私達は良いですよ。ねぇ佐天さん」
「うーん私は材料買うつもりだったけど、まぁまだ期間あるしゲーセンでも行きましょう!」
「そうですわね、ゲームでしたらお姉様もお楽しみになれるでしょう」

話が纏まると、初春と佐天が一方通行と当麻の元へ行き、その後一方通行以外に見送られ、美琴達はゲーセンのある学区へ。

「……何だか、悪い事したな」
「フン! 相変わらず面倒を抱えてやがるなァ」

いつの間にか当麻と一方通行が並びながら、歩いていた。

「ところで、お前らは何しにデパ地下に行くんだ?」
「俺ァは買い物に行きたいつってるガキを餌にされ晩飯の買出しだ」
「お前って結構面倒見が良いんだな」
「買出しは黄泉川が言い出したんだよ!ってミサカはミサカは補足してみたり」
「黄泉川ってうちの学校の黄泉川先生かよ!」

そんな珍しい組み合わせの雑談の中、デパ地下に到着したが、どうやら買う物は左程変わらないと知るや、
一緒に周ると打ち止めが泣き叫び、彼らは食品売り場へと向かった。


――夕方、とあるゲーセン店内――


「よ~っし! 95点!!」
「相変わらず凄いパンチですね佐天さん」
「風紀委員に加入してみてはどうでしょう? お姉様もそう思いませんか?」
「そうね~、でも最終的に佐天さんの判断だから」

とあるゲーセンのパンチングマシーンで遊んでいた四人だが、美琴の心は当麻と御坂妹の事で頭が一杯だった。

「次御坂さんですよ~」
「あっ、うん」
「ふぅ……ッ! ぶち壊す!!」

グローブを装着した美琴は、当麻の真似をしてパンチングマシーンの的を殴り、スコアが現れた。

「125点……す、すごい!」
「お、お姉様いつの間にそのような怪力をっ!」
「えっ? やったぁ! 新記録!」

この時美琴は、自分の中に描いた当麻と御坂妹のイチャイチャした幻想を壊す思いで殴っていた。

「完全下校時刻ですわね、そろそろ帰りましょうか」
「御坂さんの新記録も見た事だし、次は目指せ128点!」
「佐天さん……」
「それならまた高得点出すわよ~!」

黒子達はそれぞれ帰路に着いた。


――同時刻、とある病院前――

「ここで良いのか?」
「はい、今日は付き合ってもらって助かりました。とミサカは頭を下げてお礼を言います」
「良いって、困っている時は頼れよ。お金以外なら何でも相談に乗るからさ」
「では14日日曜日。また付き合ってくださいとミサカは上目遣いで懇願します」
「あ、ああ判った。日曜は補習があるから、昼からになるが良いか?」
「大丈夫です。とミサカは答えます」
「それじゃ14日の日曜日なぁ~」

夕日が薄暗くなる空の下、当麻は小走りで寮へ走って行った。

「14日、どうやら気づいてないようですね。と一人ほくそ笑みます」
(勝負ですお姉様)


――13日夜、常盤台中学女子寮の厨房――

「う~ん。困った……」
「御坂様、どうなさったのです?」
「えっ! いやぁ、きょ、去年チョコを欲しがってた子が多かったから、今年は手作りを用意して渡してあげようかなって」
「まぁ、まぁ、では私達も及ばずながら、お手伝いさせていただきま――」
「ダメダメ! 私が一人で作らないと手作りじゃないでしょ!」
「うーん、それもそうですね。では何かお困りになられたらお声を掛けて下さい」
「うん、あっ参考までに聞きたいんだけどさ、男子ってどんなチョコが良いのかな?」
「!!! 御坂様が男性にチョコをお渡しになさる?!!!!」

美琴の後輩がつい勢い余って叫んでしまい、厨房でチョコ作りをしていた、生徒達に迫られてしまった。

「ちょっと~!!!」
「お姉様がチョコを殿方に差し上げるですってえええ!!」
「ちょっ黒子! アンタ、シャワーを浴びてたんじゃ」
「部屋まで響いてましてよお姉様……」

美琴の顔がドンドン蒼白になって行くと共に、ゆっくりと厨房の扉が開き寮監が現れた。

「「「「「!?」」」」」
「!お姉様、この場は何とかしますから、しばらく非難してくださいまし!!」

黒子は咄嗟に美琴の肩に手を置き、寮の外へテレポートするとすぐに戻ってしまった。

「ハァ不幸。アイツの気持ちが痛いほど判る気がする。いつもこんな変事に巻き込まれてんのよね」
「あぁっ! チョコの材料は厨房だし、時間も20時回ってるし、もう時間無いじゃない」
「不幸。また言ってる。アイツはいつも私と会ってタイムセール逃してるのよね」

まさに当麻の不幸を軽く追体験してる気がすればするほど、申し訳ない気持ちが現れる。

「あれ! お姉様だぁ~。ってミサカはミサカは抱き付いてみたり」
「あっ、打ち止め」
「よォ、また会ったな。こんな所でどうしたんだ、追い出されたのか?エェ?」
「まぁそんな所ね、もぅ間に合わないし」
「もしかして、チョコ作ろうとしてたのか?テメェ」
「そうよ! 悪い!? 私だって一応は女の子なのよ! 一度位バインタインチョコ作ったって良いでしょ!」

美琴は涙ながらに叫び始め、打ち止めは美琴の足に力強く抱き付き、一方通行は大きな溜め息と共に後頭部を掻く。

「だったらよォ、うちへ来い。ガキが大量に材料買い込みやがったから心配すンな」
「うんうん、材料なら沢山!、あの人と一緒に買った時、参考に好みも聞いといたよ! ってミサカはミサカは胸を張ってみる」

二人の言葉に少々唖然とした状態になったが、涙を袖で拭った後、笑顔で打ち止めにお礼を言う。

「俺には無しかよ! ケッ!」


――13日夜、黄泉川家台所――

「――でね、あの人はショコラと生チョコとホワイトチョコレートと――」
「ちょっと! ちょっと! アイツそんなチョコ好きなの?」
「そうだよ~『疲れてる時』や『勉強の合間に食べてる』って言ってたよ。ってミサカはミサカはしっかり報告してみたり」

一方通行達が厄介になっている黄泉川家に入った美琴だが、打ち止めの収集した情報を聞けば聞くほど驚きを増している。

「しっかし、女ってーのは、よくまァあんなに甘い物に手間隙掛けんだなァ」
「あの子が自分でチョコレートを作るんだって、ここ毎日キッチンを占領してるわね」
「まぁ明日が14日じゃん、休みじゃなければ、学校内でいろいろと大変だったじゃん」

コタツに入りテレビを見ながら、時折キッチンの様子を伺う一方通行、芳川、黄泉川の三人。

「まぁ明日は楽しみにしてなさい、私達もチョコ買ってきてあげるから~」
「楽しみにしてるじゃん」
「ケッ! 誰がそんな甘い物で喜ぶかって」

テレピを見ていた黄泉川が何かを思い出したように、キッチンに向き直り、美琴にとある情報を授けた。

「まぁ、頑張るじゃん」


――14日午前、当麻が通う高校の教室――


「なぁ~カミヤン、今日は日曜日だニャー?」
「あぁ、普通なら休日を満喫出来る日曜日だぜ」
「カミヤン……僕らは補習で日曜日に登校してるやで?」
「だから?」
「「何で日曜に大半の女子が登校して来てるん(や)だニャー!!」」
教室でデルタフォースと呼ばれる三人、青髪ピアス、土御門元春、そして上条当麻は、
いつもの様に他愛の無い雑談をして居たはずだったが。
廊下を見れば女子が何人か待機しており、校庭を見ればさらに多数の女子が待機している。
「またまたカミヤンを殴りたくなってきたぜお」
「とりあえず一日校舎に吊るすでぇ」
「ハァ……不幸だ」
当麻の刑を決めている最中に教室の扉が開かれ、補習担当の小萌先生が教室に入り、授業が始まった――はずだった。
突然教室の扉が開き、そこに立っていたのは軍用ゴーグルを装着した御坂妹だった。
「お迎えに上がりました。とミサカは挨拶します」
「……あのぅ御坂妹さん、上条さんはこれから補習なんですけど」
「緊急の問題が生じた為予定を変更させて貰います。とミサカは謝罪した上で連行します」
「カ~ミ~ヤ~ン~……」
「「「「上条当麻を殺れえええぇぇぇぇ」」」」
バレンタインの14日の日曜日、誰が好き好んで補習を受けている輩が居るだろうか、
そんな中可愛い中学生のお出迎えという、言わば最高に憎たらしいシーンを、
眼前で見せられている補習組みは当麻に殺意を向け追いかけ始めた。
「あっ上条く~ん」「上条君!こ――」
「ここは新手が多いので急ぎます。と御坂は走るスピードを上げます」
「ちょっ! 上条さん明日殺されるから! 不幸だあああぁぁ」

よく美琴と出会う、自動販売機の前まで走って来た。
さすがに学校から、此処まで走りっぱなしはきつい、御坂妹も大量の汗が流れている。
「やっぱりね……」
「!?」
「お姉様、何故此処に? とミサカは驚きを隠せません」
以前御坂妹と会ったベンチに腰掛けた時、後ろから声が聴こえ、姿を現したのは美琴だった。
「昨日の夜、黄泉川先生にアンタが補習だって教えてもらったのよ」
「俺!?」
「でもその時気づいたの、ミサカネットワークで情報の共有をしている打ち止めが傍に居たって事は、あの子にも情報が筒抜けだって」
「それで私が抜け駆けすると思い、此処に先回りを? とミサカはお姉様を睨みつけます」
「そうよ、まさか本当に連れ出すとは思わなかったけど」
美琴と御坂妹は淡々と話を続けるが突然補習から拉致られるわ、いきなり姉妹同士で話を始めて置いてけぼりにされるわ、
当麻の中で全く整理が付かなかったが、今日が2月14日、バレンタインである事に気づいたが、
よもやこんな事をしてまで、自分にチョコを渡すはずは無いと決め付け、別の理由が探してみる。
「とりあえず、いきなりだけど山場ね……」
「では私から行きますとミサカは――」
二人して当麻の前で振り向き、美琴からの電撃癖か一瞬にして身構え目を瞑る当麻だが電撃も何もこない――もしや、
そっと目を開けると普段では見えないであろう、御坂妹の頬が赤くなった顔があり、手にはハート型にピンクのラッピングをしたチョコレートが差し出されていた。
恐る恐る受け取ると、御坂妹は安堵した顔になり、美琴に場所を変わる。
「昨日、ちょっといろいろあって、種類は揃わなかったけど……」
大きめのケースに一口サイズで多種多様なチョコレートが入っていた。
美琴はタコのように顔を赤くし、俯いてるが今までと違い誤魔化す言葉が無い。
「これは! 上条さんの好物ばかりじゃないですか!」
受け取ったケースの中身を確認すると、大喜びの当麻に心の中でガッツポーズを決める美琴。
後ろで下唇を噛み締める、御坂妹は美琴の横に並び――

「それでは、最後の勝負です。とミサカは真剣に問いかけます」


――14日午前、とある自動販売機前――


「最後の勝負??」

未だに状況の説明が無い為、当麻からして見ればとても不安で仕方ない。
御坂妹と美琴は再び、お互いを見た後またも御坂妹が一歩前に踏み出す。
「私という個体は、上条当麻が好きです。とミサカは誠心誠意を込めて想いを告げます」
「!?」
「次は私ね……スゥ、私御坂美琴は! 上条当麻が! ずっと好きでした!」
「ちょっ! お前ら!」
「「答えて(ください)」」
突然の告白に、平常心を保てない当麻だが、何故か腹は決まっていた。
大きく深呼吸をした後、二人を見据え口を開いた。
「ごめん! 御坂妹とは付き合えない」
「俺はずっと、御坂に嫌われてると想っていた。いっつも出会い頭に電撃放つ凶悪な所もあるが」
「でも、そんな毎日が楽しく思ってた部分があったんだ、普段の下校時に御坂と会えない時は不安に駆られる事もあった、
多分自分でも御坂の事が好きだって気持ちは判ってた、でも年の差や世間体、何より御坂が俺の事を嫌っているって不安な気持ちが、
何より大きかった、今まで言い出せなくてごめん」
「……そうですか、お姉様の事お願いします。とミサカは返答します」
「バカ! こういう時は泣くものよ」
当麻の返答に、御坂妹では無く美琴が涙を大粒の涙を流している。
美琴の涙に呼応するように御坂妹も泣きながら、美琴に抱き付き、当麻は二人の肩に手を回していた。

しばらく二人が泣き続け収まった頃合に当麻の携帯に着信が入った。
『バカの上条ちゃん、今回は私の方で処理しておくので、大切な一日にしなさい』
と小萌先生からのメールが届いていた。
「それでは私は、病院に戻ります。とミサカは二人の幸せを祈りつつ帰ります」
「送っていくわよ」
「いいえ、ちょっと寄る所もあるのでお気遣い無く。とミサカはお姉様の申し出を断ります」
「……行っちまったな、でもチョコは貰っちまったしホワイトデーにはちゃんとお返ししないとな」
「私にもお返しくれる?」
「ああ、上条当麻の出来うる限りのお返しをな」
「それじゃ楽しみにしてるね」
二人はその場で見詰め合って唇をお互いに近づけ、口付けを交わす――直前で、
「所でまだ私への返事がまだなんだけど?」
「えっ?」
美琴への正式な返事がまだだった事を忘れていた当麻に、美琴の頭上に電気が走り始めた。
「不幸体質な上条当麻ですが、付き合ってください」
「っぶ! ホント、アンタ……当麻らしい返事ね」
当麻の返事に噴出した美琴だが、彼の――好きになった男らしい言葉で飾られた返事に嬉し涙を流す。
「それじゃ不幸体質の当麻に幸運のプレゼントっ」
「幸運のプレゼッ――」
嬉し涙が止まらない、美琴はプレゼントと称して、当麻の唇にキスした――自分のファーストキスを捧げたのだ。
あまりに突然だった為、目を見開き驚き美琴の唇の柔らかさを感じる当麻、
恥かしくて顔を見れない上、首に手を回し引き寄せ、当麻の唇を感じていようとする美琴。
短いようで長い、初めてのキスが終わりお互いの顔が離れる。
「……たしかに幸運なプレゼントだったな」
「私も当麻にプレゼント出来てよかった。所でこれからスーパーで買い物して一緒にご飯食べない? 私の手料理がお昼御飯になっちゃうけど」
「そうだな、今からなら時間も丁度良いし、ミサカの手料理が食えるなら楽しみだ」

二人の思い出の場所で、今日から恋人同士の日々が始まってゆく。


――14日午前9時30分、スーパー食品売り場――

「さて、と、当麻は何食べたい?」
「んー、美琴が作ってくれる物なら何だっていいぞ」
あれからスーパーに直行すると思っていた当麻だったが、美琴が寮に一度戻ると言い出し何やら大きめのバックを持って、
目的地であるスーパーに辿り着いた。
「そうね~、それなら――」
「ああ! お姉様とあの人だぁ! ってミサカはミサカは抱き付いてみたり」
「どうやら、上手くいったみたいじゃねェか」
「ありがとね、貴方達のおかげよ打ち止め~」
美琴は打ち止めに合わせるように膝を付き、抱き締めていた。
「ん? 何かあったのか?」
「当麻にはまだ言ってなかったわね、昨日――」
昨日起こった出来事を当麻に説明する美琴。
「なるほどな、それで俺の好みが入ってたって事か」
「いいじゃねェか! 俺みたいに試作品だつって毎日食後にチョコ食わされるよりよォ」
その後打ち止めと一方通行の言い合いを苦笑いしつつ、見守る当麻と美琴。

「それじゃ!お幸せに~ ってミサカはミサカは買い物の続きを催促してみる」
「まァ、何だ、また気が向いたら、助けてやらァな」
そう言って一方通行と打ち止めは、別の売り場へと消えた。
「何だか、アイツも性格変わったな」
「そうね、きっとあの子の影響かしらね……ところで、私達のお昼はオムライスで良いよね?」
「あぁ良いぜ、美琴のオムライスか。楽しみだな」
二人でオムライスの材料と他に良さそうな材料を購入し、スーパーを出たが大きい袋二つ分も買った為、
当麻が両方持ち事になった。
「私が片方持つわよ」
「良いってこういうのは男の役目だろ……いつものパターンに成らないように」
当麻が普段の不幸っぷりを思い出してるのを横で見た美琴は、当麻の左腕に抱き付いた。
「たくっ私が一緒に居るのよ。当麻の不幸なんて、私の超電磁砲で吹き飛ばしてあげるわよ」
「……ツッコミたい所もあるが、ありがとな美琴」

恋人繋ぎとでも言える格好で家路に着いた。初々しいカップルの姿がそこにあった。


――14日午前9時50分 とある道路上――

「ここまで本当に何も無いな。いつもなら、空き缶が転がってくるか、
誰かが走ってきて体当たりされるイベントが起こるのですが」
「当麻って……ホント不幸っていうか、何ていうか」
美琴は若干呆れ気味に言葉を吐き出すと、当麻の顔見て、
「でも私が一緒に居るだけで、今の所何も無いって事はやっぱり私って当麻に幸運をもたら――」
「居たああああああああカミヤン見つけたでえええええぇぇぇ」
突然後ろから大きな叫び声に当麻と美琴は驚き振り返る。
そこに居たのは鬼のような形相をした青髪ピアスだった。
「っ! 青髪! 何でこんな所に」
「ハハァン! カミヤン、ワイらにアレだけの事をしておいて良くもまぁ抜けぬけ……」
「「「居たぞー、上条だ!!」」」
「何だか前からも後ろからも、ぞろぞろ現れてやがる! 上条さんが何をしたって言うんですか?!!」
青髪が手に持っていた携帯に叫びを入れると近くに居たである、数十人の男女が通路の前後ろから迫って来る。
「カミヤン、補習の日にワザワザ女の子使って抜け出す様を見せ付けておいて何いってるのかニャ??」
前方から土御門元春が現れ、訳を説明され気づいた二人は気まずい。
「ちょっと、抜け出すってあの子まさか授業中に連れ出したの?」
「エエ、それはもう先生が入ってきて、始まるジャストタイミングで」
周りに聞えないようにコソコソ話し合う二人に、周りの殺気も限界点を突破した。
「「「上条当麻!!! 天誅!!」」」
後ろに居た上条の同級生らがそれぞれ能力を使って攻撃してくる――だが。
美琴の電撃を防ぐ日々に鍛えた超人的反射神経を持つ当麻の右手により全て打ち消されてしまう。
「っと危ねえじゃねーか、食料に何かあったら……!!」
気づいた時には袋をその場に落とし右手を構えていた、当麻は涙目になっていた。
『やっぱり不幸だ』
しかし、ここで不幸だと思うのは当麻だけではない。
「……人が折角幸せ気分に浸ってたって言うのによくも――」
俯き半泣き状態の美琴の身体に電流が流れる。
「えっ美琴サン? そんなの此処で使ったらああああぁ」
「消えろぉぉぉ!!」
当麻にしか放つ事の無かった電撃の槍を打ち出し、青髪ピアスを含む後ろ側に居た生徒は皆気絶してしまった。
無意識に怒っていても威力を落としてる所は美琴らしい。
「「ちょっ……あんなのまともに受けたら」」
土御門以下、前方を抑えている生徒達に恐怖が走る。
「ええぃ! カミヤン! 女の子の力を借りずに戦うぜぉ!」
「「「そうだ! そうだ! 卑怯者!」」」
鼓舞するように当麻への罵声が始まり、その勢いで能力を使う者、近接戦を行う者に分れ、当麻に襲い掛かる。
「ちょっ! いくら上条さんでも15人を相手になんか出来ません!」
「――アンタは前面で近づく奴と飛んでくる能力を防いで」
「美琴サン??」
「私が砲台してあげるから、安心なさい」
ミサカの顔が不敵な笑みを見せ始めながら、再度電流を流し始める。
このままだと後で、どうなるか判らないと悟った当麻は今回は従おうと考えた。
「歯ぁ食いしばれよ!!」
「夏の旅館の続きぜお!!」

当麻と美琴の連携した戦闘により、襲ってきた15人を含む20人以上の敵を片付けてしまった。

「おっ!! やったぞ美琴!」
「……どうしたのよ?そんなに驚いて」
買い物袋を拾って叫ぶ当麻だが、美琴は卵等の材料が入った袋が地面に落ちた事、
自分が傍に付いていれば幸運に出来ると思っていた自分に絶望感すら抱いている。
「見てみろって! ナント卵以下材料は無事だぜ! さすがは美琴せんせー」
「ふぇっ? ホント?」
袋を美琴の前に差し出し、泣きそうになってる美琴は袋の中を覗き込む、
一緒に買っておいた、麺類等が衝撃を緩和させたのか、卵以下問題ない状態になっていた。
「よかった……ホントによかったぁ」
「オイオイ! 泣かなくても良いだろ」
美琴の中に巣食っていた絶望感は消え去り、涙が流れ始めた。

泣いている美琴の頭を撫で、再び笑みを取り戻した美琴は、またも恋人繋ぎをしながら寮へと歩いていった。


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